市川沙央
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/16 03:00 UTC 版)
市川 沙央 (いちかわ さおう) |
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誕生 | 1979年(45 - 46歳)![]() |
言語 | 日本語 |
国籍 | ![]() |
教育 | 学士 |
最終学歴 | 早稲田大学人間科学部eスクール人間環境学科卒業 |
活動期間 | 2023年 - |
ジャンル | 小説 |
代表作 | 『ハンチバック』(2023年) |
主な受賞歴 | 文學界新人賞(2023年) 芥川龍之介賞(2023年) |
デビュー作 | 『ハンチバック』(2023年) |
市川 沙央(いちかわ さおう、1979年 - )は、日本の小説家である。
経歴
2012年春学期に八洲学園大学へ特修生入学し、2013年4月から正科生となる[1]。
2019年、早稲田大学人間科学部eスクール人間環境科学科に入学[2]。卒業論文「障害者表象と現実社会の相互影響について」で小野梓記念学術賞を受賞[3]。
2023年、「ハンチバック」で第128回文學界新人賞を受賞し小説家デビュー[4]。同作で第169回芥川龍之介賞受賞[5]。
2024年、神奈川県大和市の市民栄誉賞を受賞[6]。2025年、『ハンチバック』の英訳版"Hunchback"が国際ブッカー賞のロングリストにノミネートされる[7]。
人物
神奈川県大和市に在住し、大和市内の小中学校を卒業した[6]。
筋疾患先天性ミオパチーにより症候性側弯症を罹患し、人工呼吸器と電動車椅子を常用する[8]。芥川賞の授賞式では電子書籍のさらなる普及など「読書バリアフリー」の推進を訴えた[9]。
療養生活のため就職が難しいことから小説家を志した。20代から20年以上にわたり、コバルト・ノベル大賞他、女性向けライトノベルやSF、ファンタジーの賞に応募を続けた[8]。Web小説投稿サイトカクヨムにもプレオープン期から投稿している。 大江健三郎、島田雅彦、若木未生への私淑を公言している[10]。
「10代半ばから月刊『正論』読者」であると明かし、「(自身がマイノリティの権利を訴えただけで)こいつは反日だの、左の活動家だのと、ずいぶん皮相浅薄なことを言ってくるものだと悲しくなった」、「バリアフリーには右も左もない」としている[11]。
作品リスト
単行本
- 『ハンチバック』(文藝春秋、2023年6月、ISBN 978-416391-712-2/文春文庫、 2025年10月、ISBN 978-416792-425-6 )
- 初出:『文學界』2023年5月号
アンソロジー収録
単行本未収録作品
小説
- 「オフィーリア23号」 - 『文學界』2024年5月号
- 「音の心中」 - 『GOAT』第1号(2024年11月)
- 「女の子の背骨」-『文學界』2025年1月号
- 「良心的兵役拒否」(連作)
- 「洒落た文句に振り返りゃ」 - 『新潮』2025年1月号
- 「ママ」 - 『新潮』2025年4月号
- 「風船のパパ」 - 『新潮』2025年7月号
- 「悪のロール」 - 『GOAT』Summer 2025(2025年6月)
- 「運」 - 『文學界』2025年8月号
- 「Pow(d)er」 - 『BRUTUS』2025年8月15日号
エッセイ
- 「破壊と共生の王の死」 - 『ユリイカ』2023年7月号
- 「みんな鹿の夢をみればいいのに——エニェディ・イルディコー『心と体と』に寄せて」 - 『季刊福祉労働』174号
- 「前世の記憶」[12] - 『文學界』2023年9月号
- 「芥川賞、この得体の知れない怪物」[13] - 『朝日新聞』2023年8月9日
- 「コードネームは「落選」」[14] - 『沖縄タイムス』2023年8月10日朝刊文化22面
- 「芥川賞を受賞して 匂い立つ紙の本の記憶」[15] - 『毎日新聞』2023年8月17日東京夕刊
- 「右も左もない「読書バリアフリー」」[11] - 『産経新聞』2023年8月23日
- 「オレンジ色のニクい奴」 - 『小説トリッパー』2023年秋季号
- 「不自由だけど好き自由に生きてきた」[16] - 『婦人公論』2024年1月号
- 「三島由紀夫の文 「ドルヂェル伯の舞踏会」」 - 『新潮』2025年2月号
書評
- 「私の書棚の現在地」(書評連載)
- 「すべり坂に突き落とされてゆく私たち」(土屋葉編『障害があり女性であること : 生活史からみる生きづらさ』ほか) - 『新潮』2024年2月号
- 「ファウストは加速主義か、否か」(田中岩男『鴎外と『ファウスト』――近代・時間・ニヒリズム』) - 『新潮』2024年5月号
- 「安吾探偵は人間を見抜く」(坂口安吾『安吾探偵事件帖 事件と探偵小説』ほか) - 『新潮』2024年9月号
- 「作家は行間に棲んでいる」(ステファン・テメルソン『缶詰サーディンの謎』ほか) - 『新潮』2024年12月号
- 「善くする者らの足あと」(柳広司『パンとペンの事件簿』ほか) - 『新潮』2025年3月号
- 「遍在するオルタナティブな支配者」(鈴木光司『ユビキタス』) - 『新潮』2025年6月号
- 「家族の光と闇について」(渡部昇一『渡部昇一の快老論』ほか) - 『新潮』2025年9月号
- 「共有してくっつくこと」(朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』)[17] - 『波』2024年8月号
- 「異世界転生は殖民論の夢をみる――『大転生時代』論」[18] - 『文學界』2024年10月号
対談・鼎談・往復書簡
- 「市川沙央⇄荒井裕樹 往復書簡-世界にとっての異物になってやりたい」[19] - 『文學界』2023年8月号
- 「市川沙央×荒井裕樹 『ハンチバック』が文学界に問いかけたこと」 - 『福祉労働』2023年秋冬号(175号)
- 「福島勲×市川沙央 eスクールがつくる未来 公開往復書簡」 - 「早稲田eスクール20周年記念サイト」2023年9月21日更新[20]
- 「島田雅彦×市川沙央 別に怒られたっていいじゃない」 - 『文藝春秋』2023年11月号
- 「高瀬隼子×市川沙央 小説家になるために必要なもの/差し出したもの」[21] - 『文學界』2023年11月号
- 「市川沙央×岩川ありさ×菊間晴子 大江健三郎は何度でも新しい」 - 『文學界』2024年3月号
- 「市川沙央×頭木弘樹 合理的調整としての読書バリアフリー」 - 『現代思想』2024年9月号
出演
脚注
- ^ “「大学卒業:学芸員資格取得を目指して」|通信大学の八洲学園大学”. 八洲学園大学. 2023年7月20日閲覧。
- ^ “「この社会に障害者はいないことになっている」芥川賞・市川沙央が語った10の言葉”. 2023年10月27日閲覧。
- ^ 2022年度 小野梓記念学術賞の授与について
- ^ 文學界 2023年5月号 第128回 文學界新人賞決定発表
- ^ “芥川賞に市川沙央さんの「ハンチバック」”. 読売新聞. (2023年7月19日) 2024年8月18日閲覧。
- ^ a b 『神奈川新聞』2024年2月2日付
- ^ “川上弘美さん、国際ブッカー賞受賞なるか 日本文学が英国で快進撃”. 朝日新聞. (2025年5月2日) 2025年8月15日閲覧。
- ^ a b 文學界新人賞・市川沙央さん 「なにか職業が欲しかった」ままならぬ体と応募生活20年の果てに 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#1
- ^ “第169回 芥川賞・直木賞受賞式レポート 受賞作品の評価ポイントは?”. リアルサウンド (2023年7月19日). 2023年8月24日閲覧。
- ^ “Xユーザーの市川沙央 ICHIKAWA Saouさん_ 「私淑しますのは大江健三郎、島田雅彦、若木未生(敬称略)。 ナスターシャ・フィリッポヴナが永遠のヒロインです。 どうぞよろしくお願いします。」 _ X.html”. 2023年8月30日閲覧。
- ^ a b “右も左もない「読書バリアフリー」 芥川賞 の市川沙央さんが本紙に寄稿”. 産経新聞. (2023年8月23日) 2025年8月14日閲覧。
- ^ “【特別エッセイ】市川沙央「前世の記憶」”. note (2023年8月8日). 2025年8月14日閲覧。
- ^ “芥川賞、この得体の知れない怪物 作家・市川沙央さんエッセー”. 朝日新聞. (2023年8月9日) 2025年8月4日閲覧。
- ^ “コードネームは「落選」 芥川賞受賞エッセー 市川沙央”. 沖縄タイムス+プラス (2023年8月10日). 2025年8月4日閲覧。
- ^ “寄稿:芥川賞を受賞して 匂い立つ紙の本の記憶=市川沙央(作家)”. 毎日新聞 2025年8月4日閲覧。
- ^ “芥川賞作家・市川沙央「難病・先天性ミオパチーがなかったら、小説家にはならなかった。滅多にない大金星で帳尻が合って」 芥川賞に至る、私と家族の44年”. 婦人公論.jp (2024年1月22日). 2024年8月18日閲覧。
- ^ “共有してくっつくこと 朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』”. 新潮社. 2024年12月9日閲覧。
- ^ “異世界転生は殖民論の夢をみる——『大転生時代』論 市川沙央が『大転生時代』(島田雅彦 著)を読む”. 本の話 (2024年10月1日). 2024年11月9日閲覧。
- ^ “市川沙央 荒井裕樹 往復書簡「世界にとっての異物になってやりたい」”. note (2023年7月10日). 2024年8月18日閲覧。
- ^ “公開往復書簡 福島勲×市川沙央(1)”. 早稲田大学eスクール (2023年9月21日). 2025年8月14日閲覧。
- ^ “高瀬隼子×市川沙央「小説家になるために必要なもの/差し出したもの」”. 文藝春秋 (2023年10月10日). 2025年8月14日閲覧。
- ^ “命の声を届ける 作家・市川沙央”. NHK. 2025年4月6日. 2025年4月10日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2025年4月10日閲覧.
外部リンク
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