土地
*関連項目→〔土〕
『人はどれほどの土地がいるか』(トルストイ) 農夫が1日で歩き廻れる範囲の土地を、千ルーブリで買う契約をする。彼は夜明けとともに歩き始め、日没までに出発点に戻らねばならないので、ついには走り出し、広い土地を得るが、その場に倒れて死ぬ。身体の大きさだけの墓穴が掘られ、彼は埋められた。
『バーガヴァタ・プラーナ』 悪魔バリが世界を占領する。ヴィシュヌ神が矮人に変身して、3歩で歩けるだけの土地をバリに望む。バリがそれを許すとヴィシュヌは巨人となり、第1歩で全地上を、第2歩で天界全体を踏みしめ、3歩目でバリを地界に押しこめた。
『ドイツ伝説集』(グリム)416「ザクセン族とテューリンゲン族」 ザクセンの若者が、いくばくかの黄金と引き換えに、上着1杯分の土くれを手に入れた。彼は、テューリンゲン人の住む野に土を薄く広く撒き、これは黄金で購った土地であるとして、その一帯を占有した。
『ドイツ伝説集』(グリム)553「ルートヴィヒがヴァルトブルクを手に入れた次第」 ルートヴィヒ伯爵は他人の領地内の山を気に入り、領民を集めて、自領内の土をかごに入れて運ばせ、一夜のうちにその土で山を蔽ってしまった。そして「自分の領土に建てるのだ」と言って、城を築いた。
『アエネーイス』(ヴェルギリウス)第1巻 女王ディードーとその配下たちは、カルタゴの住民に「1頭の牛の皮が囲めるだけの土地を分けてほしい」と頼んだ。そして牛の皮を糸状に細長く切り、それで土地を囲んで領有した〔*『ドイツ伝説集』(グリム)419「牡牛城を築くザクセン族」も同様に、牛の皮を細い紐状に裂いて牡牛城を築く〕。
『メリュジーヌ物語』(クードレット) レイモン(=レイモンダン)は、森で出会ったメリュジーヌの教えにしたがい、1枚の鹿の皮が囲めるだけの土地を領主に請う。レイモンは鹿の皮を細く切って1本の長い紐を作り、それで周囲2里の土地を囲み込んで、自分のものとした。レイモンはメリュジーヌと結婚し、居城を建てた。
『史記』「晋世家」第9 晋の献公の息子重耳(ちょうじ)が諸国を流浪していた時代、衛の五鹿(ごろく)の地で農夫に食物を求めた。農夫は土を器に入れて勧めたので、重耳は怒るが、臣下の趙衰は「土を得るのは、封土を領有する前兆です。お受け下さい」と言った〔*『春秋左氏伝』僖公23年では子犯が「天の賜物」と言う〕。重耳は亡命19年の後、62歳で晋に帰還し、即位して文公となった。
『蜀王本紀』 秦王が金(きん)1箱を蜀王に贈り、蜀王も返礼の品を秦王に贈った。ところがその品は土に変わってしまったので、秦王は激怒した。すると臣下たちは、「土は土地を意味します。秦は蜀の土地を得ることになるでしょう」と言って祝福した〔*その言葉どおり、後に秦は蜀を征服した〕。
『日本書紀』巻3〔初代〕神武天皇即位(B.C.660)前紀戊午年9月 神武天皇の命令で、椎根津彦と弟猾(オトウカシ)が老父と老嫗に変装し、敵陣を通り抜けて天香山に登り、頂上の土を取って持ち帰る。天皇はその土で80枚のかわらけなどを作り、天神地祇を祭る。
『日本書紀』巻5〔第10代〕崇神天皇10年(B.C.88)9月 武埴(たけはに)安彦の妻・吾田媛(あたひめ)が、ひそかに倭(やまと)の香山(かぐやま)の土を取り、領巾(ひれ)に包んで、「これは倭国の物実(ものしろ)」と呪言をして帰って行った。これによって、武埴安彦が謀反を企てていることがわかった。まもなく武埴安彦と吾田媛の軍が攻めて来たので、崇神天皇は彼らを打ち破り、2人を殺した。
『吉野葛』(谷崎潤一郎)その3「初音の鼓」 昔田舎者が京へ上ると、都の土を一と握り紙に包んで土産にした。
★2b.泥を得るのは、国を得る予兆である。
『ローマ皇帝伝』(スエトニウス)第8巻「ウェスパシアヌス」 ウェスパシアヌスが造営官だった時、道路の清掃に関して配慮を欠いたことがあった。カリグラが怒り、兵士に命じて、ウェスパシアヌスの高官服の懐に、泥をいっぱい入れさせた。ある人がこの事件を、こう解釈した。「内乱で踏みにじられた国家が、ウェスパシアヌスの庇護の下に入るだろう」〔*ウェスパシアヌスは後にローマの皇帝になった〕。
『アルゴナウティカ』(アポロニオス)第4歌 海神トリトンがアルゴ船の隊員たちの前に現れ、旅人への引出物に土塊を取り上げて差し出す。これを受け取ったエウペモスは後に、「土塊が乙女と化し、その乙女と交わる」という夢を見る。また、夢の告げに従って、エウペモスが土塊を海に投げると、そこに島ができた。
陸地と動植物などの起源譚(北アメリカ・ヒューロン族の神話) 原初には、世界は一面の海原だった。天上から1人の女神が落ちて来たので、海亀が甲羅の上に女神を乗せた。女神が住む陸地を作るために、多くの動物が海底へ泥を採りに行く。ヒキガエルが泥を採ってきたので、女神は亀の甲羅の端のまわりに、泥を引き伸ばして置いた。それが乾いた陸地の起源となり、陸地はあらゆる方向に広がって、広大な土地ができ上がった。
*海の中から島を釣り上げる→〔釣り〕7の島釣りの神話(メラネシア)。
白鳥の潜水 原初、万物は水で、陸地はなかった。神の命令で、白鳥が嘴(くちばし)1杯の水を取って来た時、嘴についた土埃が水面に落ち、それが拡がって陸地になった。神は2番目の鳥に命じて、嘴で陸地を掘り返させ、山や谷ができた。悪魔はこれが気に入らず、沼地を伴った黒い森を発生させた。その後に、神は人間を創造した(北アジア、レベド・タタール族)→〔骨〕1c。
『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)「ひろびろ日本」 日本の土地が狭いので、ドラえもんが「ひろびろポンプ」を使って日本列島を10倍もの広さにする。しかし、その分学校やマーケットが遠くなり、皆苦労する。それどころか、大洪水で町が沈む。陸地をふやして海を狭くしたから、水位が上がったのだった。
『ファウスト』(ゲーテ)第2部第4~5幕 グレートヒェンやヘレナとの関係の後、ファウストは神聖ローマ帝国の高官となり、新たな国土建設を人生の目標と定める。彼は海浜の干拓事業に乗り出し、広大な土地を開発する〔*そこに住む勤勉な民の有意義で自由な生活を、ファウストは心楽しく思い描き、「その時には『時よ止まれ』と言ってもよいだろう」と言う。その途端ファウストは、メフィストフェレスとの契約にしたがって、倒れ死ぬ〕。
『出雲国風土記』意宇の郡 出雲国は狭かった。そこで八束水臣津野命(やつかみづおみづののみこと)は、海の向こうの新羅に土地の余りがあると見、鋤を突き刺し土地を切り離して綱をかけ、「国来(くにこ)、国来」と引き寄せた。
*土地を根こそぎ引っ張って行く→〔湖〕1aの『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第1章。
★3c.国土がすべて買い取られ、宇宙の彼方へ持って行かれる。
『日本売ります』(小松左京) 宇宙から来た謎の男が莫大な金額を費やして、日本列島を私有地も国有地もすべて買い取ってしまう。巨大円盤が飛来し、日本列島を国民もろとも、宇宙の彼方へ運び去る。男は言う。「日本、ほんとにすばらしい国ね。景色美しい。大雪ふる所、熱帯みたいな所あります。古い歴史あるし、近代文明あります。世界中の産業、文学、食物、みんな少しずつあります。日本は世界の縮図ね。駅弁みたい、箱庭みたい国。地球文明のちっちゃなサンプルとして、一番いい国です」。
『桜の園』(チェーホフ) 未亡人ラネーフスカヤは没落地主で生活力がなく、広大な領地「桜の園」は借金の抵当に入っている。農奴出身の資産家ロパーヒンが「桜を切り倒し、別荘地向きに分割して貸し出せば、十分な収入が得られる」と提案するが、ラネーフスカヤは「美しい桜を切るなんてとんでもない」と、聞く耳を持たない。やがて「桜の園」は競売にかけられ、ロパーヒンが高値で買い取る。ラネーフスカヤはすべてを失って外国へ去る。
★5.土地をめぐる争い。
『ウエスタン』(レオーネ) 19世紀アメリカ西部。鉄道建設業者モートンが、殺し屋フランク一味をさしむけて、線路敷設予定の土地を所有するマクベインと子供たちを殺す。謎の男が現れ、マクベインの妻ジルを助けつつ、拳銃による決闘でフランクを倒す。男の兄は昔フランクに殺されたのであり、男は兄の敵を討ったのだった。男は去り、ジルは夫の遺志を継いで、所有地内に駅と町を建設するために働く。
『大いなる西部』(ワイラー) 開拓期のテキサス。大地主ヘネシー一家とテリル少佐一家が、水源地を含む広大な土地を得ようと、にらみ合う。土地の所有者である女教師ジュリーは、無用の争いを避けるため、両家のどちらへも土地を売らない。東部から来た青年マッケイが土地を買い取り、水源を独占せず、ヘネシー一家とテリル一家に平等に水を配給しよう、と考える。ヘネシーとテリルはライフルで決闘し、ともに死ぬ。銃を撃ち合う時代は終わろうとしていた。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第6章 巨人アルキュオネウスは、生を受けた土地パレーネーで闘っている限り、不死だった。彼はヘラクレスに矢で射られたが、大地に倒れるとそれ以前より元気になった。女神アテナの教えによって、ヘラクレスはアルキュオネウスをパレーネーの外へ引きずり出し、殺した〔*→〔土〕2の『ギリシア神話』第2巻第5章と類想〕。
『荘子』「外物篇」第26 「無用の言を成す」と批判されて、荘子は答えた。「大地は広く大きいが、人間が用いるのは足で踏む面積のみだ。しかし、それ以外は無用だとして、足の寸法の土地だけ残し、周囲をすべて黄泉に届くまで深く掘り下げてしまったらどうなるか。土地として役に立たないだろう。『無用の用』ということがあるのだ」。
土=地と同じ種類の言葉
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