著作権
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一般的に、著作物を他人が無断で無制限に利用できないように法的に保護する必要がある。著作物を創造した人物は、その著作物を他人が無断で利用しても、自己の利用を妨げられることはない。しかし、他人が無制限に著作物を利用できると、著作者はその知的財産から利益を得ることが困難となる。著作物の創造には費用・時間がかかるため、無断利用を許すと、知的財産の創造意欲を後退させ、その創造活動が活発に行われないようになるといった結果を招くためである[5]。
著作者の権利は、著作物を活用して収益や名声などを得ることができる財産的権利(著作財産権)と、著作物の内容と著作者を紐づけることで、著作者の人間性を正確に表現する人格的権利(著作者人格権)に分類される[6][7]。狭義に解する場合、著作権はとりわけ著作財産権と同義とされる[8]。反対に、最も広義に解する場合、実演家、レコード製作者、放送事業者など著作物を伝達する者に付与される権利(著作隣接権)[9]も、著作権の概念に含めることがある[8]。
知的財産権には著作権のほか、特許権や商標権などの産業財産権があるが[10][11]、保護の対象や権利の強さが違う。産業財産権は産業の発達を目的とする技術的思想(アイデア)を保護の対象とし、権利者に強い独占性を与える性質のため、所管官庁による厳しい審査を経て登録されなければ権利が発生しない[註釈 1]。一方の著作権は、創造的な文化の発展を目的とする表現を保護の対象としていることから、産業財産権と比べて独占性は低く、日本を含む多くの国・地域では登録しなくても創作した時点で権利が発生する[10][11][註釈 2]。
著作物の定義・範囲、著作物の保護期間、著作物の管理手続や著作侵害の罰則規定などは、時代や国・地域によって異なるものの、国際条約を通じて著作権の基本的な考え方は共通化する方向にある。しかし、著作物のデジタル化やインターネットの社会普及に伴い、著作権侵害やフェアユース(無断利用が著作権侵害にあたらないケース)をめぐる事案が複雑化している時代趨勢もある。
学術的な目的で、研究者や教授が著作権で保護された作品を使用することにはいくつかの例外がある[13]。
注釈
- ^ これを審査登録主義と呼ぶ。
- ^ 著作権が指す「創作性」とは、高度な芸術性や独創性を要求するものではなく、たとえ幼児が書いた稚拙な絵であっても、それぞれの個性が発揮されていれば著作物として保護される[12]。
- ^ 著作権表示
- ^ もっとも、この時代は著作権の対象は書籍だけで、音楽などは対象外であり、モーツァルトも盛んに盗作【既存の音楽の再利用、改変】を行っていた。
- ^ 電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式
- ^ 例として、出版社と専属出版契約の締結をした場合、著作権者(複製権者)はその契約に反して自ら出版、または他の出版社から出版させる事はできない。
- ^ なお、いわゆる平成26年改正法による電子出版権の新設に関して「出版社の著作隣接権」として取り沙汰されているが、著作権の法構造上、電子出版権を含む出版権は著作権たる複製権の一形態であるため、少なくとも改正法新設の電子出版権に関しては著作隣接権は何ら関係がない(例えば放送事業者の隣接権を例に取れば、訴訟等原告資格を得るのは自らの放送番組に対してだけであるし、いっぽうで出版権には第2章第8節のような裁定利用制度は規定されていない)。
- ^ 電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式
出典
- ^ 中山 2014, p. 15.
- ^ 福井健策 2020, p. 9.
- ^ 福井健策 2020, p. 20-21.
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- ^ a b c 森公任、森元みのり『著作権・コンテンツビジネスの法律とトラブル解決マニュアル』2018年、98頁
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- ^ https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200910/jpaapatent200910_075-079.pdf
- ^ 書籍スキャン代行業者を提訴=著名作家7人が差し止め請求-東京地裁
- ^ 自公、出版業界と懇談 「自炊」代行業者提訴などで
- ^ a b Emily Ludolph (2018年12月5日). “W. B. Yeats’ Live-in “Spirit Medium””. JSTOR Daily. 2024年3月2日閲覧。
- ^ “生成AIの著作物無断学習は「利益侵害」、新聞協会が著作権法の改正訴え…文化審議会小委”. 読売新聞オンライン (2023年10月16日). 2023年10月18日閲覧。
- ^ 日経ビジネス電子版. “「機械学習天国ニッポン」と生成AIの著作権リスク 早大・上野教授”. 日経ビジネス電子版. 2023年10月18日閲覧。
- ^ “AIで生成したイラストがパクられて勝手に売られていた! やめさせるにはどうすれば?(弁護士ドットコムニュース)”. Yahoo!ニュース. 2023年10月18日閲覧。
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