天体暦とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 生活 > 時間 > > 天体暦の意味・解説 

てんたい‐れき【天体暦】

読み方:てんたいれき

太陽月・惑星恒星など位置のほか、日食・月食日月出没などの天文現象記載した年間暦。天体観測・暦計算天文航法などに利用


天体暦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/10 22:05 UTC 版)

1560年発行の天体暦

天体暦(てんたいれき、英語: Ephemeris、複数形:Ephemeridesフランス語: Éphéméride、複数形:Éphéméridesギリシア語: ἐφημερίς)とは、主として太陽系内の天体太陽惑星衛星)や恒星および人工天体時間に関する位置、および日食月食天体の出没などの天象の時刻・位置などを推算した予報を書き下したものである。英語やフランス語は日記や日誌を意味するギリシャ語に由来する。天文暦(てんもんれき)、(れき)、軌道暦(きどうれき)、天文年鑑(てんもんねんかん、英語: astronomical almanac)とも言う。

現在、天体暦は基本暦 (fundamental ephemeris) と視天体暦 (apparent ephemeris) に分けることができる。基本暦は天体の運動方程式を積分して得られる天体の幾何学的な位置を扱い、視天体暦は基本暦を基に座標変換や惑星光行差の補正などをして得られる天体の視位置を扱っている。

天体の位置予測は、天文学・宇宙探査だけでなく、かつて外洋の航海においても船舶の位置を決定するために重要なものであった。天体暦から天測航法に必要な情報を抜粋したものを航海年鑑という。

計算

天体暦は太陽系内の天体の位置のさまざまな観測データをもとに、力学的な理論予測がそれに適合するようにして構築される。 よって、天体暦は天体の位置予測だけではなく、理論のパラメータとなる惑星の質量などさまざま天文定数を同時に決定し、それらの情報源ともなっている。 現代ではレーダーによる惑星の距離測定や惑星探査機との交信データの利用など近代的な手法の発達により、天体暦の精度はますます精緻なものとなっている[1][2]

天体暦のための力学的計算には長らく摂動論にもとづいた解析的な方法を用いることが主流であった。 現在でもフランス天体力学暦計算研究所フランス語版 (IMCCE) の VSOP はこのような考えで作成されている。 日本でも、2009年(平成21年)3月13日発行の平成22年(2010年)版まで海上保安庁海洋情報部から年刊の視天体暦『天体位置表』が刊行されていた[3]

一方で近年はコンピュータの発達により、数値積分による大規模な計算が可能となり、数値的に求めた天体暦が主流となっている。 特に惑星探査機の運用に必要であったためもあり、このような数値的暦はアメリカとロシアにおいて精密なものが作られるようになった。NASA ジェット推進研究所 (JPL) の DE英語版ロシア科学アカデミー応用天文学研究所ロシア語版: Institute of Applied Astoronomy; IAA)の EPM: Ephemerides of Planets and the Moon)、フランス天体力学暦計算研究所 (IMCCE) の INPOP: Intégrateur numérique planétaire de l'Observatoire de Paris)がこのような数値的天体暦として代表的なものである[1][2][4][5]

人工衛星

測位衛星地球観測衛星などのような人工天体人工衛星測地学地球物理学地球科学の研究、教育、商用その他に活用するために、これらの軌道を事前に推算したものや観測により事後に決定したものを天体暦として発行している。GNSS衛星の軌道暦は国際GNSS事業 (IGS) が、リトロリフレクターを搭載する人工衛星の軌道暦は国際レーザー測距事業 (ILRS) が、DORISを搭載する人工衛星の軌道暦は国際DORIS事業 (IDS) がそれぞれ発行している[6][7][8]

GPS衛星自身も測位計算において必要とする事前推算の天体暦の情報を送信信号に乗せて放送している。また、事前推算の天体暦として、より長期間に適用可能(ただし概略精度)のものも合わせて放送しており、こちらはGPSの仕様書ではオールマナック(アルマナック、"almanac")と呼んで区別している。

出典・注釈

  1. ^ a b 荒木田英禎 (2007年). “天文単位は永年増加するか!? 太陽系天体の精密位置測定からの新たな問題”. 「高精度アストロメトリ観測の時代を迎えた21世紀の天文学」研究会. JASMINE ホームページ. 2018年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月17日閲覧。
  2. ^ a b 荒木田英禎、福島登志夫「地球惑星間距離の永年的変化 : 太陽系天体の精密位置計測からの新たな問題提起(交流)」(PDF)『日本物理学会誌』第63巻第7号、日本物理学会、東京、2008年7月5日、517-523頁、doi:10.11316/butsuri.63.7_517ISSN 2423-88722024年6月4日閲覧 
  3. ^ 海上保安庁 (2010年6月1日). “各種天体暦の刊行案内” (html). 海上保安庁. 海洋情報部. 海上保安庁. 2010年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月11日閲覧。
  4. ^ Folkner, William M., James G. Williams, and Dale H. Boggs (2009). “The Planetary and Lunar Ephemeris DE 421” (PDF). Interplanetary Network Progress Report 42-178: C. https://tda.jpl.nasa.gov/progress_report/42-178/178C.pdf. 
  5. ^ Pitjeva, E. V (2005). “High-precision ephemerides of planets—EPM and determination of some astronomical constants”. Solar System Research 39 (3): 176–186. doi:10.1007/s11208-005-0033-2. https://ui.adsabs.harvard.edu/link_gateway/2005SoSyR..39..176P/doi:10.1007/s11208-005-0033-2.  (trans. from Астрономический вестник 39 (3): 202–213).
  6. ^ International GNSS Service (2020年). “About - International GNSS Service” (html) (English). International GNSS Service. International GNSS Service. 2024年6月3日閲覧。
  7. ^ NASA (2024年4月7日). “ILRS - About ILRS” (html) (English). ILRS Home Page. NASA. 2024年5月6日閲覧。
  8. ^ CNES; CLS (2023年6月29日). “Terms of Reference - International DORIS Service” (HTML) (English). International DORIS Service. Organization. International DORIS Service. 2024年5月3日閲覧。

関連項目

外部リンク


「天体暦」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



天体暦と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「天体暦」の関連用語

天体暦のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



天体暦のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの天体暦 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS