写真の著作物
写真の著作物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 02:16 UTC 版)
著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)では、写真の著作物の保護期間を他の著作物を区別して特別に定める規定は存在しない。したがって、一般の著作物と同様に、写真の著作物の保護期間は死亡時起算の原則により決定される(51条2項)。また、写真が無名・変名および団体名義で公表された場合は、公表後70年が適用される(52条1項、53条1項)。 写真の著作物の保護期間は、旧著作権法(明治32年法律第39号)では発行後10年(その写真が発行されなかった場合は製作後10年)と規定されていた。その後は、以下のような変遷をたどっている。 1967年7月27日 - 発行後12年(未発行の場合は製作後12年)に延長(昭和42年法律第87号、暫定延長措置) 1969年12月8日 - 発行後13年(未発行の場合は製作後13年)に延長(昭和44年法律第82号、暫定延長措置) 1971年1月1日 - 公表後50年に延長(著作権法全面改正) 1996年3月25日 - 原則著作者の死後50年に変更(WIPO著作権条約への対応) 2018年12月30日 - 原則著作者の死後70年に延長(平成28年法律第108号、TPP11整備法) 上記によれば、1956年(昭和31年)12月31日までに発行された写真の著作物の著作権は1966年(昭和41年)12月31日までに消滅し、翌年7月27日の暫定延長措置の適用を受けられなかったことから、著作権は消滅している。また、1946年(昭和21年)12月31日までに製作された写真についても、未発行であれば1956年12月31日までに著作権は消滅するし、その日までに発行されたとしても、遅くとも1966年12月31日までには著作権は消滅するので、1967年7月27日の暫定延長措置の適用は受けられない。したがって、著作権は消滅している。いずれの場合も、著作者が生存していても同様である。 このように、写真の著作物は他の著作物と比べて短い保護期間しか与えられてこなかったため、保護の均衡を失するとして、日本写真著作権協会などは消滅した著作権の復活措置を政府に対して要望していた。しかし、既に消滅した著作権を復活させることは法的安定性を害し、著作物の利用者との関係で混乱を招くなどの理由から、平成11年度の著作権審議会は、復活措置を見送る答申を行っている。 さらに、1996年12月の著作権法改正によって(翌年3月25日施行)、写真の著作物の保護期間を公表後50年までとしていた著作権法55条が削除され、写真の著作物に対しても、他の一般著作物と同等の保護期間が適用されることになった。これは、1996年12月の世界知的所有権機関 (WIPO) 外交会議によってWIPO著作権条約が採択されたことを受けたものであり、同条約9条は、写真の著作物に対して他の一般著作物と同期間の保護期間を与えることを義務づけているからである。改正以前までは公表後50年であったため、著作者が生存中に著作権が切れてしまうことが数多く発生した。この改正によって他の著作物と同等の扱いを受けるようになった。
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