名神大社 名神大社の概要

名神大社

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/22 04:11 UTC 版)

名神の称

名神(みょうじん)は神々の中で特に古来より霊験が著しいとされる神に対する称号で、『続日本紀天平2年(730年)10月庚戌(29日)条の、渤海からの貢物を諸国の「名神社」に奉ったとあるのが文献上の初見であるが[1]弘仁12年(821年)正月4日付太政官符に[2]、名神は「或は農の為に歳を祷り、或は旱の為に雨を祈る。災害を排すに至り荐(しきり)に徴応有り」とあるように、とりわけ農業の保護が期待されていたことが窺える。もっとも、その点では官社一般も同様であるため、官社数の増大に伴って官社中でも特殊的な位置を占めることを明確化するために名誉的に設定されたものと見る説もある[3]。『日本後紀』以後、次第に仏教用語の意味合いを含んだ「明神」と混用記載されるようになり、律令制の弛緩に伴って、名神社は二十二社へと収縮固定されて名神祭も廃絶したため、中世以後は社格の意味を持たない「明神」にとって代わられた。

ある神が名神と認められる条件は、官社(官幣社)に列し(神位を授けられ)、大社に昇格している必要があるとされるが[3]、非官幣社や無神位の神が名神になる例もあり、また「六国史」等の記録にも、名神に預かるようになった理由を示すものは稀である(わずか3例4神社のみ[4])ため判然とはしておらず、「名神祭式」の預名神官社条にも、その手続きは定められているものの、その要件は示されていない。なお、同条によれば、名神となるには内印の押された名神に預かる旨の太政官符神祇官と所轄する国に下達されるのを待て、とあり、勅許を得てから神祇官の神名帳(これが大成されたものが『延喜式神名帳』)と諸国の神名帳(いわゆる国内神名帳)に記載されるという手続きが定められていた。

名神祭

名神祭(みょうじんさい)は国家的事変が起こり、またはその発生が予想される際に、その解決を祈願するための臨時の国家祭祀である。「名神祭式」に規定されるが、そこには対象とする神社名・座数・幣物の色目が記載されるのみなので[5]、 その起源や詳しい儀式次第を知ることはできないものの、儀式次第については後述する祈雨神祭との類似から、『江家次第』に記す丹生川上貴布祢両神社に対する祈雨・止雨のそれや、『朝野群載』に記す祈雨祭の祝詞が参考になるとされる[6]

具体的な祈願の例としては、天平宝字8歳(764年)11月癸丑(20日)の藤原仲麻呂の乱における仲麻呂誅討の報賽として近江国の名神社に奉幣したとある、実際に政治的事変が起こった際に行われた記事が初見であるが(『続日本紀』)[1]延暦7年(788年)5月己酉(2日)の詔勅に「伊勢神宮及び七道の名神に祈雨す」とあってから以後は、記録に残る例は畿内の名神に限る場合は祈止雨を、全国名神に及ぶ場合は豊稔の予祝や災害の予防といった抽象的なものを祈願したものが大半を占める(上記弘仁12年の官符参照)。特に畿内の名神については、同じ臨時祭である祈雨神祭と重なるものがほとんどであることからその関連性が指摘でき(幣物の色目もほとんど同じである)、祈雨神祭に連なるのは名神と山城大和両国の山口神や水分神といった農耕の用水に関わる神であるため、名神にこれら山口・水分の諸神を加えて成立したのが国家の祈雨神であろうともされる[7]。なお、祈雨止雨祈願の場合、まず丹生川上・貴布祢両神社に奉幣し、神験がなければ竜田広瀬両神社を加え、なお治まらなければ、11社(二十二社の前身)へ、次に祈雨神祭祭神へ、更に畿内名神社へ、と漸次拡大されていったようである[8]


  1. ^ 写本により、単に式内大社とする場合もある。
  2. ^ a b 意波與命神社と楊原神社は、写本により異同がある。九条家本は意波與命神社とするが、流布本では楊原神社とする(『静岡県の歴史』(山川出版社)p50)。
  3. ^ a b 射水郡の名神大社は、写本によりどちらか一方のみを記載。
  4. ^ 「姫坂神社」における「名神大」は、大山積神社と多伎神社に挟まれたための衍字と見られている。
  5. ^ 写本により「阿沼美」「阿治美」の2通りがある。


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