計算化学とは? わかりやすく解説

けいさん‐かがく〔‐クワガク〕【計算化学】


計算化学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/06/27 06:55 UTC 版)

計算化学(けいさんかがく、英語: computational chemistry)とは、計算によって理論化学の問題を取り扱う、化学の一分野である。複雑系である化学の問題は計算機の力を利用しなければ解けない問題が多いため、計算機化学と呼ばれることもあるが、両者はその言葉の適用範囲が異なっている。

近年のコンピュータの処理能力の発達に伴い、実験、理論と並ぶ第三の研究手段と考えられるまでに発展した。主に以下の手法を用いて化学の問題を取り扱う。

対象と方法

計算化学の対象は、分子の性質を数学的方法で計算することと、分子挙動をシミュレーションすることにまたがる。用語上は、合成計画、データベース検索、コンビナトリアル・ライブラリ操作も含まれる[1]。この範囲では、個々の分子の構造やエネルギーを求める計算、分子集団の運動を追うシミュレーション、候補分子や反応経路を扱う情報処理が、同じ分野名の下で扱われる[1]。この範囲には、電子状態を扱う量子化学計算と、原子・分子の配置や運動を扱う分子シミュレーションが含まれる[1]

量子化学計算では、シュレーディンガー方程式に基づいて電子の分子軌道を計算し、分子の最安定構造、エネルギー、構造や化学反応に関する特性を調べる[2]分子軌道法は、経験的なパラメータや計算の簡略化を用いる半経験的分子軌道法と、最初から近似なしに解く非経験的分子軌道法に大別される[2]密度汎関数法では、多電子系のエネルギーを電子の波動関数ではなく電子密度汎関数から計算する[2]。これらの計算は、分子の構造、エネルギー、化学反応に関する特性を理論的に扱う方法である[2]

分子動力学法は、分子内の原子、または固体液体気体中の原子や分子の運動を、ニュートンの運動法則に従って計算するシミュレーション手続きである[3]。この運動を模擬するために必要な原子に働く力は、一般に分子力学法の力場で計算される[3]。古典物理に基づく計算は大きな分子を扱いやすいが、化学反応のシミュレーションには量子物理に基づく計算が用いられてきた[4]。化学反応の各段階を実験だけで写し取ることは困難であり、反応中心などの小さい領域を量子論的に、周囲の大きい分子部分を古典物理で扱うマルチスケールモデルが用いられてきた[4]

1998年のノーベル化学賞は、ウォルター・コーンの密度汎関数法の開発と、ジョン・ポープルの量子化学における計算法の開発に対して授与された[5]。2013年のノーベル化学賞は、マーティン・カープラスマイケル・レヴィットアリー・ウォーシェルによる複雑な化学系のマルチスケールモデルの開発に対して授与された[6]

参考文献

  • Jensen, F. Introduction to Computational Chemistry; John Wiley & Sons: Chichester, 1999. ISBN 0-4719-8085-4.
  • Cramer, C. J. Essentials of Computational Chemistry; John Wiley & Sons: Chichester, 2005; Second Edition. ISBN 0-470-09181-9.
  • 『実験化学講座』 第5版 「計算化学」 丸善、2004年。
  • 堀憲次・山本豪紀『Gaussianプログラムで学ぶ 情報化学・計算化学実験』丸善出版、2006年
  • 武次徹也編『すぐできる 量子化学計算 ビギナーズマニュアル』平尾公彦監修、講談社サイエンティフィク、2006年

脚注

出典

  1. 1 2 3 computational chemistry”. IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 5th ed. (Gold Book). International Union of Pure and Applied Chemistry. 2026年6月27日閲覧。
  2. 1 2 3 4 分子軌道計算(密度汎関数法)”. 薬学用語解説. 公益社団法人日本薬学会 (2023年7月22日). 2026年6月27日閲覧。
  3. 1 2 molecular dynamics”. IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 5th ed. (Gold Book). International Union of Pure and Applied Chemistry. 2026年6月27日閲覧。
  4. 1 2 Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2013”. Nobel Prize Outreach (2013年10月9日). 2026年6月27日閲覧。
  5. The Nobel Prize in Chemistry 1998”. Nobel Prize Outreach. 2026年6月27日閲覧。
  6. The Nobel Prize in Chemistry 2013”. Nobel Prize Outreach. 2026年6月27日閲覧。

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