【分隊支援火器】(ぶんたいしえんかき)
Squad Automatic Weapon (SAW)
機関銃のうち、移動する歩兵に随伴して、その支援火力として用いるものをいう。
ほぼ軽機関銃とコンセプトが一致するが、射撃位置を固定して継続的な制圧射撃を行うだけでなく、歩兵とともに突撃できるだけの機動力が重視される点が従来の機関銃と異なる。
多くの火力を敵にぶつけ、敵に頭を上げさせないことで味方の行動の自由を図るため、自動小銃と比べてフルオート射撃での安定性を求められる。
また、自動小銃との弾薬の共通化も重要視されている。
持ち運びの容易な軽量さが重視され、この用件を初めて満たしたのはBARだといわれている(ただし、最初から支援火力として設計されたわけではなく、連射の継続に難があった)。
従来の軽機関銃以上に軽量さが求められるため、FALベースのFALOや、G3ベースのHK11など、自動小銃を改設計したものが多い。
こういった簡易的な分隊支援火器をLSWと呼ぶこともある。射撃継続力を犠牲にして、調達や運用の容易さを追及した機関銃といえる。
逆に、最初から分隊支援火器として設計された銃としてミニミやMG4が挙げられる。LSWに比べれば重くかさばるが、頑丈に造られており制圧力は高い。
MG34やM60などの汎用機関銃がこの用途で使われることもあったが、1挺あたり2名で運用されるこれらの機関銃では移動に多少の不自由さがあるため、それよりもやや小型のものが用いられることが多い。
「分隊支援火器」は意訳であり、直訳の「分隊自動火器」で呼ばれることもある。
分隊支援火器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/18 07:15 UTC 版)

分隊支援火器(ぶんたいしえんかき、英語: Squad automatic weapon, SAW)は、機関銃を軽量小型にして、歩兵用小銃の弾薬や部品が共用でき、兵士が1人で運用できるようにしたもの[1]。軽機関銃の別称としても扱われるほか[2]、軽支援火器(英: Light Support Weapon, LSW)と称されることもある[3]。
なお分隊支援火器という呼称は武器の使用区分を表しており、武器としての区分は機関銃である[4]。
概要
第二次世界大戦後、西側諸国では歩兵分隊の銃器を自動小銃と汎用機関銃に統合化し、軽機関銃は廃止される方向にあったのに対し[5]、東側諸国では、汎用機関銃は中隊レベルの装備とされて[6]、これとは別に分隊レベルのための軽機関銃も維持していた[5]。また歩兵用小銃とあわせて分隊用の軽機関銃も中間弾薬に移行しており[7]、1953年にRPD軽機関銃を導入したのち、1961年からは、AKM小銃をもとに開発されたRPK軽機関銃に移行した[8]。
ベトナム戦争において、東側の武器体系を採用するベトナム人民軍は分隊用の軽機関銃を装備していたのに対し、アメリカ軍は汎用機関銃であるM60機関銃のみを装備していた[6]。しかし特に徒歩行軍の機会が多い熱帯雨林や山岳地域での戦闘において、機関銃本体も弾薬も重く嵩張るM60は輸送のために労力を要し、決定的に不利であった[9]。この経験から、アメリカ軍でも軽機関銃の重要性が再認識されるようになった[6]。
1960年代末より、アメリカ陸軍は歩兵部隊が持つ火力のタイプと組み合わせに関する研究に着手していたが、これらの戦訓を踏まえて「戦術的多様性を達成するため、小銃分隊の各射撃班に1名ずつ、計2名の機関銃手が必要である」との結論に達した[10]。これを受けて1972年には新型機関銃の要求事項が提示され、計画名は分隊支援火器(SAW)とされた[10]。競争試作を経て1979年より比較試験が行われ、M16自動小銃の軽機関銃版(XM106)やH&K HK21の改良型(XM262)を抑えて、ミニミ軽機関銃がM249軽機関銃として採用された[10]。
イギリス軍はL7汎用機関銃(GPMG)のほかに大戦世代のブレン軽機関銃も改修の上で使い続けていたが[注 1]、1985年、その後継としてL85小銃の発展型であるL86A1 LSWが制式化された[12][13]。ただしL86は持続射撃能力の不足が問題になり[12]、まず2001年にアフガニスタンへの派遣部隊のためにミニミ軽機関銃を緊急調達し、2004年に正式採用された[14]。しかしミニミ軽機関銃の射程不足に伴い、2018年には分隊単位でL7汎用機関銃を装備して、LSWとミニミは廃止されることになった[15]。一方、アメリカ海兵隊はこれとは逆に、2010年よりM249軽機関銃の一部をM27 IAR(歩兵自動小銃)に代替することとした[16]。これはH&K HK416の派生型で、M249よりも軽く射撃精度が高く、またM16小銃との互換性も高いことが評価されたものであったが、やはり持続射撃能力の不足という問題があり、完全な代替は困難と考えられている[16]。
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RPK軽機関銃
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M27 IAR
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M249の後継となるXM250
脚注
注釈
出典
- ^ 「銃」『日本大百科全書(ニッポニカ)』 。コトバンクより2021年5月18日閲覧。
- ^ “Machine gun”. ブリタニカ百科事典 (19 May 2020). 2021年5月18日閲覧。
- ^ 床井 2006, pp. 6–7.
- ^ McNab 2020, pp. 47–52.
- ^ a b 床井 2006, pp. 8–16.
- ^ a b c 床井 2006, pp. 18–21.
- ^ McNab 2020, pp. 2–10.
- ^ Rottman 2018, pp. 66–71.
- ^ McNab 2020, pp. 182–184.
- ^ a b c McNab 2020, pp. 26–31.
- ^ Grant 2013, pp. 53–56.
- ^ a b Grant 2013, p. 59.
- ^ 床井 2006, p. 281.
- ^ McNab 2020, pp. 128–132.
- ^ “British Army to scrap old infantry weapon systems”. UK Defence Journal. (August 8, 2018) 2021年5月31日閲覧。
- ^ a b McNab 2020, pp. 162–179.
参考文献
- 床井, 雅美『最新マシンガン図鑑』徳間書店、2006年。ISBN 4-19-892527-5。
- Grant, Neil (2013). The Bren Gun. Osprey Weapon Series. Osprey Publishing. ISBN 978-1782000822
- McNab, Chris『ミニミ軽機関銃-最強の分隊支援火器』床井雅美 (監修), 加藤喬 (翻訳)、並木書房〈Osprey Weapon Series〉、2020年(原著2017年)。ISBN 978-4890633999。
- Rottman, Gordon L.『AK-47ライフル-最強のアサルト・ライフル』床井雅美 (監修), 加藤喬 (翻訳)、並木書房〈Osprey Weapon Series〉、2018年(原著2011年)。ISBN 978-4890633708。
関連項目
分隊支援火器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 08:35 UTC 版)
M16をもとにした軽機関銃も開発されており、LSW(Light Support Weapon、軽支援火器)と称される。また後にコルト自動小銃 (Colt Automatic Rifle) と称されるようになった。 M16の各バージョンを元にして製造されているため、数機種のバリエーションが存在する。ハンドガードが角が丸い四角形となり、下面にグリップが追加された。M16ライフルの機関部を流用して、これに肉厚のヘビー・バレルと折りたたみ式の二脚を付している。給弾は弾倉式で、標準的なSTANAG マガジンのほか、C-MAGなどのドラムマガジンも用いられる。アメリカ海兵隊では、M16のヘビーバレル版を軽機関銃として検討しており、性能試験を行ったものの、銃身が加熱して連続射撃ができないことが問題視されて、1977年には試験中止となった。 一方、アメリカ陸軍もM16と同じ弾薬を使用できる軽機関銃の必要性を公式に認めて、1972年には分隊支援火器(SAW)計画を発足させていた。このトライアルにはM16A1のヘビーバレル版改良型(XM106)も参加しており、海兵隊からは好評だったが、結局はベルギーのFN社が設計したミニミ軽機関銃がM249軽機関銃として採用された。ただし海兵隊の一部ではM16のヘビーバレル版が運用されているほか、中南米や中東諸国の一部でも採用されている。またディマコ社での生産分はカナダ軍で採用された。 H&K HK416を元にした分隊支援火器モデルについては「M27 IAR」を参照 SAW計画に提出されたXM106 デンマーク軍のM16 LSW
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