鞍馬天狗と時代小説とは? わかりやすく解説

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鞍馬天狗と時代小説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 08:04 UTC 版)

大佛次郎」の記事における「鞍馬天狗と時代小説」の解説

鞍馬天狗」は当初勤皇側に正義求めスタイルだったが、1927年少年向けに『角兵衛獅子』を書く頃からはフェアプレイ精神による社会志向されるようになる。また『角兵衛獅子』では、少年読者視点取り入れるために杉作少年登場させ、鞍馬天狗少年たちにとってもヒーローとなっていった。鞍馬天狗連作書き続けることに、やがて苦痛感じるようになり、水戸天狗党題材にした『天狗騒動』(1925)の「序」では「作者は『鞍馬天狗に対して抱いている不満を晴らす為に、この作品書いたと云っても差支ありません」とも書いている。 1945年連載された『鞍馬天狗敗れず』では、岡野新助名乗る鞍馬天狗生麦事件への対応でイギリスへ抵抗主張して幕府捕縛され刑死たように見えたが、敗戦後発表され最終回では生きて現れ以後戦後空間生きることになる。『新東京絵図』(1947-48年)では明治維新後の東京海野雄吉と名乗って隠れ住んでいる鞍馬天狗は、旧幕臣たちの生き方巡って新政府とも対立していく。最後シリーズ作品地獄太平記』(1965年)の後、1967年から鞍馬天狗と同じ時代題材にした『天皇の世紀』の連載始める。ここでは、攘夷時代狂気であったと言う歴史観薩摩長州による明治政府への批判的な視点反映されている。 映画での鞍馬天狗役は嵐寛寿郎大人気数多く制作公開されたが、1953年原作者として日本文藝家協会通じ映画会社側に「著作権無視」「原作勝手に書き換えている」「映画鞍馬天狗は人を斬りすぎている」ことを問題にして、上映中止申し出た大佛自身が「天狗ぷろだくしょん」を立ち上げて東宝契約し脚本にも参加して小堀明男主演新鞍馬天狗3本撮った評判はよくなく、再び嵐寛寿郎主演にして2本を作って終了その後東映東千代之介大映市川雷蔵などによって制作された。 『照る日くもる日』は、これもサバチニの『スカラムーシュ』を下敷きにした作品で、これを読んだ菊池寛は「あれは、君、大衆文学の手全部使ってあるじゃないかあれだけ書かれては、あとの者が書けなくなるよ」と語ったほどで、連載が始まると評判になって3社競作映画化され、また小田富弥挿絵祝儀袋メンコなども売り出されるなど、同時期に大阪毎日新聞』に連載されていた吉川英治鳴門秘帖」と人気二分した。 『赤穂浪士』では四十七士従来の「義士」では無く浪士」として捉え元禄期における柳沢吉保新し勢力手を組んだ官僚政治への旧来の武士道からの反抗として描いたところが画期的であり、その後忠臣蔵物語にも影響与えた戦後1952年になって赤穂浪士の「不義士」の一人である小山田庄左衛門主人公に、大石内蔵助らの造形そのままに、仇討ち疑問抱いて義士脱落していく浪士描いている。1954年新作歌舞伎冬の宿」でも庄左衛門題材にした。楠木正成戦死600年にあたる1935年大楠公600年記念事業一端として、朝日新聞で『大楠公』を連載し後醍醐天皇隠岐脱出までを連載100回で区切りとして終了続いて1943年に正成戦死後を描く「みくまり物語」、正成と大和まつわる紀行文勤王史蹟行脚 葉陰」を執筆1928年に「大衆文芸転換期」を発表しラブレーデフォーリラダンアポリネールなどの空想豊かな新文芸目標掲げ同年には海洋冒険小説ごろつき船」を連載、翌1月からは題名を「海の隼」と変えて舞台シベリアからベトナムまでに拡げたスケール大きな物語展開した日蓮650年大遠忌2年後控えた1930年には『日蓮』の連載依頼され伝説取り入れつつ人間としての日蓮像描いた。1933-34年に『時事新報』に「安政の大獄」を連載当時小林多喜二獄死京都大学滝川事件などの言論弾圧への抗議意識込められ水戸藩士日下部伊三治井伊直弼家臣長野主膳らを中心に描いたものだが、前半部までで連載終了し、桜田門外の変までに至る後半部1975年の『大佛次郎時代小説全集』に収録された。また安政の大獄については『天皇の世紀』でも詳細に叙述している。 「薩摩飛脚」は、大佛3度執筆している。1度目1932年に『キング』(講談社)に連載され薩摩から戻った幕府隠密が、行方不明となった同僚のために葛藤対決繰り返しながら再度薩摩目指すが、<大阪の巻>を終えたところで連載中絶未完のままながら映画化もされた。1946年には自身主筆務める『学生』(研究社)に連載され行方不明となった幕府隠密の子兄弟父を探して薩摩へ向かうという青春小説になっている3度目1955年北海道新聞中部新聞西日本新聞連載され1度目同様の筋立てで、行方不明隠密の妻と弟や様々な人物主人公複雑に絡み合う物語で、翌年単行本として出版された。薩摩飛脚という言葉は、薩摩向かった隠密江戸戻れるのはまれであることから、出かけたまま家に帰らない喩えとして使われたが、大佛1955年連載予告で「面白言葉だし、小説になる事情である」「あえて同じ題名使って新しく書くのは、自分が、よほどこの言葉好きだからである。」と意気込み語ったが、前作比べて人物の動機男女恋愛心理緻密に描写され作品になっている戦争末期になると、後藤又兵衛という、強権屈しない純粋な武将の姿を描く時代物乞食大将』にその場を移す。1950年に『おぼろ駕籠』を新聞連載する際には「久し振り旗色明らかな大衆小説書こう思い立った」と述べ田沼時代舞台に、権力壁に突き当たった若い旗本の姿を通して人々自立精神目覚め描いている。 1967年NHKから明治100年記念にちなんだ歴史ドラマ執筆依頼され小説作品では未刊だが『逢魔の辻』を中心にその人』『薔薇の騎士』などを組み込み維新時代生きる旗本3人の姉妹生涯描いた大河ドラマ三姉妹』が放映された(鈴木尚之脚本)。1968年11月に同じ構想元に戯曲執筆し新作歌舞伎国立劇場上演された。千谷道雄劇評で「この戯曲主役歴史である」「三人妹達運命通じて、その背後に人の力では抗し得ない大きな歴史の流れ描かれている」とした。大佛時代小説ヴィクトル・ユーゴージョゼフ・コンラッドのように、政治から目をそらすことなく同時に歴史上大人物存在感をしのぐ「世界性のあるロマンス」として拡がって行く特徴がある。

※この「鞍馬天狗と時代小説」の解説は、「大佛次郎」の解説の一部です。
「鞍馬天狗と時代小説」を含む「大佛次郎」の記事については、「大佛次郎」の概要を参照ください。

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