天皇総帝論・八紘一宇とは? わかりやすく解説

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天皇総帝論・八紘一宇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:28 UTC 版)

「天皇」記事における「天皇総帝論・八紘一宇」の解説

現人神」論の一般化 現代推論されるところでは加藤玄智は、西洋絶対神合理主義批判されないことを見て天皇絶対神同様に説明した言論広め批判封じようとした。しかし、西洋人からすればモンゴル人種または「黄色い猿」である天皇が、日本人によって絶対神同一視されていることが、西洋驚かれ嫌悪された。 「現人神」論は「天皇絶対」論を兼ねており、東京帝国大学憲法学上杉慎吉主張していた。天照大神天皇絶対的唯一性を否定する論について、上杉批判している。以下に引用する家族宗長として、祖先崇拝の考より服従すると云ふも足らぬ現人神である、天皇なるが故に服従する服従すべきものと信仰する故に崇拝服従する信仰理由はない。 神々のうちに、各神が絶対的に憑依するの中心たる真神が在まさねばならぬ。皆神ならば、皇道又は古神道成立する筈がない。(中略カミと云ふ者種々雑多なれど、所謂古神道を一の宗教なりとして、概念上神とすべきは唯一天皇祖宗以来一代には唯だ一人在ます、カミ御一人絶対至尊御方の外にはなしと申さねばならぬ。 予は皇道本義絶対に天皇憑依するに在りと云ふた。之を宗教とするは、神は唯だ此の御一方であるのである神代の人は皆神、功績徳望ありし人は皆神では、皇道成り立たぬ上杉はこうも言った天皇絶対的に帰依してその精神合一するならば、有限超越して個人圧迫や不安を解脱することができるというのが古来日本人信仰であった。 「八紘一宇」へ 「世界統一思想である「八紘一宇」は、「現人神」論とセット語られてきたもので、田中智学日本神話解釈から由来している。天皇天照大神延長であり、よって日蓮主義者は天皇の徳と政治一致するように努力しなければならないという日蓮主義の説が起源である。 「伝統精神」(国家社会主義)へ 国家社会主義社会主義的な「国家主義一種」であり、日本では純正日本主義皇道主義)」と連れ立って活動していた。特に「国家社会主義ナチズム)」は、民族主義全体主義・反個人主義反自由主義・反民主主義反議会主義反社会主義・反マルクス主義等を掲げる。なお、「右翼」は「一般にドイツナチスイタリアファシスト日本超国家主義者などがその代表」とされている。 「右翼」、「国家主義」、および「国家社会主義」も参照 昭和時代初期には、天皇まつわる伝統発明」として代表的佐藤信淵および大国隆正思想利用された。江戸時代末期著述家である信淵の、帝国的で統制経済的な思想象徴したのは、『混同秘策』(1823年)と『垂統秘録』(1833年)だった。前者では、日本世界支配する使命があり、その手段として満州朝鮮中国併合すべきである説かれている。後者は、国家による統制経済の必要を説いている。こうした著述援用され、戦時中には信淵は「大東亜戦争予言者」と称賛された。 だが大東亜戦争時に至るまでは、信淵の思想存命中および死後も、実質的に政治影響した例が無かった。『混同秘策』と『垂統秘録』も「秘本」であり、一部弟子以外には閲覧さえ許されず、公刊されたのは1887年明治20年以降だった。 世界支配および統制経済掲げた信淵への関心高まっていったのは、日露戦争勝利後である。また、社会主義観点から信淵に興味を示す日本知識人現れ始めた。信淵への評価決定的に変化させたのは、1927年昭和2年)に大川周明著した佐藤信淵理想国家』だった。信淵の思想鮮明に国家社会主義的である と位置づけられ、「伝統精神」と見なされたまた、次のようにも評価された。 信淵の信念は、実に聖徳太子動き天智天皇動きたる日本精神其ものゝ信念である。この精神は、唯だ偉大な魂のみ、能く之を把握し得る。 こうして信淵の思想は「国家社会主義」であり、「伝統精神」「日本精神」の中核であると見なされた1934年昭和9年)には、三上参次河野省三といった歴史家神道研究者までもが、日本の「伝統」的な「国家社会主義」を讃えるようになった。この「伝統精神」は小学校歴史教科書でさえ扱われるようになり、「進んで海外植民地開拓し国力を伸ばさなければならない」「日本海外進出する提唱がすでに江戸時代からあった」というように論じられた。 「国家社会主義ナチズム)」、「日独関係」、「日独伊三国同盟」、および「枢軸国」も参照天皇総帝論」へ 戦時中には「天皇総帝論」がもてはやされていた。「天皇総帝論」とは、同じく戦時中に「天皇信仰主唱者」「世紀予言者」と呼ばれていた幕末国学者大国隆正唱えた議論である。これは要するに、天皇世界皇帝たちより上の地位にあり、歴史の「必然」として世界の「総帝」であるという主張だった。 「天皇総帝論」は、もとより外交政治影響与えたことが無かった。しかも、隆正の一部弟子以外には忘れ去られていた。だが、帝国昭和時代になると世間から注目され始めた。その発端昭和2年5月宮中顧問管(山口鋭之介)が「大国隆正日本精神」という文章新聞掲載した頃である。隆正は「日本の最も偉大な思想家であり、最も偉大な国学者であつた」、「明治維新基礎をなした第一功績者である」と断定された。 新聞掲載の後に、「天皇総帝論」や隆正を扱う論文急増し、『大国隆正全集』も公刊された。実は『全集』から省かれているが、もともと隆正は日本神話『古事記』『日本書紀』を「わがくに小説演義鼻祖作り話元祖)」と扱っていた。だがこれは、長いあいだ世に知られることがなかった。 第二次世界大戦に至る中で、「天皇総帝論」は 明治維新から今日皇道世界維新直通一貫して生きてゐるのである。 と、大崎勝澄によって理屈付けられた。そして「八紘一宇」は「天皇総帝論」であり、それはまた 「唯一の思想的原動力」 「天皇中心世界一体観」 「大宇宙をも包含する如き深遠宏大なる日本肇国理念」 「時を超えて永遠に新鮮な世界観」 「真日本の発見」 「純な日本的世界観」 「古事記発見」 「天皇政治世界性」 「国民的自覚」 「大和民族宿志」 「大和民族本来の世界史使命」 「日本肇国理念そのもの」 「天津神がことよさし給へ天業使命」 「神武天皇抱懐せられたる世界史的御雄図」 「惟神かんながら)的世界観」 等であると認識されていったこのようにして大国隆正のような国学者たちが足がかりにされ、「八紘一宇」が明治維新日本建国理念へと結合されて、「伝統発明」が完成した当時アメリカ合衆国では、「天皇とは何か」というアンケート調査が行なわれた。1944年4月雑誌フォーチュン』で日本特集号が組まれ調査回答結果は 「日本人にとって唯一の神」:44.2% 「名目上飾り宗教面は除く)」:18.6% 「独裁者」:16.4% 「無回答」:15.1% 「英国流の国王」:5.7% という内容だった。 敗戦後 日本の降伏後のGHQ神道指令には、“State Shinto”(国家神道)といった語をはじめ、加藤影響及んでいた。神道指令起草する際にW. K. バンス用いたものは、アメリカ人神道学者D. C. ホルトムの神道論ではあったが、ホルトムも加藤神道論から学んでいた。 敗戦後加藤公職追放された他、恩給一時停止された。加藤たちの時代宗教学理想は、諸宗教の融合調和だった。加藤によれば神道と仏教との合一は「国家的神道」の中で成立していたが、神道キリスト教との合一は「全うしかねて居」た。しかし1959年当時皇太子だった上皇明仁結婚によって、「此破天荒精神的事業」が定結されたと加藤述べたキリスト教カトリック)系教育の中で成長した正田美智子皇室迎えることによって、従来一大難事だった「宗教的融合調和」が成立したという。前川はこれを、加藤の「二〇歳代の夢の続き」と評している。 批判 前川によると、加藤研究は「多分に規範的」であり、「神道研究」というよりは「神道論」だった。また、加藤同世代民俗学者柳田國男は、最近世の神道論は現実踏まえてない、「人為的」な「新説」だと批判した当時神社国家の「宗旨」であり、宗教でないとされていた。それは学問から見て「無内容」だったが、多様な神道論や神社論が主張されることとなり、加藤有力な論者一人となっていた。

※この「天皇総帝論・八紘一宇」の解説は、「天皇」の解説の一部です。
「天皇総帝論・八紘一宇」を含む「天皇」の記事については、「天皇」の概要を参照ください。

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