ラマン‐ぶんこうほう〔‐ブンクワウハフ〕【ラマン分光法】
ラマン散乱
ラマン分光法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/31 09:37 UTC 版)

物質に振動数の単色光を当てて散乱されると、ラマン効果によってストークス線と反ストークス線のラマン線が現れる。ラマン線の波長や散乱強度を測定して、物質のエネルギー準位を求めたり、物質の同定や定量を行う分光法をラマン分光法(ラマンぶんこうほう、Raman spectroscopy)と呼ぶ。
ラマン分光の特徴として、赤外分光法では測定が困難な水溶液のスペクトルが容易に測定でき、しかも微小量の試料でよいことから、水溶液の定性、定量分析に適している。また強誘電体の相転移機構、結晶の格子振動、分子振動などの固体の物性研究にも応用されている。
共鳴ラマン分光法
ラマン線を生じる遷移の中間エネルギー状態は仮想状態であるが、これがたまたま分子の実在のエネルギー準位と一致すると非常に強い散乱が起こり、共鳴ラマン分光法と呼ばれる。
ラマン分光光度計
測定には、光源、試料照射部、分光器、散乱光検出器で構成されるラマン分光光度計が用いられる。
光源
ラマン散乱の断面積が小さいため散乱光は弱いので、ラマン分光用の励起光源にはレーザーが用いられている。
分光器
ラマン散乱光は通常種々の原因の強い迷光を伴うので、分光器の迷光レベルをできるだけ低くするためにダブルモノクロメーターがよく用いられる。
検出器
微弱な光を検出できるものが使用される。
ラマン分光法と赤外分光法
ラマン分光法は紫外線や可視光線の散乱を利用する(つまり散乱スペクトルを得る)ものであるのに対し、赤外分光法は赤外線の吸収を利用する(つまり吸収スペクトルを得る)ものであるため、両者は本質的に別の方法である。しかしながら、両者は共に分子の振動のエネルギーを調べるものであるという点では共通している。なお、一般にラマン分光スペクトルで強いピークの現れる分子の振動は、赤外吸収スペクトルでは弱いピークにしかならず、逆に、ラマン分光スペクトルでは弱いピークにしか現れない分子の振動は、赤外吸収スペクトルで強いピークとなって現れるという意味において、しばしば、この両者は互いに相補的な関係にあると言われることがある。
参考文献
- 『物理学辞典』 培風館、1984年
関連項目
脚注
外部リンク
ラマン分光法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/20 23:32 UTC 版)
詳細は「ラマン分光法」を参照 ラマン散乱光の振動数と入射光の振動数の差(ラマンシフト)は物質の構造に特有の値をとることから、ラマン効果は赤外分光法と同様に分子の構造や状態を知るための非破壊分析法として利用されている。ラマン散乱と赤外線吸収の選択則は異なるため、赤外分光法とは相補的関係にある。しかし赤外分光法によって得られるのは吸収スペクトルであり、ラマン分光法で得られるのは散乱スペクトルであるので本質的に考え方は異なる。 現代では、光源として単色光であるレーザー光を物質に照射して、発生したラマン散乱光を分光器、もしくは干渉計で検出することでラマンスペクトルを得ることができる。通常、ラマンスペクトルは縦軸にラマン散乱強度、横軸にラマンシフト(波数、単位は通常cm-1)をとったグラフとなる。
※この「ラマン分光法」の解説は、「ラマン効果」の解説の一部です。
「ラマン分光法」を含む「ラマン効果」の記事については、「ラマン効果」の概要を参照ください。
- ラマン分光法のページへのリンク