無水ケイ酸とは? わかりやすく解説

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二酸化ケイ素

(無水ケイ酸 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/01 03:23 UTC 版)

二酸化ケイ素
識別情報
CAS登録番号 7631-86-9 (シリカ), 14808-60-7 (石英)[1], 14464-46-1 (クリストバライト)[2], 15468-32-3 (鱗珪石)[2], 112926-00-8 (シリカゲル沈降シリカ)[2], 60676-86-0 (石英ガラス)[3]
日化辞番号 J43.598H
E番号 E551 (pH調整剤、固化防止剤)
KEGG C19572 (非晶質)
C16459 (石英)
D06521 (無水)
特性
化学式 SiO2
モル質量 60.1 g/mol
外観 白色の粉末
密度 2.196 g/cm3 (石英ガラス)[3]
結晶の密度は記事中の結晶構造の表を参照。
融点

1650 °C, 1923 K, 3002 °F (±75℃)

沸点

2230 °C, 2503 K, 4046 °F

への溶解度 0.012 g/100 mL ( °C)
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0808(石英)
ICSC 0809(クリストバライト)
ICSC 0807(鱗珪石)
結晶質シリカ(石英)
結晶質シリカ (クリストバライト)
結晶質シリカ (トリジマイト)
非晶質シリカ (シリカゲル、沈降シリカ)
非晶質シリカ (石英ガラス)
への危険性 場合によっては危険性がある。
NFPA 704
0
0
0
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

二酸化ケイ素(にさんかけいそ、英語: silicon dioxide)は、化学式SiO2で表されるケイ素酸化物で、地殻を形成する物質の一つとして重要である。シリカ英語: silica[4])、無水ケイ酸ケイ酸酸化シリコンとも呼ばれる。純粋な二酸化ケイ素は無色透明であるが、自然界には不純物を含む有色のものも存在する。代表的なシリカ鉱物は石英英語: quartz、水晶)であるが、それ以外にも圧力温度の条件等の違いにより多様な結晶相(結晶多形)が生成され、自然界では長石類に次いで産出量が多い。マグマの粘性を左右する物質でもある。鉱物以外では植物 (イネ・スギナ・サトウキビなど) にも含有され、生体内にも微量ながら含まれている。

性質

二酸化ケイ素は石英などの鉱物に代表される結晶性二酸化ケイ素と、シリカゲル・未焼成の珪藻土生物中に存在する非結晶性 (アモルファス) 二酸化ケイ素の2つに大別される。結晶性二酸化ケイ素は共有結合結晶であり、ケイ素原子を中心とする正四面体構造が酸素原子を介して無数に連なる構造をしており、圧力や温度などの生成条件の違いにより様々な形(結晶多形)をとる。

結晶多形

二酸化ケイ素は温度や圧力をかけると結晶構造が変化する(相変態を起こす)。結晶構造などは次の一覧項で説明する。

  • 温度を上昇させた時の相変化
常温常圧下ではα–石英が安定だが、二酸化ケイ素は温度変化によって相変化を起こす。
以下に示す温度は常圧での温度であり、溶剤や圧力等により変化する[5][6]
α–石英 (573℃) →β–石英 (870℃) → β–トリディマイト (1470℃) → β–クリストバライト (1705℃) → 溶解
β–石英は高純度であればβ–トリディマイトを経由せずにβ–クリストバライトに直接相転移する[7]
実際にはβ–石英を870℃以上に加熱しても、通常トリディマイトやクリストバライトに変化せず、準安定状態を保ったまま最終的に融解する[8]。これは相転移の活性化エネルギーが高いためである[注 1]
上記の理由で工業的にもβ–石英の融解温度は転移温度以上に設定するが、融点未満とすることが多い (例:1550℃)。これは工業原料は粘土やアルカリといった不純物が含まれており、これらが石英の融解を補助するためである。
  • 温度を下げた時の相変化
β–トリディマイトを急速に冷却すると、114℃でα-トリディマイトとなる。
β–クリストバライトを急速に冷却すると、270℃でα-クリストバライトとなる。
  • 圧力による相変化
500℃から800℃、2~3 GPa以上になるとコーサイト[9][10]、1200℃10 GPa以上でスティショバイトに転移する[11]
いずれも常温・常圧下では準安定状態で、隕石クレーターから発見されている[12][13]
コーサイトの生成条件は地球の深度70 km以下に相当し、実際に深部まで潜った岩石が上昇してきた超高圧変成岩で見つかっている[14][15]
マントル遷移層から下部マントル程度の高圧条件下ではスティショバイト構造が安定だと考えられている[16][17][18]
ザイフェルト石英語版は、既知の多形の中で最も高い圧力 (40 GPa) で発見されている。
実験室以外では、月隕石火星隕石でのみ見つかっている (地球への隕石では大気による減速で、ほとんど40 GPaに至らない)[19][20]

自然界におけるシリカ

自然界ではケイ素は多くの場合シリカとして存在し、最も一般的に見られるのは石英である。また、の主成分であり、ガラスの原料となる珪砂珪石もシリカからなる[21]地殻内にはシリカが大量に含まれており、地球の表層の約6割がシリカを含む鉱物によって構成されている[要出典]

天然水や水道水にも含まれており、含有量は湧水や地下水は多く、雨の混じるダム水や河川水は少ない傾向にある。また、水の味にも影響し含有量が多いほうが美味しくないと感じる傾向にある[22]

生物学上のシリカ

生物の中には、二酸化ケイ素の形でガラス質の骨格を形成するものがあり、一部のシダ植物イネ科植物コケ植物などのプラント・オパールや、ケイソウ類、放散虫などの骨格、枯草菌が作る芽胞などに利用されている。また、植物一般において成長促進や環境ストレスの低減、病害虫への耐性向上の効果がある。(植物について詳しくは栄養素_(植物)#ケイ素参照

人体中のシリカ

人体においてシリカはほとんど吸収されず、肝臓腎臓への蓄積もほとんど行われない。水が付加したオルトケイ酸が血中に約1μg/mlの割合で吸収されるが、タンパク質とは反応せず、大部分が尿中に排泄される。[23]

食品からの摂取が困難なことから、体内のシリカ濃度は年齢を重ねると減少していく。

体内のシリカ濃度は、30代になると生まれた時に比べ半分以下になることから、シリカが加齢に関わっていると考えられている[24]

結晶構造

SiO2の結晶構造[25]
結晶対称性
ピアソン記号, group No.
密度, ρ
g/cm3
注釈 構造
α-石英
α-quartz
三方晶系
hP9, P3121 No.152[26]
2.648 鏡像異性体があり、それぞれ左右方向への3回らせん軸対称
573℃でβ-石英に変態
β-石英
β-quartz
六方晶系
hP18, P6222, No. 180[27]
2.533 鏡像異性体があり、それぞれ左右方向への6回らせん軸対称
α-トリディマイト
α-tridymite
直方晶系単斜晶系[8]
oS24, C2221, No.20[28]
2.265 常圧下で準安定状態
β-トリディマイト
β-tridymite
六方晶系
hP12, P63/mmc, No. 194[28]
α-トリディマイトと相互に速やかに変態する
β-トリディマイトは2010Kでβ-クリストバライトに変態する
α-クリストバライト
α-cristobalite
正方晶系
tP12, P41212, No. 92[29]
2.334 常圧下で準安定状態
β-クリストバライト
β-cristobalite
立方晶系
cF104, Fd3m, No.227[30]
α-クリストバライトと相互に速やかに変態する
1978 Kで溶融する
キータイト英語版 正方晶系
tP36, P41212, No. 92[31]
3.011 Si5O10, Si4O14, Si8O16
ガラス状シリカとアルカリから600-900Kおよび40-400MPaで合成
モガン石 単斜晶系
mS46, C2/c, No.15[32]
Si4O8Si6O12の環
コーサイト 単斜晶系
mS48, C2/c, No.15[33]
2.911 Si4O8Si8O16
900 K と3–3.5 GPaで合成
スティショバイト 正方晶系
tP6, P42/mnm, No.136[34]
4.287 シリカの多形体のうち最も密度の高いものの一つ
ルチル型構造
7.5–8.5 GPa
ザイフェルト石英語版 直方晶系
oP, Pbcn[35]
4.294 シリカの多形体のうち最も密度の高いものの一つ
40 GPaで得られる[36]
メラノフログ石英語版 立方晶系
(cP*, P4232, No.208)[37]
または 正方晶系
(P42/nbc)[38]
2.04 Si5O10, Si6O12
包摂化合物[39](青色はキセノン
高温相のβ-メラノフログ石がある
fibrous
W-silica[40]
直方晶系
oI12, Ibam, No.72[41]
1.97 硫化ケイ素の様な鎖状
: 2D silica[42] 六方晶系 シート状の2次元構造

反応

二酸化ケイ素はフッ化水素ガス(HF)やフッ化水素酸(HF (aq))と反応し、それぞれ四フッ化ケイ素(SiF4)、ヘキサフルオロケイ酸 (H2SiF6)を生ずる。




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