野球のまち阿南
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 02:59 UTC 版)
「徳島県南部健康運動公園野球場」の記事における「野球のまち阿南」の解説
阿南市は地元政財界と連携し、地域で人気の高い野球を通して地域振興や活性化を目指す「『野球のまち阿南』推進協議会」(以下「推進協」)を2007年6月27日に設立した。同推進協は野球チームや企業など180団体からなり、四国アイランドリーグplusと徳島インディゴソックスの応援・後援の他、高校野球公式戦、プロ野球、社会人野球、大学野球の公式戦やキャンプの誘致活動を円滑に進めることを目的としている。阿南市の幹部職員114人は徳島インディゴソックスのファンクラブに加入し、官民を挙げて野球のまちづくりに取り組んでいる。2008年4月1日には推進協を充実させるため市は「野球のまち推進監」ポストを新設。嘱託職員1人、任期1年で実務を担当する。民間ではホームベースの形をしたフィッシュカツが開発販売されるなどまちづくりに呼応した動きが出ている。 この取組みを激励しようと、2008年4月に当球場で開催された西日本生涯還暦軟式野球大会に出場した草野球活動に造詣の深いスポーツ関連企業代表は、米国シアトル・マリナーズのイチロー選手の記念ユニホームを市に寄贈。市ではシンボルとして活用したい考え。また、それを伝え聞いたイチロー選手も阿南市のこうした取組みに賛同したとされる。その後市民などからこうした記念品の提供が続いていて、福岡ソフトバンクホークスの王貞治監督や、阿南市出身の代表的プロ野球選手3名である水野雄仁、條辺剛、柳田浩一のユニホームやバット、トロフィーのほか、甲子園出場校の持ち帰ったグラウンド土などが多数寄せられている。また、こうした「野球のまち」への熱意に感心した全日本早起き野球協会長は、阿南市職員を同協会事務局長として就任要請した。 野球交流 2007年8月18~21日、市は「野球のまち」の一環として国際野球交流を図ろうとモンゴルを訪問した。これは1990年代に那賀川町が同国と行っていた野球交流を再開させようとする試みであり、当野球場の完成が国際交流の機運を再びもたらせた。2009年4月にモンゴルの少年に賛同者から寄贈されたグラブやボール431点を贈る予定。 2008年5月28日、室戸阿南海岸国定公園にも指定されている四国東南部の阿南市と高知県室戸市、同県安芸市は観光振興などを図るため「AMA地域連携協定」(AMAは各市名の頭文字)を結んだ。3市には阪神タイガースのキャンプ地安芸市営球場や室戸マリン球場、2007年に選抜高校野球に出場した高知県立室戸高等学校があり野球の共通素材でも交流する予定。今後3市民による各種野球大会などを開くほか、阿南市は先輩各市から野球振興のノウハウも学びたい方針。2008年11月22日には初のAMA杯争奪大会が開かれ、来年以降も持ち回りで開催予定。 大会誘致 2007年10月、推進協の呼び掛けで市生涯還暦野球連盟が結成された。2008年4月19・20日には当野球場など県南部5球場で、県内初となる西日本生涯還暦軟式野球大会を開催した。将来は全国規模の野球大会誘致が狙い。2009年4月18日には当球場で第2回西日本生涯還暦野球大会が開催された。 2008年3月22日に阿南市制施行50周年記念事業も兼ねて、四国放送主催による茨城ゴールデンゴールズの、徳島インディゴソックスとの交流戦や一般公募選手との野球交流を開催。また2009年3月28日には四国放送主催によるプロ野球マスターズリーグ公式戦が開かれた。両年とも同社がラジオ放送による生中継を行っている。 2008年3月28~31日に、全6球団が初めて集結しての阿南市長杯四国・九州アイランドリーグトーナメント戦を開催。推進協と徳島インディゴソックスが地元ファンを増やそうと企画。リーグでは仕上がり具合の確認とお披露目のためにと2009年も同市で開催する予定と報じられたが、その後徳島県営蔵本球場と吉野川運動公園野球場での四国4球団によるプレシーズンマッチに変更されて2009年は開催されなかった。2010年以降はプレシーズンの試合自体が実施されていない。 2008年5月17・18日、市では県高校野球連盟招待野球大会を開催した。これは県外の強豪校との対戦によって市内の高校野球のレベルアップを図ろうというもので、今後も招待試合を続けて将来的に甲子園出場に繋げたい考え。尚、県南部では当野球場付近の新野高校が1996年夏の甲子園に出場したほかは海南高校のみである。 合宿誘致 2009年8月5〜11日、大阪市立大学野球部約60名が阿南市で合宿練習を行った。2008年11月に当球場視察、2009年4月に正式決定。当球場と阿南工業高校グラウンド、雨天時に球場周辺小学校や高校の体育館を利用。同チームは従来は春に高知、夏に長野で合宿していたとする。大阪からの移動距離の少なさ、天然芝などに魅力を感じて決めたとする。合宿誘致は初めてで推進協ではこれを機に関西圏へ売り込む糸口としたい考え。 イベント・社会貢献 2007年8月25日、徳島インディゴソックスの選手24名が市内の民家でホームステイにより交流。推進協初かつ同リーグ初の試みであり8世帯で野球少年らと触れ合いがもたれた。翌年2008年6月21日には選手ら約50人が、さらに2009年5月23日には選手25人が民家で交流を行った。このホームステイで選手の食生活の実態を聞いたファンら5人は2009年6月「胃袋サポート隊」を結成。当月の当球場試合から米や野菜などの食料品を選手に渡し、選手の食事を支援する狙い。 2007年11月1日、阿南市は徳島インディゴソックス片山正弘投手(阿南市出身)に市野球大使を委嘱。少年野球との交流やアマチュア全国大会の開催、プロ野球キャンプ誘致活動に携わるとする。2008年4月7日には同投手は地元署の一日署長として交通安全キャンペーンに携わるほか、不登校児童と交流を行っており同投手の同年後半戦の白星と同じ数の木を寄贈するという。 2008年7月頃、徳島インディゴソックス金丸勝太郎選手の応援団「金丸をプロに送り隊」が結成された。同選手が盗塁を決める度に推進協に申し込みのあった障害者などに車椅子を寄贈していた(同選手は翌年開幕前に練習生降格後、退団)。 2008年10月19日、阿南市で「まちかどミュージアム」が開かれ、これまで推進協に寄せられたユニホームなどの寄贈品や、読売ジャイアンツの長嶋茂雄終身名誉監督のユニホームの出品物計100点が展示され約500人が来場した。 12月21~23日には同様に徳島駅前でも開催され、徳島インディゴソックス2選手による記念サイン会も開かれた。 2009年10月18日、阿南市内で元プロ野球選手の桑田真澄による講演を推進協が企画。「スポーツで地域を元気にしたい」をテーマとして同氏の野球人生を700人が聞く。 球団支援 2007年12月10日、徳島インディゴソックスは四国アイランドリーグplusで初となる球団第2の事務所・阿南事務所を阿南市宝田町に開設した。県南部の拠点として1名が常駐し、チケットやグッズ販売も行うとする。 2008年2月に推進協では徳島インディゴソックスの応援団と子供応援団「チアキッズ」を結成している。 推進協では2008年6月14日に長崎県で予定されていた徳島インディゴソックス遠征戦に合わせての応援バスツアーを企画し参加者を募った。 2008年9月17日、推進協の呼び掛けで「徳島インディゴソックス応援戦略会議」が発足し初会合。阿南商工会議所メンバーなどのファンが観客動員などで球団運営を支援する狙い。年4回会合を開くとされた。 2009年5月、阿南商工会議所員らの徳島インディゴソックス私設応援団「インディゴ侍」はマスコットガールを募集。同年の当球場3試合に参加し応援する。大学生ら15人で結成した同年7月12日のデビュー試合では声援で活気を与えた。 こうした支援策がなされてきたが、2009年の観客動員(他球場も含めた徳島主催試合)が前年比で20%以上の大幅な落ち込みを示したことから開催球場を見直すこととなった。2010年2月に発表された日程では、徳島の主催試合は徳島県営蔵本球場が14試合で最多となり、当球場は12試合で2番目であった。これについて、徳島の白石静生球団社長は「今後も阿南市に協力をお願していく姿勢に変わりはない」とコメントしている。最終的には天候不順等による振替で、2010年の開催試合数は最多の14試合(蔵本球場は12試合)となった。2011年も当初日程では蔵本(JAバンク徳島)の12試合に次ぐ11試合だったが、最終的には振替により最多の12試合(蔵本は11試合)を開催している。しかし、2012年は主催36試合中23試合を蔵本で開催したのに対し、当球場は6試合に減少し、事実上ホームグラウンドを譲った。 行政への活用 2007年12月27日、阿南警察署は本日より庁舎に設置されている徳島県内最大規模の電光掲示板において、徳島インディゴソックスの選手を起用し防犯等を呼び掛ける画像の放映を始めた。また市内の児童福祉団体では同様の選手の写真を用いたポスターを作り啓発を行っている。 2008年から市ではふるさと納税募集にあたり、納税希望者の希望使途に「野球のまちづくり」の選択肢を用意している。市出身の野球解説者水野雄仁元選手はこれを利用し寄付を申し出た。 2009年に当球場で開かれる徳島インディゴソックスの公式戦20試合において県警は、振り込め詐欺を撲滅するキャンペーンを開く。電光掲示板にメッセージを表示するほか歌を流して観客に注意を呼び掛ける。 球児指導 2008年11月30日、阿南市新野体育協会は阿南市立新野小学校において、野球のまちづくりの一環として元プロ野球選手の佐藤義則、藤井康雄両コーチを招いた小中学生約70人への野球教室、講演会、グッズ展示を開いた。 2008年12月14日、徳島県少年野球連盟は当球場において、創立30周年記念としてプロ野球選手の多村仁、新垣渚と児童240人との交流イベントを開いた。 2008年12月27日、阿南市出身の住民有志は当球場において、現・元プロ野球選手の涌井秀章、平尾博嗣、水野雄仁ら5人による小中学生約120人への野球教室を開いた。 観光活性化 徳島県南部の複数球場にまたがる野球大会では、事前に推進協では参加者に対して希望球場環境を問い周辺の観光情報も伝達しており、野球好きの団塊の世代へ好評だとされる。 2009年9月、推進協はホテル業者や旅行代理店とアイデアを出し合い、当球場での試合と県南の観光地巡りをセットにした野球観光ツアーを企画。全国500の還暦チーム中心にPRし、球場繁忙期以外の4〜7月、9〜11月の県内11チームとの交流対戦を図る。翌月にはパンフレットを作成。 波及効果 経済効果 - 2008年、「野球のまち」事業による2008年の1年間の市内への経済効果は、同市の特産品であるタケノコの出荷額2億4,000万円の半分に相当する1億2,000万円に上ると推進協が算定した。観客や選手の交通費、飲食費、宿泊費、球場使用料などから算定。なお同年の市などからの公的支出は約450万円としている。またクリーニング業では球団来訪時は注文増の効果もみられたという。
※この「野球のまち阿南」の解説は、「徳島県南部健康運動公園野球場」の解説の一部です。
「野球のまち阿南」を含む「徳島県南部健康運動公園野球場」の記事については、「徳島県南部健康運動公園野球場」の概要を参照ください。
- 野球のまち阿南のページへのリンク