『アエネーイス』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 14:37 UTC 版)
詳細は「アエネーイス」を参照 『アエネーイス』はウェルギリウスの最後の作品である。書名は「アエネーアースの物語」を意味する。制作は前29年から始まり、ウェルギリウスが亡くなる前19年までの10年間続けられた。詩人は死を前にして未完の原稿を焼却するよう強く望んだが、アウグストゥス帝がそれを認めずに頒布を命じたという伝説がある。実際には、『アエネーイス』は委嘱作品であり、プロペルティウスによれば、制作を委嘱したのはアウグストゥス帝その人であったという。 『アエネーイス』は全十二巻からなる叙事詩である。ウェルギリウスは、トロイアの武将アイネーアースの旅について、最初は散文で梗概を述べた後に、処々に「英雄詩形」として知られる長短短格六歩脚(ダクテュロス・ヘクサメトロス(英語版))の詩を挿入した。ウェルギリウスはラテン語で本作品を制作するにあたって、ギリシア語によるホメーロスの叙事詩をモデルにした。すなわち、前半のトロイアを逃れたアエネーアースがイタリアにたどり着くまでの放浪が『オデュッセイア』に相当し、後半のアエネーアースの土着勢力との戦いが『イーリアス』に相当する。もちろん、全編に渡って、ホメロスの影響は大きく、以上の区分はあくまで作品全体を巨視的に見た場合に妥当するものである。 主人公アエネーアースはトロイアの王子でウェヌスの息子である。アカイア人により包囲されたトロイアから脱出し、紆余曲折を経てイタリアに落ち延びる(第六巻まで)。地中海の遍歴中には、カルタゴの女王ディードーと惹かれあうが、トロイア再興の志しを思い出し、これを棄てる(第四巻)。たどり着いたイタリア半島においては、ティベリス川を遡り、パラティヌス丘に住むエウァンデルと同盟を結び、土着勢力ルトゥリ族の首長トゥルヌスを倒して、ラウィニウム市を建設する。アエネーアースが建設した町はローマへと発展することになる。 ウェルギリウスが『アエネーイス』を制作するにあたってモデルにした先行作品がいくつかある。ホメーロスの影響はいたるところに見られるが、そのほかにもラテン語詩人のエンニウスとヘレニズム詩人のロドスのアポローニオスからの影響が顕著である。『アエネーイス』は叙事詩の語り口を堅く守る。その一方で悲劇や起源説話詩など、他のジャンルの要素を取り入れることによって、叙事詩というジャンルの領域を拡大しようとする。古代の注釈家が推測する説によると、ウェルギリウスはホメロス作品を下敷きにして、『アエネーイス』を前後二部に分けたという。この説によると、前半の六巻は『オデュッセイア』を手本にして書かれ、後半の六巻は『イリアス』に基づくという。
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