前衛芸術家とは? わかりやすく解説

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アバンギャルド

(前衛芸術家 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/19 02:58 UTC 版)

アバンギャルド(仏:avant-garde)は「前衛」を意味し、狭義には第一次大戦後にヨーロッパでおこった抽象芸術・シュールレアリスムなどの芸術革新運動を指す[1][2]。ここから転じて、既成の概念や形式を否定して革新的な表現をめざす芸術全般を指す総称ともなった[3]。前衛芸術。

もとはフランス語の軍隊用語で、最前線に切り込む精鋭部隊を指した[1][2]。日本語の表記では「アヴァンギャルド」とも。

概要

「アバンギャルド」という軍事用語は、19世紀にまず旧来の政治的伝統を批判する政治用語としてサン=シモンらによって使われたことをきっかけに、以後、芸術活動へも転用されるようになり、とくに19世紀のフランスで活動したロートレアモンランボーら「呪われた詩人たち」を指して用いられた[4]。その後、第一大戦後のヨーロッパを覆った虚脱感の中から、とりわけ既存の芸術を〈タブラ・ラサ(白紙状態)〉へ差し戻してあらゆる物体・行為が芸術作品たりうることを主張したダダイスムがそう呼ばれたことを機に、アバンギャルドの言葉は芸術用語として定着してゆく[5]

同時期に現れた抽象芸術とシュルレアリスムがその二大潮流をつくり、さらにプルーストジェームズ・ジョイスカフカピランデッロなど実験的手法をとりいれた文学表現も拡大してアバンギャルドと呼ばれることがある[5]

第二次大戦後にはこれがさらに拡大し、ポップアートコンセプチュアル・アート、アンダーグラウンド演劇、そして実験映画まで広範な表現手法・領域がアバンギャルドないし前衛と呼ばれるようになってゆく[4]

詳細

アバンギャルドという言葉のもつ「(既存のものへの)挑戦的な姿勢」という概念は、芸術制作の一部ジャンルとして存在する。用語として「アバンギャルド」「前衛芸術」というとき、それは20世紀に起きた一連の芸術運動(アート・ムーブメント英語版)のことを指す。イタリアのライター、レナート・ポッチェリは1962年の著書で、ヴァンガード文化がボヘミア文化の多様性や、サブジャンルである可能性を指摘した。

「avant-garde」と「contemporary~」との相違点
「contemporary~ コンテンポラリー~(現代~)」が類語として用いられることもあるが、「contemporary」は単に「現代(同時代)」でしかなく、基本的に「時」や「時代」で線引きしているにすぎず、場合によっては、既存の価値観やシステムにすっかり屈服してしまった、なんら革新性の無いものですら含みうる。 よって、「avant-garde」(既存のものに挑戦する姿勢を指す概念)と「contemporary」とは、根本の概念が異なっている。
たとえばある時代の映画の現場全体が「前衛」の気質に満ちていると、その時代の「現代映画」は「前衛美術」でありうるが、その時代の映画の現場が反骨精神を欠いていたら(たとえば、その時代の映画が既存の権益に迎合して、たとえば営利主義に満ちていたりしたら)その時代の「現代映画」は「前衛映画」とは異なっている、という関係になる。1960年代は「現代~」という表現を「前衛~」と同義語として用いることができたが、それは1960年代が「たまたま」前衛芸術の全盛期だったからである。類義語と見なせたのは、過去の話である。その後、世の風潮が、既存の価値観に迎合的になってしまった近年では「現代~」と「前衛~」は、しばしば、指す活動内容や、指す芸術家のリストが異なっている。

前衛美術

前衛音楽

カールハインツ・シュトックハウゼンヤニス・クセナキスピエール・ブーレーズマウリシオ・カーゲルアルフレート・シュニトケルイジ・ノーノリゲティ・ジェルジュジョン・ケージオーネット・コールマンアルバート・アイラーデレク・ベイリームーンドッグなどの作曲家による楽曲が知られる。

実験音楽」参照 

前衛演劇

アンチテアトルオフ・ブロードウェイオフ・オフ・ブロードウェイen:The Living Theatreなど)、アングラ演劇など。

アングラ演劇の代表は、1960年代の激動の時代を反映した寺山修司天井桟敷劇団黒テントなど。現在でも月触歌劇団や演劇実験室◎万有引力J・A・シーザーらが、寺山のスピリットを引き継いだ演劇を発表している。

前衛舞踏

大野一雄土方巽伊藤ミカらが活躍した。暗黒舞踏も、この分野に含まれる。

前衛映画

実験映画 も参照

ギャスパー・ノエケネス・アンガースタン・ブラッケージジョナス・メカスなど。

前衛書道

前衛書道を参照。

前衛生け花

中川幸夫による前衛生け花が知られている。

前衛芸術の例

脚注

出典

  1. ^ a b 針生一郎「アバンギャルド」(『世界大百科事典』平凡社、2014)
  2. ^ a b 高見堅志郎「アバンギャルド」(『日本大百科全書』小学館、1994)
  3. ^ Berghaus, G.. "Avant-Garde," V. Kolocotroni  O. Taxidou eds., The Edinburgh Dictionary of Modernism, Edinburgh University Press, 2018.
  4. ^ a b "Avant-Garde." (2004). In C. Barker, The Sage Dictionary of Cultural Studies (1st ed.). Sage UK.
  5. ^ a b Gibson, A. (2003). "Avant-Garde." In R. S. Nelson; R. Shiff (Eds.), Critical Terms for Art History (2nd ed.). The University of Chicago Press.

関連項目

批判・反動




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