別巻・月報・付録
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「谷崎潤一郎訳源氏物語」の記事における「別巻・月報・付録」の解説
谷崎訳の大きな特徴の一つとして、『源氏物語』本文の現代語訳以外にも『源氏物語』を理解するために役に立つと考えられるさまざまな資料が別巻・月報・付録といったいろいろな形で付されていることがある。 旧訳では和歌講義に上下2巻(第24巻及び第25巻)を、年立・系図および各巻の梗概といった資料に1巻(第26巻)を費やしている。「和歌講義」までは本文と同様に谷崎自身が執筆したものであるが、最終巻の「年立・系図および各巻の梗概」は、谷崎自身は当初自分で執筆するつもりであったものの、自身の体調不良と最終巻の刊行が急がれる情勢であったことから自身による作成を諦め、中央公論社社員の相沢正によって作成されたものを使用することとなったと説明している。作成に際しては「湖月抄」「すみれ草」「金子本」(金子元臣『定本源氏物語新解』明治書院、1926年(大正15年)から1930年(昭和5年))の3つを参考に作成したとされている。その結果作成された年立と系図の内容は、年立は旧注に属する「湖月抄」に付されている一条兼良の作成した「旧年立」と呼ばれる年立に最も近く、系図は新注に属する「すみれ草」のものに近いという、『源氏物語』の注釈史という観点から見ると統一の取れないものとなっている。なお、新々訳の年立も、「すみれ草にならって」とあるものの、旧年立である。新訳にも年立や系図が付されており、これらは「新訳の作成を手伝った源氏物語の専門家である玉上琢弥らが旧訳の付録に手を加えて作成したものである」とされており、当時の最新の研究成果を取り入れたものになっている。 月報として、各配本回ごとに「源氏物語研究」と題され、毎回当時の様々な知識人による『源氏物語』についての論考が掲載された。また2回にわたって同じ中央公論社から出版されることになっていた『校異源氏物語』についての情報が掲載されている。この付録「源氏物語研究」の最後に「ゆかり抄」というコーナーがあり、編集後記と読者からの投書が掲載されている。 「源氏物語研究」一池田亀鑑「源氏物語の主題 -自然及び人間に対する愛その他-」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」二窪田空穂「紫式部の生涯とその芸術」 今井邦子「特別に彩色された『末摘花』」 「紫の家(其の一)」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」三舟橋聖一「源氏物語の情緒と叡智」 久松潜一「古典と永遠なるもの」 「紫の家(其の二)」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」四藤田徳太郎「源氏物語の日本的性格」 「平安時代の住宅 -源氏物語風俗史その1」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」五長谷川如是閑「かくして源語が生まれた」 「平安時代の家具と装飾上 -源氏物語風俗史その2」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」六片岡良一「源氏物語の構成」 「平安時代の家具と装飾下 -源氏物語風俗史その3」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」七今井邦子「源氏物語に現はれた女性」 「平安時代の乗物 -源氏物語風俗史その4」 「源氏物語研究」八五十嵐力「恋愛描写に於ける源氏物語の優越相」 「平安時代の男子の礼服 -源氏物語風俗史その5」 「源氏物語研究」九藤懸静也「源氏物語と美術」 「平安時代の男子の礼服(その二) -源氏物語風俗史その6」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」十青野李吉「『宇治十帖』観抄」 「平安時代の男子の通常服 -源氏物語風俗史その7」 「ゆかり抄」 「源氏物語研究」十一塩田良平「源氏物語と明治文学」 「平安時代の婦人の礼服 -源氏物語風俗史その8」 「『校異源氏物語』刊行に就いて」 「源氏物語研究」十二尾上紫舟「源氏物語と仮名」 「平安時代の婦人の通常服 -源氏物語風俗史その9」 「源氏物語研究」十三浅野晃「古典としての源氏」 「平安時代の食物 -源氏物語風俗史その10」 「『校異源氏物語』刊行に就いて」 「尾崎紅葉全集刊行に就いて」 「終刊の辞」 「源氏物語研究」というタイトルのすぐ下に『源氏物語』についての古今東西の名言が掲載されている。 第一号「我が国の至宝は源氏物語に過ぎたるはなかるべし」(一条兼良) 第二号「紫式部は恐らく最初の女流小説家であるが、又最も偉大な作家の一人である」(倫敦タイムス) 第十号「『源氏物語』は情熱あり、滑稽あり、はた溢れたる喜楽あり、人情風俗に関する鋭利なる観察あり、或は自然美に対する鑑賞あり。而して文は日本文学中最上の軌範たり」(アストン) 第十二号「著者が着実なる観察と深遠なる思想とが抱合するところに、この空前絶後の傑作は生まれたるなり」(藤岡作太郎) 新訳以降の刊行時にも、以下のようにそれぞれ力の入った月報が添付されており、愛蔵本などの形で再刊される際には初刊の時とは異なった新たな月報が作成されている。 新訳(初刊本) 「紫花鈴香」一山田孝雄「校閲者の言葉」 池田亀鑑「驚嘆すべき偉業」 「内裏の図」 「解説」 「紫花鈴香」二折口信夫「ものゝけ其の他」 「枕草子絵巻」 「源氏物語附図」 「紫花鈴香」三生島遼一「宮廷文学と女流作家」 「紫式部日記絵巻」 「官位昇進表」 「官位相当表」 「紫花鈴香」四前田青邨「源氏について」 玉上琢弥「途上にて」 「扇面古写経、平安納経」 「藤壺の宮」 「紫花鈴香」五「行幸の図枕草子絵巻」 杉岡正美「源氏物語に現れた書生活」 玉上琢弥「政治家光源氏」 「紫花鈴香」六吉川英士「源氏物語に現れた音楽」 「醍醐桜会」 「琵琶・等のこと」 「琵琶・等・笛・拍子」 玉上琢弥「政治家光源氏」 「紫花鈴香」七井島勤「源氏絵巻の美について」 玉上琢弥「藤原氏の人々」 「紫花鈴香」八多屋頼俊「源氏物語と仏教」 「平安納経序品」 「宇治の網代」 「源氏物語附図」 「紫花鈴香」九家永三郎「源氏物語時代の婚姻生活」 「源氏物語絵巻」 「紫式部日記絵巻」 山中裕「宇治の歴史」 「紫花鈴香」十西田虎之助「源氏物語の環境」 「野遊びの図」 「山荘の図」 三条西堯山「源氏香について」 「紫花鈴香」十一「年中行事」 「紫花鈴香」十二秋山虔「源氏物語の作者・紫式部」 新訳(新書版) 付録第一号ドナルド・キーン「原文と翻詳」 付録第二号風巻景次郎「藤壺女御 かがやく日の宮」 付録第三号中村真一郎「源氏物語の現代性」 付録第四号阿部秋生「現代語訳ということ」 付録第五号沢潟久孝「私と源氏物語」 付録第六号暉峻康隆「源氏と一代男」 付録第七号入江相政「礼賛」 付録第八号町春草「源氏好み」 新訳(愛蔵版) 付録一号円地文子「肉体化した現代訳」 池田弥三郎「いろごのみの古代-光源氏はなぜ柏木を殺したか-」 「年中行事」 付録二号中村汀女「雨音風音」 玉上琢弥「平安朝時代の生活と源氏物語」 「年中行事(二)」 付録三号五島美代子「心のうた」 久米庸孝「『源氏』の台風」 「年中行事(三)」 付録四号小山いと子「谷崎文学と夫人」 今井源衛「源氏物語の研究書-松平文庫調査余録-」 「年中行事(四)」 付録五号中村直勝「源語の二滴」 奥野慎太郎「人間没落の文学」 「年中行事(五)」 新々訳(初刊本)付録 : 紫のゆかりを尋ねて 一号谷崎潤一郎・ハワード・ヒベット(対談)「源氏物語をめぐって」 「系図」 二号玉上琢弥「源氏物語の成立」 「巻二解説」 「系図」 三号秋山虔「源氏物語の作者と紫式部日記の世界」 「巻三解説」 「系図」 四号高木市之助「源氏物語の風土」 「巻四解説」 「系図」 五号中村幸彦「源氏物語の後世文学への永享」 「巻五解説」 「系図」 六号松尾聰「源氏物語の本文」 「巻六解説」 「系図」 七号神田秀夫「紫式部の生涯」 「巻七解説」 「系図」 八号土田真鎮「源氏物語の時代」 「巻八解説」 「系図」 九号中村義雄「王朝貴族の一生」 「巻九解説」 「系図」 十号井上光貞「源氏物語と浄土教」 「巻十解説」 「系図」 別巻阿部秋生「源氏物語を読んだ人々」 「別巻解説」 新々訳(愛蔵新書版) 月報第1号丸谷才一「榊の小枝」 幸田露伴「余沢」 安田靫彦「谷崎さんと源氏」(昭和14年2月6日広告より) 月報第2号金井美恵子「魅惑の谷崎源氏」 島木健作「一読者として」(昭和14年2月6日広告より) 月報第3号水上勉「その頃からの感動」 月報第4号中里恒子「源氏物語について」 月報第5号田久保英夫「初めての源氏体験」 月報第6号向田邦子「源氏物語・点と線」 月報第7号中村幸彦「近世における小説としての源氏物語」 月報第8号中村真一郎「谷崎と『源氏』と世界文学」 月報第9号大原富枝「谷崎源氏の懐かしさ」 月報第10号ドナルド・キーン「谷崎源氏の思い出」 別巻岡野弘彦「谷崎源氏と私」
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