ニパウイルス
英語:Nipah virus
マレーシアで1990年代に見つかったウィルス。「ニパウイルス感染症」を引き起こす。動物を媒介して人に感染するズーノーシス(動物由来感染症)である。
ニパウイルスに感染すると重篤な脳炎などを患い、苦しんだ末に死ぬという。致死率は極めて高い。マレーシアで報告された最初の事例では、260余名が感染し、そのうち100余名が死亡したと報告されている。2000年代バングラデシュで起きた集団感染では死亡率は7割を超えたとされる。
ニパウイルス宿主は、熱帯域に生息するオオコウモリ(フルーツコウモリ)である。ただしコウモリから他の家畜等を媒介して人に伝播する場合があり得る。マレーシアで最初に感染例は報告された場所は養豚場であり、このときは豚を媒介して人に感染したと見られ散る。2000年代にバングラデシュで感染例が報告されたケースでは、コウモリから果物を通じて人に感染したと考えられている。
ニパウイルス感染症を効果的に予防するワクチンは開発されていない。
2018年5月にもインドでニパウイルスへの集団感染が報告されている。同月末時点ですでに10数名が死亡している。
関連サイト:
Nipah virus infection - WHO(世界保健機関)
ニパウイルス感染症 - 日本獣医学会
ニパ‐ウイルス【Nipah virus】
ニパウイルス感染症
ニパウイルス | |||||||||||||||
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ニパウイルス粒子(紫)と感染したVero細胞(茶)を示す透過型電子顕微鏡写真 | |||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||
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ニパウイルス感染症(ニパウイルスかんせんしょう)は、ニパウイルスに感染することにより起こる感染症。日本では感染症法における四類感染症、家畜伝染病予防法における届出伝染病であり、対象動物はウマ、ブタ、イノシシ。
発見の経緯
1997年から1999年にかけてマレーシアで3回の原因不明の脳炎の流行が確認された[1]。症状は日本脳炎感染と類似しており当初は日本脳炎の流行と判断されていたが、蚊による媒介と判断できない点がある(ブタに直接接触した人のみが感染している)、日本脳炎ワクチン接種者にも感染者が出ているなど、日本脳炎と明らかに異なる点があることから詳しい調査が行なわれ、新種のウイルスによる感染症であることが確認された。
当初、このウイルスはヘンドラウイルスとの配列類似性が高いことから暫定的に「ヘンドラ様ウイルス」と呼ばれていたが、ウイルスが分離されたバル・スンガイ・ニパ村の名を取って、1999年4月にニパウイルスの名が付けられた[1]。
特徴
ブタを媒介として人に感染するため、養豚農家の発生が多く見られる。自然宿主はヘンドラウイルス同様オオコウモリであると推測されており、コウモリからブタを介してヒトに飛沫感染するものと思われる。オオコウモリからの直接感染も指摘されている[2]。ヒトでの症状は脳炎を主徴とし、死亡率は高く発病者の致死率は50%に達する。ブタでは咳、呼吸器症状を示す。
診断
Vero細胞を用いてのウイルス分離、RT-PCR、免疫組織化学染色、ELISA、ウイルス中和試験。
治療法
特異的な治療法はなく、対症療法が主となる。
専用の阻害剤が開発されるまでは、ニクロサミド等の汎用抗ウイルス剤の服用が有望視されている。
症状の悪化を防ぐ漢方薬や抗炎症薬など複数の療法が必要とされる。
予防
有効な予防法は確立されていない。発生現場の剖検の際は防護衣着用。N-95マスクなどの防護装備が推奨される。
米国NIHやモデルナ、東京大学医科学研究所などがワクチンの開発を進めている。[3][4]
漢方薬や酪酸菌などの服用による免疫強化が有効かどうか研究が進んでいる。
発症例
- 2018年 - インド、ケーララ州にて、5月22日までにニパウイルスにより5人が死亡。看護婦など感染が疑われる死亡者を含めると12名。州衛生当局者は取材に対し、「州北部に住む家族5人が死亡した。このうち1人が家の敷地にある古い井戸を掃除していて、感染源とみられるコウモリと接触した」と説明[5]。
関連項目
出典
- ^ a b 国立感染症研究所 感染症情報センター (2005年1月17日). “感染症の話 [ニパウイルス感染症]” (HTML). 2021年3月30日閲覧。
- ^ ニパウイルス感染症 厚生労働省関西空港検疫所
- ^ 日本放送協会. “致死率高い「ニパウイルス感染症」東大医科研がワクチン開発|NHK”. NHK NEWS WEB. 2023年1月4日閲覧。
- ^ “米NIH ニパウイルスワクチンの臨床第1相試験を開始 モデルナと共同開発のmRNAワクチン | ニュース | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 2023年1月4日閲覧。
- ^ “脳炎ウイルスで5人死亡=病院に受診者殺到-インド南部”. ウェイバックマシン. 2018年5月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年3月30日閲覧。
ニパウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/03 08:28 UTC 版)
「Plague inc.」の記事における「ニパウイルス」の解説
インドにおいて、フルーツコウモリのコロニーに菌が見つかり、人類へと拡散する様子を描いたシナリオ。
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ニパウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 21:08 UTC 版)
詳細は「ニパウイルス感染症」を参照 1997年にマレーシアの農家と飼育されていたブタで呼吸器疾患のアウトブレイクが起こった。265件以上の脳炎が記録され、そのうち105件は致死性であった。犠牲者の脳からは新種のパラミクソウイルスが発見され、彼が暮らしていた村の名前を取ってニパウイルスと名付けられた。感染はオオコウモリのウイルスによって引き起こされる。オオコウモリは生息地が森林伐採で破壊されてブタの農場の近くの樹木へ移動し、その糞からブタへウイルスが伝染した。
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