グッド・ジュピター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/15 13:37 UTC 版)
「惑星の居住可能性」の記事における「グッド・ジュピター」の解説
グッド・ジュピター(良い木星)とは、太陽系の木星のような巨大ガス惑星で、ハビタブルゾーンを壊さないよう離心率が小さく、恒星から十分遠く離れた、だが内側の地球型惑星を二つの重大な点で"保護"するのに十分な程度に近い軌道を持っている。一つ目は、内側の惑星の軌道が安定するのを助け、それにより気候を安定させることである。二つ目は、彗星や小惑星が内部太陽系に入り込み、破壊的な衝突の原因となるのを引き止めることである。木星の軌道は、地球と太陽の間の距離の5倍ほどのところにあり、他の惑星系でも木星型惑星がこれに近い軌道にあれば同様の働きをすると考えられる。木星の"番人"の役割は、1994年のシューメーカー・レヴィ第9彗星との衝突の時にドラマチックに例証された。彗星は、木星の重力に捕らわれなければ内部太陽系に入り込んでいたかもしれない。 しかし現実はより複雑である。木星は、長周期彗星が地球に衝突する頻度を減少させるが、地球へ衝突する天体のうち長周期彗星が占める割合は5%に過ぎず、大部分は小惑星や短周期彗星である。木星は、短周期彗星や小惑星を軌道から取り除く一方、太陽系の内側に散乱して衝突頻度を増加させる働きも持ち、そのどちらの効果が上回るかは、木星の軌道や質量などの条件によって異なる。例えば、木星の質量が現実の数分の1(土星質量程度)の場合は地球への天体衝突頻度は大きく上昇するが、木星質量が現実の0.15倍以下であれば天体衝突頻度は減少に転じるという結果がシミュレーションによって示されている。 木星は、その内側にある地球型惑星の揮発性物質の含有率に重要な影響を及ぼしたと考えられている。一つの考え方として、木星は周辺にある氷天体を内側に向けて散乱し、地球に水を供給した、というものがある。しかし、地球型惑星集積のシミュレーションは、木星は実際には正反対の役割を果たしたことを示している。木星が存在するモデルと存在しないモデルのシミュレーション結果を比較すると、明らかに前者の方が水の少ない乾燥した地球型惑星が形成される。これは、木星は内側に向けて供給するより多くの天体を惑星系から放出し、地球がそれらの氷に富んだ天体を取り込む機会を失わせるためである。
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