地域自治区
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/19 01:37 UTC 版)
地域自治区(ちいきじちく)は、日本において、市町村が、市町村長の権限に属する事務を分掌させ、及び地域の住民の意見を反映させつつこれを処理させるため、条例で、その区域を分けて定める区域ごとに設けることができる内部組織。地方自治法第202条の4以下で規定されるものと市町村の合併の特例等に関する法律第23条以下で規定されるものの2種類がある。2005年度に創設された。
地方自治法
※以下、この節の条数は、全て地方自治法のもの。
- 地方自治法による地域自治区は、市町村長の権限に属する事務を分掌させ、及び地域の住民の意見を反映させつつこれを処理させるため、条例により設置され(第202条の4第1項)、その市町村の全ての区域に設置しなければならず、一部の区域のみに置くことはできない(ただし、総務省は、同時に全ての区域に設置せず、段階的に設置することは可能という見解を示している)。
- 特別区や合併特例区とは異なり、法人格は有せず、あくまでも市町村の内部組織であり、恒久的なものとされ、設置期間の定めはない。
- 地域自治区には事務所が置かれ、事務所の位置・名称・所管区域は条例により、事務所の長は、市町村長の補助機関である職員(その市町村の長部局の職員)が命じられる(第202条の4第3項)、市町村長は、事務所の長に事務の一部を委任することができる(第202条の4)。
地域協議会
- 地域自治区には地域協議会を置くこととされ、地域協議会の構成員は、市町村長によって、地域自治区の区域内から選任される(第202条の5)。
- 地域協議会の構成員には報酬を支給しないこととすることができる(第202条の5第5項)。
- 地域協議会は、次の事項につき、市町村長その他の市町村の機関からの諮問を受け、又は自ら審議して意見を述べる(第202条の7)。
- 地域自治区の事務所が所掌する事務に関する事項
- 市町村が処理する地域自治区の区域に係る事務に関する事項
- 市町村の事務処理に当たっての地域自治区の区域内に住所を有する者との連携の強化に関する事項
- 市町村長は、市町村の施策に関する重要事項であって地域自治区の区域に係るもののうち、条例で定めるものを決定し、又は変更しようとする場合には、あらかじめ、地域協議会の意見を聴かなければならない(第202条の7第2項)。
指定都市の区又は総合区との併存
- 指定都市は、地域自治区を設けるときは、その区域は、区の区域を分けて定めなければならない。(第252条の20第9項)
- 区に区地域協議会を置く指定都市は、第二百二条の四第一項の規定にかかわらず、その一部の区の区域に地域自治区を設けることができる。(第252条の20第10項)
- 前条第七項から第十項までの規定は、総合区について準用する。(第252条の20の2第13項)
合併による地域自治区の特例
市町村の合併の特例等に関する法律(以下、「合併特例法」)によるものは、合併特例区と同様、市町村が消滅することに対する住民の感情面への配慮や合併後の市町村において地方自治が住民から離れてしまうことに対する救済措置の意味合いが強い。
地方自治法によるものとの差異は次の通り。
※以下、この節の条数は、全て合併特例法のもの。
- 設置は、合併前に、関係市町村の議会の議決を経た協議により決定される。
- 自治区の区域は、合併前の市町村の区域による。2以上の旧市町村の区域を1の自治区の区域とすることはできるが、旧市町村の区域と異なった区域割りはできない(合併特例法によらず、地方自治法による自治区を設置するのであれば可能)。
- 関係市町村の協議により存続期間を定めるが、限度はない(以上、第23条)。
- 自治区内の「事務を効果的に処理するため特に必要があると認めるとき」は、合併前に、関係市町村の議会の議決を経た協議により、期間を限定して、事務所の長に代えて特別職である区長を置くことができる。
- 区長は、地域の行政運営に関し優れた識見を有する者のうちから、合併後の市町村長が選任する。
- 任期は2年以内で関係市町村が協議で定めた期間。その市町村の住民である必要はない。市町村の常勤職員と兼任することはできない。
- 区長は、合併市町村の円滑な運営と均衡ある発展に資するよう、合併市町村の長その他の機関及び合併に係る地域自治区の区域内の公共的団体等との緊密な連携を図りつつ、担任する事務を処理する。市町村長の定めるところにより、上司の指揮を受け、その事務を掌理し部下の職員を指揮監督する(以上、第24条)。
住所の表記
市町村合併により設置された地域自治区の区域内では、住所の表記において、地域自治区名をつける。〜区、〜町、〜村など。設置期間終了後、引き続き、旧市町村の区域を単位として地方自治法による地域自治区が設置される場合も同様(合併特例法第25条)。
関連項目
- 自治区
- 地域自治区の一覧
- 合併特例区
- 日本の市町村の廃置分合(市町村合併)
地域自治区
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 15:25 UTC 版)
上越市には計28の地域自治区が設けられている。これは2005年(平成17年)1月1日付で周辺13町村を編入合併した際、当時の合併特例法で定められた同制度を導入したもので、全国初の導入例となった。 地域自治区制度とは地域住民の声を行政に反映させるための制度で、住民の意見を集約する地域協議会が各区域ごとに設置されているほか、住民から選ばれた委員(ボランティア)が、市の施設運営や予算などについて協議し、市長に意見を伝えることができる。上越市の地域協議会の委員の選任は、全国で唯一、専任投票と呼ばれる選挙方式で選出されている。まず公募によって立候補者を募り、応募者が定員を超えた場合公職選挙法に準じた選挙を行い、その結果を尊重して市長が選任する。応募者が定数に満たない場合は、不足分を市長が選考し選任するとされている。 行政側は地域活動のとりまとめなどを通じて住民を支援する。また、地域自治区内の施設の設置・廃止・管理のあり方について変更を行う場合、市長はあらかじめ地域協議会の意見を聴取しなければならない仕組みとなっている。なお政令指定都市の行政区とは異なり、行政権限は有さない。 前掲のとおり、まず2005年1月1日付で編入合併した13町村に新設され、13区の旧町村庁舎には「総合事務所」が設けられ、所長が配置された。また、この編入市域13区の地名・町名には自治区名が冠されるとともに「大字」の表記が廃止された。 さらに、編入合併前の旧市域についても地域自治区設置の検討が進められ、2009年(平成21年)3月の市議会で「上越市における地域自治区の設置に関する条例」の一部改正の承認を経て、同年10月1日付で昭和の大合併以前の市町村区域に基づく15区が新設された。この旧市域15区の地名・町名の表記には自治区名を冠さないほか、住居表示や町名変更が施行されていない地域の一部では「大字」の表記が存続されている。また総合事務所に代わる事務機能として、南部(高田地区南部の4区)、中部(高田地区北部の5区)、北部(直江津地区の6区)の3地区ごとに、各自治区の協議会に関する事務等を行う「まちづくりセンター」が設置されている。 なお地域自治区制度は2008年(平成20年)4月から合併特例法に代わり、地方自治法に基づいて運用されている。 2005年1月設置(編入市域13区) 安塚区(旧安塚町) 浦川原区(旧浦川原村) 大島区(旧大島村) 牧区(旧牧村) 柿崎区(旧柿崎町) 大潟区(旧大潟町) 頸城区(旧頸城村) 吉川区(旧吉川町) 中郷区(旧中郷村) 板倉区(旧板倉町) 清里区(旧清里村) 三和区(旧三和村) 名立区(旧名立町) 2009年10月設置(旧市域15区) 南部まちづくりセンター管内 高田区(旧高田市) 金谷区(旧金谷村) 三郷区(旧三郷村) 和田区(旧和田村) 中部まちづくりセンター管内 新道区(旧新道村) 春日区(旧春日村) 諏訪区(旧諏訪村南部) 津有区(旧津有村) 高士区(旧高士村) 北部まちづくりセンター管内 直江津区(旧直江津市) 有田区(旧有田村) 八千浦区(旧八千浦村) 保倉区(旧保倉村) 北諏訪区(旧諏訪村北部) 谷浜・桑取区(旧谷浜村・桑取村)
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