ビスト一族 / ビスト財団
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「機動戦士ガンダムUC」の記事における「ビスト一族 / ビスト財団」の解説
サイアム・ビスト 声 - 永井一郎 ビスト財団の創始者。物語の発端となるラプラス事件の当事者であり目撃者であり、物語を締めくくるキーパーソンでもある。冷凍睡眠を繰り返し、宇宙世紀0096年においても100歳以上の長命を保って西暦の時代から生き続けている。停滞する世界の変革のため、長らく封印されてきた「箱」の解放を目論む。父はサイアムの少年時代、ゲリラ活動に加わって投獄され、獄中死した。その父は寡黙で実直な男だったとされる。母は病気がちだったとされ、妹にシャーラ(名前の登場と「継ぎのある服を着ていた」との記述がある)がいるが、自身の生存がラプラス事件を引き起こした黒幕に露呈し、家族らに害が及ぶ危険性をサイアムは考え、少年時代に決別したため(ラプラス事件後、サイアムは二度と母と妹に会うことはなかった)、その詳細は不明。 西暦の末期に中近東に位置する小国で羊飼いの家柄に生まれたサイアムは、地球連邦政府の宇宙移民政策による社会の歪みと貧困から報酬目当てでテロリストとなり、宇宙世紀元年のラプラス事件のテロに関わる。ラプラスを爆破後、作業艇に仕掛けられていた時限爆弾で口封じのために仲間達と共に爆殺されそうになるものの、たまたま船外作業で作業艇から出ていたことから一命を取り留め、その際に粉みじんになったラプラスの残骸の中で億分の一以下の偶然で「ラプラスの箱」を入手する。 連邦政府の支配体制を揺るがしかねない「箱」の力は絶大であり、サイアムは地球へ帰還した後、その「箱」の力を利用してのしあがり、裏社会で頭角を現してゆく。やがてアナハイム・エレクトロニクス社と関係を持ち、役員待遇でアナハイム社内に迎えられたサイアムは、専務の娘と結婚して名門貴族ビスト家の婿養子となる。ビスト家の名を冠して創設された「ビスト財団」は、当初は宇宙への美術品輸送を始めとした社会貢献を隠れ蓑にしたマネーロンダリング機関でしかなかったが、サイアムの隠匿する「箱」の力を背景にして、宇宙世紀世界の隅々にまで影響を及ぼす強大な組織に育ってゆくことになる。その一方、ラプラス事件で暗殺されたリカルド・マーセナスの演説に対して「自分たちのような者にこそ大事なことを伝えようとしていた」という感慨を抱き、その後「箱」の内容を公開しなかったために一年戦争を止められなかったという後悔を抱えており、「箱」の条文に予言された新人類に近しいニュータイプにこそ「箱」を返却すべきだという思いを抱くようになる。 バナージから見た場合サイアムは曽祖父に当たり、若い頃の容姿も似ている。サイアムはバナージをユニコーンの相応しい乗り手と称している。 ビスト財団を守るために、宇宙世紀0051年頃、財団の乗っ取りを計画していた自身の次男を交通事故に偽装して謀殺した過去を持つ。 物語終盤、「箱」が隠匿され、サイアム自身が眠る氷室へと辿り着いたバナージとミネバに「箱」の真実と地球に生まれた瞬間から進化をつづけてきた生物の可能性、自分が見た幻覚とその意味、100年近くの間、胸にしていた思いを伝えきり生命維持装置を停止させ、自らその命を絶つ。そして、「箱」の真実はミネバによって、地球の人々に伝えられる。 アニメ版において、サイアム・ビストの声優に永井一郎を起用することにより、『1st』のナレーションがサイアム・ビストによるモノローグであるという意味を持たせている。なお、永井はepisode 7公開前の2014年1月27日に死去したため、本作品は遺作の一つとなった。 カーディアス・ビスト 声 - 菅生隆之 サイアムの孫にしてビスト財団の二代目当主。60歳。家の呪縛に囚われる事を嫌い、父の死後家を飛び出し素性を隠し地球連邦宇宙軍に入隊して、一時期は戦闘機のパイロットになったこともある。その一族の中において異色な経歴と鋭敏な頭脳をサイアムに見込まれ、二代目当主となる。バナージの実父であり、息子が高いニュータイプの素質を秘めていると知るや、それを開花させゆくゆくは自分の後継者として育てるつもりだったが、愛人であるバナージの母、アンナ・リンクスは息子が財団の呪縛に囚われるのを恐れ、バナージを連れ彼の元を去る。その後、所在は常に把握していたものの、二人を政争に巻き込ませまいとする配慮と彼女に対する最大限の誠意として、自ら会うことを禁じていた。父のことを尋ねて母を悲しませまいと考えた子供時代のバナージは、父との記憶を無意識の底に封じ込め、まだ幼かったこともあってカーディアスの顔も名前も完全に忘れ去ってしまう。 父を謀殺したのが祖父であることに気づき当初は憎みもしたが、父が当主の器ではないことに気づいていたことと、父の死後急速に枯れた祖父の姿を見たため、後継者として完全に任せてもらえなかった父と違い祖父に認めてもらう事を目標に邁進し続けた結果、祖父の意向に従う二代目当主としてその辣腕をふるう。そして祖父の意思を汲み「箱」を袖付きに引き渡そうとするが、財団の優位性を失う事を恐れた妹マーサの介入により失敗し、彼女の命を受けた実子アルベルトに銃撃される。死に際、偶然再会したバナージに希望を見出し、破壊しようとしていたユニコーンガンダムを彼に託す。自らが父親であることを告白した後、爆炎に呑まれてその生涯を閉じる。 アルベルト・ビスト 声 - 高木渉 カーディアスと正妻エレンの間に生まれた息子で、バナージの異母兄。33歳。アナハイム・エレクトロニクス社の重役を務めている。マーサの命により、「袖付き」への「箱」譲渡阻止を企み、エコーズと共にネェル・アーガマに乗り込んでくる。 小説版ではユニコーンガンダムに並々ならぬ執着を見せるだけでなく、ネェル・アーガマで出会ったバナージが異母弟であることを知った後は、機体を託されたバナージに対して激しい嫉妬から殺意に近い憎悪を向けるようになる。マーサと近親相姦を結ぶ関係でもあり、彼女の忠実な犬として他者に対しては財団の威光を笠に着る小心者として描かれる。しかし次第に父殺しの罪悪感に苛まれていき、その救いをガエルの襲撃から偶然助けられたマリーダに求めるようになる。彼女に自分をマスターとする「再調整」を施し、バンシィのパイロットとしてバナージごとユニコーンガンダムを葬り去ろうとするが失敗。彼女が自分の元を去ると、独断でリディをバンシィの新たなパイロット(マーサには別人の資料を渡している)に仕立て上げ、自らもマリーダと再会するためにバンシィの援護を名目に周囲の反対を押し切り率先して戦場に向かう。この頃には数度の戦闘を体験し、胆力と図太さが鍛えられたのか、表面上はマーサに従いながらも、凋落の陰りを見せ始めた彼女を観察するなど冷静な対処が出来るようになる。そして「箱」にも以前ほどの熱意を向けず、むしろマリーダ優先で行動するようになる。物語終盤にはマリーダの保護に奔走するが、時既に遅くマリーダはリディの手で殺されてしまう。その直後、光になったマリーダからは「自分を愛してくれた人」として、彼女の導きでマーサと決別し、バナージに「自分にしかできないやり方で」協力するようになる。 アニメ版では人物像が異なり、鼻持ちならず地に足の着かない小心者ながらも、序盤からネェル・アーガマクルーの疲労を気遣う良心的な面を見せる。また、ユニコーンガンダムへの執着は薄く、「鍵」の役目を果たせなくさせるために電装部品の破壊を進言している。バナージに対する感情も、ユニコーンのパイロットだったと判明しても他のクルーと共に驚くだけで、その後もバナージを「彼」と呼んで事務的に対応するなど、そもそも「弟」や「ビスト一族」として意識していない様子が描かれる。更にマリーダに命を助けられたのを境に人間的な成長が見られ、リディがバンシィ・ノルン受領の際に「バナージを殺すことになる」と告げると苦渋の表情を覗かせるようになっている。マーサとの関係も小説版のような歪んだ肉体関係のような設定は無く、叔母と手を結んだ理由としては高圧的かつ傲慢な父親との意見の相違があった旨の発言をしている。アニメ版後半では宇宙に戻る事こそないものの、多くは原作と同じ行動をとる。 『獅子の帰還』では、リディに友人として再会。メガラニカの所在情報を伝える。そしてまた、マリーダの夢をときどき見ており「彼女の死に際に見せてくれたものに比べれば、血筋のこだわりなど些細なものだ」と語るなど、更なる人間的成長がうかがわれる。 マーサ・ビスト・カーバイン 声 - 塩田朋子 サイアムのもう1人の孫であり、カーディアスの妹。アルベルトとバナージの叔母にあたる。55歳。アナハイム・エレクトロニクスの創業者一族であるカーバイン家に嫁ぐ。小説中では社長夫人とも呼ばれている。妖艶な美貌を持ち、政治家的な気質と才覚を多分に擁した人物であり、こと政治的手腕においては兄をも凌ぐ女傑。アナハイムの拠点である月に腰を据えていることから、「月の女帝」と呼ばれるほどの権勢を奮っている。 アニメ版では利用できる物はとことん利用する現実主義者として性格面や野心が整理されている。機動戦士ガンダムUC 「ラプラスの箱」については、財団とアナハイムと連邦の関係の現状維持を望んでおり、「箱」の開放阻止に奔走する。インダストリアル7の襲撃も彼女の差し金であり、アルベルトをネェル・アーガマへ送り込んだ黒幕。 かつてサイアムに父親が謀殺されたことに衝撃を受け、以後「男社会」に対して激しい憎悪を抱くようになる。だがその行動は過激で、インダストリアル7への武力介入を始め、「再調整」されたマリーダ(女)がジオン残党(男)を殺していく様をミネバに見せつけ、その上で生物としての女性上位の理論を嬉々として彼女に語る。甥であるアルベルトと近親相姦的関係をもつなど破滅的な行動を取ることもある。自分たち女が主導する世界に社会を変革しようと、自分と同じ強く気品ある女性であるミネバに共闘を持ちかけたこともある。だがそのミネバからは、彼女の気質は男そのものと拒絶される。 物語終盤、ネェル・アーガマ部隊への妨害やバンシィによる実力行使を行い「箱」の奪取を目論むがバナージやその仲間たちの奮戦により失敗。最終手段としてメガラニカを「グリプス2」で消滅させて「箱」の流出を妨害しようとするも、その場に居合わせたロンド・ベル司令ブライト・ノアにより身柄を拘束される。 機動戦士ガンダムNT U.C.0096の『ラプラス事変』を拡大させた責任を問われて、連邦政府によって幽閉状態にあったマーサだが、態度は以前とは変わらず堂々と自信に満ち溢れていた。『報告書-U.C.0097-』によれば、マーサはバンシィとフェネクスのテストにAE社側として立ち会っていた一人であり、『不死鳥狩り』作戦を進めるにあたっては、彼女の協力・情報提供は欠かせないとされている。AE社、ビスト財団、連邦軍もマーサとは距離を置いてある状況であるから、ルオ商会としては情報提供の代わりに彼女の名誉を回復するのも一つの手段であると書かれている。 ガエル・チャン 声 - 青山穣 カーディアスの腹心の部下。元連邦軍人で、ボディガードも務める屈強な男。カーディアスの死後はその仇であるマーサやアルベルトへの報復の為にガランシェール隊と共闘するが失敗、負傷してネェル・アーガマに収容される。その後、カーディアスの息子のバナージを見出したことからネェル・アーガマに協力することになる。 物語の終盤、ビスト邸からユニコーンガンダムに移動するバナージを襲撃してきたフル・フロンタルのシナンジュからバナージを護る為に奮戦するが、シナンジュのビームライフルから発射されたビームの直撃を受けて死亡。 アニメ版ではガランシェール隊と共闘せず、サイアムを保護しながらメガラニカで事態を静観しており、バナージらが再度メガラニカに現れた際にサイアムとともに箱の担い手として迎える。メガラニカを襲撃してきたフロンタルのネオ・ジオングから生身のバナージを守るためにシルヴァ・バレトを駆って奮戦するも全く歯が立たず、撃墜されようとした時、バナージの呼び出したユニコーンガンダムの援護により命を救われ、そのユニコーンの後ろ姿に自身のかつての主の姿を重ねる。 エレン アルベルトの母。 ジュスト コロニー公社副総裁。マーサ・ビスト・カーバインの叔父。
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