バス系とは? わかりやすく解説

バス系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 01:00 UTC 版)

はやぶさ (探査機)」の記事における「バス系」の解説

構体 構体は、内部電子機器推進剤タンクなどを収容し宇宙空間での温度差からそれらを保護する同時に内外機器類の固定強度部材となる。 コンピュータ 主要なコンピュータとして、データ処理計算機(DHU)と姿勢軌道制御計算機(AOCP)がある。これらのリアルタイムオペレーティングシステムRTOS)は、DHUにはμITRON、AOCPにはVxWorks使用している。他に、イオンスラスタ制御装置(ITCU) などがある。 通信系 地球との通信を行うアンテナ3種各1基が備わっていた。これらのアンテナデジタル送受信機接続され制御装置地球地上局との間を電波通信によって接続するのに用いられた。探査機姿勢電力状況によって3種アンテナ切り替えられいずれか1つが常に地球との通信維持するようになっていた。高利アンテナ 最大アンテナは1.6メートルパラボラ高利アンテナ (HGA) であり、イトカワ近辺まで近づいた超遠距離でも、画像伝送含めた2 - 4 kbpsでのデジタル信号通信行えた。HGAはz+軸方向向けて機体固定されており、0.7度ほどの細いビーム波であるため、正確に地球通信するためには高精度姿勢制御要求された。 中利得アンテナ 中利得アンテナ (MGA) は、巡航中で通信量少なく、むしろ太陽電池発電した電力イオンエンジン優先して配分する必要がある期間に用いられた。ある程度正確さ地球方向向けられれば、最大256 bps通信が行えた。 低利得アンテナ 低利得アンテナ (LGA) は、HGA頂部に付けられており、機体本体太陽電池方向若干電波干渉方向などを除けば地球位置関わりなく全周方向への通信が行えたが、これは緊急用通信手段であり、8 bpsきわめて低速度通信であったLGA用いなければならないほど、逼迫し状況下での緊急通信用通信手段として「1ビット通信」という通信機能が用意されていた。 電源系 太陽電池パネル 太陽電池パネル本体挟んで両側3枚ずつ、計6全体としては「H形」になるよう配置され、z+軸方向向けて固定されている。太陽電池パネルの裏面は放熱板である。 電池 11セルリチウムイオン充電池搭載していた。 軌道制御系 「はやぶさ」には軌道制御を行うための主推進機としてマイクロ波放電式イオンエンジンμ10中心とするイオン・エンジン・システム (IES) が搭載されていた。μ10スラスタAからスラスタDとして、計4台が搭載され、他にも多数装置組み合わされ宇宙探査機推進システムとして用いられた。また、姿勢制御にも用いられるRCS軌道制御にも使用された。 IESエンジン4台は同一テーブル上に配置されていた。 以下に「はやぶさ」搭載されIES仕様を示す。 IES仕様スラスタ有効直径105mm × 4 定格推力8mN × 4 消費電力1050W (350W x 3) 比推力3200秒 推力方向制御2軸ジンバル±5° マイクロ波電源進行波管 (4.25GHz x 4) 加速高圧電源3台 搭載推進剤キセノン 66kg (但し、最大積載量は73kg) 推進剤タンクチタン合金容量51リットル 構成 IES構成を示す。「はやぶさ」IESは「μ10イオンエンジン呼ばれるスラスタを4台持ち、それを駆動する直流電源を3台備えるので3基のエンジンまで同時に運転できる。 「μ10」それ自体イオン生成加速部に過ぎず燃料供給系や中和器、電源系などとともに用いられることで本来の性能発揮できる。以下に全体の構成重量とともに示す。 構成重量装置重量スラスタ x 4 9.2kg マイクロ波電源 x 4 9.2kg 直流電源(3台) 6.3kg 推進剤タンク 10.8kg 流量制御部 6.5kg ジンバル機構 3.0kg 機械計装 5.0kg エンジン制御装置 3.5kg 電気計装 5.7kg 総計59.2kg 詳細は「イオンエンジン」を参照エンジン燃料としてキセノン用いており「イオン生成」「静電加速」「中和」という3段階を経て、キセノン・イオンが約30km毎秒ほどの加速受けて真空空間のほぼ一定方向放射する仕組みになっている。この陽イオン放出による反動が、1基あたり8ミリ・ニュートンの定格推力生むイオン生成 イオン生成には電子サイクロトロン共鳴 (ECR) という現象利用している。燃料タンクから流量制御部経由してイオン生成チャンバー内に導入され希薄なキセノンガスは、マイクロ波による加熱プラズマされ、電子とキセノン・イオンに電離するチャンバー壁面が正電圧印加されているため、負の電荷を持つ電子生成同時に壁面引き寄せられ比較短時間消滅する反対に正の電荷帯びたキセノン・イオン (Xe+) は、チャンバー壁面から軽く反発を受けゆるやかに蓄積してゆく。4.25GHzのマイクロ波1500ガウス永久磁石によって脈動する電子流作られ、この高速電子キセノン原子次々衝突することでイオン化起こす静電加速 イオン生成チャンバー溜まった希薄なキセノン・イオンのガスは、真空中向けて唯一開口しているグリッドの穴から出て行こうとする。炭素繊維強化炭素複合材料製のグリッドは「スクリーン」「アクセル」「ディセル」という3層から成るが、スクリーン・グリッドには+1500V程度印加され、アクセル・グリッドには-300V程度加わり、ディセル・グリッドは0Vの電圧レベルになっているスクリーンアクセルディセルという3枚グリッドは0.5mm間隔並びそれぞれ3mm、1mm、2mmほどの異な大きさ900個近い穴があけられており、互い開口位置正確に合わされている。正の電荷帯びたキセノン・イオンは、1枚目の+1500V程度印加されているスクリーン・グリッドを通過する過程で穴の縁から反発受けて流出コース細く絞られる1枚目のスクリーン・グリッドを通過した直後に、2枚目の-300V程度印加されているアクセル・グリッドに向けて、(1500 + 300 =) 1800 Vの電位勾配の強い加速を受ける。この加速IES推進力となる。3枚目の0Vの電位かかっているディセル・グリッドは、低速イオンがアクセル・グリッドに戻る事を阻止する働きをする。ディセル・グリッドはイオン・エンジン必須というものではないが、μ10では長寿命化求めて備えられている。チャンバー内には電離しなかったものや電離後に電子吸収するなどしたキセノン原子存在しており、中性電荷のこの原子グリッドなどの制約受けず自由に飛び出すが、全体の量は比較少なく搭載燃料の無駄ではあるが許容されている。 中和 イオン生成行いキセノン・イオンだけを宇宙空間放出すると正の電荷だけが失われそのままでは負の電荷宇宙機蓄積されて正の電荷帯びたキセノン・イオンの投射効率落ち、やがては正イオン放出そのものが行えなくなる。この蓄積される負の電荷電子放出という形で正負バランスさせる働きをするのが中和器である。中和器には-30Vほどの電圧かけられる中和器内には、燃料タンクから流量制御部経由して希薄なキセノンガスが導入されるイオン生成チャンバー同様にマイクロ波加熱によってキセノンガスはプラズマとなり、キセノン・イオンと電子電離される。イオン生成過程異なるのは、中和器の壁面が負電位であるため、電子は壁から反発を受けるがキセノン・イオンは引かれる。キセノン・イオンは壁に接すると電子受け取ってキセノン原子に戻る。キセノン原子マイクロ波加熱によって電離し、再びプラズマ一部となるので、キセノン中和器内にある限り同じサイクル繰り返す電子は壁から供給され続け限りキセノン仲立ちにいくらでも生成されるため、中和器内に充満した電子唯一の開口部から真空空間へ向けて流れ出す中和器から出た電子3層グリッド通過してきたキセノン・イオンと結びついてキセノン原子となる。イオン生成チャンバー同様に中和内のキセノンガスやキセノン・イオンも真空中漏れ出すが、その量は比較少ないために搭載燃料の無駄ではあるが許容されている。また、中和器で消費されるキセノンガスは、イオン生成チャンバー比べる少量で済む。 流量制御部 流量制御部は、1基だけの推進剤タンクから圧力減じながら4基のスラスタ必要に応じて適正な圧力キセノン供給するために設けられている。推進剤タンク圧力は、当初70気圧ほどもあり、運用によって消費されたが地球帰還時でも30気圧ほどあった圧力スラスタが必要とする0.6気圧程度下げ働きを果たす。このようにキセノンガスの流量圧力調整するために、高圧系と低圧系のそれぞれにラッチング・バルブと非通電時は常に閉じているバルブ2種類2組4組並列にした冗長構成バルブ群にされており、高圧低圧中間アキュムレータ (ACM) と呼ぶ貯圧タンク設けることで圧力調節行っている。低圧側バルブ閉じた状態で高圧側バルブを開くと、推進剤タンクからアキュムレータにキセノンガスが流入する高圧側バルブ開けておく時間アキュムレータ内に蓄えられるガス圧を調節する適正な圧力になれば高圧側バルブ閉じてから、4系統あるスラスタ配管適切な低圧側バルブを開く。スラスタ配管では各組ごとのイオン生成チャンバー中和器が連接されており、片側だけを閉じた開いたりはできない直流電源 直流電源 (IPPU 1 - IPPU 3) は、太陽電池パネルバッテリーからの電流供給受けて、キセノン・イオンの加速中和器の電子放出原動力となる。このような直流電源は、これまでの宇宙機でも長年培われた通信機高圧電源技術であるため信頼性高く予備などを含めて4基になったスラスタに対して電源は3台で十分だ判断され実際にトラブル生じていない。 リレーボックス 3台の直流電源からのイオンエンジン駆動用の出力は、4基のエンジン向けてリレーボックス (RLBX) によって給電切り替えられるようになっていた。 姿勢制御系 姿勢制御スラスタ 20ニュートン推力を持つ2液式の軌道制御用も兼ねた姿勢制御スラスタ (RCS) が±z面の上4つそれぞれの角に計8基と±x面の左右に2基ずつの計4基で合計12基あり、軌道制御姿勢制御用いられた。RCSにはA系B系2系統配管がある。加圧不活性ガス用いている推進剤タンクは、無重力環境では単にタンクパイプ繋いだだけでは、その時々の液体位置によって配管内に流れるものが液体であったガスであったりして問題がある。燃料であるヒドラジンタンク酸化剤四酸化二窒素タンクのうち、燃料タンクゴムなどの袋に充填され周囲から加圧ガスで押すようになっている酸化剤腐食性が強いので高分子化合物用いられず、はやぶさでは金属製ベローズタンク収めることで腐食されずに加圧ガスで押すようになっていた。ノズル基部噴射器から当初最短30ミリ秒の、運用中改良して最短10ミリ秒パルス状噴射もしくはそれ以上必要な長さ噴射行なえた。噴射され2つ推進剤直ち化学反応起こして燃焼し、そのガスノズル広がりながら一方飛び出す反動推力となるものであり、スケール違い加圧ポンプなどがない他は、大型の2液による液体燃料ロケットと同じしくみだった。 リアクションホイール ゼロモーメンタム方式による3軸姿勢制御を行う本機では、姿勢制御装置として3軸3基のリアクションホイール (RW) を搭載していた。電力使用することで角運動量調節できるリアクションホイールは、RCSのように推進剤消費しないので長期間宇宙活動には適するが、機体モーメントホイール内に蓄積し続けると月単位では回転数上限値迎え飽和」してしまうため、RCSのような何らかの方法時折機体外に無用な回転運動量を放つ「アンローディング」作業必要になる

※この「バス系」の解説は、「はやぶさ (探査機)」の解説の一部です。
「バス系」を含む「はやぶさ (探査機)」の記事については、「はやぶさ (探査機)」の概要を参照ください。

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