せんちゃくほんがんねんぶつしゅう〔センチヤクホングワンネンブツシフ〕【選択本願念仏集】
選択本願念仏集
読み方:センジャクホンガンネンブツシュウ(senjakuhongannenbutsushuu), センチャクホンガンネンブツシュウ(senchakuhongannenbutsushuu)
別名 選択集
選択本願念仏集
選択本願念仏集
主名称: | 選択本願念仏集 |
指定番号: | 2511 |
枝番: | 00 |
指定年月日: | 1999.06.07(平成11.06.07) |
国宝重文区分: | 重要文化財 |
部門・種別: | 書跡・典籍 |
ト書: | |
員数: | 1冊 |
時代区分: | 鎌倉 |
年代: | |
検索年代: | |
解説文: | 『選択本願念仏集』は浄土宗の開祖法然房源空(一一三三-一二一二年)の撰にかかり、九条兼実の懇請によって作ることになったものといわれている。浄土教学上の最重要な宗典で、その内容は『三部経釈』や『逆修説法』と密接に関係しており、他力本願を主張し、念仏門こそは末法の世にふさわしい法門であることを示そうとしたものである。その成立時期については異説もあるが、多くは建久九年(一一九八)三月とする。 諸本には、本書以外に源空生存中の写本で現存最古写本である京都盧山寺蔵の草稿本(重文)と奈良奥院蔵の元久二年の奥書をもつ往生院本(重文)がある。また、版本では往生院本を底本とした法然院蔵の延応版、平基親序を有する建暦版などがある。 本書の体裁は袋綴装冊子本で、表紙に新補濃緑地唐花菱繋文紗を付している。原表紙は共紙で、外題を「選擇本願念佛集」、左下に「東第十四箱」と墨書している。これは高山寺の子院方便智院経庫の箱番号であり、本書の伝来経緯を示す貴重な墨書である。見返しに朱複郭長方印「十無盡院」が捺されている。本文料紙には楮紙を用い、半葉一四行前後、一行二一字ないし二二字に書写されている。第一・二紙目のみに押界が施されている。また、第一紙右下の切り取られた部分に朱方印跡が認められる。本文は首題「選擇本願念佛集」から尾題「選択本願念佛集」まで完存し、一六章段から構成されている。各章は篇目、引文、私釈からなり、篇目と私釈は一字下げとなっている。本文は行書または草書体で草卒に書写され、まま墨仮名・校異が加えられている。これらはいずれも筆跡・墨色などにより書写当初に加えられたものと認められる。内容的には往生院本系統に属する。 朱書奥書と本文とは異筆であるが、この奥書と朱校合は同筆である。朱書で巻頭部分の「往生之業/念佛為先」の「先」を『本 艸本』と校合しているところは、校合本の系統を明らかにするうえで注目される。末尾の承元二年(一二〇八)二月の奥書によれば、「佐法印」から「暁」が本書を伝領したもので、校合には「大谷寺御留(宿カ)之艸本」を用いていることが知られる。 本書は、大型料紙を用い、書風や墨仮名などからみて鎌倉時代中期を降らない書写本として認められる。また、建暦二年(一二一二)に明恵房高弁(一一七三-一二三二年)が『選択集』への弁駁を著述した『摧邪輪』に用いた本と推測できる点でも貴重である。 この大谷本は、浄土宗の開祖源空の草本で校合した姿を伝え、高山寺伝来の鎌倉時代古写本として、日本仏教史上においてきわめて価値の高いものである。 |
選択本願念仏集
選択本願念仏集
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/03 02:23 UTC 版)
『選択本願念仏集』(せんちゃくほんがんねんぶつしゅう、せんじゃくほんがんねんぶつしゅう)は、建久9年(1198年)、関白九条兼実の要請によって、法然が撰述した2巻16章の論文。略称は『選択集』(せんちゃくしゅう、せんじゃくしゅう)である。浄土宗は「選択」を「せんちゃく」と、浄土真宗では「せんじゃく」と呼称について差異がある。「浄土三部経」の経文を引用し、それに対する善導の解釈を引き、さらに法然自身の考えを述べている。
法然真筆の冒頭文「南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為先」の書かれた草稿本は京都の廬山寺に蔵されている。
日本の浄土教において重要な意義を持つ文献の1つである。
浄土真宗の宗祖とされる親鸞は、法然の思想および著書である『選択本願念仏集』の影響を受けてこの思想を継承している。法然を生涯の師(本師)と仰いで敬慕し続けた親鸞は、法然の教義が正しいことを証明するために著したのが『顕浄土真実教行証文類』(『教行信証』)であり、言わば『選択集』の解説書である。
浄土真宗における『選択本願念仏集』
浄土真宗において『選択本願念仏集』は依拠聖典の1つとして重んじられる。また前述のとおり、呼称について浄土宗と差異が見られ、『選択本願念仏集』(せんじゃくほんがんねんぶつしゅう)、『選択集』(せんじゃくしゅう)とするのが習いである。
親鸞の主著である『顕浄土真実教行証文類』(『教行信証』)の「化身土巻」の終わりにある「後跋」と呼ばれる結びに「同年初夏中旬第四日 選択本願念仏集内題字 并南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為本 与釈綽空字 以空真筆 令書之」と記されている。そのため浄土真宗にて依用する聖典の一部では、冒頭部分が廬山寺蔵の「南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為先」とは異なり、「南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為本」と記されている底本を用いる[1]か、「念仏為先」と本文に記しても「先」と「本」は同義であると注釈されている[2]。
この「往生之業念仏為本」の語は、源信の『往生要集』に用いられている[3]。また『選択集』の本文中にも「謂往生之業念佛爲本」と記されている[4][5][6][7]。「念佛爲先」の語のみであれば他の文献に用いられている。
脚注
- ^ 「南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為本」としている聖典の一例 - 真宗聖教全書編纂所 編 『真宗聖教全書』一 三経七祖部、大八木興文堂、P.929。
- ^ 注釈されている聖典の一例 - 浄土真宗教学伝道研究センター 編 『浄土真宗聖典』七祖篇(註釈版)、本願寺出版社、P.1183。
- ^ 『往生要集』「往生之業念仏為本」 - 大正新脩大藏經テキストデータベース)續諸宗部 Vol.84『往生要集』
- ^ 『選択本願念仏集』「謂往生之業念仏為本」 - 大正新脩大藏經テキストデータベース 續諸宗部 Vol.83『選擇本願念佛集』
- ^ 「謂はく往生の業には、念仏を本とする。」 - 大橋俊雄 校注 『法然 選択本願念仏集』 岩波文庫、P.67。
- ^ 「往生の業としては念仏が根本だといわれている。」 - 阿満利麿 訳・解説 『選択本願念仏集 法然の教え』 角川ソフィア文庫
- ^ 「謂はく、往生の業には念仏を本とす。」 - 石上善應 訳・解説 『選択本願念仏集』 ちくま学芸文庫、P.120。
参考文献
- 大橋俊雄 校注『法然 選択本願念仏集』岩波書店〈岩波文庫 青340-1〉、1997年4月。ISBN 4-00-333401-9。
- 阿満利麿 訳・解説『選択本願念仏集 法然の教え』角川学芸出版〈角川ソフィア文庫 351〉、2007年5月。ISBN 978-4-04-406801-1。
- 石上善應 訳・解説『選択本願念仏集』筑摩書房〈ちくま学芸文庫 ホ-14-1〉、2010年10月。ISBN 978-4-480-09322-6。
- 真宗聖典編纂委員会 編『真宗聖典』真宗大谷派宗務所出版部、1978年10月。ISBN 4-8341-0070-7。
- 真宗聖教全書編纂所 編『真宗聖教全書』 一 三経七祖部(再版)、大八木興文堂、2006年3月。
- 浄土真宗教学伝道研究センター 編『浄土真宗聖典』 七祖篇(原典版)、本願寺出版社、1992年。ISBN 4-89416-604-6。
- 浄土真宗教学伝道研究センター 編『浄土真宗聖典』 七祖篇(註釈版)、本願寺出版社、1996年。ISBN 4-89416-604-6。
関連項目
外部リンク
- SAT DB(大正新脩大藏經テキストデータベース)
- 国訳大蔵経 : 昭和新纂. 宗典部 第3巻『選擇本願念佛集』 国立国会図書館デジタルコレクション
- 選択本願念仏集のページへのリンク