フラノエクスプレスとは? わかりやすく解説

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フラノエクスプレス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 00:44 UTC 版)

国鉄キハ80系気動車 > フラノエクスプレス
フラノエクスプレス
基本情報
運用者 日本国有鉄道
北海道旅客鉄道
種車 キハ80系
製造年 1967年 - 1968年
改造所 国鉄苗穂工場
改造年 1986年 - 1987年
改造数 4両
運用開始 1986年昭和61年)12月20日
運用終了 1998年平成10年)11月1日[1]
廃車 2004年
主要諸元
編成 3両 → 4両編成
軌間 1,067 mm
最高速度 100 km/h
全長 21,100 mm
台車 DT31B、TR68A
動力伝達方式 液体式
機関 DMH17H
第30回(1987年
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フラノエクスプレス (Furano Express) は、日本国有鉄道(国鉄)・北海道旅客鉄道(JR北海道)が1986年昭和61年)から2004年平成16年)まで保有していた鉄道車両気動車)で、ジョイフルトレインと呼ばれる車両の一種である。

概要

国鉄北海道総局では、1985年(昭和60年)12月に欧風気動車「アルファコンチネンタルエクスプレス」を登場させていたが、好評につき増結もされるほどであった。この経験を生かし、富良野プリンスホテルとのタイアップを行い、「アルファコンチネンタルエクスプレス」と同様の高品質なサービスを提供した上で乗り心地と速度向上を狙った車両として、北海道総局が登場させた車両である。なおデザインにはJR西日本の新快速シリーズと681系、683系の外観デザインを担当した南井健治近畿車輛)も関わっている[2]

リゾート列車としての内外装が評価され、北海道の鉄道車両では初となるブルーリボン賞第30回・1987年〈昭和62年〉)を受賞した。なお、国鉄が開発した車両では最後のブルーリボン賞受賞車両となった。

車両

本節では、登場当時の車両仕様について記述する。

いずれの車両もキハ80系気動車より改造されており、先頭車がキハ84形、中間車がキハ83形である。改造は国鉄苗穂工場が担当した。展望構造の構体部は先行する「アルコン」同様に近畿車輛が製作し、苗穂工場で接合を行った[3]

  • 1号車 - キハ84 1(旧キハ80 164) - 展望室・一般席
  • 2号車 - キハ83 1(旧キハ82 109) - 一般席
  • 3号車 - キハ84 2(旧キハ80 165) - 展望室・一般席

全車両とも普通車扱いとなっている。なお、キハ84形は東海旅客鉄道(JR東海)のキハ85系中間車と番号が重複していた。

コンセプト・デザイン

基本的な考え方として、アイデンティティは共通のイメージを持たせた高品質なリゾート列車であることを明確化することになった一方で、「アルファコンチネンタルエクスプレス」の単なるマイナーチェンジ車両とはしないこととした。

車体塗装デザインは「スポーティ」・「クリア」をテーマとしたことにより、ベースカラーは「」をイメージするとし、「富良野ラベンダー」をモチーフとしたピンクと「広い」を連想させるの2色ラインを入れ車体裾には全体のデザインを引き締める目的でミッドナイトブルーの帯を入れた。また、各車両の扉横にはアルペンスキー・ワールドカップ大会の公式マスコット(ミスターフー・マドモアゼルペッカー)の大型プレートを配した。

改造内容

正面形状は「アルファコンチネンタルエクスプレス」と共通のイメージを持たせながらも違いを明確化するため、前面窓を曲面ガラスを用いた構成(パノラミックウィンドウ)とした上で、両側の後退角を大きく設定した。また乗用車エアロパーツのイメージを再現するため、台枠の先端部分を突き出した上で車体と同色のスカートを装備した。

先頭車の展望室部分と中間車の側面窓は床の高さを600 mm上げた上で、側面窓に屋根まで回り込む大型の曲面ガラスを使用し、さらに天窓を配することにより乗客が広い視界の展望を得られるように配慮した。

冷房装置は、キハ83形がAU76形集中式冷房装置を2基、キハ84形はAU79形集中式冷房装置と新鮮外気装置を1基ずつ搭載した。

客室

本列車はスキーリゾートへ向かう列車であるという性格上、重厚な豪華さはそぐわないものと考えられた。このため、シンプルで知的なイメージを表現するべく、室内の配色は白とウォームグレーのモノトーン3色でまとめることで、気品ある高品質を感じられることをねらった。

座席は背もたれの幅を可能な限り広くとり、座面も深く設定したリクライニングシートとした。座席モケットはウォームグレーとシルバーグレーの2色とし、シンプルでやさしい雰囲気が感じられるものとした。

ハイデッカー部分は広大な風景を楽しむことを最優先としたため、熱線吸収ガラスを使用することでカーテンの装備を省略した。またサービス機器はスピーカー以外には設置しないこととした。

キハ84形の一般客室部分については展望よりも落ち着きを求める利用者を重視し、室内の照明は間接照明とした。大型の荷物棚を座席上に設置した上、仕切り部分にはビデオスクリーンを設置した。

走行機器

走行機器については、基本的には種車となるキハ80系のものを使用しているが、キハ183系気動車との連結を可能とするため制御回路の電圧を交流100 Vから直流24 Vに変更した。

走行用機関はDMH17H形エンジン (180 PS/1,500 rpm) を、キハ83形に1基、キハ84形に2基搭載し、キハ83形にはサービス電源発電用機関を1基搭載する。台車形式は、キハ84形とキハ83形の駆動台車がDT31B形台車、キハ83形の付随台車はTR68A形台車となる。

沿革

ANAビッグスニーカートレイン
キハ80 501

1986年昭和61年)12月20日に、札幌駅富良野駅を結ぶ団体専用列車扱いの臨時列車として運行を開始した。当初は間合い運用で、富良野線でも一般営業扱いの臨時急行列車として富良野駅から旭川駅まで運転したことがある。

特筆すべき運用としては、1987年(昭和62年)6月1日から10月31日まで、全日本空輸(全日空、ANA)とタイアップし、全日空ツアー乗客用の「ビッグスニーカートレイン」として運行したことが挙げられる[4]。この時は正面の愛称表示が「ANA」に変更されただけでなく、帯の色も全日空の航空機と同様のブルー濃淡2色(トリトンブルー)に変更された[5]。この時に、キハ82 110を種車としてキハ83形とほぼ同様の車体を新造し、走行用機関を2基搭載する中間車キハ80 501が増結され、以後4両編成での運行となった[4]。キハ80 501では、ソファーを配置したラウンジ(フリースペース)が設置された[4]。「ビッグスニーカートレイン」は僅か4ヶ月の期間限定運転であったが、プラレールや鉄道模型で別塗装として販売されたり、多くの映像資料に記録されるなど、強いインパクトを与えた。その後同列車はキハ183系の「ニセコエクスプレス」編成を使用するようになったが、こちらは塗色はそのままでヘッドマークと表記を変更したのみだった。

  • 1号車:キハ84 1(旧キハ80 164) - 展望室・一般席
  • 2号車:キハ80 501(旧キハ82 110) - 一般席・ラウンジ
  • 3号車:キハ83 1(旧キハ82 109) - 一般席
  • 4号車:キハ84 2(旧キハ80 165) - 展望室・一般席

1990年平成2年)1月には、キハ184-11を同色に塗色変更して編成に組み込み、このシーズンは5両編成で運用された。その後も4両編成で札幌駅 - 富良野駅間の「フラノエクスプレス」などのリゾート列車を中心に運用されていた[6]が、1998年(平成10年)11月1日に運行された「ラストラン・フラノ」をもって運用を終了[1]2004年(平成16年)で正式に廃車となった。廃車後は先頭車1両が苗穂工場に長年留置されていたが、2015年(平成27年)に解体された。

主要諸元

フラノエクスプレス 主要諸元
形式 キハ84形 キハ83形 キハ80形
車両番号 1・2 1 501
改造年 1986年 1987年
軌間 1,067 mm
定員 44人 52人 36人[注釈 1]
全長 21,100 mm
全幅 2,900 mm
全幅 4,090 mm
自重 45.1 t 47.4 t
台車 DT31B DT31B
TR51
DT31B
機関形式 DMH17H
機関出力 132 kw (180 PS)
車両出力 265 kw (360 PS) 132 kw (180 PS) 265 kw (360 PS)
液体変速機 TC2A, DF115A
減速比 2.615
参考 [7]

商標

フラノエクスプレス」は、北海道旅客鉄道が商標として登録している[8]

登録項目等 内容等
商標 フラノエクスプレス
称呼 フラノエクスプレス,フラノ
出願番号 商願平04-270854
出願日 1992年(平成4年)9月29日
登録番号 第3124806号
登録日 1996年(平成8年)2月29日
権利者 北海道旅客鉄道株式会社
役務等区分 39類(旅客車による輸送)

脚注

注釈

  1. ^ 車内にソファーが設置されたラウンジカー。一般客室定員24名、特別客室(ソファーラウンジ)定員12名。とれいん1988年11月号より。

出典

  1. ^ a b “JR北海道 「フラノEXP」ラストラン 富良野駅で出発式”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1998年11月9日) 
  2. ^ 学研パブリッシング 鉄道車両のデザイン 2013年 南井健治
  3. ^ 鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』2023年10月号「開発設計者に伺うJR北海道のリゾート気動車」pp.22 - 35。
  4. ^ a b c 鉄道ジャーナル』第21巻第8号、鉄道ジャーナル社、1987年7月、100 - 101頁。 
  5. ^ 鉄道ジャーナル』第21巻第11号、鉄道ジャーナル社、1987年9月、15 - 24頁。 
  6. ^ 鉄道ファン』第37巻第3号、交友社、1997年3月1日、16頁。 
  7. ^ 広田尚敬『国鉄車両形式集 2 気動車』山と渓谷社〈ヤマケイレイルブックス〉、2007年7月1日、217頁。ISBN 978-4635068222 
  8. ^ 商標「フラノエクスプレス」の詳細情報”. Toreru商標検索. 株式会社Toreru. 2022年8月2日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク


フラノエクスプレス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 10:57 UTC 版)

国鉄キハ80系気動車」の記事における「フラノエクスプレス」の解説

1985年キハ56系種車改造され就役したアルファコンチネンタルエクスプレス好評であったことから、観光地として注目集めていた富良野エリアにも高品質サービス提供した上で乗り心地速度向上を狙った車両要求され富良野プリンスホテルタイアップ行い登場したジョイフルトレインである。 1986年12月12日付でキハ84 1・2 キハ83 1の3両が苗穂工場落成改造内容台枠ならびに機器類のみ再利用し、車両構体新たに製造したのであるこのうちキハ84形運転席のある走行用DMH17H形エンジン2基搭載車展望席ハイデッカー一般席平屋とし、キハ83形走行エンジン1基と三相交流440 V 容量125kVAのDM63形発電機駆動するDMH17H-G形エンジン搭載する全室ハイデッカー構造中間車である。またキハ183系との連結を可能とするため制御回路電圧交流100 Vから直流24 V変更した当初函館運転所配置のまま同月20日より札幌 - 富良野間を団体専用列車扱い臨時列車として運行開始した札幌0803(8041D フラノエクスプレス)1006富良野1647(8042D フラノエクスプレス)1844札幌 キハ80 501 ANAビッグスニーカートレイン 分割民営化後1987年5月27日付で走行機関を2基搭載しソファー配置したラウンジ設置するキハ80 501落成以後4両編成とされたが、同年6月1日から10月31日まではタイアップ先を全日本空輸変更しANAビッグスニーカートレインとして運転された。 正面愛称表示ANA変更し白色塗装にかかる帯色全日空機同様にトリトンブルーとよばれる青系濃淡2色とされた。 また同年には本系列としては2度目となる第30回ブルーリボン賞受賞した1988年3月には苗穂運転所転属。さらに1990年1月からは需要増に対応してキハ184-11へ制御回路仕様変更ならびに幌高さや外板塗色を同編成合わせる改造施工し増結。5両編成運用されたが、同年中に増結運用終了し一般仕様復元された。以後4両編成運用されたが、1998年11月1日運行された「ラストラン・フラノ」をもって運用終了2004年9月27日付で廃車となった。 フラノエクスプレス・ANAビッグスニーカートレイン運転区間札幌 新千歳空港富良野号車1 2 3 4 車両番号種車キハ84 1(キハ80 164キハ80 501キハ82 110) キハ83 1キハ82 109キハ84 2(キハ80 165改造施工苗穂工場 落成日1986.12.12 1987.05.27 1986.12.12 廃車日2004.09.27

※この「フラノエクスプレス」の解説は、「国鉄キハ80系気動車」の解説の一部です。
「フラノエクスプレス」を含む「国鉄キハ80系気動車」の記事については、「国鉄キハ80系気動車」の概要を参照ください。

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