方言 近代(国民)国家と標準語政策

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方言

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/01 14:34 UTC 版)

近代(国民)国家と標準語政策

近代に至ってフランス型の標準語政策は国民形成、国民統合と国民国家建設に欠かせない要件として世界中の国々に受け入れられていく(後述する日本の標準語化政策も例外ではない)。

フランスの方言政策

絶対王政期のフランスでは、国家によってオイル語系の北フランスの方言を基にした標準語が定められ、それまで南部オクシタニアで話されるオック語系のプロヴァンス語などや、ロマンス語イタリック語派)には属さない島嶼ケルト語系統のブルターニュ語ドイツ語の方言に属すアレマン語系統のアルザス語など、標準フランス語とは系統の異なる地方言語を標準フランス語に対する方言と定義付けて、方言より標準語を優越させる政策が始められた。

例えば、学校教育において、方言を話した生徒に方言札を付けさせて見せしめにするということが行なわれた。この制度は日本にも取り入れられた。現在でも、フランスでは標準フランス語を優越させる政策が続いている。

イタリアの方言政策

長い間、統一政府が作られずに分裂状態であり、さらに多くの都市が外国に支配されていたイタリアでは、様々な方言が存在する。

方言が様々で争いさえ起きたイタリアでは、ラジオ・テレビ放送が始まった当初多くの人々が驚いたと言われている。それは、「放送局RAIが、標準語を定義した」というイタリアで初めての試みであったからである。「テレビ放送が始まってから、初めて標準語を知った」農村地方の老人も多かったと言われている。

日本

日本においては、既に820年頃成立の『東大寺諷誦文稿』には「此当国方言、毛人方言、飛騨方言、東国方言」という記述が見え、これが国内文献で用いられた「方言」という語の最古例とされる。当時、既に方言という概念が存在していたことを物語っている。

沖縄県鹿児島県奄美群島の言語は、地理的、歴史的要因から本土の日本語とは差異が著しく、「琉球方言」として日本語の一方言とする考えと、「琉球語」として日本語(「標準語」を含む本土諸方言の総称としての)と同系統(日琉語族)の別言語とする考え、さらには「琉球諸語」とみなし奄美語国頭語沖縄語宮古語八重山語与那国語を個別言語とする考えがある。

日本の方言政策

明治時代以降、一個の政府のもとに統一された日本では、中央集権国家を目指したため、学校教育の中で標準語の普及を押し進めた。1888年に設立された国語伝習所の趣旨には次のように論じられている。「国語は、国体を鞏固にするものなり、何となれば、国語は、邦語と共に存亡し、邦語と共に盛蓑するものなればなり」[9]特に軍では、異なる地方の者同士では、方言の差異のために命令の取り違えすら発生しかねない有様であり、死活問題でもあった。このことから、方言および日本で話されていた他の言語を廃する政策がとられた。方言を話す者が劣等感を持たされたり、または差別されるようになり、それまで当たり前であった方言の使用がはばかられることになった。ただし、方言追放を徹底できたとは言い難く、軍・政府の重鎮でありながら終生南部弁が抜けなかった米内光政のような例もある。

現在ではテレビ・ラジオにおける標準語使用の影響などにより標準語が日本全国に浸透し、各地の方言は衰退や変容を余儀なくされた。各地のアクセントは多くの地域で保持されているが、語彙は世代を下るに従って失われやすいとされる。

そのため、文化庁などが消滅の危機にある言語・方言の保存・継承のための様々な取組を行っている。[10]

差別の禁止

  • フランスで2020年11月、話す時の訛りに基づく差別は「人種差別の一種」だとして、これを禁止する法案が可決した。人種差別、性差別障害者差別に加えて、訛りに基づく差別も犯罪となり、最高刑では禁錮3年および罰金4万5000ユーロが科される。フランス語圏話者はフランス本土の北部と南部の違いがある他、離島などの海外領土アフリカ大陸からの出身者も多くいることで、異なる発音をした場合に差別を受けることが大きな問題になっている[11]

  1. ^ Thomas Moore devin (2018年7月25日). “What’s The Difference Between A Language, A Dialect And An Accent?” (英語). babbel.com. 2021年1月15日閲覧。
  2. ^ スッキリ解決!「方言」と「訛り」の違い - gimon-sukkiri.jp 2021年1月15日閲覧。
  3. ^ "accent"は「訛り・方言」についての一般的な単語で、"dialect"はやや学術的な感じを持つ。社会言語学において主流な解釈は、"accent"は日本語の「訛り」に対比される。訛りとは、方言の一要素であり「ある言語内における発音の個人や社会集団差」である。それに対して"dialect"は日本語の「方言」に対比される。方言とは、言語体系の多様性を表し「ある言語内における発音や文法、語彙といった言語体系全体の個人や社会集団差」とされる。[1][2]
  4. ^ 大辞泉 【方言】
  5. ^ 英語圏の言語学者が「dialect」と言う場合、一般的に認識されている「方言」だけでなく、職業・趣味などが一致する者同士の間でのみ通じる表現方法(専門用語業界用語ジャーゴン)を含むことがある。
  6. ^ 三井, はるみ. “問1 「方言」というのはどのようなことばのことですか。” (日本語). 国立国語研究所. 新「ことば」シリーズ16「ことばの地域差―方言は今―」. 2020年7月23日閲覧。
  7. ^ 「方言」(出典:三省堂 大辞林 第三版)”. weblio辞書. 2020年7月23日閲覧。の意味(2)
  8. ^ Mair, Victor H (1991). What is a Chinese ‘Dialect/Topolect’? Reflection on Some Key Sino-English Linguistic Terms (pdf). Sino-Platonic Papers 29: 1-31. http://sino-platonic.org/complete/spp029_chinese_dialect.pdf. 
  9. ^ 江仁傑 「日本の言語政策と言語使用」 樋口謙一郎編著 『北東アジアのことばと人々』 (ASシリーズ 第 9巻) 大学教育出版 2013年(ISBN 978-4-86429-214-6 C3080)
  10. ^ 消滅の危機にある言語・方言”. 文化庁. 2021年4月3日閲覧。
  11. ^ フランス、なまりに基づく差別を禁止”. フランス通信社 (2020年11月27日). 2021年2月6日閲覧。


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