特別区 賛否

特別区

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 05:42 UTC 版)

賛否

このような「特別区」制度の特殊性は、太平洋戦争中の1943年(昭和18年)に旧東京府と旧東京市が、戦時法令である旧東京都制の施行に伴って合併し東京都が設置されるに至ったことに起因する。地方自治法における特別区の規定は、戦前の東京都制における区の制度を手直しした上で「都」に置かれる「区」として承継したものである。

また現在の「特別区」は地方自治法において、普通地方公共団体である市に準ずる権限を有し(第281条第2項)、かつ平成12年の改正で基礎的自治体としての地位を回復したとは言えど(第281条の2第2項)、地方自治法の制定時には「基礎的自治体」として位置付けられていたものが、1952年の法改正によって「都の内部機関」に改められたという歴史的な経過もあり、その地位や権能は現在でも法律によって左右される可能性があることから、日本国憲法において地方自治権を保障された普通地方公共団体である市町村とは比較の対象にならないほどに脆弱である[9]

つまり現状の特別区は、自治権限こそ以前に比べ拡大してはいるものの、法体系上は未だに普通地方公共団体である市町村と同格ではなく、法律により市に準じた権限を付与された団体という立場であり、いまもなお「東京都制」の影響、つまり「東京都」(=旧東京市)の内部機関としての位置付けを脱してはいない。そのことは、特別区が基礎的自治体であると位置付けられた2000年改正以後の地方自治法でも、特別区の規定を第2編「普通地方公共団体」に移動させず、なお従来どおり第3編「特別地方公共団体」(財産区や事務組合・地方開発事業団など、普通地方公共団体の機関を定める)に置いていることからもうかがえる。

市への移行構想

東京都の特別区はこのことを強く意識しており、23区が共同で組織する公益財団法人特別区協議会(東京区政会館・東京都千代田区飯田橋)は「特別区制度そのものを廃止して普通地方公共団体である「市」(東京○○市)に移行する」という形での完全な地方自治権の獲得を模索している。例えば第二次特別区制度調査会は「戦時法令である東京都制下の区の制度を基礎とする特別区制度から脱却し、各々が独立しつつ自主的に協力・連合し合う東京○○市を目指す」という構想を打ち出しており[10]、この中で「東京大都市地域に充実した住民自治を実現していくためには、戦時体制として作られ帝都体制の骨格を引きずってきた都区制度は、もはや時代遅れというほかはない。特別区が名実ともに住民に最も身近な政府として自らを確立していくためには、『大東京市の残像』を内包する『都の区』の制度から離脱することが必要である。そのためには、東京大都市地域における広域自治体と基礎自治体の役割をさらに明確に区分し、都が法的に留保している市の事務のすべてを特別区(後述の「東京○○市」)が担い、都区間で行っている財政調整の制度を廃止する必要がある」と明言している。


注釈

  1. ^ 地方自治法第281条第1項で、特別区は「」と規定されており、2020年(令和2年)現在、「都」は東京都のみであるため。
  2. ^ 稲城市を除く。
  3. ^ アラブ系限定競走。
  4. ^ 島根県大田市は大田区と漢字表記が同一だが「おお」と読む。
  5. ^ 「都の区は、これを特別区という」と定めている。

出典

  1. ^ 大都市地域における特別区の設置に関する法律”. e-Gov法令検索 デジタル庁. 2022年1月26日閲覧。
  2. ^ 地方自治法 | e-Gov法令検索”. elaws.e-gov.go.jp. 2024年4月14日閲覧。
  3. ^ 最高裁大法廷判決、昭和38年3月27日刑集17巻2号121頁を参照。
  4. ^ a b c 特別区長公選制廃止事件 跳躍上告審判決(判決文全文) 京都産業大学公式サイト
  5. ^ 区市町村行財政―東京都総務局行政部のページ”. 区市町村行財政―東京都総務局行政部のページ. 2024年4月14日閲覧。
  6. ^ 大都市地域における特別区の設置に関する法律(平成24年法律第80号)概要 総務省公式サイト
  7. ^ a b 東京都の県庁(都庁)所在地について|組織情報”. 東京都政策企画局. 2024年2月12日閲覧。
  8. ^ a b c 特別区長公選制廃止事件 第一審判決(判決文全文) 京都産業大学公式サイト
  9. ^ 払拭されない「大東京市の残像」って何だろう? 特別区協議会公式サイト「飯田橋博士の特別区基礎講座」参照。
  10. ^ 特別区長会HP・「都区のあり方検討委員会及び都区のあり方検討委員会幹事会の記録」。このページのリンク先の『第二次特別区制度調査会報告 「都の区」の制度廃止と「基礎自治体連合」の構想』 を参照。
  11. ^ 渋谷区公式サイト | 渋谷区ポータル”. www.city.shibuya.tokyo.jp. 2024年4月14日閲覧。
  12. ^ 大都市地域における特別区の設置に関する法律案 衆法第180回(常会)・議案番号第28号。
  13. ^ 大都市地域における特別区の設置に関する法律の一部の施行期日を定める政令・平成24年政令第243号
  14. ^ 第180回国会衆議院総務委員会議録第15号32頁(平24.8.7)
  15. ^ 道府県における特別区設置に係る手続の創設” (pdf). 立法と調査 2012.11 No.334. 2019年8月18日閲覧。
  16. ^ 市町村の名称について” (pdf). 2013年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月18日閲覧。
  17. ^ 令和2年国勢調査”. 総務省統計局. 2022年1月26日閲覧。






特別区と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「特別区」の関連用語

特別区のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



特別区のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの特別区 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS