蹴りたい背中とは? わかりやすく解説

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けりたいせなか【蹴りたい背中】


蹴りたい背中

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/19 05:40 UTC 版)

蹴りたい背中
作者 綿矢りさ
日本
言語 日本語
ジャンル 中編小説青春小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出 文藝2003年8月・秋季号
出版元 河出書房新社
刊本情報
出版元 河出書房新社
出版年月日 2003年8月26日
装幀 泉沢光雄
装画 佐々木こづえ
総ページ数 140
id ISBN 4-309-01570-0
受賞
第130回芥川龍之介賞
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蹴りたい背中』(けりたいせなか)は綿矢りさによる中編小説である。初出は『文藝2003年平成15年)秋季号。同年8月に河出書房新社から単行本が刊行され、金原ひとみの『蛇にピアス』と共に同年下半期の第130回芥川龍之介賞を受賞した[1]

周囲に溶け込むことが出来ない陸上部の高校1年生・初実(ハツ)と、アイドルおたくで同級生の男の子・にな川との交流を描いた青春小説。「蹴りたい背中」は一般に「愛着と苛立ちが入り交じって蹴りたくなる彼(にな川)の背中」を指すものと推測されている。

2007年(平成19年)9月17日日本テレビ系で放送された『あらすじで楽しむ世界名作劇場』にて初めてドラマ化された。

物語

理科の授業で仲間外れにされたハツは、同じ班のにな川が読んでいる女性ファッション誌のモデル(オリチャン)に目がとまる。ハツは中学生のとき、隣町の無印良品でオリチャンに会ったことがあり、そのことを言うとにな川は興味を持つ。放課後彼の家に呼ばれ、そこでにな川がオリチャンの大ファンであると知る。後日ハツはにな川に頼まれ、オリチャンと会った無印良品へ向かう。そしてにな川の家で休憩する二人だったが、ハツはオリチャンのアイコラ(にな川作)を見つける。ハツは異様な気分になり、にな川を後ろから思い切り蹴り倒す。

その後、にな川が学校を4日間休む。不登校ではないかと言われるも、ハツはにな川の家にお見舞いに行く。実はにな川は徹夜でオリチャンのライブのチケットを取ったため、風邪を引いたのだった。にな川はチケットを4枚買っており、ハツは誰か呼んで一緒に行こうと誘われる。友人は絹代しかいないので、仕方なく絹代を誘って3人でライブに行く。絹代がハツに「にな川はいい彼氏なんじゃないか」「ハツはにな川のことが本当に好きなんだね」と言うが、ハツは「自分の気持ちはそうじゃない」と思っていた。

ライブから帰ると、バスはもう出ていなかった。仕方なくハツと絹代はにな川の家に泊まる。ハツはよく眠れず、ベランダでにな川と話をする。にな川が「オリチャンを一番遠くに感じた」と言ってハツの方を背にして寝転がると、ハツはにな川の背中を蹴ろうとする。指が当たったところでにな川が気づくが、ハツは知らないふりをする。

人物

ハツ(長谷川 初実、はせがわ はつみ)
演:渋谷飛鳥
主人公陸上部に所属する高校1年生。人付き合いを嫌い、同級生先輩を冷めた目で見ている。クラスでは疎外されている。
にな川(蜷川 智、にながわ さとし)
演:載寧龍二
ハツの同級生でオリチャンのファン。俗にいうオタク
絹代(小倉 絹代、おぐら きぬよ)
演:近藤春菜
ハツの中学校からの友人で同級生。高校ではやや疎遠になっている。ハツとは逆に交友に余念がない。
オリチャン(佐々木 オリビア、ささき おりびあ)
演:箕輪はるか
モデル。27歳。文中では全てオリチャンと表記されている。ハーフ(英米人)の可能性がある。

評価

さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く、細長く。紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。気怠げに見せてくれたりもするしね。葉緑体? オオカナダモ? ハッ。っていうこのスタンス。

上記の書き出しについて、芥川賞選考会で三浦哲郎は「不可解な文章」だと評した[2]が、他の9人の選考委員の支持を得て受賞となった。

文学賞の批判本『文学賞メッタ斬り』を出した豊崎由美大森望は「とてもとても、容姿に恵まれた人が書ける小説じゃない」「下手な書きかたしちゃうと、低レベルのいじめ話か、つまらない恋愛小説みたいになって閉じちゃいそうな話を、絶妙に開いたまま上手に物語を手放してる器量には舌を巻きます」と絶賛している[3]。 

関連項目

  • 田中啓文 - 『蹴りたい田中』という本作のタイトルをもじった書名の短編集を発表している。
  • 武田綾乃 - 小学生の頃、本作を読んだことが小説家に憧れるきっかけとなった。後にデビュー作「今日、きみと息をする。」において本作の書名を登場させている。

注釈


蹴りたい背中(『文藝』2003年秋季号初出)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 08:11 UTC 版)

綿矢りさ」の記事における「蹴りたい背中(『文藝2003年秋季初出)」の解説

周囲溶け込むことが出来ない陸上部高校1年生・初実(ハツ)と、アイドルおたく同級生男の子・にな川との交流描いた作品2002年の夏から2003年の夏にかけて書き上げた書き出し部分(「さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く細長く。紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。気怠げに見せてくれたりもするしね。葉緑体? オオカナダモ? ハッ。っていうこのスタンス。」)について、芥川賞選考会三浦哲郎は「不可解な文章」だと評したが、他の9人の選考委員支持得て受賞となった文学賞批判本文学賞メッタ斬り』を出した豊崎由美大森望は「とてもとても容姿恵まれた人が書け小説じゃない」「下手な書きかたしちゃうと、低レベルのいじめ話か、つまらない恋愛小説みたいになって閉じちゃいそうな話を、絶妙開いたまま上手に物語手放して器量には舌を巻きます」と絶賛している。

※この「蹴りたい背中(『文藝』2003年秋季号初出)」の解説は、「綿矢りさ」の解説の一部です。
「蹴りたい背中(『文藝』2003年秋季号初出)」を含む「綿矢りさ」の記事については、「綿矢りさ」の概要を参照ください。

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