貿易促進権限による通商協定 1974年通商法-2015年TPA法とは? わかりやすく解説

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貿易促進権限による通商協定 1974年通商法-2015年TPA法

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貿易促進権限」の記事における「貿易促進権限による通商協定 1974年通商法-2015年TPA法」の解説

1973年東京ラウンド開始されると、非関税障壁削減関税削減以上に貿易阻害要因として重視されるようになったこのためケネディ・ラウンド二の舞避け新たに非関税障壁削減交渉においても、関税交渉同様の権限大統領与え方法検討された(関税交渉については、従来どおり一定の範囲での引下げ権限付与とされた)。政府1973 年4 月議会示した案は、大統領議会提出した国際協定提出後上院下院一方90以内否決しない限り協定承認され関連する米国通商法が修正されるという「立法拒否権」に基づく措置であった。この案は下院支持したが、上院では財政委員会幹部違憲可能性指摘して政府案を審議対象にせず、代替案としてファスト・トラック権限、つまり現在の貿易促進権限起草し1974年通商法第151条1975年1月3日から5年間の期限付き盛り込まれた。 1974年通商法により導入され貿易促進権限は、通商協定実施法案についてガット東京ラウンド交渉合意実施するための1979年通商協定法法案審議初め適用された。また、1979年通商協定法は、貿易促進権限を、非関税障壁にかかる協定実施について1988年1月2日まで8年延長した。もっともこの延長により締結され協定はなかった、 1984年通商関税法により1974年通商法102条(19 U.S.C§2112)が、改正され、米・イスラエル自由貿易協定交渉権限1988年1月2日まで付与されるともにこの実施法案にも貿易促進権限適用されることになり、これにより米イスラエル自由貿易協定実施法制定された。更に改正され1974年通商法は第102一定の条件のもとに同様の協定イスラエル以外の国と締結することを認めており、これにより米カナダ自由貿易協定締結され貿易促進権限により承認されることになり、これにより米カナダ自由貿易協定実施法制定された。なお、1974年通商法102条の改正により、対象二国間協定限定されたため、非関税障壁にかかる協定について貿易促進権限適用されないことになったウルグアイラウンド1986年開始されると、新たな貿易促進権限設定課題となった。このときの法案策定過程においてさまざまな保護主義的規定例えスーパー301条)を盛り込もうとする議会側と大統領側でさまざまなやりとりがあり、一旦、大統領拒否権により廃案となり、一部条項削除した案が大統領署名により成立する経過となった。このとき成立した1988年包括通商競争力法第1102条は、ウルグアイラウンド念頭において関税引下げ及び非関税措置に関する協定交渉権限付与するとともに関税及び非関税障壁に関する二国間協定についても交渉権限付与し、非関税措置に関する協定関税及び非関税障壁に関する二国間協定承認及び実施法案の制定について1974年通商法第151条ファスト・トラック手続きによることとされた。 NAFTA北アメリカ自由貿易協定)は、1986年交渉開始され1992年12月17日に、アメリカ、カナダ及びメキシコ首脳により署名された。しかしこの協定について特に環境労働問題で不十分であるとの批判強く1992年大統領選挙当選したクリントン大統領当初批判的であったが、最終的に環境問題に関する補完協定労働問題に関する補完協定という2つ補完協定追加することにより賛成転じ北アメリカ自由貿易協定実施法制定され、NFTAは1994年1月1日発効した可決されとはいえ大統領与党民主党では上下両院とも反対多数であった。なお、この北アメリカ自由貿易協定実施法には、税関手続き電子化中心とする税関近代化のための規定第6編として含んでいる。この税関近代化自体には異論少なかったが、北アメリカ自由貿易協定実施法盛り込む根拠が「税関近代化協定実施に必要」とするかなり無理なものであった1988年包括通商競争力法第1102条に基づく権限は、1993年6月30日までであったが、ウルグアイラウンド交渉難航しこの期限までに妥結見込まれなくなった。そのため個別立法制定により、1988年包括通商競争力法第1102条に⒠項を追加しウルグアイラウンド交渉限定して貿易促進権限1994年4月15日まで延長した。この延長にあたって署名する意図上下両院通告120日前したため事実上この日(1993年12月15日)が大筋合意までの交渉期限であると関係国認識することになり、実際1993年12月15日交渉大筋合意1994年4月15日マラケシュ協定採択となった。 ウルグアイランド協定法の策定過程で、当初クリントン政権側は、東京ラウンド実施のための1979年通商協定法にならい、次の貿易交渉のための貿易促進権限法案盛り込む方針であった。しかし議会側の反発にあい、最終的に議会提出した法案盛り込むことを断念した法案は、9月27日提出されたが、採決中間選挙1994年11月5日)後に持ち越され12月8日成立した1994年11月中間選挙結果上下両院とも共和党優位となった104議会における、この問題取扱については、NAFTAチリへの拡大交渉について適用することについては、ほぼ合意があったものの、次の問題についてはさまざまな意見があり合意がされていない状態であった通商交渉権限環境及び労働問題にまで拡大するか否か通商交渉権限特定の国・地域チリ等)に限定するか、広範とするか。 ファスト・トラック手続きに、修正能部分を導入するか否か実施法案の規定できる範囲実施法案に規定できる範囲は、通商協定実施するために必要かつ適切な規定とされているが、これがかなり拡張解釈され、例えNAFTA実施法には、協定適切な実施のために必要であるとして、税関近代化法が付帯されている。) 加えて予算問題等における大統領議会共和党(特にギングリッチ下院議長)との対立影響もあり、1995年中には進展はなく、1996年選挙の年であり、大きな妥協は困難であるという情勢から第105議会第一会期まで持ち越しになった貿易促進権限付与については、第105議会第一会期1997年)において審議された。しかし、民主党内の反対依然として強く、また民主党内を納得させるために環境労働問題踏み込んだ案は、共和党賛成を得る見込がないことから、行政府採決持ち込み断念した第二会期1998年)では、選挙の年でもあり通商立法は、軒並み廃案となり、貿易促進付与廃案となった。続く第106議会1999年-2000年でも、クリントン政権二期目後半ということもあり進展はなかった。 以上のように貿易促進権限失効した1995年以降クリントン政権貿易促進権限獲得めざしたが、最後まで獲得成功せず次期ジョージ・W・ブッシュ政権持ち越されることになったこの間ヨルダンとの自由貿易協定については、貿易促進権限がないまま、2000年10月24日締結されその後議会において実施法案の採択がされるという展開となった。米ヨルダン自由貿易協定実施法案(United States-Jordan Free Trade Area Implementation Act)は、H.R.1484として2001年7月24日下院提出され7月31日下院を、9月24日上院それぞれ発声投票通過し9月28日大統領署名経て成立(P.L.107-43、115 STAT. 243)し、12月10日大統領布告第7512号を経て12月17日から協定実施された。 なお、この協定は、貿易促進権限なしで締結したため、かえって。議会との事前協議必要性がなかったため、クリントン政権は、労働・環境問題協定本体含んだFTAモデルとして活用することができた。内容的には、①労働・環境規定協定本体入れる、②相手国に対し自国労働・環境法の遵守求める、③環境保護保全し国際的な手段強化する、④ILO中核的労働基準合致するよう、労働者及び児童権利促進する、という4点であり、以後Jordan Standard」として民主党指導部活用することになる。 2000年の大統領選挙政権民主党から共和党変わり ジョージ・W・ブッシュ政権発足する貿易促進権限について議会積極的に動き始めた2001年12月ドーハでのWTO閣僚会議向けた貿易促進権限付与については、2001年10月9日下院歳入委員会2001年超党派貿易振興権限法(Bipartisan Trade Promotion Authority Act of 2001、H.R.3005)が可決された。下院共和党はすぐに下院本会議上程する予定であったが、おりから炭疽菌事件のため下院閉鎖され採決持ち越しとなった2001年超党派貿易振興権限法の下院での採決結局ドーハでのWTO閣僚会議後となり、12月6日215214という1票差で可決された(賛成 共和党194 民主党21 反対 共和党23 民主党189 無所属2 棄権 共和党4 民主党1)。上院での審議2002年持ち越され2002年は、第107議会第2会期であるが、第1会期第2会期の間は、同一議会であるので議案はすべて継続する。)。 上院での貿易法案の処理については、アンデス諸国への特恵延長法案(Andean Trade Promotion and Drug Eradication Act H.R.3009)の修正のかたちで、2002年通商法(Trade Act of 2002)が、2002年5月23日6630賛成 共和党41 民主党25 無所属1反対 共和党5 民主党25 棄権 共和党3 民主党1)で上院通過した。 この法案は、ファスト・トラック権限付与認めたものの、アンチダンピング等の合意については、議会削除要求を可能とする条項含んでおり、大統領側はこのまま議会通過した場合拒否権行使示唆しており、両院協議会での調整難航見込みまれたものの、最終的には、貿易促進権限条項に、民主党支持の多い労働者支援条項付帯すること、削除要求を可能とする条項をより穏健なものにすることで、共和党民主党議会指導部の間で合意成立し7月27日下院215212賛成 共和党190 民主党25 反対 共和党27 民主党183 無所属2 棄権 共和党5 民主党2)、7月30日上院6633賛成 共和党40 民主党25 無所属1反対 共和党8 民主党25 棄権 共和党1)で可決され8月6日大統領署名により、2002年通商法(Trade Act of 2002)第21編 として2002年超党派貿易促進権限法Bipartisan Trade Promotion Authority Act of 2002)が成立し政府は、8年ぶりに貿易促進権限得た共和党民主党議会指導部の間で合意成立した割にはきわどい票差であったが、ともかくこれでほぼ10年ぶりに貿易促進権限復活したことになった5月の上院案にあったアンチダンピング等の合意について、議会削除要求を可能とする条項については、より穏健的な内容となった。これは締結180日前事前議会通知及び拘束力のない反対決議となっている。また貿易促進権限のなかで事前協議義務付けこれを怒った場合は、実施法案についてファスト・トラック手続適用しない除外規定盛り込まれた。 このときの貿易促進権限は、当初2005年6月30日までであり、延長規定により、2007年6月30日まで延長されたものの、更なる延長認められず、貿易促進権限失効したこの間ドーハラウンド合意にいたらなかったが、二国間FTAは、この権限付与され時点ですでに交渉中であり適用されるとされたチリ及びシンガポール含め12本のFTA締結され下記実施法ファスト・トラック手続により制定された。 米チリ自由貿易協定実施法シンガポール自由貿易協定実施法オーストラリア自由貿易協定実施法モロッコ自由貿易協定実施法ドミニカ共和国中米自由貿易協定実施法バーレーン自由貿易協定実施法オマーン自由貿易協定実施法ペルー自由貿易協定実施法 米韓自由貿易協定実施法コロンビア自由貿易協定実施法パナマ自由貿易協定実施法 なお、韓国コロンビア及びパナマについては、実施法制定貿易促進権限失効4年以上経過した後になっている。これは協定自体署名2007年6月30日までに行われていれば対象になるという規定に基づくものであるが、米韓自由貿易協定については、署名後も交渉事実上継続し2011年12月追加交渉妥結し実施法提出となっている。 2009年発足したバラク・オバマ政権環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉加速のため議会対し貿易促進権限付与求めているが、議会では賛否割れていた。2014年1月には下院歳入委員会キャンプ委員長共和党)と上院財政委員会のボーカス委員長民主党)によって、2014年1月新たな貿易促進権限付与案(the Bipartisan Congressional Trade Priorities Act of 2014)が提案されたが、与党支持基盤である労組党内からも反対の声があがるなど復活はならなかった。 2015年4月17日超党派議員によってTPA関連法案議会提出され5月22日上院貿易に伴う失業者対策含めた労働者支援法案TAA)とTPA法案セットにして2015年通商法(Trade Act of 2015)として6237可決した下院では貿易に伴う失業者対策含めた労働者支援法案TAA部分TPA関連法案個別採決し6月12日TPA関連法案部分はわずか8票差の219211可決したものの、その直前TAA法部分126302大差否決されていたため下院通過しなかった。このため米議会ではTAA法案を抜きにしたTPA関連法案単独採決模索され始め6月18日には下院TPA関連法案単独採決形式上別の法案公共安全職員退職法(Defending Public Safety Employees' Retirement Act)に追加する形とした)し、21820810票差で可決上院でも、6月24日6237TPA法案可決され6月29日オバマ大統領署名経てようやく成立したまた、いったん下院葬り去られTAA法案も6月24日に(2015年貿易優遇延長法(Trade Preferences Extension Act of 2015))として、上院可決されその後6月26日下院でも286138可決され6月29日オバナ大統領署名経て成立した2015年TAAは、2018年6月30日大統領延長要請した場合議会否認決議をしない限り2021年6月30日まで延長)の期限付きとなっている(TAA法103条)。 この延長については、2017年1月大統領就任したドナルド・トランプ3月20日延長要請し否認決議成立しなかったため2021年6月30日まで延長された。延長要請理由としてNFTAの再交渉アフリカ東南アジアを含む潜在的な貿易協定のため必要としている。 その後2015年TAA延長又は再度付与法律成立することなく2021年6月30日限り失効したジョー・バイデン政権発足当初から、新型コロナウイルス対応インフラ投資などを優先する方針維持していることもあり、当面再度付与見通し立っていない。

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