炭疽菌
別名:炭そ菌、Bacillus anthracis
炭疽病をもたらす桿菌。炭疽病の症状が皮膚に現れると、黒い(炭に似た)かさぶたができることから「炭疽」の名がある。
炭疽菌は主に野生動物の間で感染し、動物を媒介してヒトに感染することもある(人獣共通感染症である)。ヒトからヒトには感染しない。炭疽菌の感染経路によって主な症状に差があるが、いずれも死の危険性が高い。特に、大気中に飛散した炭疽菌を、呼吸により肺へ侵入させてしまった場合、適切に治療が行われなければ90パーセントが死亡するとされる。
炭疽菌は生物兵器としての利用に都合のよい特性を備えており、生物兵器利用が危惧されている。米国ではテロ事件に炭疽菌が使用され数名が死に至った事件も発生している。
たんそ‐きん【炭×疽菌】
【炭疽菌】(たんそきん)
好気性のグラム陽性桿菌で、長さは4~8μ、幅は1~1.5μと病原菌のうちでは最大の桿菌。
すでに数えきれないほど発見されている病原微生物のうち、最初に発見されたもので、炭疽症を引き起こす。
栄養や温度などの環境が悪い状態に置かれたり、毒性を示す化合物に接触すると、「芽胞」とよばれるきわめて耐久性が高い細菌構造をつくることが特徴。
これにより、乾燥状態でも10年以上生存する。
また、生体内で増殖した菌の周囲には厚い「莢膜(きょうまく)」とよばれる細胞壁の外側に位置する被膜状の構造物があり、加熱、日光、消毒剤などに強い抵抗性を示すため、菌に汚染されたものはすべて焼却するか、塩素剤やヨード剤などを使って徹底的な消毒を行わねばならない。
炭疽症
anthrax.
上記の炭疽菌によって引き起こされる感染症で、羊やヤギなどの家畜や野生動物が引き起こす感染症だが、ヒトにも感染する人獣共通感染症である。
そのため、第二次世界大戦前の日本では輸入した獣毛や皮革を扱う加工業者や、肥料用の輸入骨粉を用いた農業従事者に多く感染がみられ、現在ではテロ以外ではおもに家畜に接する機会が多い獣医や食肉処理場の従業者、酪農家などが数人感染する程度。
ヒトへは感染動物との接触やその動物の毛皮や肉から感染するが、ヒトからヒトへの感染はしない。
ヒトの場合は感染症予防・医療法(感染症法)で4類感染症に分類される。
この炭疽症は感染経路によって3つの炭疽症に分類される。
生物兵器への転用
生物兵器への利用が可能な病原体には「短期間で致命的な感染症を起こす」「ヒトからヒトへと伝染しない」「有効な治療薬やワクチンがあり、菌を兵器として使った後での環境修復が容易」という性質が特に重要視される。
炭疽菌は、もしもアメリカの首都・ワシントン上空で空中にばら撒いた場合、13万から300万人の死者が出るほどの強い毒性を持つが、ヒトからヒトへの伝染はしない。
ワクチンについても弱毒性の菌を用いる弱毒生菌ワクチンが初めて開発されている。
また菌の培養も比較的簡単なため、第二次世界大戦期から各国の軍事機関によって生物兵器としての応用が積極的に研究された細菌のひとつだった。
しかし、研究により菌の特性が明らかになるにつれ、芽胞の形成で土壌汚染が半永久的に続くため、使用した後の土地への移入ができなくなり、ワクチンの効力が十分とはいえないという欠点が明らかになったため、戦争では公式な実戦投入は行われなかった。
しかし、2001年のアメリカ炭疽菌事件で実際に使用されたことをきっかけに、生物テロに利用される危険性が注目され、現在重要視されている。
日本でも1993年に東京江東区亀戸のオウム真理教新東京本部付近で肉が腐ったような異臭が漂う事件が発生した。
この事件の真相は1995年の教団強制捜査にともない生物兵器のテロ未遂事件であったことが明らかになり、教団トップの麻原彰晃が炭疽菌による無差別テロを部下に命じ、菌を培養。
そして菌の噴霧装置が新東京本部の屋上に設置され、前後2回にわたり菌が噴霧された。
しかし装置の噴射の圧力が高すぎたために菌は死滅し結果1人の感染者も出さずに臭いだけが止まったというもの。(亀戸異臭事件)
現在、米国疾病センターはこの炭疽菌と天然痘にとりわけ注意を払っており、日本では「バイオセーフティーレベル(BSL)」のレベル3病原体に分類され、また研究施設での使用、保管状況が厳重に監視されている。
炭疽菌 [Bacillus anthracis]
炭疽菌
炭疽菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 00:21 UTC 版)
教団内の隠語は「CCチャン」(「炭(炭素)」の元素記号からとられた)。1992年頃より遠藤誠一によって培養が始められ実際に散布したが効果は無かった。軍事用が入手できず、無害化されたワクチン株を有毒化しようとしたが成功しなかったとされる。入手元は不明だが遠藤の母校帯広畜産大学から入手したという説がある。「スーパーCC」というのもあり麻原らが横浜に撒いたが効果は無かった。
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炭疽菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 15:12 UTC 版)
炭疽菌は非常に取り扱いやすく、発芽するまでは各種薬品や紫外線などに対する耐性も非常に強い。 しかも、肺に感染する肺炭疽にかかった場合には致死率が90%前後に達する。そのため炭疽菌は従来より生物兵器の代表格とされており、2001年には実際にアメリカでテロに使用され、死者を出している。日本でも、1993年にオウム真理教が東京都江東区亀戸の新東京総本部(登記上の主たる事務所でもあった)で実際に噴霧している。死傷者こそ出さなかったものの悪臭が周辺に漂う騒動となった(亀戸異臭事件)。 自然界における炭疽菌への感染は、炭疽菌が含まれる土壌などへの接触によることが一般的である。この場合炭疽菌は皮膚に感染(皮膚炭疽)するが、この皮膚炭疽は治療を行わなかった場合でも致死率は約20%、適切な治療を受ければ約1%まで下げることが可能で、(兵器としては)それほど問題はない。 兵器として使用する場合は皮膚炭疽では威力不足であるため、空気中に散布して肺に感染させる必要があるが、エアロゾル化にはある程度の技術力が必要である。 炭疽菌に有効なワクチンは存在するが、 接種に手間がかかること。 1年ほどしか効果がないこと。 弱いながらも副作用が発生する可能性が比較的高いこと、 などから、一般的には使用されていない。 炭疽菌の兵器としての欠点は感染力が弱いことで、人から人へ感染することはない。他方でこれは、兵器を使用した側が使用した地点に進出しても被害を受けない、と言う面では利点でもある。
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炭疽菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 05:12 UTC 版)
「Rosetta@home」の記事における「炭疽菌」の解説
Rosettaのもう一つのコンポーネントであるRosettaDockは、炭疽菌毒素 (英語版) を構成する3つのタンパク質 (致死因子(LF)、浮腫因子(EF)、保護抗原(PA))間の相互作用をモデル化するために、実験的手法と組み合わせて使用された。 このコンピュータモデルは、LFとPAのドッキングを正確に予測し、それぞれのタンパク質のどのドメインがLFとPAの複合体に関与しているかを明らかにした。この洞察は最終的に炭疽菌ワクチンの改良につながる研究に利用された。
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