極楽浄土
極楽浄土とは、極楽浄土の意味
極楽浄土(ごくらくじょうど)は、一切の苦しみのない安楽の世界のことである。もともとは仏教における、阿弥陀仏(あみだぶつ)が坐すとされる西方世界の呼び名。単に「極楽」ともいう。西方浄土ともいう。極楽浄土の語の由来・語源
極楽浄土の「極楽」は、梵語(サンスクリット語)で「幸福のあるところ」を意味する「スカーバティー(sukhavati)」の漢訳語とされる。「浄土」に直接に対応する梵語は見出されておらず、「仏国土」を「清浄な国土」と表現したことによって生まれた言葉であると解釈されている。「浄土」には種類がある。代表的な浄土世界が、阿弥陀如来の坐す西方極楽浄土と、薬師如来の坐す東方浄瑠璃浄土である。「極楽浄土」は、阿弥陀如来の坐す西方浄土のことである。阿弥陀仏を信仰する浄土思想が広く一般に浸透したことで、単に「浄土」といえば西方極楽浄土を指すようになった。
極楽浄土の語の使い方(用法)、例文
「極楽」および「極楽浄土」は、本来は仏教的理想郷を指す概念であるが、俗な文脈においては「最高に安楽な(居心地のよい)環境」「心底幸福感の味わえる場所」を指すような意味で用いられることがままある。典型的には、温泉旅館で湯に浸かったり、いわゆるエステで施術を受けたりして、ゆったり寛いでいる(リラックスしている)心地を「極楽々々」と形容するような言い方が挙げられる。これは現世を極楽に喩えた言い方といえる。比喩ではなく、仏教的な本来の「理想郷」の意味で「極楽浄土」を指す場合、これは「死後に成仏して辿り着く世界」すなわち「死後の世界」を意味することになる。
極楽浄土の類語と使い分け
極楽浄土を「死後の世界」と解釈するならば、その類語・類似表現としては、「天国」「あの世」「彼岸」「黄泉の国」などの表現が挙げられる。「天国」は「死後の世界」の他に「現世における理想的な環境」を指す語としても使える、という点においてより「極楽」に近い語といえる。現世の理想的な環境を指す表現としては「楽園」「パラダイス」「ユートピア」「桃源郷」などが挙げられる。楽園やパラダイスは、もともとは「エデンの園」のこと、つまりアダムとイブが暮らした安楽の地のことである。「ユートピア」は、空想上の理想郷のこと。「桃源郷」は、俗世間とは隔絶された理想郷のことである。
極楽浄土の英語
極楽浄土は、あえて仏教的なニュアンスを度外視するなら heaven(天国)や paradise(パラダイス)と表現すれば大抵の場面で意味が通る。仏教の用語としても Western Paradise(西方の楽園)とか the Land of Happiness(至福の世界)のような言い方で表現される場合が多い。極楽
(極楽浄土 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/19 00:07 UTC 版)
極楽(ごくらく、梵: sukhāvatī、スカーヴァティー、蔵: bde ba can、デワチェン[注釈 1])とは、大乗仏教の教義において阿弥陀仏の浄土であり[1]、「スカーヴァティー」とは「幸福のある(ところ)」の意味[1]。須呵摩提、蘇珂嚩帝などと音写され、安楽、極楽、妙楽などと訳出された。『大阿弥陀経』では須摩提[2]、『平等覚経』では須摩提[2]、須阿提[2]と音写されるが、これらはサンスクリット形ではなく俗語形とされる[2]。「極楽浄土」とも言われる。
概略
浄土教系諸宗派では、阿弥陀如来は自らの名を称える者(「南無阿弥陀仏」と称名念仏をする者)を必ず極楽浄土に迎え入れるという誓いを立てたとし、阿弥陀如来への帰依で浄土に往生し輪廻から解脱できると説く。
「天界」と「仏界の浄土」はしばしば混同されるが、仏教の教義上別の世界で仏界(浄土)の方が天界より上位に位置する。浄土教系諸宗派の教義によれば、六道輪廻で生まれ変わることのできる最上位の天人(天の人々)は清浄であるが不老不死ではなく寿命を迎えれば六道のいずれかに転生するのに対して、阿弥陀如来の教化する極楽浄土に往生した者は永遠の生命と至福が得られるという。『往生要集』では現世の人間より遥かに楽欲を受ける天人でも最後は天人五衰の苦悩を免れないと説いて、速やかに阿弥陀如来に帰依して六道輪廻から解脱し浄土に往生すべきと力説している。
上座部仏教の側からは、釈迦は現世を一切皆苦とし、欲や執着を絶って輪廻から解脱して二度と生まれ変わることなく涅槃に至る状態(「灰身滅智」の状態、または肉体のない不可知的な状態)を至高としたのであって、来世救済(浄土への往生)は説いていないと解釈している(大乗非仏説)。上座部仏教の教義では釈迦在世中のバラモン教の教義に起源をもつ「天界」の存在は想定するが、それよりも上位に位置する浄土の存在は想定しない。
極楽の住人
阿弥陀如来が法蔵菩薩であった時に立てた四十八願の一つである三十五願「女人往生願」により、女性が極楽浄土に生まれかわると男性となるとされている。ただし天女(アプサラス)はいる。『法華経』サンスクリット本の観世音菩薩普門品によると、極楽浄土では性交が行われない代わりに、蓮華の胎に子供が宿って誕生するという。
解釈の違い

親鸞の解釈
親鸞は『唯信砂文意』に「極楽無為涅槃界」を下記のように釈している。
「 | 「極楽」と申すはかの安楽浄土なり、よろづのたのしみつねにして、くるしみまじはらざるなり。かのくにをば安養といへり、曇鸞和尚は、「ほめたてまつりて安養と申す」とこそのたまへり。また『論』(浄土論)には「蓮華蔵世界」ともいへり、「無為」ともいへり。「涅槃界」といふは無明のまどひをひるがへして、無上涅槃のさとりをひらくなり。「界」はさかひといふ、さとりをひらくさかひなり。 | 」 |
つまり極楽とは、苦しみのまじらない身心共に楽な世界ということであり、悟りを開く境涯である。
日本文化における極楽
『阿弥陀経』には「其の国の衆生、衆苦有ること無く、但だ諸楽を受くるが故に極楽と名づく」という。このように語られているところから、日本人は、思いが適えられる結構な世界と考えてきた。平安時代の貴族たちは、さまざまな工夫を凝らして、死後に「極楽」に生まれることを願ってきた[3]。
脚注
注釈
- ^ 訛化して「デチェン」(bde chen、大楽)とも呼ばれる。
出典
- ^ a b 石上善應「極楽」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)、小学館。
- ^ a b c d 小澤憲珠「極楽」 - 新纂浄土宗大辞典
- ^ “極楽 | 生活の中の仏教用語 | 読むページ | 大谷大学”. www.otani.ac.jp. 大谷大学. 2019年1月12日閲覧。
関連項目
「極楽浄土」の例文・使い方・用例・文例
- 西方極楽浄土
- 極楽浄土
- 死後,極楽浄土で同じ蓮華という座の上に生まれること
- 極楽浄土の9種の階級
- 9種の階級がある極楽浄土
- 九品浄土という,九つの階級のある極楽浄土にあるという,蓮の台座
- 人が九品浄土という,九つの階級のある極楽浄土に往生すること
- 九品浄土という,極楽浄土の九つの階級のうちの最高階級
- 極楽浄土のうちの下品である浄土
- (仏教で)極楽浄土における人の階級としての九品
- 死後極楽浄土で生まれかわる
- 心から極楽浄土を願い求めること
- 阿弥陀仏が支配する極楽浄土
- 極楽浄土の諸菩薩
- この世から極楽浄土へ行くまでにある無数の仏土
- 仏教で極楽浄土に往生する人を上,中,下に3分したその最上位
- 念仏行者の臨終に,三尊が来て極楽浄土に迎えること
- 死後,極楽浄土に上品の人として生まれること
- 極楽浄土に往生した者が坐るという蓮華の座
- 極楽浄土という,死後の世界
極楽浄土と同じ種類の言葉
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