特徴・交友関係・その他
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原作の特徴 小池の出自は時代小説家・山手樹一郎門下だが、山手が映像化作品の多い大衆小説家で、姉弟子の平岩弓枝も小説家と並行でテレビドラマや演劇の脚本家として活動していたことから、従来、主に小説家の副業である原作で用いられた小説形式(少年小説家出身の梶原一騎はこちらの書き方で、しかも、講談調の文体である)ではなく、漫画のネームに直しやすい、映画脚本でよく見られる「ト書き」で書かれている。デビュー当時から企画プロデューサー志向が強かったことから、打ち合わせもほとんど不要で多作をこなす。さらに原作料は当時の第一人者・梶原一騎の半分から四半分と安価。その上、ヒット率も高いとあり、1970年代前半、小池は青年漫画誌を中心に地位を確立していく。 小池の原作と上村一夫 前述の通り、小池の原作は映画脚本を意識し、ト書きの欄外に細かい演出の指示や図解が書き込まれているもので、改変の余地が少なく、締め切り間近で時間的余裕が無いという事情もあり、作画家側の演出が入ることは稀であった。そんな中で『修羅雪姫』や『バーボン警察』で組んだ上村一夫は特別扱いであり、小池の方でも上村を高く評価しており、「相手は上村だから」ということで特に問題ともしなかった。また、小池は梶原と比較すると、原作を自分流で通すのではなく、作画家の個性に合わせて組み立てる手法を採っており、小池・上村が初めて組んだ作品『修羅雪姫』では主人公をマッチョな男性ではなく、女性としている。上村は1986年に45歳の若さで他界するが、小池は上村を親友と呼ぶ。 セックスとバイオレンス 小池作品はセックスとバイオレンスが多い。小池は「劇画というのは、それ(裸)を見せるからこその劇画なんですよ。語ることではなく見せること」(大西祥平『小池一夫伝説』p.225より引用)と語る。曰く、忍者同士がただ闘っていても読者は楽しくないとの由である。また、男性主人公を多くの女性が愛するハーレム展開も多い。これは小池に言わせれば男の夢と言うものであり、読者へのサービスである。同時にこれは、ドラマの中での一休みといった要素でもあるという。また、初期作品の『ゴルゴ13』第3話「バラと狼の倒錯」や『ザ・テロル』から晩年に至るまで、特定対象へのセックス依存症を引き起こすコカ系アルカロイドの「0号催淫麻薬(アトモヒ)」という小道具を多用していたが、架空の薬物である。 ン ツ 小池は通常ひらがなの「ん」であるべきところに、カタカナの「ン」を、同様に「っ」には「ッ」を用いることが非常に多い。また「おれ」「おまえ」などの代名詞に圏点が打たれる場合も良く見られる。これはいわゆる「ぎなた読み」を避けるための工夫である。また小池によれば、漫画では文字も、絵の一部、言わば「字画同一」なのである。傍点や「ン」を用いることで読者が読みやすくなるのである。というのが小池の主張である。なお、これは1972・1973年頃から見られる傾向である。また、名詞が代名詞的な用い方をされている場合や、言葉に特定のニュアンスを持たせたい場合も、ひらがな表記にして傍点を打つ。そのほか、勃起は「エレクチオン」と表記されることが多い。 百八竜 『クライングフリーマン』連載時(1986年 - 1988年)、小池は香港の青幇からの呼び出しを受けた。同作に登場するマフィア「百八竜」は小池が「百八の煩悩」から名付けた架空の組織だが、香港に同名の青幇が実在していたのである。高輪プリンスホテルのスイートルームで行われた対話は、ビッグコミックスピリッツ編集長・白井勝也の意向で、小池が一人で行くことになったが、意外にも脅迫的な内容ではなく、作品をなかなか面白いと評価され、高級時計をプレゼントされるなど友好的なものであった。その後もしばらく「百八竜」との関係が続いたという。ただし、このお陰で以後「百八竜」を悪の組織として描写できなくなってしまい、大いに構想が狂ってしまった。 なお、百八竜以外にも『マギー's犬』や『デュエット』で「殺人教団サッグ」という組織が描かれているが、これは、かつてインドに存在した強盗殺人を専らとする秘密結社「タギー」を元にしている。 ゴルフ場勤務の経験があったことから、ゴルフへの造詣も深い。「至美(しび)ゴルフ」は、TBSテレビ「小池一夫の至美ゴルフ」・サンテレビ「週刊至美ゴルフ」・広島テレビ「小池一夫のシビ・ゴルフ広島奮戦記」として、テレビ化(TBSとサンテレビはほぼ同時期に放送)されている。なお、同名番組だが、内容はそれぞれ全く異なり、また、ゴルフに関する情報をまとめたもので、原作となった劇画とは大きく異なる。また、1987年にはゴルフ雑誌『アルバトロス・ビュー』を創刊する。かつて雀荘勤務経験や雀ゴロ経験もあるため、麻雀は強く、阿佐田哲也とも何度も対戦している。居合道にも精進して、自分が写真モデルを務めた教習本を出版したこともある。また、茶道の入門書も監修している。 小池によれば、スタジオ・シップに参画した叶精作、神江里見、小山ゆう、やまさき拓味、伊賀和洋、神田たけ志らは、小池がさいとうプロから引き抜いたのではなく、小池によれば、彼らの方から小池についてきたとのことである。実際、小山とやまさきは山本又一朗の誘いで別個にオリオンプロとして独立しており、後にオリオンプロごとスタジオ・シップへ合流した経緯がある。当時、さいとうは激怒し、さいとうがビッグコミック、小池はビッグコミックオリジナル、スピリッツ、週刊ポストという形で、小学館では20年以上、棲み分けることになった。しかし、後に漫画家ゴルフコンペに共に参加するなど、ある程度の関係改善が行われ、小池もビッグコミックで『花縄』を連載した。 『赤い鳩』や『連環日本書紀』では日猶同祖論を展開した。日本語の「辱める」とヘブライ語の「ハズカシューム」は同義語だそうである。劇画村塾や大学の講義でもこの話題に脱線すると、なかなか本題に戻らない。『赤い鳩』の連載時、いくつかの宗教団体や右翼などから「嘘を書くな」と小学館に抗議が殺到した。右翼からも「ピストル撃ちますよ」という内容の脅迫電話が編集部にあり、連載を中止した。 長嶋茂雄と非常に仲が良く、大阪芸術大学に招いて講演を依頼し、劇画村塾の会社組織化パーティーでも祝いに駆けつけている。他にも星野仙一、孫正義、『乾いて候』テレビドラマ版や『子連れ狼 その小さき手に』で主演を務めた田村正和などの人脈があるが、2004年の『勝ちたいんや!―劇画・星野仙一物語』で星野から池口恵観を紹介された頃から、劇画村塾の株式会社化や壱岐の高級リゾートホテル経営に乗り出すなど、大規模な事業拡大を始める。 1990年代に水声社から刊行された『マンガ地獄変』シリーズ(1970年代のアナーキーな漫画を再評価するムック)が、第4巻で小池を取り上げる予定だったが、原稿は集まっていたにも拘らず、担当編集者がビバ彦として知られる「モー娘オタク」になり、「モー娘ファン活動」に多忙となったため、同書は刊行されなかった。『マンガ地獄変』シリーズに執筆していた漫画評論家の大西祥平が、映画雑誌『映画秘宝』において、2004年から2011年にかけて、小池へのインタビューも含めた小池漫画論「小池一夫伝説」を連載し、2011年11月に洋泉社から単行本化されている。 晩年は前述の事業拡大が失敗し、劇画村塾株式会社も失い、小池書院の経営も悪化したことから、複数の金銭問題を起こしており、その影響から2009年に日本経済新聞で連載を始めた『結い 親鸞』は第2話以降休載となった。堀井雄二は、小池にハリウッド版『子連れ狼』のアニメ制作という名目で1000万円を「投資」として渡したが、返金されなかったと証言している。生徒に対して寸借詐欺を働いたとの報道もあり、田中圭一は小池を告発する内容の漫画を制作していることを度々報告していたが、2019年、小池の死去を受けて告発漫画の発表を取り止めることを公表した。なお、小池書院は2016年11月、破産処理を開始している。
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