マスメディア マスメディアの概要

マスメディア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/28 23:37 UTC 版)

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姫路駅キヨスク。新聞は代表的なマスメディアのひとつである。

概説

三洋電機の古いラジオ。ラジオは最も古い放送メディアである
テレビ

マスメディアとはマスコミュニケーションを行うメディア(=媒体)のことであり、たとえば新聞出版放送映画などのこと[1]ブリタニカ国際百科事典によると、新聞、テレビラジオ、映画、雑誌などがその代表、とのことであり、受け手である大衆に対して 公的・間接的・一方的に意味内容を伝達するような技術的道具や装置のことを言う[2]。また「マスメディア」は、マスメディアを用いてマスコミュニケーションを行っている組織も含めて指すこともある。例えば新聞社出版社放送局テレビ局ラジオ局)などである。

なおマスコミュニケーションとは、大衆への大量の情報伝達を指す[3]。が、日本では「マスコミュニケーション」の略語の「マスコミ」をマスメディアという意味でも用いることがある[4]。なお、マスメディアのうち「新聞」や「放送」、「雑誌」は「報道」や「ジャーナリズム」と言い換えられることがある。「マス(mass)」という語は多義的で、もともと、大量(のモノ、コト)や大勢の人々を意味し、群衆などの意味もあるが、辞書などのマスメディアに関する説明では、「大衆」や「大量」の意味だとされることが多い。

現代のマスメディアがどのような状態かというと、資本主義社会においてはマスメディアの大多数が営利企業としていとなまれており、その結果、利潤の獲得や経営の安定が優先される傾向があり、伝達される内容が低俗化・画一化する傾向がある。一方、社会主義社会においては政府や支配政党の方針によって伝達される内容が編集される状態になる[2][注釈 1]

歴史

1520年ごろの活版印刷

大量の受け手への、情報の同時発信を最初に可能にしたのは15世紀半ばのヨハネス・グーテンベルクによる活版印刷の発明である。グーテンベルクは活版印刷術を使い、世界初の近代的な出版物であるグーテンベルク聖書を完成させた。この活版印刷術は急速にヨーロッパに広まり、1480年ごろにはすでにヨーロッパの各地に印刷所が設立されていた[5]。これにより出版が盛んになり、それまでに比べ非常に大量の書籍が発行されるようになった。またこの印刷の隆盛はパンフレット類の大量発行をも可能にし、この流れの中で15世紀末以降、不定期刊行の新聞が各地で発行されるようになった。こうした新聞は初期には何か大事件があった際にのみ発行される、いわゆる瓦版のようなものであったが、17世紀初頭には週刊化する新聞が出現し始めた。

こうして新聞が一般化した18世紀に入ると、アメリカ独立戦争フランス革命などの市民革命が起きるようになるが、この過程で新聞は世論の形成に大きな役割を果たし、樹立された新政府においては自由権の一部として法的に言論の自由が認められるようになった[6]。この言論の自由はのちにマスメディアの拠って立つ根幹となった。

欧米では、19世紀の産業革命による都市人口の増加や社会変化に伴い、新聞の大衆化が進んだ[7]。同時期、印刷技術が長足の進歩を遂げたことで書籍の大量生産も可能になり、出版業もまた大衆化が進んでいった[8]

1876年電話が発明されると、これを利用して不特定多数の利用者に情報や娯楽を提供するアイデアが生まれ、1879年にはすでに電話線を利用した放送が試みられていた[9]1893年にはオーストリア・ハンガリーブダペストにおいて有線放送局が成立したものの、これはほとんど追随者を生まなかった[10]。一方、1895年には、マルコーニが電波による無線通信の実験に成功し、1920年に世界最初の商業ラジオ局であるKDKAがアメリカ合衆国・ペンシルベニア州で開局した[11]1922年にはアメリカでラジオブームが起き、以後ラジオは急速に普及した[12]

ラジオは音声だけの放送であるため、これに加えて画像の送信をも可能とするテレビの開発が1920年代には世界各国で開始され、やがて1930年代には試験放送がはじまった。1950年代に入るとテレビはアメリカで急速に普及し[13]、欧州諸国や日本などもすぐにこれに続いた。テレビはメディアの中でもっとも巨大なものとなり、20世紀後半の社会の在り方を大きく変えた[14]。一方ラジオは1950年代中盤のトランジスタラジオの開発によって小型化が進み、電池の改良と相まってどこにでも携帯することが可能になった[15]ことで一定の地位を確保した。新聞・雑誌は放送メディアにくらべて速報性に劣り[16]、広告の出稿などで徐々にテレビ優勢の状況が作られていった[17]ものの、テレビに次ぐ重要なマスメディアとしての地位を確保していた。

こうした状況は、1990年代後半あたりからのインターネット利用の普及で大幅に変化した。世界的なインターネット利用の急増に伴って、旧来のマスメディア各媒体の相対的位置付けの低下が徐々に進行している。日本を例にとれば、1995年から2010年にかけてインターネットの利用が激増する[18]一方で、テレビ視聴時間は微減[19]、新聞[20]・ラジオ[21]・雑誌[22]は減少傾向にある。アメリカやヨーロッパにおいては特に従来の紙による新聞の販売が漸減しており、2009年ごろから新聞社の規模縮小や廃刊が続いている[23]

機能

マスメディアの機能に関しては、多くの学者が分類を行っている。

ハロルド・ラスウェルはマスメディアの機能を、社会環境の現状や変化に対し情報を伝え警告を発する「環境の監視」、社会環境に関して構成員間の意見を整理し世論を形成させる「構成員の相互作用」、そして価値観や社会的規範、知識などを次の世代へと繋いでいく「社会的遺産の世代的伝達」の3つに分類した[24][25]

ウィルバー・シュラムは同様に、マスメディアの機能を「見張りの機能」、「討論の機能」、「教師の機能」の3つとした[26]

ロバート・キング・マートンポール・フェリックス・ラザースフェルドは、マスメディアの機能を、人物や事象を社会的に認知させる「地位付与の機能」、道徳や法を人々に認知させ従わせる「社会規範の強制機能」、そして大量の情報によって人々の感覚を麻痺させ社会への関心をなくさせる「麻酔的悪作用」の3つであるとした[27][28]


注釈

  1. ^ マスメディアは正確な内容を伝えているとは限らない。内容は正しいこともあれば誤っていることもある。「マスメディア」は定義のとおり、あくまで、大衆に対して大量に伝えている、というだけである。
  2. ^ 雑誌への投稿は編集部の選別を通る必要があるため一定水準以上の文章を書かなけければいけないという規範が読者に植えつけられるが、SNSは自由気ままに書けるため質が低くなりがちでそれが世論形成にマイナスの影響を与えるという指摘もある[56]
  3. ^ しかし既存メディアは双方向ではなく一方的な報道のため、大衆の意見はこうであろうというマスコミの独断にもとづく視点であり、かならずしも人々が何を考えているのか情報を共有するものではない。

出典

  1. ^ a b 広辞苑第七版「マス・メディア」
  2. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『マス・メディア』 - コトバンク
  3. ^ 広辞苑第七版「マス・コミュニケーション」
  4. ^ 広辞苑第七版「マス・コミ」
  5. ^ 「図説 本の歴史」p46 樺山紘一編 河出書房新社 2011年7月30日初版発行
  6. ^ 「歴史の中の新聞 世界と日本」門奈直樹 p14(「新聞学」所収)日本評論社 2009年5月20日新訂第4版第1刷
  7. ^ 「ジャーナリズムの社会的意義と新しいメディア」鈴木謙介 p131(「新聞学」所収)日本評論社 2009年5月20日新訂第4版第1刷
  8. ^ 「出版メディアの変遷」p147 長谷川一(「新 現代マスコミ論のポイント」所収)天野勝文・松岡新兒・植田康夫編著 学文社 2004年4月10日第一版第一刷
  9. ^ 「無線通信の世界」スティーヴン・カーン(「歴史の中のコミュニケーション メディア革命の社会文化史」所収)p253 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤー編 林進・大久保公雄訳 新曜社 1995年4月20日初版第1刷
  10. ^ 「初期の電話利用」キャロライン・マーヴィン(「歴史の中のコミュニケーション メディア革命の社会文化史」所収)p191-198 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤー編 林進・大久保公雄訳 新曜社 1995年4月20日初版第1刷
  11. ^ 「メディアと日本人」p14 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  12. ^ 「放送の始まり」スーザン・J・ダグラス(「歴史の中のコミュニケーション メディア革命の社会文化史」所収)p256-257 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤー編 林進・大久保公雄訳 新曜社 1995年4月20日初版第1刷
  13. ^ 「テレビと社会」レイモンド・ウィリアムズ(「歴史の中のコミュニケーション メディア革命の社会文化史」所収)p290 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤー編 林進・大久保公雄訳 新曜社 1995年4月20日初版第1刷
  14. ^ 「メディア学の現在 新版」p17 山口功二・渡辺武達・岡満男編 世界思想社 2001年4月20日第1刷
  15. ^ 「日用品の文化誌」p149 柏木博 岩波書店 1999年6月21日第1刷
  16. ^ 「メディア激震 グローバル化とIT革命の中で」p18 古賀純一郎 NTT出版 2009年7月2日初版第1刷
  17. ^ 「メディア学の現在 新版」p45 山口功二・渡辺武達・岡満男編 世界思想社 2001年4月20日第1刷
  18. ^ 「メディアと日本人」p70-71 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  19. ^ 「メディアと日本人」p54 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  20. ^ 「メディアと日本人」p64 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  21. ^ 「メディアと日本人」p79 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  22. ^ 「メディアと日本人」p87 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  23. ^ 「メディアとジャーナリズムの理論 基礎理論から実践的なジャーナリズム論へ」p210 仲川秀樹・塚越孝著 同友館 2011年8月22日
  24. ^ 「メディアとジャーナリズムの理論 基礎理論から実践的なジャーナリズム論へ」p69-71 仲川秀樹・塚越孝著 同友館 2011年8月22日
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  27. ^ 「メディアとジャーナリズムの理論 基礎理論から実践的なジャーナリズム論へ」p76-78 仲川秀樹・塚越孝著 同友館 2011年8月22日
  28. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p29-31 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  29. ^ 「現代政治学 第3版」p106 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
  30. ^ 「ポリティカル・サイエンス事始め 第3版」p46 伊藤光利編 有斐閣 2011年7月20日第3版第4刷発行
  31. ^ 「メディアの歴史 ビッグバンからインターネットまで」p193-194 ヨッヘン・ヘーリッシュ 川島建太郎・津﨑正行・林志津江訳 法政大学出版局 2017年2月6日初版第1刷
  32. ^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p60 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
  33. ^ 「現代政治学 第3版」p106 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
  34. ^ 「現代政治学 第3版」p106-107 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
  35. ^ 「メディア学の現在 新版」p270-271 山口功二・渡辺武達・岡満男編 世界思想社 2001年4月20日第1刷
  36. ^ 「現代政治学 第3版」p143 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
  37. ^ 「メディアと日本人」p101-102 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  38. ^ 「現代政治学 第3版」p52-54 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
  39. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p31 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  40. ^ 「メディアとジャーナリズムの理論 基礎理論から実践的なジャーナリズム論へ」p79 仲川秀樹・塚越孝著 同友館 2011年8月22日
  41. ^ 「環境になったメディア マスメディアは社会をどう変えているか」p98 藤竹暁 北樹出版 2004年3月25日初版第1刷
  42. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p31 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
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  46. ^ 「放送産業の構造と特質」p105 伊豫田康弘(「新 現代マスコミ論のポイント」所収)天野勝文・松岡新兒・植田康夫編著 学文社 2004年4月10日第一版第一刷
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  52. ^ 「メディアとジャーナリズムの理論 基礎理論から実践的なジャーナリズム論へ」p210 仲川秀樹・塚越孝著 同友館 2011年8月22日
  53. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p101-103 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
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  55. ^ 「メディアとジャーナリズムの理論 基礎理論から実践的なジャーナリズム論へ」p14 仲川秀樹・塚越孝著 同友館 2011年8月22日
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  59. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p187 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  60. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p183-184 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  61. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p184 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
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  70. ^ 「メディア激震 グローバル化とIT革命の中で」p44 古賀純一郎 NTT出版 2009年7月2日初版第1刷
  71. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p207 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  72. ^ 「世界地理大百科事典1 国際連合」p318 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  73. ^ 「世界地理大百科事典1 国際連合」p310 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  74. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p208 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  75. ^ 海形マサシ (2009年9月23日). “ネットメディアはどうやったら生き残れるか”. JanJanオムニバス (JANJAN). http://www.news.janjan.jp/media/0909/0909210573/1.php 2009年9月23日閲覧。 
  76. ^ 藤代裕之 (2008年7月11日). “大量販売モデルにこだわるニュースメディアの落とし穴”. ガ島流ネット社会学 (日本経済新聞). http://it.nikkei.co.jp/internet/column/gatoh.aspx?n=MMIT11000011072008 2008年12月30日閲覧。 
  77. ^ 藤代裕之 (2008年12月26日). “異例の引き抜き人事にみる大新聞の危機感”. ガ島流ネット社会学 (日本経済新聞). http://it.nikkei.co.jp/internet/column/gatoh.aspx?n=MMIT11000025122008 2008年12月30日閲覧。 
  78. ^ 小泉進次郎が今年から新聞を読むのをやめた理由(現代ビジネス) - Yahoo!ニッポン


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