内燃機関車の製造販売
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最初期にはホイットコム社やプリマス社などアメリカのメーカーから輸入された産業用小型ガソリン機関車を参考として、輸入品のエンジンとフリクションドライブなどの動力伝達機構を組み合わせた構造の内燃機関車を製造した。 設計製造技術が確立された1930年代以降は、主として鋳造台枠の形状・寸法と搭載エンジンの変更による作り分けで顧客の要望に応じた自重・出力・軌間の機関車を供給する標準設計化が進み、台枠側面とボンネット前面のラジエータ上部にKATO WORKS(戦前・戦中に製造されたものの一部ではカトウとカタカナ表記された)と鋳出しで記された社名は、文字通り同社製機関車のトレードマークとなった。略称として長らくKSTを使用し、軸受カバーやカタログなどにも用いていた。 戦前・戦中は土木業界だけではなく、海軍省向け納品実績が大きな割合を占めており、海軍側の指定で社名に代えて海軍の錨マークをラジエータ上部に陽刻したそれらの機関車は、第二次世界大戦中にその大半が戦地の飛行場整備などのために南方や大陸などへ向けて発送されたが、輸送船の撃沈で目的地に届かなかったものも多かったという。 第二次世界大戦後は主として建設省(河川改修事業用工事軌道)向けで大きなシェアを獲得し、主に林野庁(森林鉄道)向けで大きなシェアを獲得していた酒井工作所と並んで日本国内の産業用小型ディーゼル機関車市場を二分する大手メーカーとして著名であった。 その作風はライバルであった酒井工作所が主たる顧客である森林鉄道の軌道条件の特殊性からF型ディーゼル機関車のように野心的な設計を試みる傾向があったのに対し、こちらは砂塵や泥などが機構部に入り込むことが当然、という厳しくかつ乱暴な使用条件にさらされる建設業界が主要顧客であったためもあり、総じて手堅く単純で平凡な設計に終始した。 この他国鉄向けの貨車移動機や、純然たる地方鉄道向けディーゼル機関車にも製造実績がある。 1960年代に入り自動車、特にダンプカーなどの大型トラックが普及すると、これらの小型内燃機関車製造事業は大打撃を受けた。そのため工事用軌道のトラックへの転換が急速に進んだ1960年代後半には機関車事業から撤退し、以後は建設機械専業へと業態転換がなされることとなった。 なお、約40年にわたって量産されたそれらの小型機関車の大半は既に廃棄・解体されて現存しないが、山形県真室川町の町営温泉施設梅里苑の敷地内で、夏季限定ながら4.8tディーゼル機関車の運行が行われており、車両は2008年(平成20年)2月に経済産業省の近代化産業遺産として認定されている。また、大井川鐵道のDB1形2両が現在も車籍を残している他、王滝森林鉄道を筆頭とする各地の森林鉄道や建設省利根川上流工事事務所をはじめとする工事軌道等で使用されていた小型機のいくつかが記念物として保存展示されている。海外においては、台湾の東部運材鉄道や七股塩場鉄道、布袋塩場鉄道で使用されていたものが池南国家森林遊楽区、林田山林業文化園区、南華森林公園及び台湾塩博物館、七股塩田旅遊服務中心前に保存展示されている他、花蓮県の民宿が動態保存している例があり、布袋塩場では非公開保存している。 製造終了してから年数が経過しているが、1987年(昭和62年)に「加藤製作所の機関車」、2014年(平成26年)に「加藤製作所 機関車図鑑」が、それぞれ出版されている。いずれも加藤製作所が協力している。 機関車仕様一覧表形式自重軌間全長全幅全高牽引力走行速度機関形式機関定格出力用途備考tmmmmmmmmkgkm/hPS/rpmP形 2 508-762 2,450 1,104 1,104 500 4.9-10.7 DA220 43/1500 坑内用 クラッチ乾単板 P形 4 508-762 3,200 1,177 1,600 1,000 3.3-21.2 DA220 43/1500 坑内用 クラッチ乾単板 P形 5 508-762 3,429 1,368 1,994 1,250 4.3-23.6 DA220 43/1500 林野型 クラッチ乾単板 N形 5 508-762 3,378 1,392 2,115 1,250 4.3-23.6 DA220 43/1500 一般用 クラッチ乾単板 TC形 6 610-762 3,670 1,272 1,500 1,500 0-16.9 KEZ1-15C 62/1500 坑内用 トルクコンバータ P形 7 610-762 3,835 1,468 2,235 1,750 6.18-22.2 DS70A 65/1200 一般用 TC形 10 610-762 4,568 1,450 1,800 2,500 低0-10.8高0-21.3 6DB10L 98/1400 坑内用 トルクコンバータ TC形 10 1067 5,206 2,656 2,620 2,500 0-20.5 6DB10L 120/1800 入換用 トルクコンバータ TC形 15 1067 6,206 2,386 3,100 3,750 0-23.3 DA59A 153/1800 入換用 トルクコンバータ TC形 20 1067 7,606 2,545 3,350 5,000 0-19.4 DA59A2 200/1800 入換用 トルクコンバータ TC形 25 1067 7,506 2,645 3,350 6,250 低0-17.5高0-27.5 DMH17C 180/1500 入換用 トルクコンバータ 「建設工事用機関車仕様一覧表」『日本建設機械要覧1968年版』日本建設機械化協会、1968年、82-83頁 標準仕様であり注文に応じて変更化 梅里苑の森林を駆け抜ける4.8tディーゼル機関車 大井川鐵道DB8(1952年製) 羅須地人鉄道協会まきば線で保存中の5号機 台湾林田山林業文化園区の保存機 1926年製B型7噸機関車(台湾嘉義市阿里山森林鐵路車庫園區展示)
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内燃機関車の製造販売
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「北陸重機工業」の記事における「内燃機関車の製造販売」の解説
加藤製作所、酒井工作所の内燃機関車事業からの撤退後、産業用・小型内燃機関車及びモーターカーでシェアを伸ばし続けている。また、現在わずかに残存している、森林鉄道や、工事軌道などで、加藤製作所、酒井工作所などで製造された機関車の老朽化などで、北陸重機製のものに置き換えられているケースも存在している。また、廃止された森林鉄道、軽便鉄道などで、保存運転を行う際、当時の機関車が存在しない、または既に別の保存団体の手に渡っている、歴史的価値などの問題で、動態保存が難しいケースの場合、いくつかの機関車が北陸重機で新造されている。また、遊覧鉄道用の機関車・客車でも協三工業などのメーカーとともにシェアを伸ばしている。 20 t級小型内燃機関車については、アント工業に供給され、同社の製品として納入されているものもある。
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内燃機関車の製造販売
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1927年から1967年の商号変更まで、酒井工作所はロードローラと並行して、主として森林鉄道で使用される小型内燃機関車や保線・連絡用モーターカーの製造販売を行っていた。 これはT型フォードの成功に刺激された自動車産業の隆盛と、これに伴う小型ガソリンエンジンおよびそれに付随する変速機等の動力伝達メカニズムの入手が容易化したことを受けてはじめられたもので、同時期には後に酒井と産業用小型内燃機関車市場を二分する勢力に成長する加藤製作所を筆頭に、日本国内の様々なメーカーが同市場に参入した。 酒井は前身である帝室林野局時代から林野庁との関係が深く、アメリカのホイットコム社 やプリマス社、中でも後者から輸入された小型内燃機関車を参考に設計された、A型と称する規格化された小型機を木曽森林鉄道などに納入してまず成功を収め、その後B型、C型と使途や軌道条件等に合わせて仕様・構造を変更した同系の小型機を各地の森林鉄道を中心に大量供給し続けた。 特に、森林鉄道用大型ディーゼル機関車の決定版として満を持して開発したF型(F1 - F4型)ディーゼル機関車(5 - 10t B-B型)では、短軸距の2軸ボギー台車を使用しユニバーサルジョイントを介して軸配置B-Bの4軸駆動とすることで、急曲線通過能力と厳しい軸重制限、それに大出力機関の搭載による大きな牽引力という諸条件の鼎立を実現し、また木曽谷で長く主力の座にあった軸配置B1の10t級ボールドウィン社製蒸気機関車を代替する目的で設計された大出力・大型のC4型ディーゼル機関車(10t B型)では、通常型では後端に置くのが定位の運転台をあえて前端に置き、妻面を当時流行の湘南型2枚窓構成とする、という大胆なデザインを導入、さらに除雪作業の効率化を目的に開発されたS型ディーゼル機関車では、着脱式のロータリー式除雪装置を新開発し実装することで冬期以外の通常運用での使用を可能とするなど、新技術や新デザインの導入に意欲的であったことで知られる。 もっとも、砂塵や泥の機構部への侵入や、ラフな取り扱いが当然の土木建設業界ではこうした新機軸やデザインは好まれず、土木建設業界に強い加藤製作所との間では市場の住み分けが成立していた。 1960年代以降林野庁が林道整備による材木輸送のトラックへの転換の方針を打ち出したことから、同庁向けを主たる販路としていた内燃機関車製造販売事業は直接打撃を受け、1967年をもって機関車製造ラインは閉鎖された。 なお、酒井工作所製内燃機関車は木曽をはじめとする森林鉄道ゆかりの地に比較的多数が保存されており、また酒井重工業自身も技術研究所(現同社久喜合同事務所)に木曽森林鉄道で使用されていたNo.91(5t B型)を整備の上で保存している。 機関車仕様一覧表形式自重軌間全長全幅全高牽引力走行速度機関形式機関定格出力備考tmmmmmmmmkgkm/hPS/rpmC16 3.5 762 2,860 1,278 1,953 875 7.9-22.2 JH4 33/2000 クラッチ乾燥単板 C17 5 762 3,500 1,400 1,985 1,200 5.5-24.2 DA120 76.5/1800 クラッチ乾燥単板 C26 7 762 4,200 1,700 2,400 1,750 0-30 DS70 80/1,800 C6A 8 914 4,920 1,600 2,020 2,000 0-15 DA59C 153/1,800 C4 10 762 4,920 2,180 2,780 2,500 0-30 DA59 130/1,800 C50 10 762 4,820 1,850 2,750 2,500 0-30 6DB10 150/2,200 F42 10 762 7,050 1,700 2,450 2,500 0-32 UD6 130/1,400 2軸ボギー C42 15 1067 6,130 2,200 2,800 3,750 0-22 DA59 130/1,800 F51 15 762 7,780 1,550 2,380 3,750 0-27.5 DA59A2 200/1,800 2軸ボギー 「建設工事用機関車仕様一覧表」『日本建設機械要覧1968年版』日本建設機械化協会、1968年、82-83頁 標準仕様であり注文に応じて変更化
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