誘電加熱
(マイクロ波加熱 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 05:04 UTC 版)
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誘電加熱(ゆうでんかねつ、英: dielectric heating)とは、無線周波数 (RF) の交流電界すなわち電波(マイクロ波)の電磁放射により誘電体(絶縁体)を加熱することである。これは、誘電体内の分子双極子の回転によって引き起こされる。電子加熱 (electronic heating)、無線周波数加熱 (radio frequency heating)、高周波加熱 (high-frequency heating) ともいい、マイクロ波を使用する場合はマイクロ波加熱 (microwave heating) ともいう。
メカニズム
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分子の回転は、電気双極子モーメントを有する極性分子を含む誘電体の中で起こり、その結果、電磁場中の向きに従って分子が整列する。電磁波や交流電場のように電場が振動している場合、分子は振動する電場に向きをあわせることによって、連続的に回転する。これは双極子回転 (dipole rotation)、または双極子分極 (dipolar polarisation) と呼ばれる。電場が入れ替わるにつれ、分子は方向を逆にする。 回転する分子は(電気力によって)他の分子を押し引きし、衝突し、エネルギーを誘電体内の隣接する分子・原子に分配する。線源から試料へのエネルギー移動の過程は放射加熱の一形態である。
温度は、誘電体中の原子・分子の平均運動エネルギーに関係しているので、このように分子が撹拌されると、誘電体の温度が上がる。このように、双極子回転とは、電磁放射の形のエネルギーを物体の温度の上昇に変換するメカニズムである。この変換が行われる他のメカニズムもある[1]。
双極子回転は、通常は誘電加熱と呼ばれるメカニズムであり、身近な所では電子レンジで使われている。液体の水で最も効果的に機能するが、脂肪や糖類ではそれほど機能しない。これは、脂肪や糖の分子は水分子よりはるかに極性が低く、そのため電磁場によって発生する力による影響が少ない為である。電気双極子が含まれていれば、調理以外でも一般に固体・液体・気体の加熱にこの効果を使用できる。
特徴
誘電加熱の特徴として、均質加熱、迅速(高速)加熱、選択加熱が挙げられる。電磁波に暴露された物質が、単位体積あたりに得るエネルギーWは、以下の式に従う。
マイクロ波加熱は、高周波加熱とは異なり、100メガヘルツを超える周波数での誘電加熱であり、電磁波を小さい寸法の放射体から発射し、空間を通って対象物に導くことができる。現代の電子レンジは、高周波加熱器よりもはるかに高い周波数の電磁波を利用する。典型的な家庭用電子レンジはISMバンドである2.45ギガヘルツ[8]で動作するが、915メガヘルツの電子レンジも存在する。すなわち、マイクロ波加熱で使用される電波の波長は0.1センチメートルから10センチメートルである[9]。
マイクロ波加熱を利用した装置としては、電子レンジが一般に用いられている。焜炉などによる加熱に比べ、容器に入った食品であっても、内部から均一に急速加熱することができる。
近年、工業プロセスにおける新しい加熱法のひとつとしても注目を集めている。マイクロ波加熱によって水分を蒸発させるマイクロ波乾燥と呼ばれる技術は、食品から建材、廃棄物処理まで、工業的に広く利用されている。
化学反応にもマイクロ波加熱は利用されている。マイクロ波の波長に応じて特定の物質のみを内部から急速に選択加熱できる。反応速度が早くなり、また副反応が抑制され収率が向上する場合がある。この方法はマイクロ波合成と呼ばれ、環境親和性の高いグリーンな化学として期待されている。
生体組織にマイクロ波を照射すると、発熱によってタンパク質などが変性し、凝固する。この現象はマイクロ波凝固と呼ばれ、止血や癌治療に応用されている。
また、セラミクスの焼結や粉末冶金などの高温プロセスで、工学的な応用を目的とした探索研究が行われている。
脚注
- ^ Shah, Yadish. Thermal Energy: Sources, Recovery, and Applications. Baton Rouge, FL: CRC Press 2018年3月27日閲覧。
- ^ “電力半減深度”. 電気学会 電機専門用語集(Web版). 2020年11月6日閲覧。
- ^ “産業用マイクロ波加熱装置(2016年09月13日時点でのアーカイブ)”. 三菱重工業 三菱重工技報. 2022年3月22日閲覧。
- ^ a b “高周波誘電加熱の原理 9.高周波の電力半減深度”. 山本ビニター. 2020年11月6日閲覧。
- ^ アメリカ合衆国特許第 2,147,689号. Method and apparatus for heating dielectric materials - J.G. Chafee
- ^ Piyasena P (2003), “Radio frequency heating of foods: principles, applications and related properties—a review”, Crit Rev Food Sci Nutr 43 (6): 587–606, doi:10.1080/10408690390251129, PMID 14669879
- ^ "Diathermy", Collins English Dictionary - Complete & Unabridged 10th Edition. Retrieved August 29, 2013, from Dictionary.com website
- ^ Whittaker, Gavin (1997), A Basic Introduction to Microwave Chemistry, オリジナルの2010年7月6日時点におけるアーカイブ。
- ^ “The Electromagnetic Spectrum”. NASA Goddard Space Flight Center, Astronaut's Toolbox. 2016年11月30日閲覧。
関連項目
- 高周波溶接
- 比吸収率
- 電気外科手術
外部リンク
- Metaxas, A.C. (1996). Foundations of Electroheat, A Unified Approach. John Wiley & Sons. ISBN 0-471-95644-9
- Metaxas, A.C., Meredith, R.J. (1983). Industrial Microwave Heating (IEE Power Engineering Series). Institution of Engineering and Technology. ISBN 0-906048-89-3
- アメリカ合衆国特許第 2,147,689号 – Method and apparatus for heating dielectric materials
マイクロ波加熱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/09/02 00:37 UTC 版)
マイクロ波を照射することで溶融物内部の分子を振動させることにより加熱する。
※この「マイクロ波加熱」の解説は、「溶融炉」の解説の一部です。
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マイクロ波加熱と同じ種類の言葉
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