地球化学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 08:59 UTC 版)
![]() |
この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2024年6月)
翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
地球化学(ちきゅうかがく、geochemistry)とは、地球や地球の構成物質について化学的な手段を用いて研究する学問分野[1]。地球を構成する元素とその同位体、そして各種元素からなる化学物質・鉱物の分布や挙動を研究対象とする[2]。地質学と化学の学際分野である。大気、火山ガス、水、塵、土、堆積物、岩石、生物の遺骸、人間活動由来の化学物質など、地球上に存在する物質はすべて研究対象になりうる[3]。
歴史
地球化学が発展したのは20世紀である[4]。例えば、スイス生まれのノルウェー人科学者であるヴィクトール・モーリッツ・ゴルトシュミットは、地球での元素の分布や挙動のメカニズムを研究し、成果を『Geochemische Verteilungsgesetze der Elemente』にまとめており[5]、ゴルトシュミットは地球化学の父とも呼ばれている[6]。また、ロシア人科学者ウラジーミル・ヴェルナツキーは生物と地球の相互作用について考察を試みた最初期の人物であり、地球化学および生物地球化学の基礎を築いた。
地球化学は当初は固体地球科学と化学の学際分野として発展し、マントル物質、マグマ、岩石などを扱っていたが、今日では地球環境問題と関連し、水圏、大気圏、生物圏も研究対象となっている[6]。また、扱う範囲も地球にとどまらない。
分類
主な分野、研究対象は次のように分類できる。
- 火山学、岩石学、鉱物学に関連する分野
- 地殻、マントル、水圏などにおける、元素や鉱物の分布や移動を調べる分野。
- 同位体地球化学(isotope geochemistry)
- 地球上の各元素の同位体組成を調べる分野。物質の輸送、変換過程を調べたり、年代測定を行ったりするために重要な分野である。
- 宇宙化学(cosmochemistry)
- 宇宙における元素とそれからなる化学物質の分布を分析する分野。
- 生物地球化学(biogeochemistry)
- 地球上の化学過程における生物の役割を研究する分野。
- 有機地球化学(organic geochemistry)
- 地球上の有機物質の動態を研究する分野。
- 環境学、水文学の応用分野
その他
「日本の地球化学図 元素の分布から何がわかるか?」が、平成17年度環境賞の優良賞を受賞。
脚注
- ^ 松久・赤木 2005, p. 1.
- ^ 松久・赤木 2005, p. 7.
- ^ Encyclopedia of analytical science.. Paul Worsfold, A. Townshend, C. F. Poole, Manuel Miró (Third edition ed.). Amsterdam. (2019). ISBN 978-0-08-101984-9. OCLC 1090140183
- ^ 松尾ほか 1989, p. iii.
- ^ 松久・赤木 2005, pp. 2–3.
- ^ a b 佐野・高橋 2013, p. v.
参考文献
- 菅原健・半谷高久編 『地球化学入門』 丸善、1964年。
- 松尾禎士監修 編『地球化学』講談社、1989年。 ISBN 4-06-153320-7。
- 松久幸敬、赤木右『地球化学概説』培風館〈地球化学講座〉、2005年。 ISBN 4-563-04901-8。
- 佐野有司、高橋嘉夫『地球化学』共立出版〈現代地球科学入門シリーズ〉、2013年。 ISBN 978-4-320-04720-4。
- 『日本の地球化学図 : 元素の分布から何が分かるか?』産業技術総合研究所地質調査総合センター、2004年。
関連項目
- ウラジーミル・ヴェルナツキー - 地球化学の創始者。
- 海洋化学
- 大気化学
外部リンク
地球化学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/15 13:37 UTC 版)
一般的には、どんな地球外生命も地球で見つかるものと同じ基本的な化学的性質、宇宙で最もありふれ、また生命に最も重要な4つの元素、炭素、水素、酸素、窒素を元に存在するだろうと考えられている。確かに、生物に必要な単純な化合物であるアミノ酸等は、隕石や星間物質から発見されている。これら4つの元素は、地球の生物共同体量の96%以上を占めている。炭素はそれ自身や、複雑で大規模な格子や様々な構造を接合し形成することに関しては、他に並ぶものが無い能力を持っており、生きた細胞のような複雑な構造を作るための理想的な物質となる。水素と酸素は水を形成し、生命の誕生にとって最初の反応が起こった場所の溶剤となる。有機化合物を酸化させることで利用できる、炭素と酸素の間の強力な共有結合を構成するエネルギーは、全ての複雑な生命の燃料である。これら4つの元素は同時にアミノ酸を構成する。アミノ酸は生きている組織を構成する蛋白質を形作る物質である。 宇宙の中での元素の相対的な量は、必ずしも惑星の中での量に反映されるわけではない。例えば、4つの生命の元素では、酸素だけが地球の地殻に豊富に存在している。これは、水素や窒素などのこれら多くの元素のほとんどの基本的な化合物(二酸化炭素や一酸化炭素、メタン、アンモニア、それに水など)が暖かい温度で気体となるという事実から、部分的に説明することができる。太陽に近い熱い領域では、これら揮発性の化合物は惑星の地質的な形成において重要な役割を果たすことはできない。その代わり、これらは気体として、主に二酸化ケイ素(ケイ素と酸素の化合物。酸素の相対的な豊富さの元)などからなる岩石により新たに形成された地殻の下に捕らえられた。最初の火山に始まる揮発性の化合物の放出は、惑星の大気の形成に寄与することになっただろう。ユーリー-ミラーの実験は、原始大気の中でエネルギーを放出することで、単純な化合物の合成によりアミノ酸が形成できることを示した。 しかし、火山からのガスの放出だけでは地球の海の水の量を説明することはできない。地球型惑星を形作った岩石は、よく乾燥した、すなわち水をごく少量しか含まないものだった可能性が高い。生命に必要な水のほとんど大部分は太陽の熱から離れ、これらが固体のまま残っていた領域からやってきたと考えられている。その起源としては、太陽系外縁天体(彗星)と小惑星帯外縁部という2つの説が唱えられてきた。同位体存在比の研究によれば、小惑星帯外縁部に由来する炭素質コンドライトの同位体比は地球のものとよく一致する一方で、彗星の水素同位体比(重水素/水素の比率)は地球の2倍に達することが知られている。彗星の水素と同位体比の低い水素(例えば原始惑星系円盤ガス)が混合したものと考えれば地球の水素同位体比を再現できるようにも思えるが、この方法では今度は窒素の同位体比に食い違いが生じることになる。これらは地球の水の大部分は小惑星帯に由来するという説を支持している。 仮に地球の水が彗星から供給されたのであれば、4つの"生命の元素"はその他の場所でも容易く利用できるはずだ、という考えには疑問が持たれることになる。彗星が無ければ、地球型生命は存在していない可能性がある。居住可能な系となるには、長期間軌道を回っている天体から、内側の惑星に元となるものが供給される必要があるということも、ありそうである。一方で、地球の水が主に小惑星から供給されたのであれば、地球型惑星が集積の過程でそのような領域から物質を取り込むことは珍しいことではないし、水に富んだ天体を内側に供給する天体も必要ではない(#グッド・ジュピターも参照)。また、地球で必要とされる物質ではなく、その他の元素を生命の生化学的な基礎とする可能性もある(代わりの生化学を参照)。
※この「地球化学」の解説は、「惑星の居住可能性」の解説の一部です。
「地球化学」を含む「惑星の居住可能性」の記事については、「惑星の居住可能性」の概要を参照ください。
「地球化学」の例文・使い方・用例・文例
地球化学と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- 地球化学のページへのリンク