小麦粉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/18 05:28 UTC 版)
栄養の特徴
成分の7、8割をデンプンが占め、タンパク質も約1割含んでいる。主なタンパク質はグリアジンとグルテニンで、これらは水を吸収すると、粘りのあるグルテンとなる。このグルテンが独特の料理を生み出し、様々な食品に生まれ変わる。このグルテンのみを取り出したものが、麩(ふ)である。
他の穀物と同様、小麦タンパクもヒトに不可欠な必須アミノ酸のいくつかが欠如もしくは不足しているため、小麦だけをタンパク源にするとさまざまな健康障害を引き起こす。それらは不足しているアミノ酸を別の食品から摂取することで解消できる。主要な穀物源とする地域は世界各地にあるが、小麦と豆の様に伝統的な組み合わせがあり、健康障害を回避するための料理法や食材がある。
加工と精製
全粒から果皮や胚芽の部分がふすまとして取り除かれ、胚乳の部分のみを挽いたもので、全粒100kgからはおおよそ72 - 75kgほどが得られる。胚乳部分のみを残し果皮や胚芽を完全に取り除くと真っ白で純粋なものが取れるが、製パンに使用する場合、風味を与えるために、必ずしもふすま部分を完全に取り除いたものが良いとも限らない。素朴な味わいや風味を出すために、小麦粒をふすまごと丸々挽いた全粒粉も用いられる[10]。
性質
カロテノイド色素により淡いクリーム色をしている[9]。粒子は直径150µm以下と細かく、粉塵爆発のおそれもあるため、東京都など一部の自治体では指定可燃物に規定している[11]。ほかの粉末と混ざりやすく、粉末調味料などを混ぜてプレミックスとしたり、ビタミンなどの添加に応用される。表面に水気を帯びたものに付着しやすく、ムニエルなどの衣や、麺類の打ち粉として使われる。匂いを吸着しやすく、香り付けの加工ができる反面、保管の仕方によっては異臭が付くことがある[9]。
種類
含有するタンパク質(主にグリアジン、グルテニン)の割合と、形成されるグルテンの性質によって薄力粉、中力粉、強力粉に分類される。タンパク質分を除いた残渣を精製したものは浮き粉と呼ぶ。澱粉だけでできたちょうど片栗粉のようなものになる。
グルテンの量は品種の他に、開花期・収穫期に雨が降るかどうかによっても変動する。この時期に雨が多いと小麦はグルテンを形成しにくくなるためである。
強力粉
強力粉(きょうりきこ)はタンパク質の割合が12%以上のもので、パン・中華麺・学校給食で出てくるソフト麺等に使われるほか、国産の一部乾燥パスタは粗挽きの強力粉を用いて作られる。主にアメリカ・カナダ産の硬質小麦(パンコムギ)を使用している。焼くと硬い仕上がりになるので洋菓子には向かない。英語圈の分類ではbread flourがこれに近い。
中力粉
中力粉(ちゅうりきこ)はタンパク質の割合が9%前後のものでたこ焼きなどに用いる。主にオーストラリア・国内産の中間質小麦を使用している。強力粉と薄力粉を混ぜれば性質は中間になるため、中力粉の代用とすることができるが、本来の中力粉とは加工特性がやや異なるため工夫を要する。
薄力粉
薄力粉(はくりきこ)はタンパク質の割合が8.5%以下のものでケーキなどの菓子類・天ぷらに使われる。主にアメリカ産の軟質小麦を使用している。タンパク質の含有量を抑えれば抑えるほど繊細な仕上がりになるので、「製菓用薄力粉」や「スーパーバイオレット」などの商品名で売られている、タンパク質の含有量をさらに減らした商品も存在する(「超薄力粉」とも呼ばれるが、そのような商品名では売られていない)。また、乾燥パスタ原料からの連想で誤解されることがあるが、卵を用いて生パスタを作る場合に使われるのは薄力粉である。英語圏の表記ではcake flourがこれに近い。
浮き粉
浮き粉(うきこ)は、生地から麩の原料としても使われるグルテンを分離した残りの澱粉分をいう。グルテンを分離するには、こねた生地を水につけて洗い流すのだが、この水に浸かっている状態では沈粉(じんこ)という。主に明石焼きや和菓子、香港の透明な皮の海老餃子などの原料として使われている。
全粒粉
「ぜんりゅうこ、ぜんりゅうふん」。小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたものである。精製品に比べて食物繊維、ミネラル、ビタミンが豊富。主にパンやビスケット、シリアル食品の材料として用いられる。
グラハム粉
グラハム粉(グラハムこ)とは、全粒粉の一種。小麦を胚乳と表皮および胚芽に分けてから、胚乳は普通品と同じ細かさに挽き、表皮と胚芽は粗挽きにして両方を混ぜ合わせたもの。全粒粉よりもざらざらしている。
セモリナ粉
セモリナ粉(セモリナこ)とは、通常品より粒子の粗い(210µmの布ふるいに残留する)粉をいう[12]。英語のセモリナ (Semolina) は、イタリア語のSemolaから由来し、これはラテン語のSimila(穀粉)に由来する。クスクスなどを作るために使用されるデュラム粉から精製されており、蛋白質の量が強力粉よりも多く、グルテンが少ない。乾燥パスタ、シリアル、プリンなどに使用されている。
- ^ [どれ?]米国農務省食品成分データベース (英語)
- ^ #メリケン粉とうどん粉の違い参照
- ^ a b c d e f 吉田宗弘. “うどん類の歴史と分類”. 関西大学. 2020年11月8日閲覧。
- ^ 「小麦粉の歴史・文化、小麦粉百科」日清製粉グループ、閲覧2017年5月30日
- ^ 「粉砕部分に着目した製粉機の分類、製粉の歴史」木下製粉株式会社、閲覧2017年5月30日
- ^ 「学校給食の歴史、学校給食について」全国学校給食会連合会。閲覧2017年5月30日
- ^ 「「コメよりパン」になった日本人の食卓」ニッポンドットコム。閲覧2017年5月30日
- ^ 豊田実「最近の麺事情について」『調理科学』24巻 1号 1991年 p.36-42, doi:10.11402/cookeryscience1968.24.1_36
- ^ a b c 長尾精一『粉屋さんが書いた小麦粉の本』三水社、1994年。ISBN 4-915607-68-2。
- ^ ジェフリー・ハメルマン 2009, pp. 36-38.
- ^ 東京都火災予防条例
- ^ 長尾精一編 『小麦の科学』朝倉書店、1995年、p.62。ISBN 978-4-254-43038-7。
- ^ 「小麦・小麦粉の商品知識、小麦粉のおはなし」製粉振興会。閲覧2017年5月30日
- ^ 「小麦粉のはなし、小麦と小麦粉のはなし」木下製粉株式会社。閲覧2017年5月30日
- ^ 「プレミックスとは?」日本プレミックス協会。閲覧2017年5月30日
- ^ 長尾精一編 『小麦の科学』 朝倉書店、1995年、pp.187-188、ISBN 978-4-254-43038-7。
- ^ 『広辞苑 第五版』岩波書店、1998年。ISBN 978-4000801119。
- ^ 「第10回 メリケン粉、洋菓子の世界」日本洋菓子協会連合会。閲覧2017年5月30日
- ^ a b c 藤原 逸樹. “粘土遊びの指導法に関する一考察”. 安田女子大学. 2019年11月11日閲覧。
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