国鉄職員・車掌
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荻野憲二(おぎの けんじ) 第1話から登場。本作の主人公。国鉄大阪車掌区所属の新米カレチ(客扱専務車掌)。 仕事には一生懸命だが、乗客のことを第一に考えるあまり、時には懲罰覚悟で規則に反した行動に出たり上司と対立することもある。連載初期はお客のために規則を無視することもあったが、回を重ねるにつれて規則を遵守した上で接客をするようになり、そのため初期のエピソードを振り返って「あの時の自分は間違っていた」と言及したこともある。 本人には自覚は無いが、車掌区内では優秀な職員として主に若手後輩に評判が良い模様。 「何かが身につくのは自分で到達できた時だけ、優秀な人にこそより伸びる機会を与えたい」と、後輩への指導はやや厳しくしている。 当初は独身の一人暮らしで、自身が住むアパート(くろがね荘)には電話は引かれていなかった。恋愛にはほとんど無縁で、小田志織(後述)に好意を寄せられ手作り弁当を渡された時も、女心に疎い荻野は弁当は受け取ったものの連絡先はおろか名前すら聞かなかったため、安斉(後述)に呆れられていた。その後、安斉の後押しもあって交際が始まり、昭和50年代前半(第33話時点)に彼女と結婚。 車掌見習いのころ、ワフ21147(第4話)が火災で焼失しかけた際に、小便で消火をしている。 昭和40年頃に普通車掌に登用される。この頃、乗客への親切心から閉扉を遅らせることが多々あり「ミスター・マイペース」とあだ名されていた。 国鉄末期には助役補佐に昇進し、リストラ推進の最前線に立たされる。多くの者から恨みを買いつつもその職務を全うし、国鉄分割民営化直前に国鉄を去った。平成24年時点でも健在である。 安斉正之(あんざい まさゆき?) 第2話から登場。眼鏡をかけた初老のチーフ(レチチ - 車掌長)。荻野が普通車掌時代からの師弟関係で、彼がカレチになってからは同じ列車に乗務することが多く、登場話数も多い。 悪質な不正乗車や規則に反した運賃徴収には厳しく、荻野が乗客の主張を信じすぎる点を注意することが時折ある。車掌弁はとにかく引くよう指導している。 世話焼きな性格で、荻野と志織の恋愛成就のため一肌脱いでいる。自称「恋のキューピッド」。 荻野たちの一番の相談相手であったが、国鉄解体の影響で車掌の職を追われてしまう。その後精神を病み、死に場所を求め一昼夜彷徨った後、遮断機の下りた踏切に飛び込んだ子供を救助し、走行してきた国鉄EF65形電気機関車に轢かれて亡くなった。享年53。 なお「グランドステーション〜上野駅鉄道公安室日常〜」の第2巻に、大阪車掌区のカレチとして登場している。 堀之内(ほりのうち) 第9話から登場。大阪車掌区の特発車掌。普段は助役等の補佐をしている。 新潟県出身、昭和29年国鉄入社。 嫌味でお調子者な性格に見られることが多い。地獄耳の持ち主で根回しの達人。「つまりすなわち…」が口癖。 営業規則を完璧に熟知してはいるが、車掌として勤務した経験が浅いこともあり、規則一辺倒の旅客対応をすることも多い。 両親は幼いころに病気で他界しており、親類の伯母に育てられた。その伯母の「人の役に立て」という言いつけから、寝台列車に客として乗っていたときに、難産の娘のもとへ向かう老婆に自分の寝台を譲ったこともある。 西鹿児島駅行き列車に乗務した際に食事の支度を忘れ、営業している飲食店を探して鹿児島の町をさまよっていたところ明かりのついていた家をたまたま見つけ、そこで世話になった女性に一目惚れした。後にこの女性と結婚し、国鉄を退職。その後は鹿児島市で妻と喫茶店を営んでいる。 規則一辺倒だったことから、初期のころは乗客本位の荻野と衝突することも度々あった。しかし次第に荻野のことを理解するようになり、荻野に相談を持ちかけることもあった。 同僚の武勇伝が好きらしく、武藤が濡れ衣(後記)で記録断念したのを残念がったり、栗原の強盗犯逮捕を歓喜したりしていた。 第3巻番外編「荻野さん夢のハネムーン」では、荻野と志織が結婚間近なことを知り「宮崎にハネムーンに行くんじゃないの」と揶揄したために、荻野は「ハネムーン中に堀之内そっくりの人と何度も出会う」という悪夢を見る羽目になった。 田所(たどころ) 荻野の車掌見習い期間中の指導車掌。現在は定年退職している。荻野のことを初めて「車掌」と呼んだ人物。現役時代、戦時中にグラマンF6Fから機銃掃射を受けるも、その際に乗車していた緩急車のワフ21147の車軸の下に隠れたことで九死に一生を得る。それ以来同車両を命の恩人としてとても大切にしていた。ワフが廃車になるときは許可をとって吹田工場まで最後の乗車をした。 村上(むらかみ) 荻野と同じ守口市立第六中学校出身の、荻野の後輩鉄道員。車掌登用を目指し、荷物列車乗務中。荻野を「荻野兄ィ」と呼び慕う。カレチに昇格することに憧れ、当初は荷物列車の仕事を軽んじていたが、勘違いから荷物を危うく違う駅へ誤配しそうになるという失敗を教訓に大きく成長し、ニレチ(荷扱専務車掌)になることを決意。それ以来、真面目に仕事に取り組むようになった。しかし、国鉄合理化の流れからニレチへの道を断念せざるを得なくなり、苦悩の末に旅客列車の車掌となる。仕事ぶりは以前のような軽い態度がなくなり優秀でソツもなく、狭き門の新幹線カレチにも若くして昇格する。 田村 村上と同じ列車に乗務するベテランニレチ。村上の優秀さを認めつつも少々いい加減な仕事の仕方に呆れていたが、一人前のニレチになるための極意を教える。その後、村上がニレチ昇格が困難になり悩んでいた際には、心を鬼にして「与えられた仕事を好きになれ」と諭している。定年後は生命保険会社に転職している。 新堂(しんどう) 車掌補。鉄道の知識は豊富だが、口下手で乗客への対応をあまりしたがらなかった。しかし食堂車を楽しみにしていた老夫婦のために、自身の鉄道知識を活かして粋な計らいを思いつき、乗務員や食堂車従業員の協力を得て実現させ、大いに感謝された。それ以来乗客への対応も積極的になり、荻野が「すっかり変わったな」と感心したほどである。その後、合理化で姫路駅勤務となり、仕事への意欲を失いかけていた。駅で運行トラブルが発生した際には持前の知識を活かした解決策を提示し率先して行動に移すも、当初は理解を得られずリストラ候補に挙げられてしまう。しかし、臨時列車の車両故障の対応で見せた機転で大きく評価を上げ、リストラを免れた。 芝崎(しばさき) 鳥取車掌区のカレチ。倉吉線・関金駅駅長の甥。地元を大切にしたい一心で倉吉線の行く末に不安を持っている。倉吉線の臨時急行列車に乗務した際には、定期運行に昇格させたいがために乗車人員を水増しして報告しようとした。しかし、自らもかつて水増し報告をした苦い経験を持つ荻野に感づかれ、正確な報告をするよう諭される。 栗原純(くりはら じゅん) 大阪車掌区の後輩カレチ。乗務のための準備には余念が無く、仕事ぶりはまじめ。少々直情的な性格で、荻野の指導の真意を理解できず、ときに反発することもある。第20話において空手三段の実力の持ち主であることが判明した。大学時代の後輩が出版社に勤務しており、国鉄末期には告発記事を書いている。彼は当初、荻野の「国鉄を守る」という意見に賛同したが、不正の片棒を担がされている整備工の話を聞き、後輩に国鉄内部告発のことを書くように勧め、一時的に荻野と衝突した。 国鉄解体時のリストラの嵐も切り抜け、民営化後のJRでもカレチとして勤務している。 宮地崇(みやじ たかし) 30話に登場。昭和44年、荻野が普通車掌だったころの同僚。乗客数が増加の一途をたどる京阪神地区の状況から迅速な扉扱いと定時発車にこだわり、「ミスター・マイペース」こと荻野とは正反対の考え方の持ち主。国鉄103系電車導入当初に多発したオーバーランの原因を知り、大量輸送時代の到来に対する国鉄の認識の甘さに憤り、「このままでは国鉄は滅びる」と危機感を抱く。その後、自分の理想とする鉄道輸送を実現するために邁進し、平成24年現在は「京阪神南紀鉄道」の副社長となっている。 各務(かがみ) 3話に登場。寝台特急あかつきに乗務していた車掌長(チーフ)。乗客のためとはいえ、反対側のホームに停車していた寝台急行桜島に無断で侵入してしまった荻野を厳しく叱るが、「お客さんのためにベストをつくそうとする気持ちは一級品」と評している。1話にも風貌の似た車掌長が登場するが、同一人物かは不明。 赤石(あかいし) 29話に登場。大阪車掌区の新米車掌補。国鉄直営の国鉄志免炭鉱に勤務していたが、配転の斡旋を受けて昭和30年代後半ごろに国鉄の車掌補となり、新堂の指導を受けることとなる。初乗務となる寝台特急あかつき1号の乗務時に、隣のホームの貨車に積まれた石炭に夢中になり、20系客車の全てのドアをホーム側から閉めてしまい、欠乗事故を起こしかけた。はるかに年下の新堂に対しても常に敬語を使い、仕事振りも真面目であったが、長崎で乗務の合間に炭鉱で働く旧友と飲んだ際に「戻らないか」と言われた上、駅の売店にあった新聞で自分が勤めていた炭鉱の落盤事故のニュースを見つけ、炭鉱に戻ることを決意した。
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