エリアドールの七人
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「とある飛空士への誓約」の記事における「エリアドールの七人」の解説
エリアドール飛空艇による単機敵中突破航を成し遂げた学生七人組の総称。第1巻冒頭の、未来における手記では、「英雄」が五人と「裏切り者」二人という内訳が世間の認識となっている。またミオ離反後は「六人」という呼称が一般的となっている。 坂上清顕(さかがみ きよあき) 声 - 多田啓太 本作の主人公。所属は河南士官学校三回生→エアハント士官学校三回生→エアハント士官学校四回生→セントヴォルト海空軍派遣少尉候補生→ヴォルテック航空隊→オデッサ航空隊少尉→草薙航空隊→ワルキューレ大尉→ワルキューレ隊長。エリアドール飛空艇では操縦を担当。真っすぐで正義感の強い性格。秋津連邦のかつての超エース・坂上正治を父に持ち、父の弟子である聖騎士アクメドを師に持つ。飛空艇で夜間戦闘機の追撃をかわし、積乱雲突破、夜間着水(最後はハチドリに助けられるが)をこなすなど、高い操縦技術を持つ。本編開始5年前のメスス島侵攻により家族を全て失い、ウラノスと姉を地上掃射で殺したカーナシオンへ深い憎悪を抱く。そしていずれ世界を革命する復讐をミオと誓う。またミオ離反後、あることからその真意を悟ったことで、新たに「ミオを取り戻すために」という理由も加わった。 ウラノスへの憎悪にまみれてはいるものの、本質的には優しい性格のため、精神的に偏りがあり不安定な部分も多い。また悪戯っ子でもあり、幼い頃のミオやイリアなどからかい甲斐のある人間をいじる傾向がある。そのことや時折垣間見せる鋭さから、イリアからは「黒ウサギ」と評された。「戦う理由」は良くも悪くも人のためであり、最初の頃は誰かを殺すのではなく誰かを守るためにしか敵を撃つことができなかった。一方で誰かのためならば盲目的なまでに行動でき、特にミオに関わることでその傾向は強い。 ミオとは幼馴染以上恋人未満の関係であり、ミオに対する気持ちは清顕自身も判然としていなかった。しかしエリアドールでの単機敵中突破航以後は徐々に自らの想いを確かめていき、ミオのためなら世界を焼き尽くすことさえできるとまで思えるようになる。また、ミオの苦悩による不和と敵による捕捉によって負傷し、前後不覚になった際、本能的な渇望からミオと肉体関係を結ぶ。そのことはミオによって誤魔化されたが、ミオ離反後にとあるキッカケで記憶が蘇り、ミオの記憶が薄れかけていく一方で募る想いに苦しんでいく。 イリアとは最初は父親の確執でいがみ合っていたものの、危機を乗り越えるたびに信頼関係が醸成されていく。それはやがて戦う理由の誰かにも加わるようになり、ミオとの不和も重なって距離が縮まっていく。しかし距離が縮まる一方、ミオへの心残りからその想いには歯止めがかけられている。 ミオ・セイラ 声 - 林鼓子 ヒロインの一人。河南士官学校三回生→エアハント士官学校三回生→エアハント士官学校四回生。エリアドールでは航法及び前部銃座を担当。清顕とは10歳の頃からの幼馴染。清顕と共に上級生を差し置いての転校の選抜であるため、それなりに腕は良い。幼い頃に戦争によって実の両親をなくし、外交官である養い親に育てられた。7人もの血のつながらない兄弟がいる。セイラ家の三女。飼っている鳥の名前は「フィオ」。 5年前、メスス島にて清顕と共にウラノスの侵攻を経験している。それによる悲しみを抱えながらも、「頑張らずにいるよりも世界がよくなるかもしれない」と清顕を励まし、共に「ウラノスへの復讐」を誓う。とある事情から清顕を「運命の相手」と認識しており、知り合った時から彼を振り回している。幼い頃に勢いに任せて「清顕のお嫁さん」になることを彼に誓わせたが、時を経るにつれて曖昧になってきているその約束を持て余してもいる。ただし清顕に対する思慕はそのままで、彼が他の女性を気にすると(清顕自身にその気はないが)すぐに不機嫌になる。 作中冒頭で明示された「裏切り者」の一人。弟妹を人質にされ、また育ての親を裏切ることができず、ゼノンの目論見によりウラノスの潜入工作員として利用される。「オペレーション・ジュデッカ」の際に潜入工作員として拘束され、ハチドリによって救出されるが、死を願った際にライナに言いくるめられたことで「みんなに憎まれるために生きる」と決意。追ってきた清顕に心にもない侮蔑の言葉を吐き、プレアデスへと向かう。その後はゼノンの監督下で工作員となるための訓練を課せられていたが、人間性が失われることを(あくまで工作員としての有用性という観点から)惜しんだゼノンの手引きによって要人の世話係を命じられ、そこで「風呼びの少女」ニナ・ヴィエントと出会う。 後世、セントヴォルト帝国内において、その名は「売国奴」の代名詞として記憶されることとなる。 テレビアニメ版「とある飛空士への恋歌」最終話において、ニナ、イグナシオと共に1カットのみ登場するシーンがある。 イリア・クライシュミット 声 - 山藤桃子 ヒロインの一人。エアハント士官学校三回生→エアハント士官学校四回生→セントヴォルト海空軍少尉候補生→ヴォルテック航空隊→ワルキューレ→ワルキューレ副隊長。エリアドールでは操縦を担当。氷のように冷静で、めったに表情を見せない。坂上正治と並ぶ超エース、カルステン・クライシュミットを父に持ち、父を一騎討ちと見せて騙し打ちした(カルステン及びその同僚の証言。正治やその同僚は否定している)正治と、その息子である清顕を憎んでいるが、親善飛行で操縦士同士として力を合わせるうちに彼に心を寄せていく。幼いころから、父に正治への憎しみの吐け口として過酷なほどの操縦訓練を受けているため、他の訓練生を遥かに上回る操縦技術を持っている。 操縦士としての腕前は学生としては並外れているが、そうなったのは「父親に自分を見てもらいたい」が故の努力の結果。落ちぶれた父親を哀れに思う一方で、それでも見捨ても見捨てられたくもないという思いもあり、冷徹な仮面の奥に人知れない弱さを抱えている。 ワルキューレに入隊後、偽名「テルマ・クルマン」を使うことがある。趣味はドーナツ作り。 ライナ・ベック 声 - 近衛秀馬 エアハント士官学校三回生→エアハント士官学校四回生→セントヴォルト海空軍少尉候補生。エリアドールでは航法及び上部銃座を担当。女好きで軽い性格で、ところ構わず女性を口説いている。なお模擬空戦では1回だけイリアに勝ったことがあり、成績は広範囲で優秀。清顕の見立てでは七人の中で総合力が最も高い。 その正体はウラノスの潜入工作員「ハチドリ」。作中冒頭で明示された「裏切り者」の一人で、ライナ・ベックという名も偽名であり、本名は7卷において「トマス・ベロア」であることが明示される。将来セントヴォルト帝国の上層部に入り込むにエアハント士官学校に潜り込んでおり、本来の自我である「ハチドリ」と潜入用に自ら作り上げた偽の人格の「ライナ・ベック」という二つの人格を持ち、必要に応じて入れ替えている。2つの人格は完全に独立しており、記憶は共有しているが判断が分かれることもあり、そのことに戸惑う描写も見られる。 地獄のような訓練によって幼少時から鍛えられた技術は凄まじく、空戦中の飛空艇から敵爆撃機のコクピットを「狙撃」したり、着水寸前に横風にあおられた機体の傾きを、とっさに無線機材を倒して機の重心をずらすことで完璧に修正するなどの神業をたやすくやってのける(前述のイリアへの勝利も偶然ではなく故意)。父は極めて清廉な政治家であったが、政争により暗殺容疑で投獄され、母は精神を病んでしまっている。スパイとなったのは、報酬で母の治療を行うため。 事態が最終決戦に至り、ついにそれまでのゼノンたちへの服従を強いられる恐怖を克服、ミオのためゼノンへと反旗を翻す。後にミオと結婚しイリアと結婚した清顕と再会、ミオとイリアの子供が乗る飛行機を清顕と共に眺め、かつての自分たちの学生時代に想いをはせた。 紫かぐら(むらさき かぐら) 声 - 厚木那奈美 箕鄕士官学校四回生→エアハント士官学校四回生→セントヴォルト海空軍派遣少尉候補生→セントヴォルト海空軍派遣少尉→草薙航空隊→神明隊隊長。エリアドールでは副長を務め、側面銃座を担当。背の高い美人であり、士族の出で剣術の達人。大人びた性格で常に落ち着いており、ともすればいがみ合いそうな清顕とイリアを諫めている。死んだ清顕の姉と、自身も驚くほどに容姿が似通っており、それもあって清顕とは早い段階から打ち解けることになる。エアハント士官学校を卒業後はセントヴォルト海空軍ヴォルテック航空隊に配属された。 後に祖国で処刑されたという報告がバルタザールに告げられたことでバルタザールが悲壮の決意で最終決戦に臨むことになるが、実は利き腕を負傷させられただけで生存していた。全ての戦いが終わった後はバルタザールと結婚し多くの子供を授かる。 セシル・ハウアー 声 - 森嶋優花 エアハント士官学校の二回生→エアハント士官学校三回生→セルファウスト士官学校四回生→シルヴァニア王国女王。エリアドールでは電信及び側面銃座を担当。「エリアドールの7人」の中では最年少で、無邪気で話好き、子供っぽい性格。 実はウラノスに滅ぼされたシルヴァニア王国の王位継承者。本当の名はエリザベート・セシル・シルヴァニア。王国滅亡の際、王家の中でただ一人、アクメドによって空路、隣国へと逃がされて生き延びた。本来なら市井で生きるはずだったが、イリアに憧れて軍人を志す。本人としては王家の人間ではなく市民としての生活を望んでいる。 バルタザール・グリム 声 - 折原秋良 エアハント士官学校の四回生→セントヴォルト海空軍少尉候補生→セントヴォルト海空軍少尉。エリアドールでは機長を務め、尾部銃座を担当。どんな危機でも動じない豪胆さとリーダーシップを持つが、清顕からは「冷酷で危ない人」という印象を当初抱かれていた。果たしたい目的がある模様で、「エリアドールの七人」の名を利用し積極的に権力者に顔を売っている。エアハント士官学校を首席で卒業。卒業後は海空軍作戦本部に着任し、マウレガン島のセントヴォルト海空軍作戦本部多島海方面部局に配属された。そこでも持ち前の優秀性を発揮しており、作戦本部の中で唯一「オペレーション・ジュデッカ」の作戦を事前に看破した。優秀である一方で、人の地雷を踏み、墓穴を掘ることが多い。 本来の名はバルタザール・ベルナー。ベルナー財閥の跡取り息子として不自由ない生涯を約束されていたが、その全てを捨てて家を出る。世界を自分の望む姿に作り変えるという目的を持ち、「国盗り」という野望を内に秘めている。 話が進むにつれ祖父のいさかいは自身に原因のある誤解だと知り和解、祖父からの軍事支援を引き出すことに成功する。かぐらが処刑されたと報道されたため、悲壮の決意でウラノスとの最終決戦に臨み勝利をつかみとる。 全ての戦いが終わった後は軍を引退、財閥は弟に任せ自分はかぐらと結婚し多くの子供を授かる。次なる野望である世界一の花屋のため日夜奮闘している。
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