井戸 井戸の概要

井戸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 18:17 UTC 版)

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一乗谷朝倉氏遺跡で復元した戦国時代の井戸。井桁を備え、つるべと桶で使用する。

一般に「井戸」といった場合には地下の帯水層から地下水を汲み上げるために地層や岩石を人工的に掘削した採水施設を指すことが多い[1][2]。以下、地下水を汲む井戸を中心に説明する。

概要

採水施設としての井戸の多くは地面に垂直に掘られた井戸(竪井戸[3][4])である。一般的に井戸は地下深い水源から取水しているものほど水量は安定し水質もよい[5]

現在日本では、伝統的な井戸を新しく設置する事は少なくなってきている。しかし水源としての地下水は今もって重要であり、自治体によっては表流水ではなく、地下水のみを水道水源として井戸を使用している地域もある。水道水源の取水設備としての揚水井戸には浄水場が併設され、全体として浄水場と呼ばれることもある。

日本の政府開発援助NGOの手などにより、アフリカ諸国を中心に、井戸の掘削、手押しポンプの設置などが進められている。

日本語の「いど」の語源は水の集まるところを意味する「井処」に由来する[3]

歴史

東京都伊豆諸島式根島の「まいまいず井戸」
東京都目黒区の古い井戸
松山城二之丸史跡庭園の大井戸
旧小石川養生所の井戸。1923年の関東大震災では飲み水として利用された。

人類の祖先は水源として湧泉渓流を利用していたが、湧出量を増やすあるいは濁らない水を得るといった目的から、やがて湧口を広げ水を溜めて用いるようになった[6]

シリア北東部、新石器時代のテル・セクル・アルアヘイマル遺跡から発見された井戸は約9000年前のもので、浄水目的では最古の例と云われている[7]。日本での古い井戸として、御井神社 (斐川町)の井戸、法輪寺 (奈良県斑鳩町)の井戸、玉の井(鹿児島県)が挙げられる[8]

井戸は窪地や崖下に作られることが多かったが、地下水面の深くなっている場所では階段式・すりばち式・螺旋式などの方法が用いられた[6]。掘井戸の掘削方法で帯水層に達することができぬほど地表と地下水面(帯水層)が離れている場合には、まず地表にすり鉢状の窪地を掘り、その底に掘井戸を掘削する方法がとられた。これを「まいまいず井戸」と呼ぶ(地域により呼称が異なる)。すり鉢状の斜面には井戸端に降りて行くための螺旋型の歩道が作られた。

井戸の種類

竪井戸と横井戸

地面に垂直に掘って地下水を汲み上げる井戸を竪井戸、山のなど斜面に水平方向に掘る井戸を横井戸という[3][4][2]

横井戸に比べ竪井戸のほうが圧倒的に数が多い[2]。横井戸の代表例としてカナートがある。日本では有名な横井戸として大阪府茨木市岩坂にあった横井戸がある[2]

被圧井戸と重力井戸

井戸が被圧帯水層中に掘られているものを被圧井戸、不圧帯水層中に掘られているものを重力井戸という[1]

掘井戸と掘抜井戸

掘井戸
人が坑内に直接入って掘った井戸[3]丸井戸ともいう。地域によって呼称が異なり「ガワ井戸」と呼ぶこともある、英語ではdug well。概ね直径1~3mの孔を、人力により垂直に地下水面に達するまで掘削する。孔壁が崩壊しないように、掘削しながら、孔壁に石積みブロックで、周りを補強しながら掘削していく。地層の硬さ等によって異なるが、おおよそ10~20m位掘ることができる。地下水位が浅い地域、特に自由地下水が豊富な地域(例えば関東地方では関東ローム層が分布する台地上)において、作成されていた井戸である。日本国内ではボーリング工法(掘削工法としての上総掘りも含む)による掘り抜き井戸を造る技術が普及する以前や、ボーリング工法を採用するまでもなく地下水位が浅い地域で多く設置されていた。現在ではボーリングによる井戸設置が一般化したため、掘井戸作成の職人が少なくなり、新しく造られることは少なくなってきている。
掘抜井戸
難透水層を掘り抜き深い帯水層の地下水を汲み上げる井戸。地上から棒状のもので穴を掘っていき細い水管を差し込んだものである[3]。具体的にはボーリング工法(掘削工法としての上総掘りも含む)により作成する。江戸時代には上総掘りの普及といった技術の進歩や衛生上の利点といった点から掘抜井戸が普及した[3]降水の少ない砂漠地帯でも水を得ることができる。オーストラリア大鑽井盆地は掘抜井戸が多いことで有名である[6]

自噴井と非自噴井

掘抜井戸は自噴井と非自噴井に分けられる[6]

自噴井
帯水層に大きな圧力がかかって地下水が地上に噴出する井戸を自噴井といい[2][6]、自流井、吹上井、アーティシャンウェルともいう[6]被圧地下水(胚胎する地下水の水面が、その帯水層上面よりも高い状態)に井戸を掘り、その水面が地表面以上になると、地下水は汲み上げなくても井戸から噴き出し、掘抜井戸で被圧帯水層を取水している井戸にこの現象が現れる。地域的には扇状地の先端(地形としては扇端部と言う)にあることが多い。
非自噴井
自噴井ではない掘抜井戸。

浅井戸と深井戸

井戸の深さ(孔底深度)が浅く不透水層の上にあって自由地下水(不圧地下水)を取水している井戸を浅井戸[9]、孔底深度が深く不透水層の下から取水している井戸を深井戸という[5]。ただ、この分類には学問的な定義がなく[6]、一般には深さ20mから30mが基準とされる[10][11]。ただ、地下に分布する帯水層の深度は地域ごとに異なる。


  1. ^ a b 河野伊一郎著 『地下水工学』鹿島出版会 p.43 1989年
  2. ^ a b c d e f g h 野本寛一編『食の民俗事典』柊風舎 p.531 2011年
  3. ^ a b c d e f g h i 『日本民俗大事典(上)』吉川弘文館 p.110 1999年
  4. ^ a b c d e 日本民俗建築学会 『写真でみる民家大事典』柏書房 p.144 2005年
  5. ^ a b c d e 『小事典 暮らしの水 飲む、使う、捨てる水についての基礎知識』講談社 p.210 2002年
  6. ^ a b c d e f g h i j 靑野寿郎・保柳睦美監修『人文地理事典』 p.93 1951年 古今書院
  7. ^ 2009年3月14日 共同通信社 シリアで9000年前の井戸発見 浄水目的は世界最古か
  8. ^ 高田京子、滝澤謙一『ニッポン最古巡礼』新潮社
  9. ^ 『小事典 暮らしの水 飲む、使う、捨てる水についての基礎知識』講談社 p.209-210 2002年
  10. ^ a b 土井巖著 『図解入門 よくわかる最新給排水衛生設備の基本と仕組み』秀和システム p.50 2011年
  11. ^ a b c 『小事典 暮らしの水 飲む、使う、捨てる水についての基礎知識』講談社 p.211 2002年
  12. ^ a b c 井戸|水の話”. フジクリーン. 2020年11月15日閲覧。
  13. ^ a b c 江戸散策|第51回年に一度、江戸中の井戸をお掃除する”. 2020年11月15日閲覧。
  14. ^ 日本民俗建築学会 『図説 民俗建築大事典』柏書房 p.192 2001年
  15. ^ 野本寛一編『食の民俗事典』柊風舎 p.531-532 2011年
  16. ^ 加古川グリーンシティ防災会の取り組み
  17. ^ 【西日本豪雨】生活用水・飲み水に井戸水注目” (2018年7月22日). 2018年7月29日閲覧。
  18. ^ a b 野本寛一編『食の民俗事典』柊風舎 p.532 2011年
  19. ^ a b c 日本民俗建築学会 『図説 民俗建築大事典』柏書房 p.193 2001年
  20. ^ 江戸の歳事風俗誌 小野武雄著 講談社学術文庫
  21. ^ 経済社会開発計画 一般財団法人日本国際協力システム、2019年10月5日閲覧。






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