疎外とは? わかりやすく解説

そ‐がい〔‐グワイ〕【疎外】

読み方:そがい

[名](スル)

嫌ってのけものにすること。「新参者を—する」

人間がみずから作り出した事物社会関係思想などが、逆に人間支配するような疎遠な力として現出すること。また、その中での、人間が本来あるべき自己の本質喪失した非人間的状態。

自己疎外(じこそがい)

「疎外」に似た言葉

そがい 【疎外】

(Entfremdungドイツ古くから日常語として用いられ、またラテン語のalienatio(譲渡)の訳語ともされ神学上の用語にもなったが、フィヒテ哲学的に用いヘーゲル術語化しマルクス普及させた。今日では「人間疎外」など一般語化している。ヘーゲルは、自己否定して自己にとってよそよそしい他者になること(自己疎外の意味とし、初期マルクスは、資本主義的生産の下で、人間関係利害打算化し人間性喪失していることにいった。

疎外

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/30 14:33 UTC 版)

疎外[1](そがい、: Entfremdung: alienation)とは、哲学経済学用語としては人間が作った物(機械商品貨幣制度など)が人間自身から分離し、逆に人間を支配するような疎遠な力として現れること。またそれによって、人間があるべき自己本質を失う状態をいう。

概要

ラテン語のalienato(他人のものにする)に由来する疎外概念は、経済、社会、歴史的には、客体として存在するようになったものを操作する力を主体が失っている状態のことを指す。たとえば、あるものが私とは無関係であるという場合、そのあるものに対して私は無力なものとして疎外(ないがしろに)されていることになる[2]。この疎外を克服することによって、人間はその本来の自己を取り戻し、その可能性を自己実現できるものとされる[3]

思想史

マルクスは、この疎外Entfremdungという用語をヘーゲルの『精神現象学』(1807年)から継承し、またフォイエルバッハの、神が人間の善性を客体化した発明である限り、それだけ人間は貧しくなる(「キリスト教の本質」)という思想も取り入れて、経済学用語に鋳直した。

マルクスによる概念

有機的身体と非有機的身体に分かれ、自然に抗う「自然疎外」が起こることで生命が始まったように、近代的・私的所有制度が普及し、資本主義市場経済が形成されるにつれ、資本土地労働力などに転化する。それに対応し本源的共同体も分離し、人間は資本家地主賃金労働者などに転化する。同時に人間の主体的活動であり、社会生活の普遍的基礎をなす労働過程とその生産物は、利潤追求の手段となり、人間が労働力という商品となって資本のもとに従属し、ものを作る主人であることが失われていく。また機械制大工業の発達は、労働をますます単純労働の繰り返しに変え、機械に支配されることによって機械を操縦する主人であることが失われ、疎外感を増大させる。こうしたなかで、賃金労働者は自分自身を疎外(支配)するもの(資本)を再生産する。資本はますます労働者、人間にとって外的・敵対的なもの、「人間疎外」となっていく。

マルクスは「疎外された労働」が再生産されるこのような社会関係を『経済学・哲学草稿』(1844年)で分析し、『経済学批判要綱』(1857年 - 1858年)や『資本論』(1867年1885年1894年)に継承した。

スターリン主義による歪曲

スターリン主義者は、ソ連において社会主義社会が実現したと宣言したにもかかわらず、疎外が存在する現実を否定するために、疎外という概念そのものを、マルクスの青年期に特有のものとして事実上否定せざるをえなかった。スターリン主義者の理論では、疎外とは搾取のことであるとして、疎外概念は葬り去られた。

サルトルによる概念

サルトルは、自由な対自として実存する人間は「自由の刑に処せられている(condamné à être libre)」という言葉を残したが、については、これが実存の永遠の他有化であるという意味で、これを回復不能の疎外であるとした。

注釈

  1. ^ ドイツ語であるEntfremdungの訳語としての疎外概念は、他人(fremd)のものにするという意味を持つ。日本語「疎外」には、「うとんじること」(広辞苑より)あるいは「仲間外れにすること」という意味があり、そちらが本来の意味である。経済学や哲学の学者や学生でもない限り、日常的には主にそちらの意味で用いている。ただし、本項は辞書ではなく百科辞典であることを考慮し、哲学用語や経済学用語の「疎外」について解説する。
  2. ^ フランスの哲学者ルソーは、「譲渡するaliener」ことを、「私と無縁なものetrangerとなる」ことだとしている。
  3. ^ 自己実現のプロセスとして労働を捉えたヘーゲルを批判的に受け継いだマルクスは、資本主義社会における疎外された労働を問題とした。

関連項目

外部リンク


疎外

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/15 01:33 UTC 版)

陳嘉庚」の記事における「疎外」の解説

戦後シンガポール戻った陳は、国民政府民主化改革要求し1946年6月16日クアラルンプール開催されたNCRGAの祖国奉仕団の帰国歓迎会で、国民政府処遇非難した引揚者支持し、伍伯勝総領事対立。また1948年1月には『南洋商報』の年頭所感の中で国民政府民主改革提唱したこうした陳の主張シンガポール華人社会から警戒され、陳は華人社会保守勢力から疎外されるようになった1946年12月14日マラヤ連合構想に応じて華人参政権主張するため創立されマラヤ統一行動会議(PMCJA)はマラヤ民主同盟MDU)の提案受けて陳と光前をその名誉会員推薦したが、中華商会連合会が陳ら革新勢力との合作拒否し1947年初に陳は推薦辞退した1948年6月からマラヤ共産党による反英ゲリラ活動開始され、英当局武力鎮圧強化すると、陳は非合法なゲリラ活動停止呼びかけたが、陳の説得応じ華人少なくなっていたとされる

※この「疎外」の解説は、「陳嘉庚」の解説の一部です。
「疎外」を含む「陳嘉庚」の記事については、「陳嘉庚」の概要を参照ください。

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疎外

出典:『Wiktionary』 (2021/08/13 03:59 UTC 版)

名詞

そがい

  1. うとんじること。仲間外れにすること。
  2. 哲学:ドイツ語哲学用語Entfremdungの訳語)あるものから生じたものが、そこから離れて生じた元と対立関係生ずること。
    {* 元はヘーゲルの用語であるが、カール・マルクスにより展開された、労働者生み出した経済価値が、労働者人間性喪失させることとなるという用法一般的になり、その後も、人間性の疎外という主題多く論ぜられる。}

対義語

動詞

活用

サ行変格活用
疎外-する

翻訳

語義2


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