生活保護
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都道府県・市町村ごとの受給率・生活保護費用
都道府県ごとの生活保護受給率
生活保護受給率が高い地域を都道府県ごとにみると、北海道(人口1,000人当たり約23.4人)、福岡県(人口1,000人当たり約22.9人)、青森県(人口1,000人当たり約22.0人)、沖縄県(人口1,000人当たり約21.7人)、東京都(人口1,000人当たり約21.0人)、大阪府(人口1,000人当たり約20.4人)である。反対に保護率が最も低い県は富山県(人口1,000人当たり約2.6人)であり、次いで岐阜県(人口1,000人当たり約3.3人)である(平成30年度被保護者調査による[45])
市区町村ごとの生活保護受給率・自治体別生活保護費
政令指定都市の中では特に大阪市は、人口1,000人当たり約51.1人と多く、全国の約16.6人の約3.1倍であり、約20人に1人が受給している[45]。
外国籍受給者関連・最高裁判決
1946年(昭和21年)の旧生活保護法においては全ての在住者を対象としたが、1950年(昭和25年)の改訂で国籍条項を加えた。1954年(昭和29年)5月8日付厚生省社会局長通知により、「人道的見地」から、生活に困窮する永住外国人や日本人配偶者などの外国人においても、生活保護法を準用すると通知して以降、日本国民と同じ条件で給付している。1990年(平成2年)10月25日に厚生省社会局保護課企画法令係長による口頭指示という形で対象となる外国人を永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者、認定難民に限定するようになった。
外国籍の生活保護受給者は国籍法における「生計条件」を満たしてないため、帰化による日本国籍取得自体は不可能である。
尚、地方分権一括法の施行に伴い、上記の旧厚生省通知の現在の法的位置付けは地方自治法245条の4第1項に基づく「技術的助言」である。[46]
(上記厚生省通知が法的拘束力の無い技術的助言に留まっているのは、外国人への生活保護準用は第一号法定受託事務ではなく自治事務の為である)
最高裁の判断
国内での永住権を持つ外国人が、日本人と同じように生活保護法の対象となるかどうかが争われた訴訟で、最高裁第二小法廷は2014年7月18日、二審[47]の判決を破棄し、「現行の生活保護法は,1条及び2条において(中略)「国民」とは日本国民を意味するものであって」「生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。」「生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく」「外国人は,行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり,生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく,同法に基づく受給権を有しないというべきである」とする判断を示している[7]。
大阪市での中国人生活保護集団申請
2010年5月、大阪市で中国国籍者が集団(10世帯で25名、その後合計46名)で入国し、外国人登録が認められた直後に生活保護申請を集団で行うという事例が発生。大阪市は形式的に要件が整っている以上、保護決定をせざるを得ない状況にあると考えられたことから、生活保護支給決定を行った。大阪市は、以下の「基本的認識」の通り、入国管理法の運用や生活保護制度の準用に問題があるとの認識から、入国管理局他、関係先に対して申し入れ等を行うとともに、同様の生活保護の申請は受付を保留し、厳正な対応を行っていくことを決め、この事実を2011年6月29日に公表し、問題提起を行った。最終的に、「身元保証人による保証の実態がなく、生活保護受給を目的とした入国と判断せざるを得ない」とし、生活保護打ち切りを最終決定している[48][49]。
- 基本的認識(大阪市)
- 結果的に、本市に何の裁量権もなく、生活保護法を適用しなければならないというのでは、市民の理解は得られにくく、また、4分の1の財政負担を余儀なくされる大阪市としても納得できるものではない[49]。
- 人道上の観点から、中国残留邦人の子孫の方たちの処遇をどう考えるのかという問題は国の責任において、別の制度、施策を設けて対応すべきものであり、生活保護の準用の是非という観点だけで本市に判断を委ねるのは大きな問題である[49]。
その結果、2010年7月21日、厚生労働省はこの件について、身元保証人による保証の実態がないなど、結果的に生活保護目的の入国とみなさざるを得ない場合は、生活保護を準用しない旨の回答を行った。大阪市は、この回答を受け、現在の状況では生活保護を準用することはできないと判断し、2010年8月以降の保護費の支給を保留するなどの措置を取った。その後、2010年9月10日までに、集団で申請を行った16世帯46人全員から生活保護の辞退および申請の取り下げがあった。しかし、すでに受給済みの者について保護決定を過去に遡って取り消すのかどうかなどの問題も残っていた上、いったん生活保護を辞退することによって、「国または地方公共団体に負担をかけない」こととし、一定の期間が経過した後に再申請することも懸念されたため、大阪市は、入国管理局の再調査の結果に関する見解や、関係資料をもらったうえで最終的な意思決定を行うことした。その後、大阪入局管理局は、2011年4月19日に、これらの者の在留資格の更新申請にあたっては、これまでの「定住者」資格ではなく「特定活動」資格に限って許可し、生活保護準用の対象とはしない方針を示した。一方、厚生労働省の通知に基づいて大阪市が2010年7月23日に照会した「入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書」等については明確な回答がなかった。大阪市は以上の経過を踏まえ、総合的に判断し今回の対象者は、生活保護目的の入国と見なさざるを得ず、本来、法の準用の対象ではないと認められるため、生活保護法の準用を取消し、支給した保護費の返還を求めるとの判断を示した。大阪市は2005年から2009年の5年間に外国籍の者が入国から3ヶ月以内に生活保護を申請した事案について調査を行うことを決定し、調査した[49]。
2011年8月17日付で、厚生労働省より「外国人からの生活保護の申請に関する取扱いについて」が各自治体あての通知にて、入国後間もない外国人から生活保護の申請があった場合、生活保護の実施機関は、申請者に対して入国管理局へ提出した資料(入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書等)の提出を求め、申請者が理由なく提出を拒む場合は生活保護の申請を却下できるとした。これに先立ち、法務省からも各地方入国管理局に対して、入国を求める外国人が「生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」でないかを一層厳正に審査するよう通知が出された[49]。
外国人生活保護受給者における国籍や年齢内訳
2022年の厚生労働省「 被保護者調査」によれば、日本人をふくむ生活保護の総件数は、161万9452世帯[50](人数は199万3867人[51])、このうち外国人世帯主の世帯は4万6005世帯[52](人数は6万4245[53])である。
全生活保護件数のうち外国人が世帯主の占める割合は世帯数で2.8%、人数で3.2%になっている。
国籍別でみると、日本が157万3447世帯(189万7672人)、韓国・朝鮮が2万8440世帯(3万3063人)、中国が6133世帯(9544人)、フィリピンが5124世帯(1万700人)。
各国の外国人が世帯主の受給率では、在日韓国・朝鮮人世帯が14.4%(2020年)[54]と国別では一番高い数値となっている[55]。
年齢層でみると、在日フィリピン人受給者の67%が44歳以下、在日中国人受給者55.5%が64歳以下、という数字に比べ、在日韓国・朝鮮人の受給世帯では、高齢者世帯(65歳以上だけの世帯)が70.4%、世帯全員の年齢構成も65歳以上が67.9%[53][52]と、在日韓国・朝鮮人の受給者は高齢者率が高くなっている[56]。
統計と将来予測
各種の統計データや試算が出ているが、代表例としては、厚生労働省の被保護者調査が基本統計データとしてあげられる[57]。
従って、客観的に検証可能な公的な機関が作成した統計データ以外の統計、例えば、政治家の試算や審議会の試算による統計データについては、客観的な検証の必要性を残す場合もあるという観点から、当欄の記載にあたって「〜によると・・される」等との記載に統一している。
被保護者数
厚労省によれば、生活保護の受給者数は、第二次世界大戦後の混乱の中、月平均で204万6646人が受給していた1951年が、同年の調査開始から2011年まで60年間、統計史上最高であった。その後は高度経済成長に伴い減少傾向で推移していたが、1995年の88万2229人を底に増加に転じ、1999年に再び100万人を突破したとされている[58]。2011年3月には200万人を突破し、2012年7月には212万4669人と当時過去最多の受給者数を記録しているとされている[58]。その後、2015年7月の212万7,841人まで増加した。そして、2013年8月から2015年まで行われた生活保護の見直しも影響し、2016年以降は減少している。
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生活保護廃止の理由で最も多いのが43.3%の死亡であり次に多いのが16.9%の収入の増加である(2019年度)[60]。
また、生活保護を受けている人の自殺率は、一般の人の2倍となっており、20代だと6倍となっている(2012年時点)[61]。
世帯類型別統計
厚労省統計では、世帯類型については以下のように分別され、上から順に優先適応される[57]。
- 高齢者世帯
- 母子世帯(父子世帯は含まない)
- 障害者世帯
- 傷病者世帯
- その他の世帯
高齢者世帯 | 母子世帯 | 障害者・傷病者世帯 | その他の世帯 |
---|---|---|---|
56% | 4% | 25% | 15% |
これによれば、中でも高齢者世帯(65歳以上)は趨勢的に増加しており、1980年度(昭和55年度)には全体の30.2%であったが2021年(令和3年)には56%[62]と半数以上を占めている[63]。
なお、「稼働年齢層」とは、厚生労働省で明確な定義がなく、『いわゆる稼働年齢層(15 歳~64 歳)』と表記されている[64]。
疾病・障害の有無
年齢 | 総数 | 障害・傷病あり | 障害・傷病なし | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
小計 | 障害者 | 傷病者 | |||||||||
計 | うち 精神障害 |
うち 知的障害 |
うち 身体障害 |
計 | うちアルコール 依存症 |
うち 精神病 |
うち その他 | ||||
総数 | 2,048 | 927 | 421 | 176 | 44 | 201 | 506 | 10 | 144 | 352 | 1,120 |
19歳まで | 209 | 17 | 12 | 2 | 8 | 2 | 5 | 0 | 1 | 4 | 192 |
20 - 24 | 24 | 9 | 6 | 2 | 4 | 1 | 3 | 0 | 2 | 1 | 15 |
25 - 29 | 29 | 13 | 8 | 4 | 3 | 1 | 5 | 0 | 4 | 2 | 16 |
30 - 34 | 41 | 20 | 11 | 6 | 3 | 2 | 9 | 0 | 6 | 3 | 21 |
35 - 39 | 57 | 30 | 15 | 10 | 3 | 2 | 14 | 0 | 9 | 5 | 28 |
40 - 44 | 81 | 46 | 24 | 16 | 3 | 5 | 22 | 1 | 14 | 8 | 35 |
45 - 49 | 120 | 72 | 37 | 24 | 4 | 9 | 36 | 1 | 20 | 15 | 48 |
50 - 54 | 131 | 82 | 40 | 24 | 4 | 12 | 42 | 1 | 20 | 21 | 49 |
55 - 59 | 137 | 87 | 40 | 21 | 3 | 16 | 47 | 2 | 17 | 29 | 50 |
60 - 64 | 165 | 102 | 43 | 19 | 3 | 21 | 59 | 2 | 15 | 43 | 63 |
65 - 69 | 237 | 127 | 52 | 19 | 3 | 30 | 75 | 2 | 14 | 60 | 110 |
70 - 74 | 263 | 116 | 48 | 14 | 2 | 33 | 68 | 1 | 10 | 57 | 147 |
75 - 79 | 239 | 89 | 38 | 8 | 1 | 29 | 51 | 0 | 6 | 44 | 150 |
80歳以上 | 313 | 117 | 47 | 6 | 1 | 39 | 70 | 0 | 7 | 63 | 197 |
平均年齢 | 59歳 | 61.5歳 | 59.5歳 | 54.6歳 | 41.8歳 | 67.6歳 | 63.3歳 | 59.1歳 | 54.2歳 | 67.1歳 | 57歳 |
- 注:100の単位で四捨五入しているため、500未満の場合、0となっている。また各数値は、四捨五入して出された概数出るため、総数と合わない場合があることに注意する。
年齢 | 総数 | 0-14歳 | 15-34歳 | 35-54歳 | 55-59歳 | 60-64歳 | 65歳以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
精神・行動の障害 | 7.3% | 4.4% | 15.5% | 13.0% | 8.7% | 7.2% | 4.8% |
神経系の疾患 | 3.7% | 1.3% | 4.3% | 4.4% | 3.6% | 3.2% | 3.8% |
循環系の疾患 | 21.7% | 0.4% | 2.1% | 10.0% | 18.7% | 22.6% | 29.4% |
呼吸系の疾患 | 8.3% | 43.2% | 19.1% | 9.3% | 5.5% | 5.0% | 4.9% |
消化系の疾患 | 6.2% | 1.7% | 6.0% | 8.1% | 7.3% | 6.6% | 5.8% |
筋骨格系及び結合組織の疾患 | 12.1% | 1.9% | 6.6% | 13.3% | 14.8% | 14.1% | 12.3% |
その他 | 40.7% | 47.1% | 46.3% | 41.8% | 41.4% | 41.4% | 39.0% |
総数 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
生活保護受給率・保障水準
厚生労働省においても、上記調査結果は被保護世帯数の割合(保護世帯比)であるとして「生活保護は申請に基づいた制度であることから、調査から得られた「保護世帯比」が、申請の意思がありながら生活保護の受給から漏れている要保護世帯(いわゆる漏給)の割合を表すものではない」としている[67]。「捕捉率」という言葉は使用する者もいるが、公的機関では統計資料含め、生活保護受給率と表記している[68]
生活保護には所得要件だけでなく資産要件があるため、所得が生活保護支給基準以下となっても、葬祭費の備えなどの預貯金や保険等が最低生活費の半月分以上ある場合は、生活保護の要件を満たさない。生活保護要件水準の者の生活保護受給率(生活保護補足率)は、調査によると、フランスでは91.6%、ドイツでは64.6%、イギリスでは47-90%、日本は15.3-18%となっている[69]。ただし、このような数値になる背景には諸外国公的扶助制度と比較した場合に日本は、フランスと比較するならば約2倍もの金額の所得保障をしていることにある[70]。さらに、他国の類似制度は下記のように受給資格や審査、受給後の管理も厳格で、自立を促す仕組みになっている。親類への扶養義務者への資産調査、受給申請者の納税記録、財産売却・居住義務、ボランティア含む労働義務が日本では課されていない。日本の生活保護は被生活保護者が医療費無償であるために、彼らの医療費がそもそもの支給額とほぼ同額で累計支給額が2倍となっている。日本の生活保護支給は指定住居への移住義務があるドイツの一人あたりの約3倍から5倍ほどであり、家は放棄する必要もなく、労働義務も事後の綿密な不正調査となく、他の先進国よりも一度受給すると自立を促さない仕組みになっている[71]。
生活保護受給率の全国平均自体は1.64%であるが自治体で開きがある。2019年時点で人口に占める被生活保護者率の政令市及び中核市では、1位の大阪市は約4.98%、2位函館市は約4.58%、3位那覇市は約4.08%となっている[72]。
日本で生活保護受給者に占める、不正発覚したことで措置された不正受給率は約0.5%である[73]。2005年の生活保護予算1兆9230億円に対し、2005年に発覚した不正受給は71億9000万円であった[74]。ただし、諸外国は受給される前に親類を含めた資産調査や過去の納税記録調査が行われるが、日本で世論の変化を受けて、新規の受給者へは以前より適正審査をする措置が取られている。そのため、審査が甘い時期や地域で既に生活保護を受給している場合、受給側の立場が強く、一度受給されると、通報を受けて人員がある際に行われる調査が無い限り打ち切られることもない。受給者による担当者らへと言動から不人気である上に、一人で数十から数百人を担当するケースワーカーなど生活保護者担当は常に人手不足で不正調査がしきれていない背景がある[75]。
各国と日本の制度・所得保証水準の比較
世界的な機関による分析の例としては(1)がある。なお、厚生労働省の審議会の分析として(2)もある。
- 世界銀行 Survey of Social Assistance in OECD Countri による分析によると、各国の社会扶助費のGDPに占める割合比較(1995年)は、OECD加盟国平均3.5%で、ニュージーランドの10.4%が最多であり、フランス3.9%、ドイツ3.45、イギリス2.8%、アメリカ0.8%、日本は0.5%である。社会扶助費のGDPに占める割合比較(1995年)がアメリカよりも低い数値であるからもっと生活保護を基準や審査を緩和しろとの声がある。しかし、背景には日本は高齢者への医療費を含む社会保障費が歳出の約半分を占めているほど大きいため、相対的にGDPに占める社会扶助費割合が小さくなることにある[70]。
- 日本の厚生労働省社会保障審議会がまとめた分析によると、諸外国公的扶助制度と比較した場合の30代単身世帯所得保障水準では、比較対象のスウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、日本の5カ国中、最高水準の額で最も手厚い保障金額にしている。スウェーデン、フランスに対しては、日本は約2倍もの所得保障している[70]。
現行の生活保護制度における将来各種分析
上例や下記のように、所得の保証水準自体がスウェーデンとフランスの約2倍の金額、財産売却義務・公的住居移転義務・15年間の納税記録・扶養義務のある親族を含む厳格な資産調査・月毎にボランティアなど一定時間の労働義務などのあるドイツの4-5倍の支給金額など、一旦受給出来るとその後の不正調査も人員不足でほぼなく、手厚い日本の生活保護制度は、自立をするより子孫も生活保護受給する仕組みになってしまっている。そのため、生活保護受給率がこれ以上高まったら財政的に問題が出る分析が示されている。
また、学習院大学経済学部経済学科鈴木亘教授によれば、「確かに生活保護を受けてもいい低所得者はたくさんいるので、もっと生活保護を増やすべきという主張は理解できないわけではない。しかし、実施体制が崩壊しかかっている。低所得者をすべて受け入れると、単純計算でも年間10兆円が必要で、消費税にすれば3%を超える。制度を維持していくには、支える側、つまり納税者の理解が得られなければ無理である。今の状況ではとても理解が得られるとは言えない」としており、受給期限の設定や自立支援プログラムの強制などの導入を提唱しつつ、現状の生活保護制度の在り方について危機感を示している[76]。
これと同じく、「現行制度のまま生活保護利用率がこれ以上高まったら財政的に問題が出る」という立場の団体・研究機関の分析や意見の例として以下のものがある。
総合開発研究機構の2008年段階の試算レポートによると、就職氷河期の人々について、働き方の変化(非正規の増加と、家事・通学をしていない無業者の増加)によって生じる潜在的な生活保護受給者は77.4万人、それが具体化した場合に必要な追加的な予算額累計約17.7-19.3兆円となる結果が導き出され、これが現実となれば社会的にも深刻な影響を与える規模であることが予想されている[77]。しかしこの予想は氷河期世代が生活保護受給者になる頃には団塊世代の死滅を考慮しておらず正確さに疑問を持たれている[78]。
相対的貧困率が小さいスウェーデンでも1990年代の経済危機により失業者が増加し社会保障受給者が増え、社会省が1999年から2004年までに社会扶助受給者数を半減する目標を設定するまでになった。同国では社会保障に占める生活保護など社会扶助の割合は4%と極めて小さく、また2008年のうち少なくとも1か月受給したことのある世帯は、全世帯の6.1%であり、平均受給期間は6.1か月で、1世帯当たりの月平均受給額は8万6千円となっている[79]。
扶養照会を行い経済援助につながった割合
2016年7月の保護開始世帯では、経済的援助につながった割合は約1.4%である[80](DVなどにより扶養照会を行わなかった場合は除く。)。
生活保護者のギャンブルに関する統計
2018年1月23日、厚生労働省は、生活保護受給者が行った過度のギャンブルに対して、2016年に指導を行った件数は3,100件であったと公表した。ギャンブルの種類別では、パチンコの2,462件が最多[81]。
注釈
- ^ 食費、被服費、光熱費などが支給される制度
- ^ ストライキ中における労働組合員の生活保障については、組合自身が自主的に準備するのが常道であって、かかる準備が不十分なままに、組合員の少なからぬ部分につき、その家族を生活保護を要するごとき困窮状態におとしいれながら、あえてストライキを強行継続するようなことは、労働組合の健全な運営確保上、一般論としては、問題であり、平常の労働教育活動において、かかる趣旨を徹底せしめるようせられたい(昭和36年12月11日大阪府労働部長あて労働省労政局労働法規課長通知)。
- ^ 税務部局(町村)、社会保険事務所、公共職業安定所、労働基準監督署、運輸支局、金融機関・保険会社、雇用主等
- ^ 児童福祉法第22条。同法では妊娠中または出産後一年以内の女子を妊産婦と呼称し、妊産婦に対し助産を行う旨が規定されている。
- ^ 出産扶助を含め、扶助を受ける者の性別を規定する条文は存在しない。生活保護法は男性の妊娠が実用化されるより前に制定されたものだが、男性の妊娠が将来実用化されることを想定してあえて性別を規定しなかったのかどうかは不明。
- ^ 上述の国の内、年金支給対象の高齢者に最低支給年金額保証する追加制度がある国もある。年金クレジット(英。en:Pension Credit)、高齢者ミニマム(仏)。
- ^ 例えばドイツの生活保護であるHarz IVの場合、日本のように(特別)永住者や未成年を含む税金を納めた過去のないものには認定難民以外は申請資格もなく、直系親族と本人に財産審査と直系親族への扶養義務があり、財産がある場合は受給出来ず、家や車、換金できるモノの売却義務、指定された公共住居への移住義務がある。電化製品や家具、洋服は寄付や中古品でまかなう。そうすることで、月額日本円で35000円前後の実質食費のみが支給される日本より厳格な制度となっている。難民受給者の増加や受給しながらミニワークすることで一般労働者より月収が高くなる ことが問題になっているが、所得や財産が政府や自治体に完全に把握されており、日本のように不正受給が起こっていない。アメリカではフードスタンプが基本で現金は一人あたり日本円でいう2万円程度あり、日本のような生活保護受給中はボランティア活動が義務付けられている。川口は欧米の捕捉率が日本より高いのは、そもそも日本より圧倒的に支給金額が低いことや親族を含めた財産調査が入ることで事前の不正受給の防止がなっているからと指摘している。難民の受給問題はあるものの、日本のように非難民かつ15年前後以上の国家への納税記録がない者は生活保護を受給出来ないようになっている。
出典
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- ^ “精神的な疲弊も大きい生活保護担当の職員 異動を希望する人も多数”. ライブドアニュース. 2021年5月16日閲覧。
- 1 生活保護とは
- 2 生活保護の概要
- 3 原則・権利・義務
- 4 種類
- 5 実施主体
- 6 財政
- 7 都道府県・市町村ごとの受給率・生活保護費用
- 8 欧米諸国との比較と制度の問題点
- 9 関連作品
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