アクセント アクセントの例

アクセント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/27 07:10 UTC 版)

アクセントの例

以下にアクセントの例を数例挙げる。各言語の具体的なアクセントについてはそれぞれの言語の項目を参照。

日本語のアクセント

日本語のアクセントは高低の2段階でその変化は音節の境目で生じる[3]。高い音から低い音へ移る部分をアクセントの滝、音が低くなる直前の高い音節の部分をアクセント核、言葉ごとに定められたアクセントの形式をアクセントの型という[3]。アクセントの型は高い音から低い音へ移る部分(アクセントの滝)の有無により起伏式と平板式に分けられる[3]。起伏式にはアクセント核の配置により、頭高型、中高型、尾高型がある[3]

方言による違い

日本語のアクセントは方言差が激しいが、多くの方言は高低アクセントであり、音の下がり目の位置によってアクセントが区別される。近畿地方四国地方のアクセントでは、これに加えて語頭の高低を区別する。早田輝洋などは、近畿・四国などのアクセントは、高低アクセントと単語声調の組み合わせであるとしている。また、東北地方南部・関東地方北東部のように、アクセントの区別を持たない方言もある。

共通語のアクセント

アクセント型

日本語の共通語は、音の高さの急激な下降があるかないか、あるとすれば位置がどこかが決まっている。下降を /]/ 、下降のないことを末尾の /=/ で示すと、次の表のようになる。

1拍語 2拍語 3拍語 4拍語
(0)型 柄 /エ=/ 端 /ハシ=/ 昔 /ムカシ=/ 水泳 /スイエー=/
(1)型 絵 /エ]/ 箸 /ハ]シ/ 朝日 /ア]サヒ/ 富士山 /フ]ジサン/
(2)型 橋 /ハシ]/ そば屋 /ソバ]ヤ/ 色紙 /イロ]ガミ/
(3)型 男 /オトコ]/ 雷 /カミナ]リ/
(4)型 妹 /イモート]/

下降の直前の拍が下降を担っているアクセント核にあたり、アクセント核のない型を(0)型と表現し、アクセント核のある型はアクセント核を前から数えた位置によって(1)型、(2)型、...(n)型と表現する。アクセント核の位置を後ろから数えた位置によって-(1)型、-(2)型、...-(n)型と表現することもできる。

アクセント核のない型を無核型(むかくがた)、アクセント核のある型を有核型(ゆうかくがた)と言う。無核型のことを平板型(へいばんがた)、有核型のことを起伏型(きふくがた)とも言う。有核型のうち、(1)型を頭高型(あたまだかがた)、-(1)型を尾高型(おだかがた)、それ以外を中高型(なかだかがた)とも言う。

一語文では(0)型と-(1)型はほとんど区別がつかないが、後にガ、ニ、オなどの助詞などを付けてみるとその区別は明瞭になる。たとえば、鼻 /ハナ=/、花 /ハナ]/ は区別がつかないが、鼻 /ハナガ=/、花 /ハナ]ガ/ は明瞭に区別できる。

複合語

複合名詞は全体で1つのアクセント単位となる。アクセント核は後部要素の頭の拍や、前部要素の最後の拍に置かれることが多い。例えば「アクセント辞典」を例にすると、

  • /ア]クセント/ + /ジテン=/ → /アクセントジ]テン/

「あかとんぼ」については、古くは /ア]カトンボ/ が普通だったが、現代ではとして /アカト]ンボ/ と発音するのが普通になっている。これについては童謡『赤とんぼ』も参照。

多くの場合、複合動詞は次のように前部要素が有核型であれば無核型に、前部要素が無核型であれば有核型になる。

  • /ミ]ル/ + /ナオ]ス/ → /ミナオス=/
  • /キル=/ + /ナオ]ス/ → /キナオ]ス/

これは山田美妙が『日本大辞書』で指摘したことから「美妙の法則」と呼ばれる。ただし、現代ではどちらも有核型で発音されることが多い。

動詞・形容詞の活用

動詞には無核型のものと有核型のものがあり、活用形もそれによって異なる。一例を示すと次のとおりである。

終止連体形 未然形+ナイ 未然形+ウ 連用形+タ 連用形+マス 仮定形 命令形
無核型(聞く) /キク=/ /キカナイ=/ /キコ]ー/ /キータ=/ /キキマ]ス/ /キケ]バ/ /キケ=/
有核型(書く) /カ]ク/ /カカ]ナイ/ /カコ]ー/ /カ]イタ/ /カキマ]ス/ /カ]ケバ/ /カ]ケ/

形容詞も同様である。

終止連体形 連用形 連用形+タ 仮定形
無核型(赤い) /アカイ=/ /アカク=/ /アカ]カッタ/ /アカ]ケレバ/
有核型(青い) /アオ]イ/ /ア]オク/ /ア]オカッタ/ /ア]オケレバ/
具体音調

実際には、この下降に次のような様々な要因(イントネーション)が加わって、具体的な音調ができる。

  • 句音調: ひとまとまりに発音されるまとまりの最初の1拍目と2拍目の間で上昇する((1)型の場合はその前)。
  • プロミネンス: 焦点となる語の最初の1拍目と2拍目の間で上昇する((1)型の場合はその前)。
  • 文末イントネーション: 疑問文であれば文末で上昇する。
  • 自然下降: の中の空気が減るに従い、文全体が自然にゆるやかに下降してゆく。

句音調の上昇を [ で表示した具体音調の一例を以下に示す。自然下降等は捨象してある。(0)型と-(1)型の違いが明瞭になるように、仮にダを付けてある。語例は前出のアクセント型一覧と同じである。

1拍語 2拍語 3拍語 4拍語
(0)型 柄だ エ[ダ 端だ ハ[シダ 昔だ ム[カシダ 水泳だ ス[イエーダ
(1)型 絵だ [エ]ダ 箸だ [ハ]シダ 朝日だ [ア]サヒダ 富士山だ [フ]ジサンダ
(2)型 橋だ ハ[シ]ダ そば屋だ ソ[バ]ヤダ 色紙だ イ[ロ]ガミダ
(3)型 男だ オ[トコ]ダ 雷だ カ[ミナ]リダ
(4)型 妹だ イ[モート]ダ

リトアニア語のアクセント

リトアニア語の標準語においては単語ごとに短・下降・上昇の三種のアクセントのうちいずれかが設定されている。また名詞や形容詞は曲用するが、曲用の際にアクセントの位置や種類も変化する特徴が見られる。この変化の規則性を捉えるために、4種のアクセント・タイプ(kirčiuotė (lt)という概念が存在している。


  1. ^ 世界大百科事典(NDL経由) & 00577092.
  2. ^ 英学会 1923.
  3. ^ a b c d e f g 長野正『日本語の音声表現』玉川大学出版部、1995年、108頁
  4. ^ 強弱アクセント』 - コトバンク
  5. ^ 強さアクセント』 - コトバンク
  6. ^ 長野正『日本語の音声表現』玉川大学出版部、1995年、109頁
  7. ^ 長野正『日本語の音声表現』玉川大学出版部、1995年、110頁
  8. ^ 長野正『日本語の音声表現』玉川大学出版部、1995年、109-110頁


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