BD規格策定から規格争い終結まで
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「Blu-ray Disc」の記事における「BD規格策定から規格争い終結まで」の解説
2002年2月19日、日立製作所、LG電子、パナソニック、パイオニア、フィリップス、サムスン電子、シャープ、ソニー、トムソンの9社がBlu-ray Disc(BD)の規格を策定したことが発表される。その中にDVDフォーラム中核企業である東芝は含まれていなかった。 5月20日、上記の9社によりBlu-ray Discの規格策定を行うBlu-ray Disc Foundersが設立される。 8月29日、東芝とNECがBDに対抗する形で次世代DVD候補の「AOD(仮称)」をDVDフォーラムに提案、11月26日にDVDフォーラムはAODを「HD DVD」の名称で正式承認した。 2003年4月10日、ソニーは世界初のブルーレイディスクレコーダー・BDZ-S77を発売。 5月28日、三菱電機がBlu-ray Disc Foundersに加盟。以後Blu-ray Disc Associationへの移行(後述)までにデル、ヒューレット・パッカード(HP)、TDKが加盟する。 録画機器と録画用書き換えメディアの製品化が始まる。 ソニーはBD規格をカスタマイズした容量23.3GB(片面1層)の「プロフェッショナルディスク」を開発し、業務用のハイビジョン録画・編集機器とコンピュータ補助記憶装置に採用した。 2004年5月18日、規格策定団体「Blu-ray Disc Founders」を「Blu-ray Disc Association」と改称し、多くの企業が参加できるオープン団体に移行すると発表。10月4日に正式に発足した。これにより多くの会社(発足時点で73社、2006年6月時点で170社以上)がBlu-ray Disc Associationに参加した。 7月、松下電器産業は世界初の片面2層ディスクの記録に対応したブルーレイディスクレコーダー、「real」DMR-E700BDを発売。 9月21日、ソニー・コンピュータエンタテインメントが次世代ゲーム機「PlayStation 3」にBD-ROM採用を発表。ゲーム機としての仕様がほとんど発表されていない中での採用メディアの発表であった。 2005年次世代大容量光ディスク規格の行方に決定的な影響力を持つ大手ハリウッド映画企業は、2005年までにソニー・ピクチャーズ、ディズニー、20世紀フォックスのBD陣営とHD DVDを支持するパラマウント映画、ユニバーサル映画、ワーナーの2陣営に分かれた。両陣営の現世代DVDでのシェアは拮抗している。 春から夏にかけ、両陣営の間で2規格を統合するための協議が行われた。しかしBDの記録層が0.1mmの浅さであること、両者の考える光ディスクに対する根本的なビジネススタンスの差が大きいことなどで決裂。この時点で、規格争いが確定した。 4月、三洋電機がBlu-ray Disc Associationに加盟。HD DVDプロモーショングループ幹事企業のBlu-ray Disc Association加盟は初である。 5月、松下電器産業が、米国ロサンゼルス近郊にスピンコート技術を使ったBD量産工場を稼動させたことを発表。BD-ROMディスクがDVDに近いコストで製造できることを証明した。ソニーはシート方式を用いて製造していたが、コストや2層ディスクの製造効率が悪いことなどから、2006年までにスピンコート方式に転換した。 10月、BD-ROMディスク製造に対する懸念(コストなど)が払拭されたこと等によりHD DVD陣営のパラマウント映画、そしてハリウッド最大手でHD DVD陣営の中核企業であるワーナー・ブラザースグループがBD陣営にも参加することを表明。この結果、BD陣営サポートのスタジオはFox、ディズニー、ソニーピクチャーズ、MGM、ワーナー、パラマウント映画のハリウッド7社中6社となり、HD DVDのみを支持するハリウッド企業はユニバーサル映画だけとなった。 同時期、コンピュータ業界最大手のマイクロソフトとインテルがHD DVD支持を表明。おもな要因はパソコンなどと連係できる著作権保護の柔軟性によると主張。しかし2規格の実質的な差はそれほど大きくなく、背景にはマイクロソフトがWindows VistaやXbox 360など自社製品との親和性が高いHD DVDを推進する狙いがあった。マイクロソフトやインテルが支持したことにより、IT業界内に動揺する企業が現れてきた。たとえば2006年になり、マイクロソフト等の勧誘によりヒューレット・パッカードがHD DVDのサポートを表明した。 2006年3月31日、東芝は日本国内初のHD DVD対応プレイヤーを発売。ただし、ハリウッド映画企業の意向やAACSの遅れなどに影響されてHD DVDも2005年内の予定から遅れてのスタートとなった。 6月10日、松下電器産業はBDドライブ(内蔵型の記録ドライブ単体)および片面2層構成、記憶容量50GBのBDを発売。同ドライブを内蔵したPCも6月から発売した。 6月、サムスンはBD-ROMプレーヤを米国で発売。同時期にソニーピクチャーズは、LionsgateからBD-ROM映画ディスクを発売。日本でも米国のソフトを再生できるため、BD搭載PCを用意すればソフトが再生できる状況となった。 8月29日、国内のソフトウェアメーカー14社とハードウェアメーカー5社が合同発表会を開催し、11月以降に75タイトル以上を発売することを発表した。国内第1号ソフトとして11月3日にワーナーやソニー・ピクチャーズ等から7タイトルが発売された。 10月14日、ソニーから世界初のBDドライブ搭載のノートPC、VAIO type Aが発売。 11月10日、20世紀FOXは世界初の2層50GBソフト、「キングダム・オブ・ヘブン」を日本で発売。 11月11日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)はBDプレイヤーを兼ねた家庭用ゲーム機「PlayStation 3」を日本で発売。 11月15日、松下電器産業は、民生用BDレコーダーとして初めてBD-Videoの再生に対応した「ブルーレイDIGA」DMR-BW200/BR100を発売。 2007年1月17日、2006年末の国内市場調査でBDが94.7%のシェア(BDとHD DVDのレコーダーおよびHD DVDプレーヤー)を獲得したとの統計が出た。このシェアにはPlayStation 3やPC等は含まれていない。 映像ソフトのシェアでは発売が早かったHD DVDに後れを取ったものの、米国ではBDが急速にシェアを伸ばし、2006年末でHD DVDに追いつき2007年2月にはBDがHD DVDの2倍になった。さらに2007年第1四半期にはBDソフトのシェアはHD DVDの倍以上となった。 6月18日(現地時間)、米Blockbusterは同社が行っていた250店舗でのBDとHD DVDのレンタル事業をBDのみ7月中旬から1,700店舗に拡大すると発表した。 7月26日、米小売り2位のターゲットはソニーなどが推進するBD対応機種(ソニー製「BDP-S300」)だけを2007年秋から年末にかけて店頭販売することを明らかにした。 8月20日、ヴァイアコム傘下のパラマウント・ピクチャーズとドリームワークスはコンテンツをHD DVDでのみ供給すると発表、契約開始から18か月間HD DVDのみでの発売となる。ただし、スティーヴン・スピルバーグが監督した作品に関しては現段階では対象外となっている。今回のヴァイアコムの決定にはHD DVD陣営から1億5,000万ドルの見返りがあったためであると複数の米メディアが伝え、規格争い終結後にドリームワークスCEOがそれを公式に認める発言をしている。 8月30日、中国の大手AV機器メーカである華録集団(CHLG)と台湾のPCメーカであるエイサーがBDAに加盟。華録集団は中国国内にオーサリングセンターを設立予定。エイサーはBDドライブ搭載ノートPCを製品化予定。 11月27日、Blu-ray Disc Associationは声明文で業界の販売データを引き合いに出しBlu-ray映画ディスクの販売本数が100万本を超えたこと、欧州向けに製造されたBlu-rayゲームディスクが2,100万本を突破したことを報告したとロイターが報道した。 12月4日、TSUTAYA等のビデオレンタル事業者、松下電器産業などのAV機器メーカー、20世紀フォックスなどの映像ソフトメーカー、合計22社が「ブルーレイレンタル研究会」を設立。ゲオなどのビデオレンタル店13社(合計26店舗)で2008年2月29日まで試験的にBlu-ray Discビデオのレンタルを開始。レンタル価格はDVDビデオの新作と同額。なお最大手のTSUTAYAはこの試験に参加していない。 パラマウントのHD DVD支持により規格争いは一層激化するという観測が支配的だったが、2007年全体・特に年末商戦においてはBDが優位を保った。Home Media Researchの調査によると米国の年間ソフト売上はBD64:HD DVD36となり、すべての週でBDがHD DVDを上回った。NPDの調査によると、米国の2007年12月のプレーヤー(ゲーム機除く)販売台数はBDの方が3倍ほど高価にもかかわらず60%を占めた。 日本では11月、ソニー・松下電器産業・シャープがBDレコーダー新機種を発表。特にソニーと松下はデジタル放送をMPEG-4 AVCで再圧縮しハイビジョン規格で長時間録画(ただしDRモードと比べるとビットレート数の関係で画質が粗くなる)する機能を搭載するなどした。この結果、BCNの調査によると11・12月のDVDレコーダー市場全体においてBDの台数シェアが2割前後、金額ベースでは3割超を占めるまでに急成長した。東芝も低価格なHD DVDレコーダーで巻き返しを図ったが、HD DVDと比較したBDのシェアは96 - 98%と圧倒している。 10月にはエイベックス、11月にアスミック・エース、ジェネオンがBD参入を発表している。 2008年1月、BD-ROMビデオのProfile 1.1(ピクチャーインピクチャーなどのインタラクティブ機能を実装)に準拠した初のタイトルとして『バイオハザード』が北米で発売された。 1月4日、発売までHD DVD支持から両フォーマット支持へと紆余曲折のあったワーナー・ブラザースが6月からBDでの供給に一本化すると発表した。また、ニュー・ライン・シネマもこれに追随した。これによりハリウッドタイトルのシェア争いではBDがさらに優位となった。 1月8日、米国で世界最大級の家電展示会「2008 International CES」が開催される。米マイクロソフト Xboxグループマーケティングマネジャーのアルバート・ペネロが「消費者から要望があればBlu-ray Disc対応も考える」と柔軟姿勢をコメントした。 またこの日、英TIMESのWeb版「TIMES ONLINE」がワーナー・ブラザースのBD一本化発表を受けHD DVD陣営約130社のうちパラマウント映画を含む20社が離脱準備を進めており、HD DVD陣営は「離反の洪水」に直面していると報じた。 ワーナーのBD専売化を受け、HD DVDプロモーショングループはCESにおけるプレスカンファレスをキャンセルしていたこともありCESのブルーレイブースは大盛況、HD DVDブースは閑古鳥が鳴いているという有様であった。 International CESではBD-ROMのProfile 2.0に実装されるBD-Live(ネットワーク機能など)のデモが展示された。2008年内にソフトが発売され、対応プレーヤーの発売やPlayStation 3の対応ファームウェアも予定されている。 1月28日、イギリスで820店舗を展開する大手小売チェーン・Woolworth(英語版)が3月からHD DVDの取り扱いをやめBDに一本化すると発表。年末商戦でBDがHD DVDの10倍売れたためとしている。 1月30日、EMIミュージック・ジャパンはBD参入を発表。 2月15日、小売り世界最大手のウォルマートがBDを支持、6月までに米国内の約4,000店舗の店頭からHD DVD製品のソフトやプレーヤーを撤去すると発表。 2月19日、東芝は記者会見を行い「HD DVD事業を終息する」と正式に発表。次世代DVDの規格争いはBDへの完全一本化が確定し、終止符が打たれた。 2月20日(日本時間)、これまでHD DVDのみを一貫して支持してきたユニバーサル・ピクチャーズがBlu-ray Discに参入を表明、「規格がブルーレイに統一されるのは(映画会社など)娯楽産業と消費者にとって喜ばしい」とコメントした。 2月21日(日本時間)、HD DVDのみから両フォーマット支持、その後、再度HD DVDのみを支持と紆余曲折のあったパラマウント映画がBlu-ray Discに再参入を表明、「1つの規格に移ることは喜ばしい」とコメントする。これによりハリウッド大手6映画会社全てがBlu-ray Discへと集結した。 3月1日、エディオングループがHD DVDレコーダー・プレーヤーを購入した顧客に対し、購入金額との差額を払う(HD DVD機のほうが高額の場合は差額を返金)ことでBDレコーダー・プレーヤーと交換するサービスを同年3月31日まで実施。 3月19日、TSUTAYAが全国の主要都市10店舗でBDソフトレンタル開始。 3月28日、HD DVDプロモーショングループが解散。規格争いが名実ともに終結した。
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