送電
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/16 02:39 UTC 版)

送電(そうでん、英語: power transmission)とは、
概説
送電とは、ある長さの電線(伝導体)の両端に電圧差を発生させて電流を流すこと(通電)であり、電力を供給することである。家屋内のコンセントから電気器具の間の配線や鉄道・工場・病院などでの自家発電機からの配電もこの原理ではあるが、特に長距離の場合を送電と呼ぶ。
19世紀半ばの電気事業の黎明期には、発電所は需要の多い都市部に建設され直流や交流の電力が消費者に販売されていた。後に大規模水力発電や交流電流の長距離送電の技術が確立し大規模な送電網が張り巡らされていった。 電力の供給元である一般電気事業者(電力会社)の発電所は多くの場合、電力消費者から離れた場所に設置されている。特に大規模水力発電所はその適所が山間部であり消費者の多い平野部とは距離があり、また原子力発電所は水力発電所のような地形的制約は無く人口密集地への設置も可能ではあるがリスク回避の為に人口密集地から離れた所に設置される。長距離の送電では電線の抵抗により送電ロス(ジュール熱)が発生するため、より高電圧で低電流に変換して送電ロスを低減させている。発電所内の変電所で27.5万から50万ボルトの超高電圧へ変電(昇圧)され送電されるが電力最終消費者への送電網の途中に変電所が幾つかあり、そこでは段階的に電圧が下げられ(降圧)、日本の一般家庭向けには100ボルトまで変圧される[1]。
- 送電経路内の施設と設備[1]
- 発電所
- 発電所の出力は数千から2万ボルトの電圧であり、発電所内または隣接した変電所で27.5万から50万ボルトの超高電圧へ変電(昇圧)され送り出される。
- 超高圧変電所
- 超高圧変電所は発電所から最初の変電所で、より電力消費者に近くに立地し、15.4万ボルトへ変電され1次変電所へ送電される。
- 1次変電所
- 1次変電所では一部は15.4万ボルトのまま大工場や鉄道へ電力供給され、残りは6.6万ボルトへと変電され中間変電所へ送電される。
- 中間変電所
- 中間変電所では6.6万ボルトから2.2万ボルトへ変電され、一部は工場へ供給され、残りは配電用変電所へ送電される。
- 配電用変電所
- 配電用変電所では2.2万ボルトから6600ボルトへ変電され一部はオフィスや工場へ供給され、残りは柱上変圧器へと送り出される。
- 柱上変圧器
- 柱上変圧器では100ボルト、200ボルトへ変電され家庭や小規模事業所などへ供給される。
- 電線路
- 発電所と変電所、変電所間、電柱に取り付けられたトランスと最終電力消費者の間は鉄塔や電柱で支持された電線(架空電線路)や地中電線路で結ばれている。
以上が電力供給の経路であるが、発電所から配電用変電所までを「送電」、以降を「配電網」と呼んでいる[2]。
通常、送電は送電経路での電力損失を抑えるため、数万ないし数十万ボルトの特別高圧で行う。近年はスマートグリッドと呼ばれるより効率的な送電方法が開発されつつある。
送電系統の過負荷・地絡・短絡・落雷などは、多数の需要家の供給支障事故につながる。
なお、規模は小さくても、例えば商用配電線と接続して売買電を行う家庭用太陽光発電システムでは、太陽電池パネルからパワーコンディショナーまでが送電系統となる。
送電方法
無線送電
無線送電を試みようとする取り組みの中で、初期のものとしてはニコラ・テスラの「世界ワイヤレスシステム」が知られている。
現在はマイクロ波やレーザー光を用いて発電衛星から送電する計画が進行中である。既に基礎的な実験が各国で進められている (「宇宙太陽光発電」の項も参照) 。電磁場の強度は距離の二乗に反比例するので、指向性の高いレクテナを用いて受電回路は送信周波数と同調する定数に設定される。
Wi-Fiの電波を利用してテレビ用のリモコンを充電する技術が確立している[3]。
蓄電池の運搬
洋上風力発電など消費地から離れた場所からの送電法として、二次電池に蓄電し電池を運搬するという手法もある[4]。
脚注
出典
- ^ a b 電気事業連合会 「電気が伝わる経路」
- ^ 前川幸一郎・荒井聰明『送配電』東京電機大学出版局 はしがき。
- ^ ASCII. “Wi-Fi充電できるサムスンのTVリモコン、モバイル機器への応用に期待”. ASCII.jp. 2022年2月12日閲覧。
- ^ “世界初「電気を運ぶ船」建造へ 船を海底ケーブルの代わりに 目指すは自然エネの“爆発的普及””. 乗りものニュース. 2021年8月20日閲覧。
参考文献
- 前川幸一郎・荒井聰明『送配電』東京電機大学出版局,1987年(第5版:初版発行1967年) ISBN 4-501-10240-3
関連項目
外部リンク
送電
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 18:48 UTC 版)
詳細は「イドロ・ケベックの送電網」を参照 長距離に及ぶ非常に高電圧な送電網を構築し管理しているイドロ・ケベックの専門的技術は電力業界で長い間認識されており、イドロ・ケベックの送電部門であるトランスエナジーは北米最大の送電網を管理している。北米電力信頼度協議会のシステムのケベック・インターコネクションにおいて独立したシステム管理や信頼出来る調整役として北東域電力調整評議会の一翼を担っている。トランスエナジーはケベック州での電力の流れを管理し、卸売市場全参加者に差別なくアクセスできるように保証している。この無差別アクセス政策は例としてニューファンドランド・アンド・ラブラドール・ハイドロが送電料を払った上でトランスエナジーの送電網を使ってニューヨーク州の公開市場でチャーチル滝で発電された電力の一部を販売することを可能としている。 近年、トランスエナジーの「Contrôle des mouvements d'énergie」 (CMÉ)というシステム制御ユニットがRégie de l'énergie du Québecとアメリカ合衆国エネルギー規制委員会による米加二国間協定の下、ケベック州全体の一括送電網における信頼出来る調整役として機能している。 トランスエナジーの高電圧網は33,630 km (20,900 mi)以上に及んでおり、11,422 km (7,097 mi)の765、735 kV送電線や514箇所の変電所のネットワークが含まれていて、10,850 MWの最大受電容量と7,994 MWの最大送電容量で隣接するカナダの州やアメリカ合衆国を17箇所で接続している。
※この「送電」の解説は、「イドロ・ケベック」の解説の一部です。
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送電
「送電」の例文・使い方・用例・文例
- 間送電報.
- 電力線, 送電線.
- 送電[病気の伝染].
- 送電を断つ
- 親類の配列換えは、相互キャパシタンスとインダクタンスの効果を最小にするために送電線を置きます
- 長距離送電線
- 送電する
- 託送電報という,電報の制度
- 託送電報という,電話で委託された電報
- 送電線をささえるための柱
- 有線放送電話という電気通信設備
- 放送電波を受信して録音すること
- 地中を通る送電線
- 軌道上で太陽光発電または太陽熱発電を行い,得られた電力を電波で地球に送電する人工衛星
- 放送電波に画像信号をのせ,家庭のファクシミリ受信設備に送信する放送
- 送電が停止する
- ラジオやテレビの放送電波の周波数
- 送電線という,電気を送る電線
- 通常放送電波でのデジタルテレビ放送が12月1日に東京,名古屋,大阪で始まった。
- それは,クレーン船が旧江戸川の上を通る送電線を破損したときに起こった。
品詞の分類
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