柴崎友香とは? わかりやすく解説

しばさき‐ともか【柴崎友香】

読み方:しばさきともか

1973〜 ]小説家大阪生まれ。「その街の今は」で芸術選奨文部科学大臣新人賞織田作之助賞大賞、「春の庭」で芥川賞受賞。他に「きょうのできごと」「寝ても覚めても」など。


柴崎友香

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/09 14:28 UTC 版)

柴崎 友香
(しばさき ともか)
誕生 (1973-10-20) 1973年10月20日(51歳)
日本 大阪府大阪市大正区
職業 小説家
言語 日本語
最終学歴 大阪府立大学総合科学部
活動期間 1999年 -
ジャンル 小説随筆
代表作 『その街の今は』(2006年)
寝ても覚めても』(2010年)
春の庭』(2014年)
『続きと始まり』(2023年)
主な受賞歴 咲くやこの花賞(2006年)
織田作之助賞大賞(2006年)
芸術選奨新人賞(2007年)
野間文芸新人賞(2010年)
芥川龍之介賞(2014年)
芸術選奨(2024年)
谷崎潤一郎賞(2024年)
デビュー作 「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」(1999年)
配偶者 独身[1]
公式サイト 小説家:柴崎友香オフィシャルサイト
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柴崎 友香(しばさき ともか、本名同じ、1973年10月20日 - )は、日本小説家

経歴

大阪府大阪市大正区出身。大阪府立市岡高等学校[2]大阪府立大学総合科学部国際文化コース卒業。

母は広島県呉市の出身で、祖父は『わたしがいなかった街で』に書かれた通り、広島市原爆ドーム近くのホテルコックとして働き、原爆投下の直前、呉市に移り難を逃れ、後に大阪に出た[3]。『わたしがいなかった街で』に出てくる「赤い橋」は音戸大橋を指す[3]

小学校4年生の国語の教科書で、"たった三行でわたしに小説を書き続けるエネルギーをくれたのはジャン・コクトーの「シャボン玉」という詩だった"[4]という。高校時代から小説を書き始める。大学では写真部に所属[5]。大学で人文地理学を専攻したことは「風景」を意識する作風に大きな影響を与えた[6]。大学卒業後は4年ほど機械メーカーでOLとして勤めた。

1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞の最終候補になる。1999年、短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学をより楽しむためのブックチャートBEST200』に掲載されて作家デビューする。

2004年、『きょうのできごと』が田中麗奈妻夫木聡の主演で行定勲監督により『きょうのできごと a day on the planet』のタイトルで映画化。

2006年に第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞し、『その街の今は』で第23回織田作之助賞大賞を受賞。2007年、『その街の今は』で第136回芥川龍之介賞候補、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞[7]。同年、『また会う日まで』で第20回三島由紀夫賞候補、「主題歌」で第137回芥川龍之介賞候補。

2006年より名久井直子長嶋有福永信、法貴信也(画家)をメンバーとする同人活動も開始。グループ名は持たず、同年に同人誌「Melbourne1=メルボルン1」、翌2007年に「Иркутск2=イルクーツク2」を私家版で発行している[8]。作家の保坂和志から高い評価を受けるが、三島由紀夫賞選考では保坂との作風の類似も指摘されている(福田和也の評)。

2010年、「ハルツームにわたしはいない」で第143回芥川龍之介賞候補、『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞[9]2014年、「春の庭」で第151回芥川龍之介賞受賞[10]

2018年、『寝ても覚めても』が東出昌大主演で濱口竜介監督により映画化[11]。同作は第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された[12]

読売新聞』土曜夕刊3面(からだCafe)の月替わり連載「一病息災」で2024年7月、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された体験を明らかにした。若い頃から、部屋を散らかしやすく、用事を忘れたり遅刻したりすることが多いと自覚しており、『片づけられない女たち』を読んで自分のことだと感じて約20年間、情報を集めつつ専門医の診察を受けたいと考えてきたという[13]。2024年刊行の『あらゆることは今起こる』(医学書院)は、そうした体験を振り返った著作である。2025年、同作が第15回紀伊國屋じんぶん大賞にて第4位に入賞[14]

2024年、『続きと始まり』で芸術選奨文部科学大臣賞谷崎潤一郎賞を受賞[15][16]

受賞歴

2006年
第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)(『きょうのできごと』)
第23回織田作之助賞大賞(『その街の今は』)
2007年
第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞(『その街の今は』)
2010年
第32回野間文芸新人賞(『寝ても覚めても』)
2014年
第151回芥川龍之介賞(「春の庭」)
2016年
日本地理学会賞(社会貢献部門)[17]
2024年
第74回芸術選奨文部科学大臣賞(文学)(『続きと始まり』)
第60回谷崎潤一郎賞(『続きと始まり』)
第12回大阪ほんま本大賞特別賞(『大阪』岸政彦共著)[18]

作品一覧

小説

  • きょうのできごと』(2000年、河出書房新社/2004年、河出文庫
    • レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー(『文藝別冊 J文学をより楽しむためのブックチャートBEST200』)
    • 途中で(『文藝』1999年冬号)
    • ハニーフラッシュ、オオワニカワアカガメ、十年後の動物園(書き下ろし)
    • きょうのできごとのつづきのできごと(文庫版のみ、『文藝』2004年春号)
  • 『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』(2001年、河出書房新社/2006年、河出文庫)
    • 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?(『文藝』2000年夏号)
    • エブリバディ・ラブズ・サンシャイン(『文藝』2001年春号)
  • 『青空感傷ツアー』(2004年、河出書房新社/2005年、河出文庫)
    • 初出:『文藝』2002年夏号
  • 『ショートカット』(2004年、河出書房新社/2007年、河出文庫)
    • ショートカット(『文藝』2003年秋号)
    • やさしさ(『文藝』2004年夏号)
    • パーティー(書き下ろし)
    • ポラロイド(書き下ろし)
  • 『フルタイムライフ』(2005年、マガジンハウス/2008年、河出文庫 ISBN 4309409350
    • 初出:『ウフ.』2004年5月号 - 2005年2月号
  • 『その街の今は』(2006年、新潮社/2009年、新潮文庫 ISBN 4101376417
    • 初出:『新潮』2006年7月号
  • 『また会う日まで』(2007年、河出書房新社/2010年、河出文庫)
    • 初出:『文藝』2006年春号
  • 『主題歌』(2008年、講談社/2011年、講談社文庫)
    • 主題歌(『群像』2007年6月号)
    • 六十の半分(『朝日新聞』関西版2006年1月5日、12日、19日、26日)
    • ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド(『Melbourne 1』2006年11月)
  • 『星のしるし』(2008年、文藝春秋 ISBN 978-4163274805
  • 『ドリーマーズ』(2009年、講談社/2012年、講談社文庫)
    • ハイポジション(『群像』2005年5月号)
    • クラップ・ユア・ハンズ!(『Иркутск2』〔イルクーツク2〕2007年12月)
    • 夢見がち(『esora vol.2』2005年7月)
    • 束の間(『esora vol.3』2006年4月)
    • 寝ても覚めても(『esora vol.5』2008年8月)
    • ドリーマーズ(『群像』2009年6月号)
  • 寝ても覚めても』(2010年、河出書房新社/2014年、河出文庫)
  • 『ビリジアン』(2011年、毎日新聞社/2016年、河出文庫)
  • 『虹色と幸運』(2011年、筑摩書房/2015年、ちくま文庫
  • わたしがいなかった街で』2012年、新潮社/2014年、新潮文庫)
    • わたしがいなかった街で
    • ここで、ここで
  • 『週末カミング』2012年、角川書店/2017年、角川文庫
    • 蛙王子とハリウッド(『野性時代』2006年8月号)
    • ハッピーでニュー
    • つばめの日(『野性時代』2008年12月号)
    • なみゅぎまの日
    • 海沿いの道
    • 地上のパーティー
    • ここからは遠い場所
    • ハルツームにわたしはいない(『新潮』2010年6月号)
  • 『星よりひそかに』(2014年、幻冬舎
  • 春の庭』(2014年、文藝春秋/2017年、文春文庫
    • 春の庭(『文學界』2014年6月号)
    • 糸(文庫版のみ、『新潮』2013年5月号)
    • 見えない(文庫版のみ、『窓の観察』2012年9月)
    • 出かける準備(文庫版のみ、書き下ろし)
  • パノララ』(2015年、講談社/2018年、講談社文庫)
    • 初出:『群像』2013年3月号 - 2013年8月号、2013年10月号 - 2014年8月号
  • 『きょうのできごと、十年後』(2016年、河出書房新社/2018年、河出文庫)
  • 『かわうそ堀怪談見習い』(2017年、KADOKAWA/2020年、角川文庫)
  • 『千の扉』(2017年、中央公論新社/2020年、中公文庫
  • 『公園へ行かないか?火曜日に』(2018年、新潮社)
  • 『つかのまのこと』(2018年、KADOKAWA)
  • 『待ち遠しい』(2019年、毎日新聞出版/2023年、毎日文庫)
  • 『百年と一日』(2020年、筑摩書房/2024年、ちくま文庫)
  • 『続きと始まり』(2023年、集英社
  • 『遠くまで歩く』(2025年、中央公論新社)
    • 初出:『読売新聞』夕刊2023年4月17日 - 2024年2月24日
  • 『帰れない探偵』(2025年、講談社)

随筆

  • 『ガールズファイル:27人のはたらく女の子たちの報告書』(マガジンハウス、2007年)
    • ガールズファイル(『ハナコ・ウエスト』2005年6月号 - 2007年8月号)
    • 毎日、寄り道。(『ハナコ・ウエスト』2004年5月号 - 2005年5月号)※小説
  • 『見とれていたい わたしのアイドルたち』(マガジンハウス、2009年)
  • 『よそ見津々(しんしん)』(日本経済新聞出版社、2010年)
  • 『よう知らんけど日記』(京阪神エルマガジン社、2013年)
  • 『宇宙の日』(ignition gallery、2020年)
  • 『あらゆることは今起こる』(医学書院〈シリーズケアをひらく〉、2024年)ISBN 978-4-260-05694-6

対談集

  • 『ワンダーワード』(小池書院、2008年)ISBN 978-4862253071
    • ワンダーワード(『大阪芸術大学 大学漫画』vol.1 - vol.9)特別編含む。
    • 京都観光2024(原作柴崎友香・作画田雜芳一、『河南文藝 漫画篇』vol.3)
    • 上條淳士とふたたび and 2008 Now――(新録書き下ろし)

共著

  • 『いつか、僕らの途中で』(ポプラ社、2006年)共著・イラスト:田雜芳一
    • 田雜芳一との往復書簡。『河南文藝 漫画篇』2004年初夏号 - 2005年新春号連載。
  • オールマイティのよろめき(extra flight!)(Иркутск2〔イルクーツク2〕)
  • 『大阪建築:みる・あるく・かたる』(京阪神エルマガジン社、2014年)共著:倉方俊輔
  • 『大阪』(河出書房新社、2021年/河出文庫、2024年)共著:岸政彦

アンソロジー

ムック

  • 『もうひとつの、きょうのできごと』(河出書房新社、2004年)ISBN 430901626X
    • 映画出演者によるイメージ写真と、柴崎友香の書き下ろし短編小説から成っている。

単行本未収録作品

  • ランドスケープ(『文藝』2003年夏号)
  • あと少し(『文藝』2004年冬号)
  • 小さな覗き窓(『集英社WEB文芸RENZABURO』連載中)※フォトエッセイ
  • お餅の焦げたところ(『ODD ZINE』Vol.4)
  • 知らなかった、と人々は言った(『文學界』2021年2月号)
  • 現在の地点から(『文藝』2024年秋季号)
  • おだやかな日常について(『文藝』2025年秋季号)

出演

ウェブ番組

脚注

  1. ^ 【BOOKセレクト】柴崎友香著「春の庭」スポーツ報知(2014年8月4日15時0分配信)2024年7月8日閲覧
  2. ^ 「大阪の友だち」岸政彦・柴崎友香『大阪』133頁。
  3. ^ a b 論ステーション:戦争は遠いけれど 野樹かずみさん/柴崎友香さん. 毎日新聞 2013年08月09日 大阪朝刊. <オピニオン opinion>”. 毎日新聞 (2013年8月9日). 2014年7月28日閲覧。[リンク切れ]
  4. ^ 柴崎友香『よそ見津々』(日本経済新聞出版社)p.232で書いている。

    シャボン玉の中には
    庭は入れません
    周囲(まわり)をくるくる回っています

    同時に、コクトーが初めて書いた小説『ポトマック』もこの詩と同じ"世界のきらめきへの感動に満ちた眼差し"があるという。
  5. ^ あの頃が作品に生きている(作家・柴崎友香)|わたしの20代|ひととき創刊20周年特別企画|ほんのひととき”. note(ノート) (2021年10月12日). 2024年7月8日閲覧。
  6. ^ 作家の読書道 第91回:柴崎友香さんその4「風景に興味を持つ」”. WEB本の雑誌(本の雑誌社 (2009年5月8日). 2024年7月8日閲覧。
  7. ^ “芸術選奨、文部科学大臣賞に森山良子さんら17人”. asahi.com (朝日新聞社). (2007年3月16日). http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200703160291.html 2018年5月9日閲覧。 
  8. ^ "各分野で話題の5人が作る豪華同人誌第二弾『イルクーツク2(Иркутск2)』が刊行決定."CINRA(2007年10月25日). 2025年2月19日閲覧。
  9. ^ “野間三賞の受賞作品がそれぞれ発表、野間文芸新人賞に柴崎友香と円城塔”. CINRA.NET (株式会社 CINRA). (2010年11月5日). https://www.cinra.net/news/2010-11-05-204832-php 2018年5月9日閲覧。 
  10. ^ “第151回「芥川賞」は柴崎友香氏の『春の庭』 「直木賞」は黒川博行氏『破門』”. ORICON NEWS (oricon ME). (2014年7月17日). https://www.oricon.co.jp/news/2039912/full/ 2018年5月9日閲覧。 
  11. ^ “東出昌大、主演映画「寝ても覚めても」で初の一人二役 ヒロインは唐田えりか”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2017年7月5日). https://web.archive.org/web/20170706131533/http://www.hochi.co.jp/entertainment/20170704-OHT1T50234.html 2018年4月5日閲覧。 
  12. ^ “是枝裕和&濱口竜介が、世界的名匠たちと競い合う!第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品決定”. NewsWalker (KADOKAWA). (2018年4月12日). https://press.moviewalker.jp/news/article/143566/ 2018年5月9日閲覧。 
  13. ^ [一病息災]ADHD(1)小説家 柴崎友香さん:日常の困り事 発達障害?『読売新聞』夕刊2024年7月6日3面
  14. ^ "「紀伊國屋じんぶん大賞2025 読者と選ぶ人文書ベスト30」を発表."紀伊國屋書店:プレスリリース(2025年1月10日). 2025年2月19日閲覧。
  15. ^ 芸術選奨 文化庁 2024年8月27日閲覧
  16. ^ 第60回「谷崎潤一郎賞」は、柴崎友香さんの『続きと始まり』 中央公論新社 2024年8月27日閲覧。
  17. ^ 2016年度日本地理学会賞受賞者 - 日本地理学会”. 日本地理学会 - 公益社団法人日本地理学会は,地理学に関する学理及びその応用の研究に関する事業を行い,地理学の進歩普及を図り,もってわが国の学術の発展と科学技術の振興に寄与するとともに,地理教育の推進,社会連携の推進,国際協力の推進を図り,社会の発展に資することを目的としています. (2021年5月18日). 2022年4月29日閲覧。
  18. ^ "岸政彦×柴崎友香 共著エッセイ『大阪』(河出文庫)、第12回大阪ほんま本大賞特別賞に決定!."時事ドットコム(2024年10月4日). 2024年10月10日閲覧。

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