化学熱力学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/09 06:56 UTC 版)
化学熱力学(英語: Chemical thermodynamics)は熱力学と仕事の関係を、化学反応もしくは状態の物理的変化と関連させて、熱力学の法則の範囲内で研究する学問である[1]。化学熱力学には、様々な熱力学的性質の室内実験だけでなく、数学的手法を用いた化学的な疑問や自発過程の研究も含まれる。
化学熱力学の構造は、熱力学の第一法則と第二法則[1]に基づいている。熱力学の第一法則と第二法則を出発点として、「ギブスの基本式」と呼ばれる4つの方程式が導き出される。これらの4つの方程式から、比較的単純な数学を用いて、熱力学系の熱力学的性質を関連付ける多数の方程式を導き出すことができる。これが化学熱力学の数学的枠組みの概要である。
歴史

1865年、ドイツの物理学者ルドルフ・クラウジウスは、彼の著書『Mechanical Theory of Heat(力学的な熱理論)』の中で、熱化学の原理、例えば燃焼反応で発生する熱は、熱力学の原理にも適用できることを示唆した[2]。クラウジウスの研究に基づき、1873年から1876年の間にアメリカの数学物理学者ウィラード・ギブズは3つの論文を発表し、中でも最も有名なのは『不均一な物質系の平衡に就いて』である。これらの論文の中で、ギブズは熱力学の第一法則と第二法則を図式的に、そして数学的にどのように測定すれば、化学反応の熱力学的平衡とそれらが発生または進行する傾向の両方を決定できるかを示した。ギブズの論文集は、クラウジウスやニコラ・レオナール・サディ・カルノーなど、他の研究者によって発展させられた原理から、最初の統一された熱力学の定理体系を提供した。
20世紀初頭には、2つの主要な出版物がギブズによって発展させられた原理を化学プロセスに適用することに成功し、化学熱力学の科学的基礎を確立した。1つ目は、1923年にギルバート・ルイスとマール・ランドールによって出版された教科書『Thermodynamics and the Free Energy of Chemical Substances(熱力学と化学物質の自由エネルギー)』である。この本は、英語圏において化学親和力を自由エネルギーという用語で置き換える役割を果たした。2つ目は、1933年にE・A・グッゲンハイムによって書かれた著書『Modern Thermodynamics by the methods of Willard Gibbs(ウィラード・ギブズの方法による現代熱力学)』である。このように、ルイス、ランドール、そしてグッゲンハイムは、熱力学を化学に統一的に適用することに大きく貢献した2冊の著書によって、現代化学熱力学の創始者とみなされている[1]。
概要
化学熱力学の主な目的は、与えられた変化の実現可能性、つまり自発過程であるかを判断するための基準を確立することである[3]。このように、化学熱力学は、一般的に以下の過程で起こるエネルギー交換を予測するために使用される。
以下の状態量は、化学熱力学において特に重要である。
化学熱力学におけるほとんどの恒等式は、熱力学の第一法則と第二法則、特にエネルギー保存の法則をこれらの状態量に適用することによって得られる。
熱力学の法則の3つ(一般的で非特異的な形式):
- 宇宙のエネルギーは一定である。
- いかなる自発的過程においても、宇宙のエントロピーは常に増加する。
- 0ケルビンにおける完全結晶(秩序だった状態)のエントロピーはゼロである。
化学エネルギー
化学エネルギーとは、化学物質が化学反応によって変化を起こす際に放出される可能性のあるエネルギーのことである。化学結合の切断と生成には、エネルギーの放出または吸収が伴い、多くの場合、化学系によって吸収または放出される熱として現れる。
化学物質(「反応物」)間の反応によって放出(または吸収)されるエネルギーは、生成物(reactants)と反応物(products)のエネルギー含有量の差に等しい。このエネルギーの変化は、化学系の内部エネルギーの変化と呼ばれる。これは、 化学カテゴリ




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