生活困窮者自立支援法とは? わかりやすく解説

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せいかつこんきゅうしゃじりつしえん‐ほう〔セイクワツコンキユウシヤジリツシヱンハフ〕【生活困窮者自立支援法】

読み方:せいかつこんきゅうしゃじりつしえんほう

経済的に困窮し最低限度の生活維持することができなくなるおそれのある人に対して自立促進を図るための措置講ずることを定めた法律就労など自立に関する相談や、住居確保必要な費用給付などを行う。平成25年2013公布平成27年20154月施行


生活困窮者自立支援法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/23 08:20 UTC 版)

生活困窮者自立支援法

日本の法令
法令番号 平成25年法律第105号
提出区分 閣法
種類 社会保障法
効力 現行法
成立 2013年12月6日
公布 2013年12月13日
施行 2015年4月1日
所管 厚生労働省社会・援護局
主な内容 生活困窮者自立支援について
関連法令 生活保護法
条文リンク 生活困窮者自立支援法 - e-Gov法令検索
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生活困窮者自立支援法(せいかつこんきゅうしゃじりつしえんほう、平成25年12月13日法律第105号)は、生活保護に至る前あるいは保護脱却の段階での自立支援の強化に関する日本法律である[1]

厚生労働省社会・援護局保護課が所管し、こども家庭庁支援局家庭福祉課と連携して執行にあたる。

法制定の経緯

戦後の日本では、日本国憲法第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という理念に基き、1950年(昭和25年)に全面改正された生活保護法による生活保護制度が、国民の「最後のセーフティーネット」としての役割を果たしてきた。

1990年代バブル経済崩壊以降は長期的な不況が続き、経済のグローバル化にともなう非正規雇用が増加した[2]。さらに2008年平成20年)のリーマン・ショックによる世界金融危機に伴う非正規労働者派遣切り雇い止め2011年(平成23年)に発生した東日本大震災の影響などで経済的に困窮する人々が増加し[2]、1990年代から2010年代の長期的な経済低迷は「失われた20年」と呼ばれるに至った。そのため、減少を続けてきた生活保護受給者数が1995年頃から増加に転じた。

また、少子高齢化晩婚化非婚化による単身世帯の増加、一人親家庭の増加と世代間における貧困の連鎖地縁血縁による繋がりの希薄化(無縁社会)による社会的孤立などの問題がクローズアップされるようになった[2]

そうした背景をもとに、日本政府は2012年厚生労働省社会保障審議会に「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」を設置し、翌2013年1月25日に特別部会報告書[3] が提出された。

生活困窮者が「最後のセーフティネット」である生活保護受給に至る前に、予防的に「第2のセーフティネット」として支援制度が設置されることとなり、2013年平成25年)12月13日、生活保護法の改正とあわせて「生活困窮者自立支援法」が制定され[4]、2015年(平成27年)4月1日[5] に施行された。

法の構成

  • 第一章 総則(第一条―第三条)
  • 第二章 都道府県等による支援の実施(第四条―第九条)
  • 第三章 生活困窮者就労訓練事業の認定(第十条)
  • 第四章 雑則(第十一条―第十九条)
  • 第五章 罰則(第二十条―第二十三条)
  • 附則

下位法令

生活困窮者の定義

本法第3条において『この法律において「生活困窮者」とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。』としている。

議論と改正

2024年 住居確保支援、子供の貧困対策の充実等

政府は改正案を2月に閣議決定。[6]4月に参院本会議で可決された。[7]一部を除き2025年4月1日施行予定。[8]

支援事業のあらまし

支援事業の主体は、特別区を含む)及び福祉事務所を置く町村並びに都道府県である(4条、5条)。

  • 必須事業[9]
    • 自立相談支援事業(3条2項、5条)
    • 住居確保給付金の支給(3条3項、6条)
  • 任意事業[10]
    • 就労準備支援事業(3条4項、7条)
    • 一時生活支援事業(3条5項、7条)
    • 家計相談支援事業(3条6項、7条)
    • 生活困窮世帯の子どもの学習支援(7条)
  • 就労訓練事業の認定(16条)

自立相談支援事業

就労の支援その他、自立に関する相談を受ける。また認定就労訓練事業の斡旋を行う。支援計画を記載した計画を作成する[11]

住居確保給付金の支給

経済的に困窮し住宅の所有権を失う、または賃貸住宅の家賃の支払いが困難になった者の住居の確保を支援する。申請日に65歳未満で公共職業安定所において就職の斡旋を受けていること、その他所得条件、資産条件を満たしていることを要する[12]

就労準備支援事業

雇用による就労が著しく困難な者に一定の期間に限り就労に必要な訓練を行う。申請日に65歳未満で所得基準、資産基準を満たしていること[13]

一時生活支援事業

一定の住居を持たない困窮者に対して宿泊場所の提供等を行う。収入条件、資産条件を満たしていること[14]

家計相談支援事業

生活困窮者の家計に関する問題につき相談を受ける。また支出の節約に関する指導、資金の貸付を行う[15]

生活困窮世帯の子どもの学習支援

生活困窮家庭の子供に対する学習支援や保護者への進学助言を実施し[16]、世代間の貧困の連鎖を断ち切る。

就労訓練事業の認定

雇用による就業が困難な生活困窮者に対して就労の機会を提供し、また就労に必要な知識、能力の向上に必要な訓練、生活支援、健康管理の指導等を行う者を、都道府県知事が基準を満たしているかどうか判定し、就労訓練事業の認定または認定の取り消しを行う[17]

脚注

  1. ^ 岡部卓 2015, p. 1.
  2. ^ a b c 生活困窮者自立支援制度への対応”. 社会福祉法人 全国社会福祉協議会. 2020年6月11日閲覧。
  3. ^ 社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会報告書 厚生労働省 2013年1月25日(PDF)
  4. ^ 中央法規出版編集部 2014, p. 2-17.
  5. ^ 生活困窮者自立支援法案について”. 厚生労働省. 2020年6月11日閲覧。
  6. ^ 生活困窮者の自立支援強化 改正案を決定―政府:時事ドットコム”. 時事ドットコム (2024年2月9日). 2024年6月1日閲覧。
  7. ^ 日本放送協会 (2024年4月17日). “改正生活困窮者自立支援法など参院本会議で可決 成立 | NHK”. NHKニュース. 2024年6月1日閲覧。
  8. ^ 第213回国会(令和6年常会)提出法律案”. www.mhlw.go.jp. 2024年6月1日閲覧。
  9. ^ 岡部卓 2015, p. 23.
  10. ^ 岡部卓 2015, p. 24.
  11. ^ 岡部卓 2015, p. 28.
  12. ^ 岡部卓 2015, p. 29-32.
  13. ^ 岡部卓 2015, p. 32-33.
  14. ^ 岡部卓 2015, p. 33-34.
  15. ^ 岡部卓 2015, p. 34.
  16. ^ 中央法規出版編集部 2014, p. 34.
  17. ^ 岡部卓 2015, p. 34-35.

参考文献

関連項目

外部リンク



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