【M60】(えむろくじゅう)
- Springfield/Saco M60.
第二次大戦後のアメリカ軍が、ドイツのMG42やFG42の様な機関銃を必要としたことから開発された汎用機関銃。
当初は国営のスプリングフィールド社が生産を行っていたが、大量生産の必要から民間企業であるサコー社に生産が移っている。
ベルトリンク給弾式で7.62mm×51弾を使用する。
ベトナム戦争から実戦投入され、歩兵部隊はもちろん、防御陣地に車両やヘリの銃座に至るまで、ありとあらゆる場所で使用された。
一方運用面では今ひとつで、動作不良が起きやすい、銃身交換がし辛い上に銃身自体の寿命が短い、トリガー部が壊れる、安全装置の扱いが他の米軍の銃器と違うので操作を間違える等良い評価がなく、その重量と外観から兵士達に『ピッグ(豚)』との蔑称をつけられてしまった。
E1・E3・E4と改良は続けられたが、最終的にFN社のM240が後継とされた。
また、分隊支援火器としても使用されていたが、ライフル兵との弾薬の違いや巨大な図体が問題となり、MINIMI採用へと繋がった。
現在ではヘリ用ドアガンに留まっているが、オーストラリア軍では第一線で運用されている。
製造担当のUSオードナンス社では、民間向けのセミオートM60も生産している。
【派生型】
- M60
1950年に採用された基本型。
- M60E1
最初の改良型。ガスシリンダー、銃身、バイポッドの接続方式を変更した。
- M60B
ヘリコプターからの射撃用に開発された型。
しかし、マウント部が無いため射撃中は射手が保持していた。
1960年代に少数が生産されただけで、すぐにM60Dに代替された。
- M60C
航空機搭載用モデル。油圧による回転機構が組み込まれ、電気的制御により遠隔操作で射撃を行う。
OV-10などのCOIN機やUH-1Bに搭載された。
- M60D
ヘリコプターや車両等へマウントできるようにしたもの。
スペースドグリップになっているほか、照準は円形照準に変更され、給弾方式が改善されている。
UH-1BやUH-60、CH-47など主要なヘリコプターのドアガンとして用いられた。
- M60E2
M48A5やM60戦車の同軸機銃など、装甲車両へ取り付けての運用を目的としたモデル。
銃床等、車両搭載に必要の無い外装は取り外されている。
発射指令は電気的に行うが、手動で引き金を引くバックアップも残されている。
- M60E3
初期モデルの問題点を解決し、1986年ごろより実戦配備を開始したモデル。
ガス・システムの簡略化や銃身の軽量化などが図られたが、その代償として部品の磨耗・破損がより激しくなってしまった。
そのため、アメリカ陸軍と海兵隊では大部分の部隊がM240への切り替えを行った。
- M60E4(Mk.43 Mod0)
M60E3を短銃身化し、多くの改良点を取り入れ信頼性をアップしたもの。
前方にフォアグリップが追加されているのが大きな特徴。
アメリカ海軍での制式名称は「Mk.43 Mod0」。
- Mk.43 Mod1
Mk.43 Mod0の改良型。
ピカティニー・レールが各所に追加され、Mod0よりも短銃身化された。
Photo:MASDF
- M60
- ミネベア「ニューナンブM60」。
日本の司法警察機関において、捜査官の護身用として採用されている回転式拳銃。
詳しくは当該項目を参照のこと。
- M60戦車
→詳細はM60(戦車)の項を参照のこと。
【M60(戦車)】(えむろくじゅう(せんしゃ))
ソ連のT-54/55戦車に対抗すべく、1956年に開発されたアメリカ陸軍の主力戦車。俗に言うパットン戦車シリーズの最終型。
M48の機動力と火力に改良を加えたモデルである。
西側では標準的な主砲であるロイヤル・オードナンス L7A1 105mm戦車砲のライセンス生産品M68と、M85 12.7mm機関銃とM73 7.62mm同軸機銃を装備。
また、エンジンを従来のガソリンから12気筒のターボディーゼルに変更。これにより燃費向上と被弾時の火災発生率低下をもたらした。
本来はソ連のT-55に対抗しうる本格的な次期主力戦車が登場するまでのストップギャップであり、短期間で引退する予定であったが、肝心のMBT-70計画が頓挫した事により長期に渡って使用される事となった。
M60各型の合計生産台数は約2万輌を数え、アメリカ軍のみならず西側諸国の標準的主力戦車となった。
アメリカ軍からは湾岸戦争を最後に退役しているが、各種改良型はイスラエルを始めとする世界各国で現役である。
スペックデータ
乗員 | 4名 |
全長 | 6.9m 8.83m(M728) |
全高 | 3.3m |
全幅 | 3.63m 3.63m(M728) |
戦闘重量 | 52.6t 52.2t(M728) |
懸架方式 | トーションバー |
エンジン | コンチネンタル ADVS-1790-2C V型12気筒ディーゼルエンジン(出力750hp) |
登坂力 | 60% |
超堤高 | 0.91m |
超壕幅 | 2.4m |
最大速度 | 48.2km/h(路上) |
行動距離 | 450km |
装甲 | 225mm(リアクティブアーマー装着時) 13~143mm(M728) |
兵装 | M68 51口径105mmライフル砲×1門(弾数63発)(M60/A1/A3) M162 152mmガンランチャー(M60A2) MGM-51「シレイラ」対戦車ミサイル(M60A2) M135 165mm砲×1門(弾数30発(粘着榴弾))(M728) M85 12.7mm重機関銃×1挺(弾数900発) M73 7.62mm機関銃×1挺(弾数6,000発) |
主なバリエーション
- M60:
M48同様の亀甲形の砲塔を持つ基本型。
一部はM48を改修して生産された。
- M60A1:
M48同様の亀甲形の砲塔から、より避弾径始に優れた形状の細鼻形状のものに変更した型。
- M60A1RISE:
M60A1をA3相当に近代化改修した型。主にアメリカ海兵隊が使用した。
湾岸戦争でも爆発反応装甲を装備して使用された。
- M60A2:
試作型M60A1E2をもとに、新設計の砲塔にM162 152mmガンランチャーを搭載し、対人用に榴弾、対戦車用にMGM-51「シレイラ」対戦車ミサイルを発射できるようにした型。
1965年より量産が開始されたが、ミサイルの価格が高かった事と、整備性が悪かった事から少数生産・短期配備に終わり、前線から引き上げられたA2型の車体は架橋車や戦車回収車などに転用された。
先進的ではあったが、高価で運用が難しいため、運用側からは皮肉をこめて「スターシップ」(宇宙船)というニックネームを与えられた。
- M60A3:
内部の電子機器の改装により主砲の命中精度を高め、煙幕発射装置を装着した型。
M60A1E3の名称で開発され、1978年に量産が開始された。
主砲にサーマルスリーブ(砲身被筒)が装着されていることと、大型化された砲塔上面の砲手用間接照準器がA1との外見上の差異である。
中華民国軍(台湾)やイスラエル国防軍(イスラエル)等で使われている。
- M60TTS:
M60A3の夜間用サイトを受像式赤外線暗視装置に換装した改修型。
- M60A1 AVLB:
M60A1の車体に折りたたみ式の橋を取り付けた架橋戦車型。
- M60 AVLM:
M60の車体にMICLIC(Mine-Clearing Line Charge)地雷爆破装置2基を装備した地雷処理車型。
- M60パンサー:
M60の車体を流用した地雷処理車型。
危険を避けるためにリモコンによる遠隔操作で操縦出来るようになっている。
- M728戦闘工兵車:
M60A1を基に製作された戦闘工兵車。
主砲をM68・105mm戦車砲から障害物破砕用のM135・165mm砲に換装し、車体前部にD7ドーザーブレードか地雷処理装置を装備可能。
- M728A1:
M728の改良型。
- M60-2000
M60の車体にM1エイブラムスの砲塔を取り付ける近代化改修型。
現在のところ、発注はされていない。
- マガフ(Magach):
イスラエルの独自改修型(一部にM48ベースもある)。
爆発反応装甲を装備したMagach6と、複合素材を使用して装甲を強化したMagach7が存在する。
- マガフ6(Magach6):
M60/A1/A3の改修型。全タイプ共通で、Urdan社製キューポラと「ブレイザー」ERAを装備。
- マガフ6A(Magach6 Alef):
ほぼオリジナルのM60A1。後に全車両が6Bに改修された。
- マガフ6B(Magach6 Bet):
マガフ6Aの改修型。
アメリカ軍のM60A1RISEと同様に、エンジンをAVDS-1790-2Cに換装したほか、ブレイザーERA装着、60mm迫撃砲および機銃の追加装備、発煙弾発射機の追加装備、砲塔旋廻モーター強化、砲身スタビライザー更新等の改修が行われた。
- マガフ6B「ガル」(Magach6 Bet Gal):
マガフ6Bの改修型。
「ガル」火器管制装置を追加装備したほか、主砲砲身への放熱用サーマルジャケット装着や砲塔風向センサー追加、砲塔後部バスケットの大型化の改修を行った。
- マガフ6B「ガル・バタシュ」(Magach6 Bet Gal Batash):
6BガルにERAに代わって、マガフ7同様の「第4世代型」増加装甲を追加し、エンジンもマガフ7と同じAVDS-1790-5Aに換装した型。
砲塔の前面と側面に大きく張り出した楔形装甲が特徴。
マガフ系列で最後の型だが改造数は少ない。
マガフ7D(Magach7 Dalet)やマガフ8とも呼ばれる。
- マガフ6B「バズ」(Magach6 Bet Baz):
6Bに「バズ」火器管制装置を追加装備した型。試作タイプで改造数は少ない。
- マガフ6C(Magach6 Gimel):
ほぼオリジナルのM60A3。
- マガフ6R(Magach6 Resh):
M60のエンジンをより発電能力の大きなAVDS-1790-2AGに換装したほか、マガフ6Bと同様の改修を施した型。
- マガフ6R(Magach6 Reish Kochav):
マガフ6Rの火器管制装置を「ナハル・オズ」(Nachal-oz) FCSに更新したもの。
- マガフ6M(Magach6 Mem):
6Rに「ナハル・オズ」火器管制装置を追加装備し、主砲砲身への放熱用サーマルジャケット装着、砲塔風向センサー追加の改修を行った型。
- マガフ7(Magach7):
1982年のレバノン侵攻におけるシリア軍戦車との交戦した際の戦訓から、更なる防御力強化の必要から開発された最新タイプ。
マガフ6の車体前部と砲塔の増加装甲をERAから「第4世代型」増加複合装甲に換装し、車体左右にもサイドスカート(前側の2枚ずつは中空装甲)を追加した。重量増加に対応するためにエンジンをAVDS-1790-5A(908馬力)に換装し、火器管制装置も新型に更新された。
砲塔の増加装甲の形状によりA/Cの2タイプが存在する(Bは試作のみ)。
- マガフ7A(Magach7 Alef):
砲塔の複合装甲が垂直に近い形状をしているモデル。
- マガフ7B(Magach7 Bet):
試作車。砲塔前面部の複合装甲の形状は7Cに近い。
- マガフ7C:
砲塔前面の複合装甲が楔形のモデル。
- サブラ(Sabra):
イスラエルの輸出用改修パッケージ。
主砲をメルカバと同じ国産の44口径120mm滑腔砲に換装し、砲塔部に楔形の装甲を追加しているのが特徴。
「M60T」としてトルコに採用されている。
- マガフ6(Magach6):
- CM11(勇虎式戦車、M48H):
中華民国(台湾)が生産した、M60A3のシャーシにM48A5の砲塔を搭載し、M1に匹敵する射撃統制システムを装備したもの。
2000年代にはフランス・GIAT社製の爆発反応装甲を装着した改修型へのアップデートが進められている。
- M60-120:
ヨルダンのキング・アブダラー2世記念設計開発局 (KADDB) が、スイスのSWシン社と合同で開発したM60A3用近代改修キット。
主砲をSW 120mmL50滑腔砲とレイセオン社製の射撃統制装置を組み合わせたもの。
- M60A3-84:
かつてのライバル戦車・T-54を開発したウクライナのKhKBMが作成した近代化改修案。
M60にウクライナ国産のKBA-2 120mm砲を搭載するほか、「ニージュ」などの新しい爆発反応装甲も装備され、その他各種防御システムが装備されることになる。
これにより、M60A3-84はヤタハーンやT-72-120並みの高性能を獲得することになる。
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