法律・条例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 09:19 UTC 版)
撮影ではあらゆるものが被写体になり得る上に、場の文脈によって撮影の善悪が異なるため、撮影について一律の基準を設けることは不可能であり、国や自治体は場合ごとに法律や条例を制定して禁止する(犯罪となる盗撮を定義する)方法を取っている。盗撮は非常に幅広い行為を指し、犯罪になる場合と犯罪にならない場合がある。犯罪になる場合として典型的な事例は、児童ポルノを目的とした撮影、映画館における上映中の映画の無許可撮影、衣服で隠蔽された身体や下着の無許可撮影などである。犯罪にならない場合については、厳重注意や出入り禁止で済む場合もあるし、程度が重大であれば権利侵害について民事で争う事になる。実際に撮影していなくても、カメラを差し向けただけで盗撮意図があったものとして咎められる可能性があるため注意が必要である。 各地方自治体の迷惑防止条例により、公共の場所や公共の乗物(一部の自治体では「公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所」も対象)において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影(一部の自治体では「撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置」や「写真機その他の機器で透視する方法」も対象)」について正当な理由なく人を著しく羞恥させ又は人に不安を覚えさせる場合は刑事罰規定で取り締まりの対象となっている。また、自己所有ではない施設に訪れて浴場内やトイレ内を盗撮をする行為は、建造物侵入罪によって3年以下の懲役または10万円以下の罰金の対応となる。また軽犯罪法では「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(第1条第23号)に対して拘留又は科料の刑事罰が規定されている。2015年4月18日の福岡高裁判決では「軽犯罪法1条23号所定の場所を視認し得る場所に撮影機能のある機器をひそかに置いて当該場所を撮影録画する行為は、のぞき見行為の中核的部分を既に実現しているものということができる」と判示しており、盗撮も軽犯罪法違反が適用できるとしている。 2014年4月12日までの迷惑防止条例は公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所に該当しない場合は公共の場所又は公共の乗物でしか卑猥目的の盗撮を取り締まる事は出来なかったが、京都府では2014年3月25日に迷惑防止条例を改正して「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影」について「公共の場所若しくは公共の乗物」だけでなく「公衆の目に触れるような場所」も追加し、4月13日に施行された。 一方で、盗撮行為に対して各都道府県で適用される規制にバラつきがあり、16の県において、例えば鉄道車両内での隠し撮りは違法となっても、駅トイレや学校、事業所内だと立件できないなどの事例が生じていることが明らかになっている。また、迷惑防止条例は、上空を都道府県間を越えて高速で移動する旅客飛行機内で卑猥目的の盗撮する行為の場合(例として日本航空1402便客室乗務員スカート内盗撮事件)において、どの都道府県の自治体の迷惑防止条例を適用するかが不明確となるため起訴しづらいという問題点がある。 1999年に児童ポルノ禁止法が成立して以降は、18歳未満の児童を卑猥な対象として提供目的で盗撮する行為については「性欲を興奮させ又は刺激させ、衣服の全部又は一部を着けない18歳未満児童の姿態」と定義する児童ポルノの製造に該当するとして、児童ポルノ禁止法違反で刑事罰の対象となっている。2014年6月18日には「ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写すること」に該当すれば、提供目的に該当しなくても18歳未満の児童を卑猥な対象として盗撮する行為を児童ポルノ製造として、児童ポルノ禁止法違反で刑事罰の対象となるように法改正が行われ、7月15日に施行された。また、18歳以上でもわいせつな画像に抵触してインターネット上で有償で頒布する目的で盗撮記録を保管していれば、わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪で摘発されることもある。 映画館において新作映画作品を盗撮することは、知的財産権の観点から映画の盗撮の防止に関する法律違反で刑事罰の対象となっている。 法廷に提出するための証拠写真として「盗撮」を使用した場合、違法収集証拠排除法則により証拠能力が否定される。一方で監視カメラなど「犯罪が発生する相当高度の蓋然性が認められる場合」において、被撮影者の許諾なく、あらかじめ証拠保全の手段・方法をとっておく必要性があり、社会通念に照らして相当と認められる方法で行われる場合、証拠能力は認められるとするのが判例の立場である(山谷監視カメラ事件)。 報道機関が報道内容として後ろ姿やトルソのフレーミングで街なかや海岸などでの人物映像を利用することがあり、このような場合は公の報道の利益を考量したうえでの相当に慎重な画像利用が原則(相当性の法理)であり、気象報道や事件報道などの際に、海岸や街中でのスナップなどは被写体の承諾を特に取り付けることは一般に行われない。バラエティー番組などで芸能人の楽屋や打ち合わせ現場などに隠しカメラを設置し、芸能人の癖などを撮影するものがあるが、これは企画演出されたものであれ過渡的に不法行為に及ぶものであれ民事上の肖像権(及びプライバシー権)の範囲であり、他の違法性に抵触しない場合、許容されたものを放映されているものと見られる。公益性の高いニュース報道などにおける隠し撮りや隠しマイクについては、通常の取材では認められず「身分を隠しての取材」と同様に慎重な運用が必要と見られる。この場合も公然の取材では映像等が得られず、映像や音声なしでは報道目的が達成できず、報道目的が公益にかなう場合は許される場合もあり、特に非合法・反社会的対象への取材の場合には例外もあり得るとのガイドラインを規定するメディアも存在する。 テレビ番組などで、素人参加企画や街角どっきり企画などが成立しにくくなっている事情に、肖像権の取り扱いの厳格化(適正化)が影響しているとの指摘がある。 ライブイベントにおける撮影・録音は肖像権と著作権を保護するため、日本では禁止される事が殆どである。盗撮が発覚した場合には、会場の管理者にその場で制止される,会場の管理者に画像や動画の削除を命じられる、会場の管理者に退場を命じられる、今後同じ主催者のイベントは出入り禁止になる、主催者から損害賠償を請求される等と言った処分が行われる可能性がある。盗撮を考慮して、専用の撮影機材の持ち込みを禁止したり、カメラ付き携帯電話の電源を切るところまで徹底する場合もある。ライブイベントの盗撮を主催者が禁止していたとしても、刑法では禁止されていないため、実際に盗撮が発覚した場合には権利侵害を巡って民事で争う事になる。海外では主催者が撮影を許可している事が多く、日本とは状況が全く異なる。 ドローンによる盗撮も行われているが、警察による摘発が追いついていない現状がある。
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法律・条例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 07:14 UTC 版)
アメリカ合衆国フォートリー(ニュージャージー州) - 歩きスマホを禁止する条例が2012年に成立した。違反者には85$の罰金が課される。 ホノルル(ハワイ州) - 道路横断時に携帯電話やタブレット端末等の画面を見ることを禁止する条例が2017年7月27日に成立した。違反者には99$の罰金が課される。施行は同年10月25日から。一定の効果を上げている。 日本では罰則はないが、ヤフーが2013年4月11日から21日まで、歩きスマホを条例などでの規制が必要か否か二者択一で意識調査を行った結果、49,747人が回答し、「必要」が75%(37,290人)、「不要」が25%(12,457人)で、リビジェンが2013年8月5日に全国の10代・20代のスマホ利用者の男女500人に調査を行った結果では、「必要」が22.8%、「不要」が28.2%、「どちらとも言えない」が49%だった。ある歩きスマホ経験者は「危ないのはわかっているが、急いでいるときにやってしまう。条例で過料をとればやめます」と話した。フジテレビの小倉智昭も「ながら運転が罰金対象となること」や「税収が不足していること」を挙げ、歩きスマホに罰金刑を課すことに賛成し、モバイル評論家の法林岳之もこの意見に賛同した[要出典][出典無効]。 2002年に東京都千代田区が歩きタバコを条例で禁止し、1年後には吸い殻の数が減少し大きな効果を上げている。同様に条例で「歩きタバコ」を規制する札幌市でも、市の追跡調査で、条例施行後に「歩きタバコ」が9割以上減ったという結果も発表されている。 2014年の時点では、筑波大学の徳田克己教授(バリアフリー論)は「歩きスマホの規制から始まるのはおかしい。まずは啓発教育が必要だ。電車内で携帯電話で通話する行為は、携帯が普及し始めた当時はあったが、今はほとんど見られない」と規制ではなく、まずは啓発教育を行うべきと指摘した。 JR東日本が2015年3月に利用客1927名を対象に行った調査では、駅での歩きスマホが「マナー違反である」と既に意識しているが、実際には「マナーとして定着してない」と感じる人が7割以上だった。 現状で歩きスマホ防止の啓発活動が行われてはいるが事故件数は増加傾向にあり、電気通信事業者協会が2014年12月に都市部のスマートフォン保有者600人を対象に行った調査でも「歩きスマホ」をする人は増えていると認識する人が全体の85%を占めている。 2020年(令和2年)6月25日、神奈川県大和市議会において、スマートフォンを手にした「歩きスマホ」を防止する条例が可決、成立した。同月1日に条例案を議会に提出、同年7月1日施行予定である。罰則はないが「スマホは立ち止まって操作するもの」との意識を市民に浸透させ、歩きスマホによる事故を防ぐ狙いだという。
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法律・条例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 10:41 UTC 版)
主に地方公共団体ごとの迷惑防止条例や、刑法第176条の強制わいせつ罪が適用される。実務上は迷惑防止条例の「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為として、公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」に対する刑事罰が適用される場合が多い。 迷惑防止条例は施行当初は痴漢等の保護対象が女性のみに限定されていたが、1999年に鹿児島県が性別を限定しない迷惑防止条例を施行。2001年には男性が被害にあった場合にも取り締まりができるように東京都が「女性」にあたる部分を「人」に改正・施行。以降、各都道府県で改正迷惑防止条例が施行され、2014年4月1日に岡山県が改正迷惑防止条例を施行したのを最後に、全都道府県の迷惑防止条例が保護対象となる性別を限定しなくなった。 その他にも行為の種類や程度によって、軽犯罪法第1条第5号、わいせつ物頒布罪、公然わいせつ罪、暴行罪、鉄道事業者への威力業務妨害などにより処罰される。
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