南洋とは? わかりやすく解説

なん‐よう〔‐ヤウ〕【南洋】

読み方:なんよう

日本の南方、特に太平洋赤道付近海洋とその洋上にある島々総称第二次大戦後はほとんど用いられない呼称

清末中国で、江蘇省以南沿海諸省の総称


南洋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/27 14:04 UTC 版)

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南洋(なんよう)。南の広い海の意。転じて、地理区分として用いられるようになった。

中国史における南洋概念

坤輿万国全図。原寸表示(11,726 × 5,266 ピクセル。この表示の30倍の大きさ)でないと文字は読み取れないため注意

宮崎市定によれば、当初、南方の海を指す語として用いられた「南海」は単に海そのものを指すに過ぎなかったが、やがて「南海の浜」、つまり(中原から見た大陸南端に相当する)南シナ海に面した海岸部を指す語となった[1]。秦が設置した南海郡はこの語法の典型である[2]

その後、宋代の嶺外代答中国語版の記述などによれば、海洋進出によって「広大無辺なる大海を発見して之に大洋海なる名称を附」すようになり、「之と共に航海可能なる大海を呼ぶに洋を以てすることが流行し」ていく[3]。元代の島夷誌略中国語版では南海を(フィリピンなどを指す)「東洋」と(インドなどを指す)「西洋」に区分している[4]

明代に入ると、ヨーロッパ人の来航によって地理知識は更新され、マテオ・リッチ坤輿万国全図では、「大西洋」「小西洋(西インド洋)」「小東洋(北西太平洋)」「大東洋(東太平洋)」「西南海(南インド洋)」「東南海(南太平洋)」「南海(アラフラ海?)」などが記載されている。

さらに時代が下り、清代の陳倫炯中国語版の海国見聞録では先述の「小東洋」は「東洋」と改称され、新たに設けられた「東南洋」で台湾・フィリピン・ボルネオ方面を、同じく新設された「南洋」でインドシナ・ジャワ・スマトラ方面を指すようになった[5][6]

日本における南洋概念

南進論と「南洋」

「南洋」に進出しようという、いわゆる南進論は明治時代にすでに唱えられていたが、その対象とは内南洋であり、ほとんどの論者はその島々を「南洋」そのものと理解していた[7]。しかし第一次世界大戦への参戦によってドイツ領南洋群島(ドイツ帝国太平洋保護領)を占領し、その後のヴェルサイユ講和会議の結果として、1922年(大正11年)に日本は委任統治の形でこの地域(海域)を獲得している。

これと前後して、資本主義の発展や在外航路の充実、第一次世界大戦による世界経済の変動などがあって、「南洋」も「外南洋」を強く視野に入れた概念へと変質している[8]

たとえば1915年(大正4年)に民友社から「現代叢書」の一つとして刊行された「南洋」では、次のように定義していた[9]

広義における南洋とは,亜細亜アジア及び亜米利加アメリカに属せざる太平洋上の各嶋嶼,濠州オーストラリア新西蘭ニュージーランド蘭領東印度インドネシア裏南洋諸島の総体に対する名稱にして,狭義に於ける南洋とは,濠州,新西蘭諸島を除きたる爾余の諸島を云ふ。今日普通謂ふ所の南洋とは,主として後者を指すものなれども,本書は濠州及び新西蘭諸島をも含み,即ち広義に於ける南洋を詳述したるものなり[注 1]

「裏南洋」とは内南洋に相当する語であり、対義語は表南洋(外南洋)となる[10]。この時点で明治期よりも「南洋」の範囲は大幅に拡大している。

一覧

脚注

注釈

  1. ^ 原文より、ルビおよび強調を補った。

出典

  1. ^ 宮崎市定 1942, p. 199.
  2. ^ 宮崎市定 1942, p. 200.
  3. ^ 宮崎市定 1942, p. 204原文の旧字は改めた。
  4. ^ 宮崎市定 1942, p. 205.
  5. ^ 宮崎市定 1942, p. 216.
  6. ^ 陳倫炯 1730, 「東南洋記」および「南洋記」.
  7. ^ 矢野暢 1978, p. 7.
  8. ^ 矢野暢 1978, p. 13-14.
  9. ^ 矢野暢 1978, p. 14.
  10. ^ 南洋とは - コトバンク”. 2020年11月25日閲覧。

参考文献


南洋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/22 19:21 UTC 版)

多元王朝説」の記事における「南洋」の解説

高天野原パラオであった。その根拠丑寅日本記引用されている天皇記よる。

※この「南洋」の解説は、「多元王朝説」の解説の一部です。
「南洋」を含む「多元王朝説」の記事については、「多元王朝説」の概要を参照ください。

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