破天荒
「破天荒」とは・「破天荒」の意味
破天荒とは「他の人がしないことをする、大胆で型破りなさま」を意味する語。本来は「かつて誰もしなかったことを初めて行う」という意味。昨今では「他の人がしないような豪放で型破りなことをする」の意味で用いられることが多い。「破天荒」の語源・由来・本来の意味
「破天荒」という言葉は中国の故事にもとづく言葉であり、すなわち故事成語である。宋代に著された逸話集「北夢瑣言」の話に由来する。中国の唐の時代。現在の湖北省にあたる荊州では、科挙(難関として知られる古代中国の官吏登用試験)に合格する者が全くいなかった。そのため荊州は「天荒」と呼ばれて蔑まれていた。「天荒」は、荒れた未開の地という意味の蔑称である。そんな中、劉蛻(りゅうぜい)という人物が科挙に合格する快挙を成し遂げた。人々は「天荒を破った」といって劉蛻を称賛したという。
つまり、「破天荒」は本来は「今まで誰も成し得なかったことを初めて実現してみせる」という意味の言葉である。「未曾有」や「前代未聞」と同種の語彙といえる。
今日の「破天荒」の主な使われ方
現代の日本語の中では「破天荒」は「豪快な」「大胆な」「型破りな」さまを形容する語として用いられることが多い。本来の「破天荒」の意味とはややズレが生じている。文化庁は「国語に関する世論調査」の中で「破天荒」の意味の理解についてアンケートを取っている。結果、過半数の者が「破天荒 = 豪快で大胆な様子」という非本来的な意味と理解しており、「破天荒 = だれも成し得なかったことをする」という本来の意味で理解している者は2割前後に留まるというデータが得られた。
「破天荒」の意味を「豪快・型破り」と認識されがちな理由としては、「破天荒」という字面に「荒々しさ」や「型破り」のニュアンスが連想されやすい、といった背景が考えられる。本来の「誰も成し得なかったことをする」という意味では「前代未聞」や「未曾有」といった代替表現が多くあったという事情も要因のひとつかもしれない。
「破天荒」の熟語・類義語・言い回し
「破天荒」は、「破天荒解(はてんこうかい)」という四字熟語で使われることもある。破天荒の語源となった故事は科挙にまつわる話であるが、その科挙には、地方試験である「郷試・解試」、中央試験である「会試・省試」、皇帝が臨席した場で受ける最終試験の「殿試」という区分があった。「破天荒解」の「解」は、地方試験である「郷試・解試」のことであり、「破天荒解」はこれに合格した者という意味が含まれる。
「破天荒」の類義語としては、「未曾有」、「前代未聞」、「前人未到」、あるいは「先駆者」や「嚆矢」などが挙げられる。
「未曾有」は、「今まで一度も起きなかったような非常に珍しい事態」を意味する言葉であり、「未曾有の災害」などのように用いられる。
「前代未聞」は「未だ聞いたことがないような珍しいこと」を意味する言葉であり、「前代未聞の事件だ」などのように用いられる。
「前人未到」は、未だ人が踏み入れていないという意味から、「誰も達成していない記録や偉業」を指す言葉として使われ、「前人未到の記録」のように記録や業績に対して用いられる。
「先駆者」は、「他の者のさきがけとして物事を実行した人」という意味の言葉であり、「彼は先駆者だ」のように用いられる。「破天荒」は、その由来から良いイメージとして用いられる言葉であるが、「未曾有」と「前代未聞」は、良いイメージとしても悪いイメージとしても使われる言葉である。また、「前人未到」は使う対象が異なり、「先駆者」は人そのものを指す言葉である。
他にも、似た意味の言葉として、「非凡(ひぼん)」、「稀有(けう)」、「類稀(たぐいまれ)」、「偉才(いさい)」などがある。ただし、これらの言葉には「誰も成し得ていない」という意味は含まれていないため、適切に使い分ける必要がある。
「破天荒な人」とは
「破天荒な人」という言い回しの意味は、本来的な意味に則って解釈するならば「今まで誰もしなかったことをした人」のことである。なお「破天荒」は基本的に良いイメージで用いられる言葉である。前代未聞の悪事をやらかした者に対して悪い意味で「破天荒な人」と言う表現をは用いない。通俗的には、「破天荒な人」といえば、常人・凡人には到底できない(しようとも考えない)ような大胆な行動に打って出る人を指す表現であるといえる。ある種の非常識さを発揮して活路を見出す快男児、波乱の人生を強かに乗り越えていった傑物、しょっちゅう無茶苦茶なことをする(自由すぎる)が魅力的で憎めない人などが「破天荒な人」と呼ばれやすい。
「破天荒」の使い方・例文
例1:万病に効く薬を開発するなんて、彼の破天荒な偉業は世界を大きく変えるだろう。意味:未だ開発されていない万病に効く薬を開発できたことに対する業績を称えている。
例2:破天荒な経営改革を取り入れたことで、会社の業績は好転した。
解説:それまでの慣例に則った方法から脱却した経営改革に対して、破天荒という言葉を用いている。
例3:彼は、徒歩でユーラシア大陸を横断するという破天荒な冒険を成し遂げた。
解説:ユーラシア大陸を徒歩で横断するという前人未到の挑戦を「破天荒な冒険」と表現している。
例4:ボクシングで無敗の王者が、4階級でタイトルを獲得するという破天荒な記録を打ち立てた。
解説:無敗で4階級制覇をする誰も成し遂げなかった記録に対して、破天荒と称している。
例5:破天荒な試みが功を奏し、新製品の開発に成功した。
解説:それまで誰もしなかったアプローチからの製品開発をしたことに対して、「破天荒な試み」と表現している。
例6:オックスフォード大学にもカリフォルニア大学にも合格するなんて、彼は本校創設以来の破天荒な高校生だ。
解説:高校創立以来、世界大学ランキング上位の大学に合格できた成果を称えて「破天荒な高校生」と言っている。
例7:新しいチームリーダーの破天荒な挑戦のおかげで、このプロジェクトを完遂することができた。
解説:それまで何度も頓挫したプロジェクトを、新しいチームリーダーによってやり遂げることができた偉業を称えている。
例8:彼が日本人初のメダルを受賞できたのも、破天荒な努力の賜物だ。
解説:これまで誰も達成できなかった練習メニューをこなしたことを、「破天荒な努力」と表現している。
例9:世界平和に貢献する破天荒な発明のおかげで、人類の未来は明るい。
解説:世界平和が実現できる、夢のような発明に対して、破天荒という言葉を用いている。
例10:彼女のスポーツ選手としての人生は、まさに破天荒そのものだった。
解説:スポーツ界で数々の新記録を樹立した選手を讃えて、破天荒と表現している。
は‐てんこう〔‐テンクワウ〕【破天荒】
読み方:はてんこう
[名・形動]前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曽有(みぞう)。「—の試み」「—な大事業」
[補説] 「天荒」は未開の荒れ地の意。唐の時代、官吏登用試験の合格者が1名も出なかった荊州は人々から「天荒」といわれていたが、劉蛻(りゅうぜい)が初めて合格して「天荒を破った」といわれたという、「唐摭言(とうせきげん)」「北夢瑣言(ほくむさげん)」の故事から。
文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、「だれも成し得なかったことをすること」と「豪快で大胆な様子」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出た。
平成20年度調査 | 令和2年度調査 | |
だれも成し得なかったことをすること (本来の意味とされる) | 16.9パーセント | 23.3パーセント |
豪快で大胆な様子 (本来の意味ではない) | 64.2パーセント | 65.4パーセント |
破天荒
破天荒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/17 01:12 UTC 版)
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破天荒(はてんこう)は、故事成語のひとつ。意味は、「今まで人がなし得なかったことを初めて行うこと」、「前人未到の境地を切り開くこと」。
読み下しは「天荒を破る」。
日本の文化庁が2008(平成20)年度に日本人を対象に実施した「国語に関する世論調査」によると、64.2 %の日本人が「豪快で大胆な様子」という意味に誤解、あるいは誤用していることが判明した[1]。なお、このような誤解そして誤用は、既に大正時代には広まっていた形跡がある[注釈 1]。
由来
中国の唐代、王朝成立から100年以上経た後も、荊州(現在の湖北省)から官吏登用試験である科挙の合格者が出ず、世の人はこの状況を「天荒」と称した。天荒とは本来「未開の地」もしくは「凶作などで雑草の生い茂る様」を言う。やがて劉蛻(りゅうぜい)という人物が荊州から初めて科挙に合格すると、人々は「天荒を破った」と言った故事に由来する。旧説には、天地未開の混沌した状態(天荒)を破り開く意がある。
脚注
注釈
出典
- ^ “平成20年度「国語に関する世論調査」の結果について”. 文化庁. 2009年9月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月5日閲覧。
- ^ 下中弥三郎, 秋永常次郎 編『や、此は便利だ : ポケット顧問』平凡社〈平凡社ライブラリー, 947〉、2023年、189頁。ISBN 9784582769470。
- ^ 唐荊州衣冠藪澤、毎歳解送擧人、多不成名。號曰、天荒解。劉蛻舍人、以荊解及第。號爲破天荒。(『北夢瑣言』巻四、「唐摭言」ニ)
関連項目
破天荒(声:岸尾だいすけ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 06:47 UTC 版)
「ボボボーボ・ボーボボ 爆闘ハジケ大戦」の記事における「破天荒(声:岸尾だいすけ)」の解説
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